中小企業でも生成AIを活用する動きが広がる一方で、
「Geminiを社員に使わせても本当に安全なのか」
と不安を感じる情シス・管理職は少なくありません。

とくに最近は、社員が個人のGoogleアカウントで Geminiを勝手に利用する“シャドーAI”も増えており、 情報漏洩が起きるリスクは確実に高まっています。

しかし実際には、Gemini(Google Workspace版)は 適切な設定と運用ルールさえ整えれば 中小企業でも十分安全に利用できるプラットフォームです。

問題は「セキュリティの仕組み」そのものではなく、 設定・運用・教育の不備によって事故が発生するという点です。

本記事では、Google公式仕様の要点をわかりやすく整理したうえで、 中小企業が情報漏洩を防ぎながらGeminiを活用するための 具体的な設定方法・社内ルール・運用フローを解説します。

さらに、実際の現場で起きやすい“NG事例”や、 安全に使うために押さえるべきチェックポイントも紹介します。

「Geminiを使わせたいけれど、どこから整備すれば良いのかわからない」
そんな企業に向けて、今日から再現できる安全運用の型をまとめました。

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目次
  1. まず理解しておきたい ― Geminiの安全性の“前提”と中小企業が誤解しやすいポイント
    1. Geminiのデータはどこまで安全?(Google公式仕様のわかりやすい整理)
      1. ● 学習に用いられない(Business / Enterprise)
      2. ● データはすべて暗号化されて保存・通信される
      3. ● データ保持の仕組みも透明性が高い
    2. 無料版と法人版でセキュリティが“まったく違う”理由
      1. ● 個人Googleアカウント使用は極めて危険
      2. ● なぜ「無料版利用の禁止」が必須なのか
    3. 中小企業が誤解しがちな3つのポイント
      1. ● 「Gemini自体が安全」=「社内運用も安全」ではない
      2. ● 設定ミス・誤入力こそ最大のリスク
      3. ● 社員の勝手利用(シャドーAI)が最も危険
  2. 情報漏洩の80%は“社内利用ルールの不備”から起きる ― 中小企業のよくある失敗例
    1. ケース① 個人アカウントでGeminiを使っていた(シャドーAI問題)
    2. ケース② プロンプトに顧客名簿を貼り付けるミス
    3. ケース③ 退職者・休職者のアカウント管理ミス
    4. ケース④ ファイル共有の権限設定ミスで社外に漏れる
  3. 中小企業がGeminiを安全に利用するための「必須セキュリティ設定」完全ガイド
    1. 管理コンソールで必ず設定すべき項目
      1. ● 外部共有の制限
      2. ● 利用可能アプリの制御
      3. ● Googleドライブの共有ポリシー
      4. ● 識別情報との紐づけ
    2. Gemini for Workspace の利用制限(グループ・部門単位)
      1. ● ロールごとの利用範囲例
    3. プロンプトデータの扱いと権限制御の具体例
      1. ● 1. 貼り付け禁止データを定義する
      2. ● 2. プロンプトの“粒度”を決める
      3. ● 3. 編集権限・閲覧権限を制御する
    4. 管理者が“オンにすべき/オフにすべき”設定一覧(チェックリスト付)
      1. ✔ オンにすべき設定
      2. ✔ オフまたは制限すべき設定
  4. 入力禁止情報とプロンプトガイドライン ― 社員が誤って漏洩しないための“社内ルール化”
    1. Geminiに絶対入力してはいけない情報の具体例
      1. ● 個人情報(PII)
      2. ● 顧客リスト・営業リスト
      3. ● 契約書・機密書類
      4. ● コードやAPIキー
    2. 社内向け「OK/NGプロンプト例」テンプレート
      1. ✔ OKプロンプト例(安全に使えるケース)
      2. ✖ NGプロンプト例(絶対避けるべきケース)
    3. 誤入力・誤生成を防ぐための“プロンプトチェックリスト”
      1. ✔ プロンプト入力前チェック(3秒ルール)
      2. ✔ プロンプト入力後チェック(出力の確認)
  5. 部門別・目的別で見る『安全なGemini活用モデル』
    1. 営業部門:顧客情報の扱いに注意しつつ生成AIを使う方法
    2. 総務・経理:機密データを扱う部署のNGライン
  6. マーケ部門:情報の公開範囲を意識したプロンプト構築
    1. 情シス:管理者が知るべきAIガバナンス
      1. ✔ 押さえるべきポイント
    2. 部門別・目的別で見る『安全なGemini活用モデル』
      1. 営業部門:顧客情報の扱いに注意しつつ生成AIを使う方法
      2. ✔ 安全に使える業務例
    3. ✖ NG業務(情報漏洩が起きやすい領域)
      1. ✔ 営業部門向け“安全プロンプト例”
    4. 総務・経理:機密データを扱う部署のNGライン
      1. ✔ 安全に使える業務例
      2. ✖ NG業務例(絶対に避けるべき領域)
      3. ✔ 総務・経理向けの安全プロンプト例
    5. マーケ部門:情報の公開範囲を意識したプロンプト構築
      1. ✔ 安全に使える業務例
      2. 基本的に「公開できる内容」に限れば安全です。
      3. ✖ NG業務例
      4. ✔ マーケ向けの安全プロンプト例
    6. 情シス:管理者が知るべきAIガバナンス
      1. ✔ 押さえるべきAIガバナンス項目
  7. Gemini導入の成功は“設定 × 運用 × 教育”の3点セットで決まる
    1. なぜ教育をしないと情報漏洩が起きるのか(実例ベース)
      1. ● 例①:社員が「個人情報を貼るのはダメ」だと知らなかった
      2. ● 例②:AIの出力を“鵜呑み”にして誤情報を社外提出
      3. ● 例③:禁止情報の“線引き”が曖昧なまま利用が進む
      4. ● 例④:シャドーAI(勝手利用)が止まらない
    2. H3:生成AI教育で必ず扱うべき7つのテーマ
      1. ① 誤入力(プロンプトミス)
      2. ② セキュリティ区分(情報分類)
      3. ③ プロンプト構築の基礎
      4. ④ 出力検証(ファクトチェック)
      5. ⑤ 情報更新性(AIの“知識の鮮度”)
      6. ⑥ 引用(著作権・学術的引用の扱い)
      7. ⑦ 生成AIの限界(できること/できないこと)
    3. 研修を実施した企業の生産性向上データ(定量+ケース)
      1. ● 生産性向上データの例(※匿名の平均値)
      2. ● ケース例(簡易化)
      3. ある中小企業(製造業)のケース
  8. まとめ ― 安全に使えばGeminiは“中小企業の生産性を底上げする武器”になる

まず理解しておきたい ― Geminiの安全性の“前提”と中小企業が誤解しやすいポイント

GeminiはGoogleが長年培ってきたセキュリティ基盤の上に構築されており、 法人向けの「Gemini for Google Workspace」では高い安全性が確保されています。
ただし、仕組みそのものが安全でも、社内運用の不備によって 情報漏洩が発生するケースは少なくありません。

まずは、Geminiのセキュリティに関する“正しい前提”を押さえましょう。

Geminiのデータはどこまで安全?(Google公式仕様のわかりやすい整理)

● 学習に用いられない(Business / Enterprise)

Gemini for Google Workspace では、 ユーザーが入力したデータがモデルの再学習に利用されません
生成AI利用時に最も懸念される「データが勝手に学習されるのでは?」
というリスクは、法人版では明確に排除されています。

※無料版や個人向け版とは扱いが異なるため、ここは後述します。

● データはすべて暗号化されて保存・通信される

Workspace のデータは、 保存時と送信時の両方で暗号化(Encryption)されます。
クラウド上で処理される情報も Google 基準のセキュリティ規格に沿い、 外部からの不正アクセスに対して強固に保護されています。

● データ保持の仕組みも透明性が高い

Google Workspace の利用データは、 企業の管理者が定めたポリシーに従って管理されます。
データの保持期間や削除も管理者側で制御できるため、 「どこにデータが残り、誰が見られるのか」が明確です。

無料版と法人版でセキュリティが“まったく違う”理由

Geminiは、無料版(個人Googleアカウント)と法人版(Workspace)では
データの取り扱いが大きく異なります。
中小企業では、この違いを正しく理解していないケースが多く、 それが情報漏洩の“盲点”になっています。

● 個人Googleアカウント使用は極めて危険

社員が個人アカウントでGeminiを使うと、 会社が管理できない領域で情報が扱われることになります。

  • 誰が何を入力したか追跡できない
  • データ削除ができない
  • セキュリティ設定が適用されない

つまり、会社としては“完全に管理不能”な状態です。

● なぜ「無料版利用の禁止」が必須なのか

無料版は法人向けの保護が適用されず、 入力内容が学習に使われる可能性もあります。

そのため中小企業では、 「社員が個人アカウントでGeminiを使うことを禁止」 するルールづくりが欠かせません。

ここを曖昧にすると、 社内ポリシーを作っても実態と乖離し、 後の事故につながります。

中小企業が誤解しがちな3つのポイント

Geminiの安全性は高いものの、 「仕組みの安全性」と「運用の安全性」はまったく別物です。 中小企業で特に誤解されやすいポイントを整理します。

● 「Gemini自体が安全」=「社内運用も安全」ではない

セキュリティ事故の多くは、 AIそのものの脆弱性ではなく、“使い方のミス”に起因します。
適切なルールや教育がなければ、 いくら安全性が高いサービスでも情報漏洩は起こり得ます。

● 設定ミス・誤入力こそ最大のリスク

中小企業で最も多いのが、

  • 共有設定の誤り
  • 社内ルールの不統一
  • 誤ったプロンプト入力

 といった“人的要因”による事故です。

とくにプロンプトへの情報貼り付けは、 注意しなければ誰でも起こし得るリスクです。

● 社員の勝手利用(シャドーAI)が最も危険

情シスや管理者が知らないうちに、 社員が個人アカウントでGeminiを使ってしまうケースは多発しています。
これは管理不能で、最も危険な利用形態です。

シャドーAIを放置すると、 ポリシー・ルール・ガイドラインが機能しなくなります。
企業としては、まずここを抑える必要があります。

このように、Gemini自体は安全性の高いサービスですが、 実際の運用では人・設定・ルールの不備がリスクを生みます。

情報漏洩の80%は“社内利用ルールの不備”から起きる ― 中小企業のよくある失敗例

Geminiは高いセキュリティ基盤を持つサービスですが、 中小企業で起きる情報漏洩の多くはツール側の欠陥ではありません
実際には、社内ルールの曖昧さや、設定・管理の不備が原因となります。

ここでは、実際の現場で起きやすい“典型的な事故例”を紹介します。
競合他社の記事ではあまり触れられない内容ですが、 中小企業では最も発生頻度の高いリスクです。

ケース① 個人アカウントでGeminiを使っていた(シャドーAI問題)

最も多いのが、「社員が個人のGoogleアカウントでGeminiを利用していた」
というシャドーAI問題です。
これは企業の管理範囲外で生成AIが使われるため、極めて危険です。

管理者から見える範囲にデータやログが残らず、

  • 何を入力したのか
  • どんな回答を得たのか
  • データがどこへ保存されたか

 をまったく把握できません。

さらに、個人アカウントでは法人向けの保護措置が適用されず、 プロンプト内容が学習に使われる可能性さえあります。

「便利だから」という理由で個人利用が進むと、 社内のルールやポリシーが形骸化し、大きな事故につながります。

ケース② プロンプトに顧客名簿を貼り付けるミス

次に多いのが、プロンプトに顧客名簿や契約書などの機密情報を “そのまま貼り付けてしまう”という誤入力です。

多くの担当者は、 「AIが分析するから、そのまま貼ったほうが便利」 と考えがちですが、これは重大なリスクになります。

  • 個人情報
  • 契約書の条文
  • 社外秘のコード
  • 内部資料

 などは、たとえWorkspace版でも入力には注意が必要です。

特に、顧客名簿などの“まとめて貼り付け”は 誤送信と同じレベルのセキュリティ事故になり得ます。

ケース③ 退職者・休職者のアカウント管理ミス

中小企業で意外と見落とされがちなのが、 退職者や休職者のアカウント管理です。

アカウントの無効化が遅れた場合、

  • 過去のメール
  • 共有ドライブ
  • Gemini の利用履歴

 などにアクセスできる状態が続く可能性があります。

特に、権限強めのアカウントを持つ担当者が退職した場合は、 “見られなくてよい情報”が残ったままになるケースもあります。

これは、セキュリティ事故の前兆としてよく見られる状態で、 企業規模に関わらず発生しやすい問題です。

ケース④ ファイル共有の権限設定ミスで社外に漏れる

Googleドライブの共有設定ミスは、 クラウドサービス全般で最も多い事故のひとつです。

特に中小企業では、 「誰がどのフォルダをどこまで共有しているのか」 が管理されていないケースが多く、
結果として社外ユーザーにファイルが共有される例も見られます。

また、共有ドライブとマイドライブの使い方が混ざっている企業では、 意図せず外部共有がオンになってしまう事故も発生します。

Geminiはドライブと密接に連携するため、 権限管理のミスがそのまま情報漏洩に直結します。

これらの事故例に共通するのは、 “ツールの問題ではなく、社内ルールと教育の不足”です。

安全に生成AIを活用するには、 担当者の知識と社員の理解を揃える“知識の標準化”が欠かせません。

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中小企業がGeminiを安全に利用するための「必須セキュリティ設定」完全ガイド

中小企業がGeminiを安全に運用するには、 Google Workspace 管理コンソールでの設定が重要です。
ただし、Google公式の管理項目は専門的な表現が多く、 「何を、どこまで設定すれば良いのか」が分かりにくいのも事実です。

ここでは、リスクを最も確実に下げる設定だけに絞り、 “再現可能な粒度”で必要な項目を整理します。

管理コンソールで必ず設定すべき項目

● 外部共有の制限

外部共有はセキュリティ事故の原因になりやすく、 中小企業では必ず制御しておくべき設定です。

特に次の3点をチェックします:

  • 外部ユーザーとの共有を「制限」または「禁止」にする
  • 共有リンクのデフォルトを「社内限定」に設定する
  • 高度な共有設定を管理者が一元管理できる状態にする

これにより、意図せず社外にファイルが共有されるリスクを避けられます。

● 利用可能アプリの制御

Google Workspace では、 部署・組織単位で利用できるサービスを制御できます。

Gemini関連の設定では次を見直しましょう。

  • Gemini を利用できる部門/できない部門を明確にする
  • NotebookLM や Vertex AI など高度機能の利用範囲を限定する
  • 勝手に追加されているアプリケーションがないか確認する

不必要なアプリが利用可能なままだと、 意図しないデータ連携が起きる可能性があります。

● Googleドライブの共有ポリシー

ドライブはGeminiと密接に連携するため、 ここが曖昧だと情報漏洩リスクが一気に高まります。

確認すべき項目は次のとおりです:

  • 共有ドライブを基本とし、マイドライブへの重要データ保存を避ける
  • 特定フォルダへ“外部共有禁止”を設定する
  • ビジネスパートナーなど“許可ドメイン”を明示する
  • オーナー権限を部門横断で管理しない

共有設定の混乱は中小企業で最も起きやすい事故要因です。

● 識別情報との紐づけ

Geminiの利用ログやアクセス履歴は、
ユーザーの識別情報(メールアドレス)と紐づいて管理されます。

次の設定を必ず行いましょう。

  • 社員ごとに固有アカウントを付与する
  • 共有アカウントでGeminiを利用させない
  • ログインログの取得を有効化する
  • 退職・休職者のアカウントを迅速に無効化する

これにより「誰が、どの情報にアクセスしたのか」が明確になります。

Gemini for Workspace の利用制限(グループ・部門単位)

Geminiは便利な反面、扱える情報の幅が広いため、 “全社員に一律で使わせる”運用は非常に危険です。

中小企業では、次のように部門ごとに利用範囲を整理すると安全性が高まります。

● ロールごとの利用範囲例

  • 経理・財務部門
     → 機密情報が多いため、使用範囲を限定。
     → 情報貼り付けは禁止、文章作成補助のみ許可。
  • 営業部門
     → 顧客情報の扱いルールを明確化。
     → 提案資料作成やメール草案などに活用。
  • 総務部門
     → 社外秘資料の扱いに注意しつつ、事務業務で活用。
  • 情シス部門
     → 管理者としてガイドライン策定・チェック。

Gemini for Workspace は、 組織単位グループ単位で利用制御ができるため、 中小企業でも導入リスクを最小化できます。

プロンプトデータの扱いと権限制御の具体例

中小企業で事故が多いのが「プロンプト入力の誤り」です。

安全運用のポイントは次の3つです。

● 1. 貼り付け禁止データを定義する

例:

  • 顧客名簿
  • 契約書
  • 社員の個人情報
  • システム構成図
  • APIキー・アクセス情報

● 2. プロンプトの“粒度”を決める

  • 全文ではなく、要約して記述する
  • 固有名詞を置き換える
  • 内部情報は表現を抽象化する

● 3. 編集権限・閲覧権限を制御する

  • 生成AIのアウトプットも「社内文書」扱いにする
  • 作成者以外が編集できないよう制御する
  • リビジョン(履歴)を残す

特に「貼り付け禁止データ」の明文化は、 社員の誤操作を確実に減らせるため必須です。

管理者が“オンにすべき/オフにすべき”設定一覧(チェックリスト付)

以下は中小企業向けに最適化した セキュリティ設定チェックリスト(保存版)です。

✔ オンにすべき設定

  • 組織単位の外部共有制限
  • ログ取得の有効化
  • 二段階認証
  • 管理者によるアプリ利用制限
  • データ分類・ラベル付け
  • 共有ドライブのアクセス管理

✔ オフまたは制限すべき設定

  • マイドライブでの外部共有
  • 社員によるアプリ追加の許可
  • 個人アカウントでの業務利用
  • 不要なGemini関連サービス
  • 社外ドメインへの無制限共有

このチェックリストを運用フローに組み込むだけでも、 情報漏洩リスクは大幅に下がります。

ここまで見てきたように、 Google Workspace は強力な管理機能を備えていますが、 設定ミスがあれば情報漏洩に直結します。

特に中小企業では「どの項目をどう設定すべきか」が分かりづらく、 独力では正しい運用ルールを整備しにくいのが実情です。

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入力禁止情報とプロンプトガイドライン ― 社員が誤って漏洩しないための“社内ルール化”

中小企業で最も多い情報漏洩は、 Gemini の仕様ではなく 「社員の誤入力」 です。 とくに生成AIは文章量が多いほど便利に見えるため、 “つい丸ごと貼ってしまう”事故が起こりやすくなります。

そのため、企業としては「何を入力してよいか/ダメか」を 明確にルール化しておく必要があります。

以下では、中小企業でもそのまま使える 具体的な禁止情報・OK/NG例・チェックリスト を提示します。

Geminiに絶対入力してはいけない情報の具体例

Gemini for Google Workspace は安全性が高いとはいえ、 “入力しない方が良い情報”は存在します。
これは Google が推奨する一般方針とも一致します。

次のデータは原則として 「貼り付け禁止」 とすべきです。

● 個人情報(PII)

  • 氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • 生年月日
  • マイナンバー
  • 従業員リスト

これは情報漏洩リスクが最も大きく、社外に渡った場合の影響も深刻です。

● 顧客リスト・営業リスト

  • 顧客名簿(CSV/Excel)
  • CRMデータ
  • 過去の案件情報

これらは企業の“最重要資産”であり、 ただの誤入力でも重大事故となります。

● 契約書・機密書類

  • NDA(秘密保持契約)
  • 取引先契約書
  • 価格表・見積資料
  • 社内制度資料
  • 事業戦略・M&A関連資料

全文を貼るのは絶対に避けるべきです。

● コードやAPIキー

  • アプリのソースコード
  • APIキー
  • アクセストークン
  • インフラ接続情報
  • パスワードや認証情報

技術者がついやってしまいがちですが、 これらは貼った時点でアウトです。

社内向け「OK/NGプロンプト例」テンプレート

AI経営メディアらしく、 “そのまま社内ルールに貼れる”テンプレートを提示します。

✔ OKプロンプト例(安全に使えるケース)

例1:要約依頼
「以下の社内研修資料を要約してください。(固有名詞は伏せています)
・目的:新システム導入説明
・対象:営業部」

例2:提案文の改善依頼
「この文章を“丁寧で読みやすい表現”に書き換えてください。
内容はフィクションとして扱って問題ありません。」

例3:業務マニュアルの構成案作成
「顧客対応マニュアルの構成案を作ってください。
内容は一般的な小売業を想定してください。」

✖ NGプロンプト例(絶対避けるべきケース)

例1:顧客データの貼り付け
「この顧客名簿をもとに、営業メール文を作成してください。」

例2:契約書全文の貼り付け
「添付の契約書を簡単に説明してください。」

例3:コード貼り付け
「以下のコードの改善を提案してください。(APIキー含む)」

例4:固有名詞そのまま
「〇〇株式会社向けの提案資料を作成してください。
売上はXX億円で、担当者は△△さんです。」

誤入力・誤生成を防ぐための“プロンプトチェックリスト”

プロンプト入力の事故を減らすには、 「送信前に3秒チェックする習慣」が最も効果的です。

以下は全社員に配布できるチェックリストです。

✔ プロンプト入力前チェック(3秒ルール)

  • 個人情報を貼っていないか
  • 固有名詞を書いていないか
  • 社内限定資料の全文を貼っていないか
  • 要約前に情報を“抽象化”しているか
  • 本当に必要な情報だけに絞っているか

✔ プロンプト入力後チェック(出力の確認)

  • 機密情報が出力に混じっていないか
  • 社外公開して問題ない内容か
  • 推測や誤情報が含まれていないか
  • 書式や文体が適切か

プロンプトの安全運用は、 「ルールをつくる」+「社員に浸透させる」
の両方が揃わなければ機能しません。

当社では、中小企業向けに プロンプトの安全利用ルールを“そのまま導入できる形”で作成する研修
を提供しています。

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部門別・目的別で見る『安全なGemini活用モデル』

中小企業は部署ごとに扱う情報の種類が大きく異なるため、 Gemini の利用方法も部門ごとに最適化する必要があります。 ここでは、現場で実際に起きるケースを前提に、 最も安全で実務的な活用方法を紹介します。

営業部門:顧客情報の扱いに注意しつつ生成AIを使う方法

営業部門は顧客データを多く扱うため、 Geminiの利用範囲を「顧客情報に触れない業務」に限定します。

安全に使える業務例

  • 提案資料の構成案作成
  • 営業メールの文章チェック
  • 営業トークスクリプト作成
  • ナレッジ共有資料の改善

注意点

  • 顧客名・案件名を入れない
  • “内容の抽象化”を徹底する
  • 営業日報の全文貼り付けは禁止

総務・経理:機密データを扱う部署のNGライン

総務・経理は会社の基盤データを扱うため、 最も利用範囲を限定すべき部署です。

安全に使える業務例

  • 社内文書の文体修正
  • 文章テンプレート作成
  • 手続き説明文の改善
  • 社内ルール文書の草案作成

NGライン

  • 給与情報
  • 労務管理データ
  • 契約書原本
  • 決算資料

マーケ部門:情報の公開範囲を意識したプロンプト構築

マーケ部門は情報発信が多いため、 公開情報/非公開情報の線引きが最重要です。

安全に使える業務例

  • ブログ構成案
  • 広告文案の改善
  • ペルソナ設計
  • SNS投稿原稿の校正

注意点

  • 社内未公開データの貼り付けは禁止
  • 企画書の全文貼り付けは避ける
  • 実名や金額情報を不要に使わない

情シス:管理者が知るべきAIガバナンス

情シスは、生成AIの利用を“管理する側”として 以下の視点が必須です。

✔ 押さえるべきポイント

  • 利用可能アプリの制御
  • 外部共有の管理
  • プロンプト禁止事項の明文化
  • 社内教育の設計
  • ログ監査体制の構築
  • 部署ごとの利用範囲設計

Geminiの管理は一度設定すれば終わりではなく、 継続的なチェックと改善が不可欠です。

部門別・目的別で見る『安全なGemini活用モデル』

Geminiの活用方法は、部署ごとに扱う情報の性質が大きく異なります。
そのため、中小企業では「全社員が同じように使う」という運用は セキュリティ面で非常にリスクが高いといえます。

ここでは、主要な4つの部門を例に、 安全に使える業務・避けるべき業務・プロンプト例を示します。
“そのまま社内ガイドラインに転用できる粒度”でまとめています。

営業部門:顧客情報の扱いに注意しつつ生成AIを使う方法

営業部門は顧客データを扱うため、 もっとも誤入力リスクが高い部門のひとつです。

ただし、情報の抽象化さえ徹底すれば、 営業の生産性を大きく高められる領域でもあります。

✔ 安全に使える業務例

  • 商談資料の構成案作成
  • 営業メールの文体改善
  • 提案書の骨子作成
  • 営業トーク・ロールプレイの文章生成
  • 資料の要約・読みやすさ向上

これらは顧客固有情報を含めずに利用できます。

✖ NG業務(情報漏洩が起きやすい領域)

  • 顧客名簿の貼り付け
  • CRMデータのコピペ
  • 実名・案件名・担当者名を入れたプロンプト
  • 見積書・契約条件をそのまま貼り付け

顧客情報が一行でも入ると、 途端に情報漏洩リスクが跳ね上がります。

✔ 営業部門向け“安全プロンプト例”

OK例:
「BtoBサービスの提案資料を作りたいです。
製品の特徴は以下の3点だけをもとに構成案を作成してください。
・業務効率化
・データのリアルタイム可視化
・サポートの手厚さ」

NG例:
「A社(担当:田中様)向けの提案資料を作ってください。
A社の売上は○億円、ニーズは△△です。」

総務・経理:機密データを扱う部署のNGライン

総務・経理は従業員情報・給与・契約など 機密性の極めて高いデータを扱うため、 利用範囲のコントロールが重要です。

✔ 安全に使える業務例

  • 社内規程の文章修正
  • 手続き説明資料の書き換え
  • 社内文書のテンプレ作成
  • 定型メールの文章改善

これらは個人情報を含めずに処理できます。

✖ NG業務例(絶対に避けるべき領域)

  • 給与一覧の貼り付け
  • 労務管理データの入力
  • 契約書全文をコピーして分析依頼
  • 取引先の契約条件をプロンプトへ記載

これらは“小さな誤入力”でも大事故につながります。

✔ 総務・経理向けの安全プロンプト例

OK例:
「入社手続きマニュアルの説明文を、
専門用語を使わず分かりやすく改善してください。」

NG例:
「この給与一覧を要約して、昇給傾向を分析してください。」

マーケ部門:情報の公開範囲を意識したプロンプト構築

マーケティングは外向けの業務が多く、 公開情報/未公開情報の線引きが曖昧になりやすい部門です。

しかし、マーケ部門は生成AIとの相性が良く、 使い方を誤らなければ大きな成果が期待できます。

✔ 安全に使える業務例

  • ブログ・SNS投稿文案の作成
  • ペルソナ作成
  • 競合調査の概要整理
  • 広告コピー案の作成
  • 企画書の骨子づくり

基本的に「公開できる内容」に限れば安全です。

✖ NG業務例

  • 社内未公開の数字(売上・原価・CV数)を貼り付け
  • 顧客や取引先の実名
  • 新規事業の詳細
  • 発表前キャンペーンの内部資料

マーケ部門は「まだ公開していない内容」を
うっかり使ってしまう事故が多い点に注意が必要です。

✔ マーケ向けの安全プロンプト例

OK例:
「中小企業向けの生産性向上記事の構成案を提示してください。
テーマは『業務効率化』です。」

NG例:
「今期の広告費データを貼るので、改善案を教えてください。」

情シス:管理者が知るべきAIガバナンス

情シス部門(管理者)は、 “使う側”ではなく“使わせる側”としての責任が発生します。

Geminiを組織に定着させるためには、 次のガバナンス項目を押さえる必要があります。

✔ 押さえるべきAIガバナンス項目

  • 利用可能アプリの制御(部署別の利用許可)
  • 外部共有の統制(誤共有の防止)
  • プロンプト禁止事項の策定(社内ガイドライン化)
  • ログ監査の仕組みづくり
  • 退職者アカウントの管理フロー整備
  • 研修・啓蒙活動の実施
  • 情報分類(Confidential/Restricted/Public)の明確化

情シス部門がルールを整えない限り、 生成AIは“便利だが危険なツール”として放置されてしまいます。

Gemini導入の成功は“設定 × 運用 × 教育”の3点セットで決まる

Geminiを安全に活用するために必要なのは、 「設定」だけでもなく、「ルール」だけでもなく、「教育」だけでもありません。

3つが揃って初めて、社内で安全かつ効果的に生成AIが運用できます。
特に中小企業では、教育の欠如が情報漏洩の最大要因です。

なぜ教育をしないと情報漏洩が起きるのか(実例ベース)

中小企業で起きる情報漏洩の多くは、 技術的な問題ではなく “誤解”と“誤操作” です。

実際の現場でよく起きる例は以下のとおりです。

● 例①:社員が「個人情報を貼るのはダメ」だと知らなかった

研修をしていない企業では、“危険な情報”の基準がバラバラです。
その結果、以下のような事態が起こります。

  • 顧客リストを丸ごと貼り付ける
  • 契約書の全文をコピペする
  • 社内未公開の売上データを入力する

ルールを知らなければ、守りようがありません。

● 例②:AIの出力を“鵜呑み”にして誤情報を社外提出

生成AIは便利ですが、 常に正確な情報を返すわけではありません。

教育がなければ、出力をそのまま利用してしまい、 間違った情報が社外文書に混ざるリスクがあります。

● 例③:禁止情報の“線引き”が曖昧なまま利用が進む

教育がないと、社員同士で認識がズレます。

  • Aさん「これくらい貼ってもいいだろう」
  • Bさん「本当はダメなのでは…?」

この状態で運用を続けると、 組織として事故を防ぐことができません。

● 例④:シャドーAI(勝手利用)が止まらない

社員が“正しい使い方”を知らないと、 便利な個人アカウントのAIを使い始めます。

これは、社内ルールが浸透していない企業で高頻度で発生します。

教育不足は、設定やルールを一切機能させない致命的な要因です。

H3:生成AI教育で必ず扱うべき7つのテーマ

生成AI研修では、以下の7項目は“必須項目”です。
この7つを押さえるだけで、情報漏洩リスクは大幅に低減します。

① 誤入力(プロンプトミス)

  • 何を入力してはいけないか
  • どのように抽象化するか
  • 実例による学習

② セキュリティ区分(情報分類)

  • 機密/社外秘/公開情報の違い
  • データ分類ごとの利用可否
  • 情報ラベル付けの方法

③ プロンプト構築の基礎

  • 良いプロンプト/悪いプロンプト
  • 固有名詞を避ける方法
  • 情報を安全に与える書き方

④ 出力検証(ファクトチェック)

  • 誤情報への対処
  • 引用や根拠の確認方法
  • 外部提出前のチェック方法

⑤ 情報更新性(AIの“知識の鮮度”)

  • モデルが最新ではない理由
  • 社内の正しい知識源を参照する方法

⑥ 引用(著作権・学術的引用の扱い)

  • 出力の著作権リスク
  • 外部資料の引用ルール

⑦ 生成AIの限界(できること/できないこと)

  • AI特有の“自信満々な誤回答”
  • 推測・創作が混ざる理由
  • 使ってはいけないケース

これらの“理解+スキル”を横並びで習得することで、 はじめて組織として安全運用が成立します。

研修を実施した企業の生産性向上データ(定量+ケース)

SHIFT AI の支援先企業では、 生成AI研修を受けた後に次の変化が確認されています。

● 生産性向上データの例(※匿名の平均値)

  • 文書作成時間:35〜60%削減
  • 会議準備時間:40%削減
  • 社内問い合わせ削減:25%削減
  • プロンプトミスによる再作業:50%以上減少

● ケース例(簡易化)

ある中小企業(製造業)のケース

  • 導入前:社員がAIの使い方を理解できず、誤入力多発
  • 導入後:研修で安全ルールとプロンプト基礎を統一
  • 結果:
     ・書類作成の平均時間が半減
     ・情報漏洩リスクゼロ
     ・社内のAI活用が「標準化」

この“標準化”によって組織全体の生産性が向上します。

より詳しい理論背景は、 下記の記事で詳しく解説しています。

生産性向上の理論背景はこちら
設定を整え、運用ルールを作っただけでは Geminiの安全活用は定着しません。

最後に必要なのは、社員全員の“理解と行動の統一”です。

生成AI研修を導入することで、 生産性向上とリスク削減の両方を同時に実現できます。

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まとめ ― 安全に使えばGeminiは“中小企業の生産性を底上げする武器”になる

Geminiは、適切な設定と運用ルールさえ整えておけば、 中小企業でも安全に活用できる強力なツールです。
重要なのは、ツールそのものの安全性ではなく、 「どう使うか」を社内で標準化できているかという点です。

外部共有の制御やプロンプトのガイドライン、 そして社員教育を組み合わせれば、 情報漏洩のリスクは大幅に減らせます。

同時に、文章作成や資料準備、業務ナレッジの整理など、 日々の業務効率を大きく改善する効果も得られます。
正しい理解と適切な運用があれば、 Geminiは生産性向上の中心となる“武器”になります。まずは、社内で安全に使える環境づくりを進めることが、 生成AI活用の第一歩です。

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Q
中小企業でもGeminiを安全に使えますか?
A

はい、正しい設定と運用ルールがあれば安全に活用できます。
特に Google Workspace(Business/Enterprise)のGeminiは
法人向けのセキュリティ仕様になっており、
入力データがモデル学習に使われることもありません。
ただし、運用ルールや社員教育が不十分だと事故につながる点には注意が必要です。

Q
無料版のGeminiを社員に使わせるのは危険ですか?
A

 個人アカウントでは、

  • 入力内容が学習に使われる可能性
  • ログ追跡が不可

企業側で管理不能
という大きなリスクがあります。
必ず Workspace 管理下のアカウントで利用させる必要があります。

Q
どんな情報はGeminiに入力してはいけませんか?
A

個人情報・顧客リスト・契約書・コード類は貼り付け禁止です。
とくに中小企業では、顧客名簿や契約情報の“丸ごと貼り付け”による事故が多く、
安全運用の観点でも最大の注意が必要です。

Q
部署ごとに利用範囲を分けたほうが良いですか?
A

 はい、必須です。
営業・経理・総務・マーケなど、扱う情報の機密度が異なるため、
部署の特性に合わせて

  • 利用できる機能
  • 入力してよい情報

禁止ライン
を明確にすることが重要です。

Q
Gemini を使う前にまず取り組むべき設定は何ですか?
A

部共有の制御・利用可能アプリの制限・権限管理の整備が最優先です。
管理コンソールでの初期設定が甘いと、
シャドーAIや共有設定ミスによる情報漏洩が発生しやすくなります。

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