「日々の業務に追われ、気づけばいつも残業…」
「もっと効率的に仕事を進めたいのに、一体何から手をつけていいか分からない」

現場のリーダーや管理職の方であれば、一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。

この記事は、そんなあなたのための「業務改善の教科書」です。業務改善とは何か?という基本的な定義から、成功に導くための具体的な5つのステップ、そして明日からすぐに試せる実践的なアイデアまでをわかりやすく解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたの頭の中にある漠然とした問題意識が、具体的な行動計画へと変わっているはず。自社の職場をより良くするための第一歩を踏み出しましょう。

この記事の監修者
SHIFT AI代表 木内翔大

SHIFT AI代表 木内翔大

(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO AI & Web3株式会社AI活用顧問 / 生成AI活用普及協会(GUGA)協議員 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ SHIFT AI(会員20,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現のために活動中。Xアカウントのフォロワー数は12万人超え(2025年6月現在)

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目次

業務改善とは?その目的と必要性

業務改善とは

「もっと効率よく仕事を進められないだろうか」「職場のムダをなくして、生産性を上げたい」——。

多くのビジネスパーソンが一度は抱えるこの悩みへの答えが、「業務改善」です。業務改善とは、単に作業を速くすることだけではありません。仕事のやり方そのものを見直し、より良い状態に変えていく、企業にとって非常に重要な活動です。

この章では、業務改善の正確な定義から、「業務効率化」といった似た言葉との違い、そして改善を進める上で欠かせない「QCD」という基本的な考え方まで、業務改善の「そもそも」を分かりやすく解説します。

業務改善の定義を分かりやすく解説

業務改善とは、ひと言でいうと、会社の仕事のやり方(業務プロセス)に潜む「ムダ・ムリ・ムラ」を見つけ出し、それらをなくすこと。仕事の質や効率を高めていく活動全般を指します。

ポイントは、現状のやり方を当たり前だと思わず、「もっと良い方法はないか?」と常に見直し続ける点にあります。

例えば、毎日行っているデータ入力、週に一度の定例会議、お客様への商品の届け方など、会社には無数の業務が存在します。これらのプロセスを一つひとつ丁寧に見ていくと、「この報告書、本当に必要?」「この入力作業、もっと簡単にできない?」といった改善のヒントが隠れているものです。

こうした小さな「ムダ・ムリ・ムラ」を一つずつ潰していくことで、会社全体の生産性が向上し、変化の激しい時代でも勝ち残っていける強い組織体質を作ること。それが、業務改善の最終的なゴールなのです。

業務改善と「業務効率化」「生産性向上」の違い

「業務改善」とよく似た言葉に「業務効率化」や「生産性向上」があります。これらは同じように使われがちですが、厳密には意味が異なります。主な違いは下記のとおりです。

用語目的イメージ
業務効率化時間・手間の削減1時間かかっていた作業を30分で行う
生産性向上投資対効果の最大化100万円のコストで200万円の利益を生む
業務改善仕事のプロセス全体の最適化業務効率化や生産性向上を含む、より包括的な活動

「業務効率化」は、作業のスピードアップに重点を置いた言葉です。例えば、ツールの導入で1時間かかっていた作業を30分に短縮するなど、ムダな時間をなくして、より少ない労力(インプット)で同じ成果(アウトプット)を出すことを目指します。

一方、「生産性向上」は、投資対効果の最大化を目指す考え方です。投入した人材や時間、コスト(インプット)に対して、どれだけ大きな売上や成果(アウトプット)を生み出せたか、という「割合」を高めるのが目的です。

そして「業務改善」はこれら二つを含む、より広い概念です。業務改善は、効率化や生産性向上を実現するための具体的な手段。それに加えて、製品の品質向上や従業員の働きがい向上まで含めて、仕事のプロセス全体をより良い状態にしていく総合的な取り組みなのです。

業務改善に欠かせない3つの視点「QCD」とは

業務改善を進める上で、絶対に欠かせないモノサシが「QCD(キューシーディー)」という3つの視点です。

これは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を取った言葉。この3つのバランスをいかに最適化するかが、業務改善成功のカギを握ります。

  • Quality(品質):製品やサービスの質、仕事の正確性のこと
  • Cost(コスト):人件費や材料費など、業務にかかる費用のこと
  • Delivery(納期):お客様に製品やサービスを届けるまでの時間や、決められた締め切りを守ること

この3つは、どれか一つを良くしようとすると、他のどれかが悪化しやすい「トレードオフ」の関係にあります。例えば、品質を高めるために良い材料を使えばコストは上がります。納期を早めようと無理をすれば品質が落ちるかもしれません。

業務改善とは、自社の状況に合わせて、このQCDのバランスをどこに持っていくのが最適かを考え、実行していくプロセスなのです。

なぜ今、業務改善が重要なのか?3つの時代背景

変われない職場の課題

業務改善は、昔からある経営手法ですが、なぜ今、これほどまでにその重要性が叫ばれているのでしょうか。その背景には、私たちを取り巻く社会の大きな変化があります。一昔前の「常識」が通用しなくなった現代において、企業が生き残っていくためには、業務改善はもはや「やれたら良いこと」ではなく、「やらなければならないこと」なのです。

この章では、業務改善を後押しする「生産年齢人口の減少」「働き方の多様化」「長時間労働の是正」という、避けては通れない3つの時代背景を解説します。

背景1:生産年齢人口の減少と人手不足

今、日本が直面している最も大きな課題の一つが、「働く人」の数がどんどん減っているという事実です。総務省の統計を見ても、日本の15歳から64歳までの「生産年齢人口」は1995年をピークに減り続けており、今後もこの流れは変わりません。

「人が足りない」という状況は、特に多くの中小企業にとって深刻な経営問題です。新しい人を採用したくても簡単には見つからず、今いる従業員一人ひとりの負担は増える一方です。これまでのやり方を続けていては、いずれ仕事が回らなくなり、事業を続けること自体が難しくなってしまうでしょう。

だからこそ、少ない人数でもこれまで以上の成果を出せるように、仕事のやり方を根本から見直す「業務改善」が不可欠なのです。業務改善で一人ひとりの生産性を高めることは、人手不足という大きな波を乗り越えるための、いわば「守り」であり「攻め」の経営戦略と言えます。

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背景2:働き方の多様化への対応

かつては「全員が毎日オフィスに出社して働く」のが当たり前でした。しかし、コロナ禍をきっかけにテレワークが一気に普及し、今では時短勤務やフレックスタイムなど、従業員のライフスタイルに合わせた多様な働き方を認めることが、企業のスタンダードになりつつあります。

こうした変化は、優秀な人材を確保し、長く活躍してもらうために欠かせません。しかし、メンバーがそれぞれ違う場所、違う時間で働くようになると、従来の業務プロセスはうまく機能しなくなります。「あの人に聞かないと分からない」「ハンコをもらうために出社しないといけない」といった状況は、多様な働き方を妨げる大きな壁です。

情報共有のルール、コミュニケーションの取り方、仕事の進捗管理の方法など、場所や時間に縛られない新しい仕事の仕組みを作ること。これも、現代における業務改善の非常に重要な役割です。

背景3:長時間労働の是正とコンプライアンス強化

「残業は当たり前」という時代は、もはや過去のものです。2019年から順次施行された「働き方改革関連法」によって、時間外労働の上限が「罰則付き」で法律に定められました。これは大企業だけでなく、中小企業を含むすべての企業が対象です。

「気合で乗り切れ」「早く帰れ」といった精神論だけでは、この問題は解決しません。決められた時間内で成果を出すためには、残業しなくても仕事が終わる「仕組み」を作ることが不可欠です。つまり、業務改善によってムダな作業を徹底的になくし、生産性を高めることが、法律を守る(コンプライアンス)上で必須の取り組みとなっています。

長時間労働をなくすことは、従業員の心身の健康を守り、ワークライフバランスを向上させます。そして、心身ともに充実した従業員は、結果として仕事で高いパフォーマンスを発揮するという、企業にとっても喜ばしい好循環を生み出すのです。

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業務改善がもたらす3つのメリット

業務改善をするコツ

業務改善は、単に「仕事を楽にする」だけのものではありません。地道な活動の先には、会社の経営を力強く後押しする3つのメリットが存在します。

  1. コスト削減
  2. 生産性の向上
  3. 従業員の満足度向上

これらのメリットを知ることで、改善活動へのモチベーションがさらに高まるはずです。

メリット1:コスト削減

業務改善がもたらす最も直接的で分かりやすいメリットが、コストの削減です。日々の業務プロセスを見直すと、これまで当たり前だと思って支払っていた経費の中に、多くの「ムダ」が隠れていることに気づきます。

例えば、毎回の会議で大量に印刷していた紙の資料。これをペーパーレス化し、モニターやプロジェクターに映す形に変えるだけで、紙代、トナー代、印刷機のリース代、さらには書類を保管しておくキャビネットのスペースまで削減できます。また、単純なデータ入力をRPAツールで自動化すれば、その作業にかけていた人件費をより創造的な仕事に振り向けることが可能です。

一つひとつは小さな改善でも、会社全体で取り組めば大きな金額となり、企業の利益を直接的に押し上げる効果につながります。

メリット2:生産性の向上

業務改善は、会社全体の「稼ぐ力」である生産性を大きく向上させます。生産性の向上とは、従業員一人ひとりが同じ時間や人数でも、より多くの、あるいはより質の高い成果を生み出せるようになることです。

例えば、「あのデータ、どこに保存したっけ?」とファイルを探し回る時間は非常にもったいないムダな時間です。情報共有のルールを一つ決めるだけで、こうした時間は劇的に減り、その分、お客様への対応や新しい企画を考える時間に充てられます。

また、ベテラン社員のやり方をマニュアル化して共有すれば、チーム全体の仕事の質が底上げされ、担当者が変わっても安定したパフォーマンスを発揮できるようになります。生産性の向上は、企業の競争力そのものを高めるのです。

メリット3:従業員の満足度向上

意外に思われるかもしれませんが、業務改善は従業員の満足度や働きがいを高める上でも、非常に大きな効果を発揮します。

「何度も同じ内容を手で入力する」「何のためにやっているか分からない会議に出席する」といった非効率な業務は、従業員のやる気を削ぐ大きなストレス要因です。業務改善によってこうしたムダな作業から解放されると、従業員は「本来やるべき付加価値の高い仕事」に集中でき、仕事へのやりがいを感じやすくなります。

さらに、従業員自身が改善活動に参加し、「自分のアイデアで職場が良くなった」という成功体験を持つことは、仕事への主体性や会社への愛着を育む上で何よりの特効薬となります。働きやすい職場は、優秀な人材の離職を防ぎ、新しい人材を惹きつける魅力にもなるのです。

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【基本】業務改善の進め方5ステップ

業務改善の正しい進め方と、実践のステップ

業務改善は、やみくもに進めても成功しません。しっかりとした地図とコンパスを持って、正しい手順で進めることが何よりも重要です。

ここでは、どんな業種・職種にも応用できる、業務改善の基本的な進め方を5つのステップに分けて解説します。このステップ通りに進めれば、道に迷うことなく、着実にゴールへとたどり着けるはずです。

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ステップ1:現状把握と課題の「見える化」

業務改善のすべての始まりは、現状を正しく知る「見える化」からスタートします。自分の思い込みや感覚に頼るのではなく、「誰が、いつ、何を、どれくらいの時間で、どのように行っているのか」を、客観的な事実として全て洗い出していきましょう

具体的な方法としては、担当者へのヒアリングや、実際の作業風景の観察、業務フロー図の作成などがあります。この段階で大切なのは、「これは良い」「これは悪い」といった評価を一切加えないことです。

まずは、ありのままの姿をフラットな視点で描き出すことに集中してください。「昔からこうだから」と当たり前に思っていた作業の中にこそ、大きな改善のヒントが眠っています。この地道な作業が、後のステップで大きな力を発揮するのです。  

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ステップ2:課題の分析と優先順位の決定

現状が「見える化」できたら、次はどこに問題が潜んでいるのかを分析し、取り組むべき課題に優先順位をつけるステップです。見つかった問題を全て一度に解決しようとするのは不可能です。最も効果が大きく、かつ実行しやすい「おいしい課題」から手をつけるのが成功への近道です。

まず、洗い出した各業務を「QCD(品質・コスト・納期)」の観点から評価し、問題点を整理します。次に、その問題が「なぜ起きているのか?」を「なぜ?なぜ?」と5回繰り返す「なぜなぜ分析」のような手法で深掘りし、表面的な現象の奥にある根本原因を突き止めましょう。

最後に、「改善による効果の大きさ」と「実行のしやすさ」の2つの軸でそれぞれの課題を評価し、最も費用対効果の高いものから取り組む優先順位を決定します。

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ステップ3:具体的な改善計画(アクションプラン)の策定

取り組むべき課題が決まったら、それをどのように解決するのか、具体的な行動計画(アクションプラン)に落とし込みます。「みんなで頑張って改善しよう!」といった曖昧なスローガンだけでは、誰も動くことはできません。「いつまでに、誰が、何をするのか」を、誰が見ても分かるレベルまで具体的に決めることが重要です。

例えば、「請求書の処理時間を、現状の平均15分から10分に短縮する」といった、数値で測れる具体的な目標(KPI)を設定します。そして、その目標を達成するための具体的な手法(例:新しいツールの導入、承認フローの見直し)を決め、それぞれのタスクの担当者と完了期限を明確にした計画書を作成しましょう。

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ステップ4:改善計画の実行と進捗管理

素晴らしい計画も、実行されなければただの紙切れです。このステップでは、策定したアクションプランに沿って、いよいよ改善活動を実行に移します。

ただし、いきなり全社で大々的にスタートするのはリスクが大きいため、まずは特定の部署やチームに限定して試験的に導入する「スモールスタート」をおすすめします。小さく始めることで、予期せぬトラブルにも対応しやすく、現場からの反発も少なく済みます。「まずはやってみて、うまくいったら広げていく」というスタンスが大切です。

そして、実行中は週に1回など、定期的に進捗を確認する場を設けましょう。計画通りに進んでいるか、困っていることはないかを確認し、問題があればすぐに対策を講じることが、計画倒れを防ぐための重要なポイントです。

ステップ5:効果測定と振り返り(PDCA)

改善活動を「やりっぱなし」で終わらせないための、最後の重要なステップが効果測定と振り返りです。実行した改善策が、本当に狙い通りの効果を上げたのかを客観的なデータで評価し、次のアクションへと繋げます。

ステップ3で設定した目標(KPI)に対して、結果はどうだったのか。例えば、「処理時間は目標の10分には届かなかったが、12分まで短縮できた」というように、改善前(Before)と改善後(After)を数値で比較し、成果を客観的に評価しましょう。

そして、なぜうまくいったのか(あるいは、いかなかったのか)を分析し、その学びを次の改善計画(Plan)に活かしていきます。この「P→D→C→A」のサイクルを回し続けることで、組織は継続的に成長していくのです。

業務改善に役立つフレームワーク5選

フレームワーク活用

業務改善を進める際には、ただ闇雲に考えるよりも、「フレームワーク」という先人たちが遺してくれた知恵の結晶(思考の型)を使うと、驚くほどスムーズに進みます。

ここでは数あるフレームワークの中から、特に使いやすく効果的なものを5つ厳選してご紹介します。これらを使いこなせば、問題の原因分析やアイデア出しが、きっと得意になるはずです。

ECRS(イクルス):改善の原則を見つける

ECRS(イクルス)は、改善策を考える際に、最も効果的な順番を示した改善の原則です。

  • E(Eliminate:なくす)
  • C(Combine:つなげる)
  • R(Rearrange:入れ替える)
  • S(Simplify:簡単にする)

これらの頭文字を取ったもので、必ずこの順番で検討するのが鉄則です。多くの人は、つい「S:もっと簡単にできないか?」から考えがちです。しかし、それは一番最後です。

まずは「E:そもそも、その業務なくせないか?」と考えるのが最強の改善策。それが無理なら「C:別々の業務を一つにまとめられないか?」。次に「R:作業の順番や担当者を入れ替えたらどうか?」と検討し、最後の手段として「S:もっと単純にできないか?」を考えます。

この順番を意識するだけで、改善の質が劇的に変わります。

PDCAサイクル:継続的な改善を回す

PDCAサイクルは、改善活動を「やりっぱなし」で終わらせず、継続的にレベルアップさせていくための、非常に有名で強力なフレームワークです。

  • P(Plan:計画)
  • D(Do:実行)
  • C(Check:評価)
  • A(Action:改善)

これらの4つのステップを、らせん階段を上るように繰り返し回していきます

まず改善のための計画を立て(Plan)、それに沿って実行し(Do)、その結果がどうだったかを客観的なデータで評価します(Check)。そして、その評価結果をもとに「次はどうしようか」と次の改善アクションを考え、新たな計画につなげていく(Action)。

このサイクルを回し続けることで、組織は成功からも失敗からも学び、「常に改善し続ける文化」を根付かせることができます。

ロジックツリー:原因を構造的に分析する

ロジックツリーは、一つの問題をまるで木の枝が分かれていくように「なぜ?」「具体的には?」と問いかけながら分解し、根本的な原因を見つけ出すための思考ツールです。

例えば、「残業が多い」という漠然とした問題をテーマに設定します。そこから「会議が多い」「資料作成に時間がかかる」「急な差し込み業務が多い」といったように、原因と思われる要素に分解していきます。さらに「会議が多い」を「定例会議の数が多い」「一つひとつの会議時間が長い」と分解し…というように、具体的なアクションが取れるレベルまで掘り下げていきます。

これにより、感覚ではなく論理的に問題の全体像を捉え、本当に手をつけるべきポイントを特定することができます。

KPT:振り返りを効率的に行う

KPT(ケプト)は、チームで行う「振り返り」を短時間で、かつ前向きに行うためのフレームワークです。「反省会」というと重苦しい雰囲気になりがちですが、KPTを使えば建設的な話し合いができます

  • K(Keep:良かったこと、続けたいこと)
  • P(Problem:問題点、改善したいこと)
  • T(Try:次に試すこと)

これらの3つの視点で意見を出し合います。

ポイントは、良かった点(Keep)から話し始めること。これにより、ポジティブな雰囲気で会議をスタートできます。その後、問題点(Problem)を共有し、「じゃあ、そのProblemを解決して、Keepをさらに良くするために、何を試そうか?」と、未来志向で次のアクション(Try)を決めるのです。

バリューチェーン分析:事業全体の流れから課題を見つける

バリューチェーン分析は、少し上級者向けですが、自社のビジネス全体を俯瞰して、本質的な課題を発見するための強力なフレームワークです。

自社の事業を、材料の仕入れから製造、販売、アフターサービスに至るまでの一連の「活動の連鎖(チェーン)」として捉え、どの工程で「価値(Value)」が生まれているのかを分析します。

これにより、「うちは製品開発には強いけど、物流にコストがかかりすぎている」といったように、部門単体では見えなかった会社全体の強みや弱みが明らかになります。

部分的な改善(部分最適)にとどまらず、事業全体の視点(全体最適)から、最もインパクトの大きい改善策は何かを考える。これが経営戦略レベルの意思決定に役立ちます。

h2 【実践】業務改善のアイデア6選

業務改善の進め方が分かったところで、次はいよいよ実践です。「具体的にどんなことから始めればいいの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

ここでは、多くの企業で効果が実証されている、代表的な業務改善のアイデアを6つご紹介します。難しいものは一つもありません。自社の状況に合わせて、まずは一つでも試せそうなものがないか、探してみてください。小さな一歩が、大きな変化を生み出すきっかけになります。

アイデア1:不要な業務の廃止・削減(ECRS)

業務改善を考える上で最も重要で、そして最も効果が高いアイデアは、「その業務、本当に必要?」と問い直し、思い切って「やめる」ことです。

改善のフレームワーク「ECRS(イクルス)」でも、最初の「E」は「Eliminate(排除)」を意味します。なぜなら、不要な業務をいくら効率化しても、かかるコストや時間はゼロにはなりませんが、「やめて」しまえばそれらが全てゼロになるからです。

【具体例】
・昔からの慣習で続けているだけの定例会議
・誰も真剣に読んでいない日報や報告書
・何重にもなっている過剰な承認プロセス

やめてみたら実は誰も困らなかった、ということは少なくありません。まずは身の回りにある「これ、なくてもいいのでは?」という業務を探すことから始めてみましょう。

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アイデア2:業務プロセスの簡素化・標準化

どうしても「やめられない」業務については、次に「もっとシンプルにできないか?」「誰がやっても同じ結果にならないか?」と考えてみましょう。これが業務プロセスの「簡素化」と「標準化」です。

複雑な業務プロセスは、ミスの温床となりやすく、時間がかかる原因にもなります。

【具体例】
・5段階あった承認フローを3段階に減らす
・複数の部署で行っていたチェック作業を1つの部署に集約する

また、人によってやり方がバラバラだと、品質が安定しません。「標準化」とは、誰が担当しても同じ品質で作業ができるよう、業務の手順を明確に定めることです。これは、特定の個人にしかできない「属人化」を防ぐ上でも非常に有効な手段となります。

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アイデア3:アウトソーシング(外部委託)の活用

全ての業務を自社で抱える必要はありません。特に、会社の売上に直接はつながらない「ノンコア業務」は、外部の専門業者に委託する(アウトソーシング)のも賢い選択肢です。

【具体例】
・毎月の給与計算や経理の記帳代行
・専門的な知識が必要なWebサイトの運用

このような業務はその道のプロに任せた方が結果的に品質が高く、コストも抑えられるケースが多くあります。

アウトソーシングを活用することで、社員は自社の強みである商品開発や営業活動といった「コア業務」に集中できるようになります。これにより、会社全体の生産性を大きく向上させることが可能です。自社のリソースは、最も価値を生み出す部分に集中投下しましょう。

アイデア4:マニュアル作成による属人化の解消

「この仕事は、Aさんじゃないと分からない」——。このような「属人化」した状態は、その担当者が休んだり、退職したりした際に業務がストップしてしまう、非常に危険な状態です。このリスクを解消するのが、マニュアルの作成です。

マニュアル作成とは、特定の人の頭の中にしかない知識やノウハウ(暗黙知)を、文章や図、スクリーンショットなどを使って、誰にでも分かる形(形式知)に変換していく作業です。これにより、担当者が変わっても業務の品質を維持でき、新人の教育にかかる時間も大幅に短縮できます。

重要なのは一度作って終わりではなく、業務内容の変更に合わせて常にマニュアルを最新の状態に保つ「更新の仕組み」も作っておくことです。

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アイデア5:ITツール・システムの導入による自動化

毎月繰り返される単純なデータ入力や、決まった形式のメール送信など、人間が頭を使わなくてもできる定型業務は、ITツールを導入して「自動化」してしまいましょう。その代表的なツールが、PC上の作業を代行してくれる「RPA(Robotic Process Automation)」です。

人間は単純作業を繰り返すと疲れますし、ミスもします。しかし、ロボットは24時間365日、文句も言わずに正確に作業をこなし続けてくれます。RPAなどを活用して定型業務を自動化することで、従業員はそうした単純作業から解放されるのです。

お客様への対応や新しいアイデアの創出といった、より創造的で付加価値の高い仕事に時間を使えるようになるため、従業員のモチベーションアップにも大きく貢献します。

アイデア6:ペーパーレス化の推進

今なお多くの職場で業務効率を下げている原因が「紙」の存在です。会議資料や申請書、契約書といった書類をデジタルデータに置き換える「ペーパーレス化」は、非常に効果の大きい業務改善の一つです。

紙の書類は、印刷するためのコスト、保管するためのスペース、目的の書類を探し出す時間、そしてハンコをもらうために出社するといった、多くのムダを生み出します。これらをワークフローシステムやクラウドストレージ、電子契約サービスなどに置き換えることで、物理的なコストの削減が可能です。

また、いつでもどこでも情報にアクセスできるようになり、業務スピードは格段に向上します。特にテレワークを推進する上では、ペーパーレス化は避けて通れないテーマと言えるでしょう。

【AIで加速】これからの業務改善、3つのアプローチ

AIを賢く使う

これまでの業務改善のアイデアに加えて、現代ならではの強力な武器が「AI(人工知能)」の活用です。今やAIは特別な知識がなくても、驚くほど簡単に、そして安価に利用できるサービスが増えています。

ここでは、AIを業務改善に活用するための代表的な3つのアプローチをご紹介します。AIの力を借りることで、これまで不可能だと思っていたレベルの改善が実現できるかもしれません。

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アプローチ1:AI-OCR・RPAによる定型業務の自動化

多くのオフィスで時間と労力を奪っているのが、請求書や注文書といった「紙の書類」を扱う業務です。この面倒な手入力作業を劇的に自動化してくれるのが、「AI-OCR」と「RPA」の連携です。

AI-OCRは、AIを搭載した「賢い目」だと考えてください。従来のOCRが苦手だった、手書きの文字や様々なフォーマットの請求書からでも、「会社名」「金額」といった必要な情報を高い精度で読み取り、テキストデータに変換してくれます。

そしてRPAは、PC上の作業を代行してくれる「真面目な手」です。AI-OCRが読み取ったデータを、会計システムに転記したり、顧客リストを更新したりといった定型作業を、人間の代わりに正確に実行します。

この二つの組み合わせで、経理担当者が毎月行っていた大量の入力作業が、書類をスキャンするだけでほぼ完了するのです。

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アプローチ2:AIチャットボットによる問い合わせ対応の効率化

お客様からの「よくある質問」への対応や、社内からの「パスワードを忘れた」「有給の申請方法は?」といった問い合わせに、担当者が毎回同じ説明を繰り返していないでしょうか。

こうした定型的な問い合わせ対応は、「AIチャットボット」に任せることができます。

従来のチャットボットと違い、AIチャットボットは、人間が話すような自然な言葉の意図をAIが理解し、膨大なQ&Aデータの中から最適な答えを瞬時に見つけ出して回答します。これにより、お客様や社員は、深夜でも休日でも、24時間365日いつでも疑問を自己解決できるようになるのです。

一方、問い合わせ担当者は、定型的な対応から解放され、本当に人間が対応すべき複雑な相談や、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。顧客満足度と従業員満足度の両方を高める、一石二鳥の改善策です。

アプローチ3:AIによるデータ分析・需要予測の高度化

「来月の売上は、これくらいだろうか」「この商品は、いくつ仕入れればいいだろうか」——。こうした将来の予測を、長年の「経験と勘」だけに頼ってはいないでしょうか。

AIは、こうしたビジネスの意思決定に「客観的なデータ」という強力な根拠を与えてくれます。

AIは人間では到底処理しきれない、過去の売上実績、天候、Webサイトのアクセス数、SNSのトレンドといった膨大なデータの中から、売上を左右する複雑なパターンや意外な相関関係を見つけ出すのが得意です。

AIが構築した予測モデルを使えば、「気温が28度を超える晴れた休日は、この商品の需要が20%増える」といった非常に精度の高い予測が可能になります。これにより、欠品による機会損失や、過剰在庫による廃棄ロスを大幅に削減し、企業の利益を最大化することができるのです。

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業務改善を成功させるための3つの注意点

やってはいけない設計

業務改善への道のりは、常に順風満帆とは限りません。時には思わぬ壁にぶつかったり、現場から反発を受けたりすることもあります。しかし、あらかじめ失敗しやすい「落とし穴」を知っておけば、それを避けて通ることができます。

ここでは、多くの企業が陥りがちな失敗パターンを踏まえ、業務改善を成功に導くために絶対に押さえておきたい3つの注意点をご紹介します。「転ばぬ先の杖」として、ぜひ心に留めておいてください。

注意点1:現場の意見を尊重し、トップダウンで進めない

業務改善における最大の失敗原因の一つが、経営層や管理職が考えた改善策を、現場に一方的に押し付ける「トップダウン」型の進め方です。これは、ほぼ間違いなく失敗します。なぜなら、日々の業務の課題や改善のヒントを最もよく知っているのは、実際に手を動かしている現場の従業員だからです。

現場の実情を無視した「机上の空論」は、かえって負担を増やすだけの迷惑なルールになりかねません。大切なのは、改善の主役はあくまで現場の従業員であるという姿勢です。彼らの声に真摯に耳を傾け、一緒に考え、ボトムアップで改善を進めていくこと。

経営層の役割は、なぜ改善が必要なのかというビジョンを示し、現場の活動を全力でサポートすることにあるのです。

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注意点2:最初から完璧を目指さず、スモールスタートを意識する

「会社全体を生まれ変わらせるぞ!」と意気込み、最初から100点満点の完璧な改革を目指すのも、よくある失敗パターンです。

計画が壮大になりすぎると、関係部署との調整が複雑になり、失敗したときのリスクも大きくなります。結果的に、一歩も前に進めなくなってしまうことも少なくありません。

業務改善を成功させる秘訣は、「スモールスタート」です。まずは特定の部署や、特定の業務に絞って「小さく試してみる」こと。そして、そこで得られた小さな成功体験(クイックウィン)を積み重ね、周囲を巻き込みながら、徐々に取り組みを広げていくのです。

完璧な計画を立てることに時間をかけるよりも、まずは行動を起こすこと。その小さな一歩が、大きな変革への確実な道筋となります。

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注意点3:ツールの導入自体を目的化しない

「話題のAIを導入すれば、すべて解決するはず」「とりあえず、あのSaaSを契約しよう」——。このように、ITツールの導入そのものが目的になってしまうのも、非常に危険な落とし穴です。

ツールはあくまで、課題を解決するための「手段」であって、「目的」ではありません。現状の業務プロセスにどんな問題があり、それを解決するために本当にそのツールが必要なのか、という分析を抜きにしてツールを導入しても、誰も使わずに放置され、高価な「お荷物」になってしまうのが関の山です。

必ず、「業務プロセスの見直し」を先に行い、解決すべき課題を明確にした上で、「その課題を解決するための最適な手段として、どのツールがふさわしいか?」という順番で検討することを徹底してください。

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まとめ|AIの力も借りて、自社に合った業務改善で強い組織を作ろう

本記事では、業務改善の基本的な考え方から、具体的な進め方5ステップ、さらには明日から使える実践的なアイデアまでを網羅的に解説しました。「何から手をつければ良いか分からない」という悩みは解消されたのではないでしょうか。

業務改善に、最初から完璧な計画は必要ありません。大切なのは、まず自社の課題を「見える化」し、小さな一歩を踏み出す勇気です。ご紹介したステップやアイデアを参考に、まずは一つでも改善を試みてみませんか。その小さな行動が、あなたの職場をより良くし、ひいては会社の未来を創る大きな力になるはずです。

もし、自社だけでの改善に行き詰まりを感じたら、AIのような新しいテクノロジーの力を借りるのも有効な手段。専門家の視点を取り入れて、改善を加速させましょう。

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よくある質問(業務改善・研修・AI活用に関するお悩み)

Q


業務改善と業務効率化の違いは何ですか?
A

業務改善は「業務の質・在り方」を変える抜本的なアプローチであり、業務効率化は「既存のやり方を効率よくこなす工夫」を指します。前者は構造・仕組みに踏み込み、後者は処理スピードやコスト削減にフォーカスする点が異なります。

Q


なぜ業務改善は属人化してしまうのですか?
A

業務改善が属人化する背景には、「現場任せ」「担当者が1人しかいない」「マニュアルが整備されていない」などの構造的な課題があります。継続的な改善には、仕組みとして全社的に取り組む体制が不可欠です。

Q


ツール導入だけでは業務改善が進まないのはなぜ?
A

ツールの導入は手段であり、目的ではありません。現場の課題把握や業務設計ができていないまま導入しても、使われずに終わるケースが多く見られます。定着には、目的とプロセスの可視化・再設計が欠かせません。

Q


業務改善の取り組みを現場に浸透させるにはどうすれば良いですか?
A

現場の巻き込みが鍵です。トップダウンではなく、現場の課題感を丁寧に吸い上げたうえで改善案を共創すること、また改善が「業務の一部」として自然に定着するような支援・教育体制を整えることが有効です。

Q


業務改善を進める中でAIはどう活用できますか?
A

業務の棚卸しやナレッジ共有、ルーティン業務の自動化などで生成AIが効果を発揮します。たとえばChatGPTやCopilotを活用することで、改善プロセスそのものの効率化・見える化が進み、定着の加速にもつながります。

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