Copilot Studioの導入を検討する企業が急増していますが、「どのライセンスを選べばいいのか分からない」という声が後を絶ちません。
ライセンス選定を誤ると、年間数百万円のコスト増や、導入後に「使いこなせない」という事態に陥るリスクがあります。
本記事では、Copilot Studioの3種類のライセンス体系から、自社に最適なプランの選び方、料金の仕組み、そして導入後に多くの企業が直面する課題とその解決策まで徹底解説します。ライセンス契約だけでは終わらない、真の導入成功への道筋が見えてきます。
Copilot Studioの基本機能や特徴を知りたい方は、まず「Copilot Studioとは?できること・特徴・料金・導入効果を徹底解説」をご覧ください。
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Copilot Studioのライセンス体系|3種類のプランと料金
Copilot Studioには、利用目的や規模に応じて選べる3種類のライセンスプランが用意されています。
それぞれ料金体系や提供機能が異なるため、自社のニーズに合ったプランを選ぶことが重要です。
スタンドアロンライセンスとは
月額29,985円で25,000メッセージまで利用できる定額制のライセンスです。
独自のチャットボットを構築し、社内外のさまざまなチャネルで公開したい企業に最適なプランとなります。外部Webサイトやモバイルアプリへの展開も可能です。
PowerPlatformのプレミアムコネクタやカスタムコネクタをフル活用でき、Dataverse、SharePoint、Salesforceなど1,500以上のサービスと連携できます。毎月25,000メッセージの容量が付与され、未使用分は翌月に繰り越されません。
従量課金制ライセンスとは
使用した分だけ支払う変動費型のライセンスプランです。
1Copilotクレジットあたり0.01ドルで課金され、月間の利用量に上限はありません。初期段階でメッセージ数の見積もりが難しい場合や、小規模なPoC(概念実証)から始めたい企業に向いています。
利用にはAzureサブスクリプションが必要で、Power Platform管理センターから課金ポリシーを設定します。スタンドアロンライセンスと同等の機能が使えますが、予算管理には注意が必要です。
Microsoft 365 Copilot付帯ライセンスとは
月額4,497円でMicrosoft 365 Copilotを拡張できる使用権です。
Microsoft 365 Copilotライセンスに含まれており、追加料金なしでCopilot Studioの機能を利用できます。主な用途はプラグインや拡張機能の開発で、Microsoft 365 Copilotをカスタマイズして業務に最適化したい企業向けです。
ただし、公開先はTeams、SharePoint、Microsoft 365 Copilotに限定されます。スタンドアロンのチャットボット作成はできないため、用途を明確にした上で選択しましょう。
【比較表】3つのプランの違い
以下の表で、3つのライセンスプランの主な違いを確認できます。
項目 | スタンドアロン | 従量課金制 | M365 Copilot付帯 |
料金 | 29,985円/月 | 0.01ドル/クレジット | 4,497円/月(M365 Copilot内) |
メッセージ数 | 25,000/月 | 無制限(従量) | 無制限(M365内のみ) |
公開先 | 外部・内部すべて | 外部・内部すべて | Teams/SharePoint/M365のみ |
独自チャットボット作成 | ◯ | ◯ | × |
M365 Copilot拡張 | × | × | ◯ |
前提条件 | なし | Azureサブスクリプション | M365 Copilotライセンス |
2025年9月の重要な変更点として、従来の「メッセージ」という単位が「Copilotクレジット」に変更されました。料金計算方法に変更はなく、クラシック回答は1クレジット、生成型回答は2クレジットを消費します。
無料トライアルで試す方法
60日間すべての機能を無料で試せるトライアルライセンスが提供されています。
Copilot Studioにアクセスしてエージェントを作成できますが、エージェントの発行(公開)はできません。テストチャットパネルでの動作確認までが可能な範囲です。
ライセンスには「テナントライセンス」と「ユーザーライセンス」の2種類があります。テナントライセンスは組織全体でCopilotを利用するために必要で、ユーザーライセンスはCopilotを作成する担当者に割り当てるものです。
ユーザーライセンスは無料ですが、テナントライセンス(有料)を購入後に取得できます。Microsoft 365管理センターから作成者に割り当てましょう。
Copilot Studioライセンスの選び方|目的別診断フロー
自社に最適なライセンスを選ぶには、利用目的と想定される利用規模を明確にすることが重要です。ここでは、代表的な3つのケースごとに最適なプランを解説します。
チャットボットを構築したい場合
スタンドアロンライセンスを選ぶのが最適です。
社内FAQや顧客対応用のチャットボットなど、独自のCopilotを作成して公開したい場合に向いています。外部Webサイトやモバイルアプリへの展開が必要なら、このプラン一択です。
公開先に制限がないため、社内ポータルサイト、Teams、外部向けWebサイトなど、あらゆるチャネルで活用できます。PowerPlatformのプレミアムコネクタを使って業務システムと連携することも可能です。
Microsoft 365 Copilotを拡張したい場合
付帯ライセンスを選ぶことで追加コストを抑えられます。
既にMicrosoft 365 Copilotを利用している企業が、業務に特化したプラグインや拡張機能を開発したい場合に最適です。WordやExcel、Teamsなどの標準機能では対応しきれない業務ニーズをカスタマイズできます。
ただし、公開先はTeams、SharePoint、Microsoft 365 Copilot内に限定されます。外部チャネルへの展開予定がなく、社内向けカスタマイズだけで十分なら、このプランが最もコストパフォーマンスに優れています。
利用量が読めない場合
従量課金制から始めるのがリスクを最小化できます。
初めてCopilot Studioを導入する際、月間のメッセージ数を正確に予測するのは困難です。小規模なPoC(概念実証)や、段階的に利用を拡大していく計画なら、従量課金制が向いています。
利用量が少ない間はコストを抑えられ、増加してきたらスタンドアロンライセンスへの切り替えを検討できます。月間25,000メッセージを超える見込みが立った時点でプラン変更を検討しましょう。
ライセンス契約後に多くの企業が直面する3つの課題
ライセンスを契約しても、実際の活用段階で想定外の課題に直面する企業は少なくありません。導入前にこれらの課題を理解し、対策を講じることが成功のカギとなります。
【課題①】使いこなせる人材がいない
ライセンスがあっても操作できる人材がいないという問題が頻繁に発生します。
Copilot Studioはローコードツールですが、業務要件の整理やトピック設計、コネクタ連携など、一定のスキルが必要です。IT部門だけでは業務知識が不足し、現場部門だけでは技術面でつまずくケースが多く見られます。
推進担当者には、ツールの操作スキルだけでなく、業務プロセスの理解と設計力、そして社内調整力が求められます。これらを独学で習得するには時間がかかり、導入が停滞する原因になりかねません。
【課題②】セキュリティ設計ができない
データ接続時の権限管理やガバナンス体制の構築が大きな壁となります。
Copilotが社内の機密情報にアクセスする際、誰がどの情報を閲覧できるかを適切に設計する必要があります。SharePointやDataverseとの連携では、細かな権限設定を誤ると情報漏洩のリスクが生じかねません。
プレミアムコネクタを使用する場合、外部サービスとのデータ連携に関するセキュリティポリシーも策定しなければなりません。社内ガイドラインが不十分なまま運用を始めると、後から大きな問題に発展する可能性があります。
【課題③】社内展開が進まない
作成したCopilotが活用されず放置されるパターンが珍しくありません。
技術的には構築できても、社内への周知や利用促進、継続的な改善サイクルが回らないと定着しません。全社展開には推進体制の構築や、利用状況のモニタリング、フィードバックの収集と反映が不可欠です。
初期の熱意だけで進めると、担当者の異動や業務多忙により運用が止まってしまいます。持続可能な運用体制を最初から設計しておくことが重要です。
Copilot Studio導入を成功させる3ステップ
導入を成功に導くには、ライセンス選定から人材育成、運用体制整備まで、戦略的なアプローチが必要です。
以下の3ステップを順に実践することで、確実な成果につなげられます。
Step.1|最適なライセンスを設計する
利用目的を明確にし、適切なプランを選ぶことから始めましょう。
まず「誰が・何のために・どう使うか」を具体化します。社内FAQ対応なのか、顧客サポートなのか、業務プロセス自動化なのかによって、必要な機能と公開先が変わります。
次に段階的な導入計画を立てます。いきなり全社展開するのではなく、特定部門でのPoC、部門展開、全社展開というステップを踏むことでリスクを軽減できます。各段階でのコスト試算とROI(投資対効果)を明確にしておくことも重要です。
Step.2|活用人材を育成する
推進担当者に必要な3つのスキルを体系的に習得させる必要があります。
1つ目はCopilot Studioの操作スキルです。トピック作成、ナレッジ追加、コネクタ連携など、基本機能を使いこなせる技術力が求められます。
2つ目は業務設計・要件定義スキルです。現場の課題を整理し、Copilotで解決できる形に落とし込む力が必要となります。
3つ目は社内調整・プロジェクト推進スキルです。関係部署との連携や、経営層への報告、利用促進活動など、組織を動かす力が欠かせません。
独学での習得には限界があります。体系的な研修プログラムを通じて、実務で即活用できるスキルを短期間で身につけることが、導入成功の近道です。
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Step.3|運用体制を整備する
社内ガイドラインの策定とモニタリング体制の構築が長期的な成功を支えます。
利用ルールを明文化し、全社員が安心して活用できる環境を整えましょう。データ取り扱いの基準、承認フロー、セキュリティポリシーなどを明確にします。
継続的なモニタリング体制も欠かせません。利用状況やメッセージ消費量を定期的に確認し、問題の早期発見と改善につなげます。
Power Platform CoE(Center of Excellence)の構築も検討しましょう。推進チームを組織化し、ベストプラクティスの共有やガバナンス強化を進めることで、全社的な活用レベルが向上します。
まとめ|Copilot Studioライセンス選定と導入成功のカギ
Copilot Studioのライセンスは、利用目的と規模に応じて3つのプランから選べます。独自チャットボットを構築するならスタンドアロンライセンス、Microsoft 365 Copilotを拡張するなら付帯ライセンス、利用量が読めない初期段階なら従量課金制が最適です。
ただし、ライセンスを契約しただけでは成功しません。使いこなせる人材がいなければ、導入後に活用が停滞してしまいます。技術スキル、業務設計力、推進力を備えた担当者の育成が、真の導入成功には欠かせません。
全社展開を見据えた生成AI活用を実現するなら、体系的な研修プログラムの活用をご検討ください。

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Copilot Studioライセンスに関するよくある質問
- QCopilot Studioは無料で使えますか?
- A
60日間の無料トライアルが提供されており、すべての機能を試せます。ただし、トライアル期間中はエージェント(チャットボット)の作成とテストはできますが、公開(発行)はできません。本格的に運用するには、有料ライセンスの契約が必要です。
- Qメッセージ上限を超えたらどうなりますか?
- A
契約したメッセージ上限を超えると、機能が制限される可能性があります。自動的に追加課金されることはありませんが、エージェントの動作に影響が出る場合があります。継続利用には、追加のメッセージパック購入または従量課金制への切り替えが必要です。
- Qプラン変更は可能ですか?
- A
ライセンスプランの変更は可能ですが、手続きが必要です。スタンドアロンライセンスから従量課金制への切り替え、またはその逆も対応できます。変更のタイミングや移行手順については、Microsoft 365管理センターで確認しましょう。
- QMicrosoft 365 Copilotを持っていれば追加費用は不要ですか?
- A
用途によって異なります。Microsoft 365 Copilotの拡張やプラグイン開発のみなら追加費用は不要です。ただし、独自のスタンドアロンチャットボットを構築したい場合や、外部チャネルへ公開したい場合は、別途ライセンス契約が必要になります。
- Q従量課金とパッケージ、どちらを選ぶべきですか?
- A
月間の想定メッセージ数で判断しましょう。月間25,000メッセージ未満の利用見込みなら従量課金制が有利で、それを超えるならスタンドアロンライセンスがコスト効率に優れています。初期段階で利用量が読めない場合は従量課金制から始めるのが安全です。