「毎日の事務作業で手一杯、本来やるべき業務に集中できない」
「ツールを導入したけど、効率化の実感がない」

そんな悩みを抱える企業は少なくありません。特に、定型的な事務業務が多い組織では、ルーティンの処理に時間と人手が取られ、生産性が伸び悩む原因にもなります。

本記事では、

  • なぜ事務作業が増え続けるのか?
  • 減らすべき作業の見極め方
  • RPAやSaaS、業務整理を活用した実践的な削減アプローチ
  • ツール導入で失敗しないための注意点

まで、実務目線で解説します。

「ツール導入ありき」ではなく、自社に合った方法と進め方を見つけたいそんな方にとって、最初の一歩となる内容です。

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そもそも「事務作業を減らす」とは?目的とアプローチの全体像

「事務作業を減らす」とは、単に作業量を減らすことではありません。
目的は、生産性の高い仕事に人と時間を振り向けることにあります。

まずは、「事務作業とは何か」を明確にし、どのような領域で削減できるのか、そして“減らすべき理由”と“減らすための視点”を整理しておきましょう。

なぜ今、事務作業の見直しが注目されているのか

事務作業の削減は、単なる業務改善にとどまらず、
企業全体の競争力や人的リソースの有効活用に直結するテーマとして注目されています。

特に近年は、以下のような背景が後押しとなっています。

  • 人手不足の深刻化により、少人数で回す業務体制が求められている
  • 働き方改革や法令対応により、長時間労働の是正が必要になっている
  • デジタルツールの進化(DX)により、業務自動化のハードルが下がっている

これらの変化を踏まえ、今こそ「どの作業を残すべきか」を見直すことが求められています。

業務効率化と業務削減の違いとは?

事務作業の改善というと、「効率化」ばかりが注目されがちですが、それだけでは根本的な業務負担の軽減にはつながりません。

概念目的
業務効率化同じ作業をより速く、正確に行うツール導入、マニュアル整備、手順見直しなど
業務削減そもそもやらなくていい作業をなくす承認フローの簡略化、紙運用の廃止など

つまり、「効率化」よりも「削減」こそがインパクトの大きい手段であり、その両方を適切に使い分けることが鍵となります。

よくある事務作業の種類と“削減できる領域”

事務作業と一口に言っても、その中身は多岐にわたります。
以下のような定型業務の中に、「自動化」「簡略化」「廃止」できる作業が必ず含まれています。

  • 経費精算・出張申請・勤怠集計などの申請系業務
  • 会議日程調整・ファイル管理・社内メール対応などの調整系業務
  • 帳票作成・データ転記・入力業務などの処理系業務

中でも、ルールが明確で、繰り返し発生する・判断を伴わない作業は、削減・自動化の有力候補です。まずは、自社の業務の中からこうした対象を洗い出すことが出発点となります。

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まずやるべきは「業務の棚卸し」から

事務作業を減らすには、いきなりツール導入から始めるのではなく、まず「何をどれだけやっているのか」を可視化することが不可欠です。

業務の全体像を把握し、削減対象となる業務を見極める工程=業務棚卸しは、すべての効率化・自動化のスタートラインです。

定型業務と非定型業務の仕分け方

業務棚卸しでは、まず「定型業務」と「非定型業務」に分けることが重要です。

  • 定型業務:手順やルールが決まっており、反復性がある業務
     例:請求書発行、経費精算、月次レポートの作成など
  • 非定型業務:状況に応じて対応が変わる、判断を要する業務
     例:顧客からの問い合わせ対応、新規施策の立案など

「定型×頻度が高い×時間がかかる」業務は、真っ先に削減候補となるため、仕分けの段階で可視化しておくと、後の判断がスムーズになります。

業務フローを可視化する3つのステップ

1つひとつの業務を「作業単位」に分解し、以下の手順で棚卸しを進めましょう。

  1. 業務を書き出す
     部署ごとに「何のために、どの作業をしているか」をリスト化します。
  2. 作業の流れ(フロー)を図解する
     Excelやオンラインツールを使って、業務の前後関係・担当者・使用ツールを可視化。
  3. 作業量・頻度・負担感をスコアリングする
     どの業務が「時間がかかっていて、かつ面倒か」を把握し、優先順位を付ける。

このプロセスを通じて、“やめられる作業”と“ツールで代替できる作業”が明確になります。

「これはやめてもいい仕事」見極めチェックリスト

削減対象の見極めには、以下のような視点が有効です。

チェック項目該当する業務は…
誰の役に立っているか不明→廃止を検討
二重入力や重複作業がある→工程を統合or自動化
判断を必要としない作業→RPAやマクロでの自動化が可能
担当者が「惰性でやっている」→やめても支障がない可能性大

「とりあえず昔からやっている」「前任者から引き継いだまま」という作業こそ、削減・見直しの余地が大きい領域です。

事務作業を減らすための5つの代表的アプローチ

業務の棚卸しによって「減らせる事務作業」が明確になったら、次はそれに対してどのような手段で削減・効率化するかを検討していきます。

ここでは、企業でよく使われている5つのアプローチを紹介します。それぞれの特徴・メリット・注意点を把握し、自社に合った選択をしましょう。

①RPA導入で繰り返し作業を自動化

RPA(RoboticProcessAutomation)は、人が行っていたPC上の操作をソフトウェアロボットが代行する仕組みです。

向いている業務の例

  • 請求データの転記
  • 勤怠データの集計
  • 定型レポートの自動出力

メリット

  • 人為的ミスの削減
  • 24時間稼働が可能
  • 拡張性が高い

注意点

  • 導入にはルールの明確化と設計が必要
  • 業務が頻繁に変わる場合は運用コスト増に

②ExcelマクロやGoogleAppsScriptで内製自動化

小規模な業務には、ExcelマクロやGAS(GoogleAppsScript)といった軽量な自動化も有効です。

向いている業務の例

  • 社内報告書の自動作成
    フォルダ自動生成
  • メールテンプレート送信など

メリット

  • コストがかからず導入できる
  • 現場主導で内製しやすい

注意点

  • 担当者にスキルが必要
  • 属人化しやすく、引き継ぎ対策が必要

③業務プロセスを見直してムダを削る

「作業を自動化する」の前に、「そもそもやらなくていい作業では?」と見直すのも重要です。

見直し例

  • 二重承認を一本化する
  • 月次報告の頻度を見直す
  • 紙での回覧を廃止し、電子化する

メリット

  • 運用にコストがかからない
  • 自社にしかわからない“ムダ”を洗い出せる

注意点

  • 社内調整や説得が必要になるケースあり

④SaaSツールの導入で手間を一気に減らす

事務作業の多くは、専用SaaSの導入で大幅に効率化可能です。

代表的なカテゴリ

  • 経費精算(例:マネーフォワードクラウド経費)
  • 勤怠管理(例:KINGOFTIME)
  • 顧客管理・請求(例:Salesforce、freee)

メリット

  • 業務特化型のため導入後すぐに効果が出やすい
  • クラウド化でリモート対応もしやすい

注意点

  • 導入〜定着まで時間がかかる場合も
  • 機能過多で使いこなせないこともある

⑤アウトソーシング・BPOの活用

「自動化しづらい」「リソースが足りない」業務は、外部委託=BPOの活用も視野に入ります。

対象業務の例

  • データ入力
  • コールセンター業務
  • 単純な資料作成

メリット

  • 自社の人手をコア業務に集中できる
  • 短期的に効果が出やすい

注意点

  • 品質管理の仕組みが必要
  • 情報漏洩対策を含む契約リスク管理が必須

導入時によくあるつまずきと失敗を防ぐポイント

せっかく業務棚卸しをしてツールや自動化の導入を決めても、「現場が使わない」「効果が見えない」という声が上がることも少なくありません。

ここでは、実際によく起こるつまずきのパターンと、それを避けるために事前に押さえるべきポイントを解説します。

手段だけが独り歩きしないように「目的」を共有する

ツール導入で陥りがちなのが、「導入自体が目的になってしまう」ケースです。

RPA、SaaS、GASなど…どんなに便利な手段でも、「なぜこれを導入するのか?」「何の業務をどう変えるのか?」という目的が共有されていないと、現場にとっては他人事。

その結果、ツールが「使われないまま放置される」「効果検証されない」などの失敗につながります。

対策
導入前に「解決したい課題」「期待する成果」を関係者に共有し、評価基準も明確にしておきましょう。

現場が納得して使える「シンプルな設計」がカギ

実は、ツールそのものよりも、「使い勝手」や「運用ルールの複雑さ」が導入失敗の原因になっているケースが多数です。

  • フォーム入力項目が多すぎる
  • 権限設定が煩雑
  • マニュアルが分かりづらい
  • PC操作に慣れていない社員が困惑

これらは全て、「現場目線を無視した設計」の副作用です。

対策
導入時は“最小構成”からスタートし、現場と一緒に試行錯誤しながら改善していくスタイルが成功の近道です。

「教育」と「評価制度」にまで落とし込むことで定着する

事務作業を減らす取り組みは、ツール導入だけで終わりません。
「現場が使いこなせる」「活用が評価される」環境があってこそ、定着します。

  • 新しい仕組みに関する操作研修やマニュアル整備はセットで行う
  • 効率化への貢献を人事評価やKPIに組み込む

こうした工夫があるかどうかで、定着率には大きな差が出ます。

対策
単発の導入で終わらせず、「使いこなす人を育てる」ことまで含めた設計が必要です。

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ツール・仕組みを定着させ、継続的に改善するには?

事務作業を減らす取り組みは、「導入して終わり」ではなく「続けて育てる」ことが重要です。
定着しない仕組みは、結局もとの手作業に戻ってしまい、かえって非効率になることも。

ここでは、業務改善の成果を持続的に生み出し続けるための視点と、仕組み化のコツを解説します。

定着のカギは「現場主導で回る改善サイクル」

事務作業の改善を一過性に終わらせないためには、改善→運用→フィードバック→再改善というPDCAサイクルを、現場主導でまわせる体制が不可欠です。

  • 一部の担当者だけで完結しないように
  • 「困っていること」や「ムダに感じていること」を現場から吸い上げられる仕組みをつくる
  • 小さな改善でも評価し、共有できる文化を育てる

ポイント:“上からの指示”ではなく“現場の声”から始まる改善が、定着と持続の鍵を握ります。

ルールの“形骸化”を防ぐための見直し習慣

事務作業を効率化するルールやフローは、時間が経てば必ず現場とのズレが生じます。

  • 「本当は使われていないExcelマクロ」
  • 「担当者がいないと回らない設定」
  • 「例外処理が増えすぎて複雑化したワークフロー」

こうした“形骸化”を防ぐには、定期的な棚卸し・現場ヒアリング・プロセスの再設計が必要です。

ポイント:半年〜1年に一度は業務プロセスを見直す「習慣」を組織に根づかせましょう。

成功体験を社内で共有・展開する仕組みをつくる

「うまくいった施策」や「効率化できた成功体験」を、他部門に横展開することで、
組織全体の改善スピードが加速します。たとえば、

  • 月次で「業務改善共有会」を開催する
  • 社内ポータルに「改善事例ライブラリ」を作る
  • 改善提案にインセンティブをつける

改善活動を“特別なもの”にせず、日常業務の一部にする仕掛けが、継続の原動力になります。

ポイント:属人化させず、“仕組みで回す”文化形成を意識しましょう。

まとめ:事務作業の削減は「仕組み」と「文化」で根づかせる

日々の事務作業をただ減らすのではなく、ムダを見極め、業務を「仕組み化・最適化」していくことが、企業全体の生産性向上に直結します。

ポイントは以下の通りです。

  • 棚卸しと業務の可視化で、減らすべき作業を見つける
  • RPA・GAS・SaaS・BPOなど適切な手段で効率化を図る
  • 現場視点・定着・継続改善まで含めて考えることで、本当の成果につながる

とはいえ、「どの方法を選べばいいか分からない」「ツール導入の進め方が不安」という方も多いでしょう。

SHIFT AIでは、業務棚卸しのやり方から、生成AI・RPA等の活用、定着化までを見据えた
法人向けの「業務効率化×生産性向上」研修を多数ご提供しています。

事務作業を削減したい企業様向けに、具体的な研修プログラムや導入事例をまとめた資料をご用意しております。

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Q
どんな事務作業が削減の対象になりますか?
A

削減対象となるのは、「定型的で、ルールが明確で、繰り返し発生する作業」です。
たとえば、データ入力・申請処理・請求書発行・定型レポート作成などが該当します。
まずは業務棚卸しを行い、削減できる領域を可視化することが重要です。

Q
ツール導入よりも先にやるべきことは何ですか?
A

はい、いきなりツールに頼る前に、業務の洗い出し(棚卸し)と仕分けが必要です。
「そもそもその作業は必要か?」「簡略化できないか?」といった視点で見直すことで、
本当に導入すべき手段が見えてきます。

Q
RPAやSaaSなどのツールは中小企業にも使えますか?
A

もちろん可能です。
現在は月額数千円で始められるクラウド型SaaSも多く、中小企業の導入実績も増えています。
特に少人数のバックオフィス業務には効果が高く、人的リソース不足を補う手段として有効です。

Q
属人化している業務を減らすにはどうすればいい?
A

属人化解消には「標準化」と「マニュアル化」が鍵です。
あわせて、GASやExcelマクロなどの内製ツールの可視化・共有も重要です。
SHIFT AIの研修では、業務の棚卸し→ツール導入→定着まで一貫した支援が可能です。

Q
ツールを導入しても現場が使ってくれないのですが…
A

ありがちな課題ですが、解決できます。
導入の成否は「設計のシンプルさ」と「現場の巻き込み度」で決まります。
最小構成からスモールスタートし、現場とともに改善していく設計が成功のカギです。

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