画像生成AIは、もはやクリエイティブの現場を支える「新しい制作基盤」となりました。バナーやLP、SNS投稿まで、企画から数分でビジュアルを生成できる。その手軽さとスピードは、企業にとって大きな武器です。

しかし一方で、「商用利用して大丈夫なのか」「著作権侵害にならないのか」という不安も急速に広がっています。実際、生成AIの学習データには他者の著作物が含まれる場合があり、利用規約やライセンスの解釈を誤ると、企業の信頼やブランド価値を損なうリスクにつながりかねません。

本記事では、画像生成AIを安心して商用利用するために知っておくべき著作権・ライセンス・利用制限の基本をわかりやすく整理します。さらに、企業として安全に運用するためのガイドライン設計や、SHIFT AIが提供する法人研修の考え方も紹介。

「AIを活用したいけれど、リスクは最小限にしたい」。そんな担当者の方に向けて、実務で役立つ正しい知識と判断軸をお届けします。

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目次

なぜ「画像生成AIの商用利用」が注目されているのか

AI画像生成は、個人のクリエイティブだけでなく、企業のマーケティング・制作現場にも急速に浸透しています。わずかな指示で多様なビジュアルを量産できるため、これまで外注していた制作コストや工数を大幅に削減できるようになりました。

しかしその一方で、著作権やライセンスの問題が複雑化し、「安心して商用利用できる範囲」を正しく理解しておく必要が生まれています。ここでは、なぜ今商用利用が注目されているのかを整理します。

生成AI市場の拡大と企業利用の加速

国内外の企業では、広告・広報・ECなど幅広い業種で画像生成AIの導入が進んでいます。特に、2024年以降は「生成AIでの制作プロセスを標準化する動き」が加速しており、制作スピードを競争優位性と捉える企業も増えています。

  • プロモーション画像の自動生成
  • SNS投稿用バナーのテンプレ化
  • 社内資料やプレゼンビジュアルのAI化

このような業務レベルの利用が進むほど、法的リスクを軽視できない段階に入っています。

商用利用が注目される背景

これまでAIツールは個人クリエイター向けの位置づけでしたが、最近では法人利用を想定した商用ライセンス対応プランが増加。各社が企業契約を強化する一方、利用規約の改定頻度も高く、理解不足によるトラブルが相次いでいます。

企業が安全にAIを活用するには、「使える範囲」よりも「使ってよい根拠」を明確にすることが不可欠です。

AIを導入する際の契約・ライセンス・責任範囲については、こちらの記事で詳しく解説しています。

商用利用における著作権とライセンスの基本を理解する

画像生成AIを安全に商用利用するには、まず「著作権」と「ライセンス」の仕組みを正確に理解することが欠かせません。特に、どの範囲が営利目的とみなされるのか、生成物の権利が誰に帰属するのかを把握していないと、思わぬトラブルを招く可能性があります。ここからは、企業担当者が知っておくべき基本的な考え方を整理します。

商用利用とは?どこからが「営利目的」になるのか

商用利用とは、収益を目的として画像を使用する行為を指します。直接的な販売だけでなく、広告・LP・SNS投稿など間接的に利益を生む活動も含まれる点が重要です。
たとえば以下のようなケースは商用利用に該当します。

  • 広告バナーやLP内でAI生成画像を使用する
  • クライアント案件の制作素材にAI画像を活用する
  • 商品パッケージや販促物にAI画像を使用する 

一方、社内資料や個人学習用の利用は非商用と判断される場合がありますが、使用目的が社外公開を伴うかで判断が分かれます。

生成画像の著作権は誰に帰属するのか

画像生成AIで作られた成果物には、通常の作者=人間という前提がありません。そのため、生成画像そのものに著作権が認められない場合があります。

ただし、各ツールの利用規約では「生成物の利用権をユーザーに付与する」ケースが多く、たとえばDALL·E 3やAdobe Fireflyでは商用利用権をユーザー側に明示的に許可しています。
一方で、無料プランやβ版ツールでは利用制限が設けられていることもあるため、常に最新の規約内容を確認することが重要です。

ライセンス条項の確認ポイント

ツールによっては「再配布禁止」「AI学習データへの再利用禁止」など、細かな制限が存在します。ライセンス条項を確認する際は、以下の3点を必ずチェックしておきましょう。

  • 商用利用の可否(有料プラン限定か)
  • 再配布・販売の可否(生成物の販売や転用が認められるか)
  • 著作権帰属の明記(生成者に使用権があるか)

これらを怠ると、知らぬ間に規約違反や著作権侵害に該当する恐れがあります。企業としての信頼を守るためにも、使う前にルールを読む姿勢が最初のリスク回避です。

主要ツール別|商用利用の可否と利用条件(2025年最新版)

商用利用を検討するうえで欠かせないのが、各ツールのライセンス条件と利用範囲の違いです。ツールごとに著作権の扱いや商用利用の可否、再配布の可否が異なるため、理解せずに使うと契約違反になるリスクがあります。ここでは代表的な画像生成AIツールの特徴と注意点をまとめます。

代表的なツールの商用利用可否一覧

以下の表では、主要ツールの商用利用条件を比較しています。特に、プランによって商用利用が制限されるケースに注意が必要です。

ツール名商用利用利用条件著作権の扱い備考
MidjourneyProプラン以上で可有料プラン限定で商用利用可生成物の著作権は利用者に帰属無料版は商用不可
DALL·E 3(ChatGPT)有料版で可ChatGPT Plus/Team/Enterprise利用時のみ可生成物の著作権はユーザー無料版(Bing経由)は不可
Stable Diffusionオープンソース/再配布も許可ライセンスにより再利用可商標・肖像権注意
Adobe FireflyAdobe IDでログインすれば商用可Adobeが著作権を担保生成クレジット制
Canva Magic Media有料プランで商用利用可Canvaに帰属するが利用権付与無料版は条件付き

各ツールの利用規約は随時更新されるため、「以前は使えたが今は不可」といった変更も起こり得ます。ツールを導入する際は、商用利用可否だけでなく、利用範囲・再利用・契約条件を合わせて確認することが重要です。

法人利用における注意点

企業としてAIツールを利用する場合、個人利用とは異なる視点が求められます。たとえば社員が生成した画像を広告や商品に使用した際、「誰が権利者か」「生成過程を誰が管理しているか」を明確にしておかなければ、責任の所在が不明瞭になります。

また、ツール提供元によっては法人契約や商用プランを別途用意しているケースもあり、社内で複数アカウントを利用する際にはライセンス共有の可否も確認が必要です。

SHIFT AI for Bizでは、企業がAIツールを安全に導入・運用できるよう、ツール選定基準と商用利用ルールの設計支援を行っています。

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AIの商用利用でトラブルを避けるための3つのチェックポイント

画像生成AIをビジネスで活用する際は、「作る」よりも「守る」意識が重要です。特に商用利用では、わずかな見落としが著作権侵害や規約違反につながる恐れがあります。ここでは、企業が安全にAIを運用するために押さえておくべき3つの視点を解説します。

① 生成物が他者著作物を模倣していないか

AIは膨大な画像データを学習しており、生成結果が既存の作品に酷似するケースがあります。意図せず他者の著作物を再現してしまうと、「著作権侵害」と判断される可能性があります。特にブランドロゴやキャラクター、特定アーティストの作風を再現した画像はリスクが高いため、使用前に第三者の権利を侵さないか確認することが必要です。

② 生成画像に人物や商標が含まれていないか

AIが生成した画像の中に、実在人物の顔や有名企業の商標が似た形で含まれることがあります。これらは肖像権・パブリシティ権・商標権の侵害にあたる可能性があるため、商用利用前に必ずチェックしましょう。特に広告や販促物では、生成した画像をそのまま使わず、社内デザイナーが最終確認を行う体制を整えることが大切です。

③ 社内ルール・承認フローが整備されているか

AIツールの利用者が増えるほど、ガバナンスが求められます。たとえば社員が個人アカウントで生成した画像を業務利用すると、著作権や利用権の所在が曖昧になるリスクがあります。利用ガイドラインを整備し、「どのツールを、どの目的で、誰が使うのか」を明文化することがトラブル防止の第一歩です。

企業が整備すべき「AI商用利用ガイドライン」の作り方

AIを安全に商用利用するためには、ツール選定や著作権理解だけでなく、組織全体で共有できるルール=ガイドラインを整備することが欠かせません。ガイドラインがあれば、社員一人ひとりが判断に迷わず行動でき、トラブル発生時も責任範囲を明確にできます。ここでは、企業が実践すべきAIガイドラインの設計手順を紹介します。

目的と範囲を明確化する(何にAIを使うのか)

まず定めるべきは、AIをどの領域・業務目的で活用するのかという範囲設定です。たとえば「社内資料作成のみ」「広告・プロモーション画像まで可」など、利用対象を明確にしておくことで判断基準が統一されます。業務内容ごとにリスクの大きさが異なるため、目的を細分化したルール設計が必要です。

生成・利用プロセスの責任者を定義する

AIによる制作は誰でも手軽にできる反面、最終的な責任者を明確にしておくことが重要です。生成・確認・公開の各工程に承認者を設定し、利用履歴を残す仕組みを構築することで、問題が起きた際にも迅速な対応が可能になります。

成果物の利用・再配布の社内ルールを設ける

生成した画像をどの範囲まで利用できるか、再配布や販売の可否を社内で明文化しておくことも欠かせません。特に外部パートナーと連携して制作する場合は、AI生成物の権利帰属を契約書で定めておくと安全です。

従業員教育と監査フローを設計する

AIツールの利用は便利である一方、法的リスクへの理解が不十分なまま使われることが多いのが現実です。社内研修を通じて著作権・ライセンスの基礎を共有し、定期的な運用監査でルールが守られているかを確認する仕組みを整えましょう。

SHIFT AI for Bizでは、企業がAIを安全に商用利用できるよう、ガイドライン策定支援とAI活用研修を提供しています。

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生成AIで「商用利用NG」になる典型的なケースと見落としがちな落とし穴

AI画像生成は便利である一方、利用規約の読み違いや確認不足が原因で違反になるケースも少なくありません。特に商用利用では「やってはいけないこと」を明確に理解しておくことが重要です。ここでは、実際に起こりやすいNGパターンと見落としやすい注意点を紹介します。

フリー素材サイト経由のAI画像をそのまま使う

一見すると自由に使えるように見えるAI画像でも、フリー素材サイト上では再配布や商用利用が禁止されていることがあります。特に「AI生成画像コレクション」や「ユーザー投稿型サイト」の場合、権利の所在が不明確なまま公開されているケースが多く、商用利用すると他者の権利を侵害するリスクがあります。使用前には必ずライセンス表記を確認しましょう。

AI生成画像を他ツールで再販売する

AIツールで作成した画像を別のプラットフォームで販売・再配布する行為は、多くのツール規約で明確に禁止されています。生成物の販売を認める場合でも、プラン契約やライセンス申請が必要なケースがあるため、「作ったから自由に売ってよい」とは限りません。ビジネス利用を想定する場合は、利用規約の商用・再配布項目を必ず確認することが大切です。

規約変更を確認せず旧条件のまま利用する

生成AIの多くは定期的に利用規約を更新しています。特に「商用利用の範囲」「生成物の扱い」「著作権の帰属」に関する条項は変更されやすく、知らないうちに以前の条件では違反になるケースがあります。継続的にAIを利用する企業は、規約更新の通知を受け取る仕組みや社内共有ルールを整備しておくと安心です。

AIを安心して商用利用するための「法的・倫理的フレームワーク」

画像生成AIを安全に商用利用するには、法的リスクの回避だけでなく、社会的な信頼を損なわない倫理的な運用も求められます。AIが生み出す画像は便利である一方、人間の創作活動や権利と密接に関わるため、企業には透明性と説明責任が問われます。ここでは、AI活用を企業の信頼資産として機能させるための基本的なフレームワークを解説します。

透明性と説明責任の確保

AIを活用する企業は、生成物の出所や制作過程を社外に説明できるようにしておくことが重要です。特に広告や広報素材としてAI画像を使用する場合は、「どのAIツールを使用したのか」「どの範囲をAIで生成したのか」を明示できる仕組みを整えることで、ステークホルダーからの信頼を高められます。

著作権法改正とAI規制の最新動向

2025年時点では、AI学習と著作権法第30条の4(著作物の利用に関する特例)をめぐる議論が続いています。今後、AI生成物の扱いが法律で明確化される可能性があるため、企業は文化庁や経済産業省など公的機関の情報を定期的にチェックすることが欠かせません。特にEUのAI Actなど海外規制は、グローバル展開する企業に影響を与える可能性があります。

倫理的AI活用の基本原則

AIを商用利用する際は、効率性やコスト削減だけでなく、社会的責任の観点も意識する必要があります。倫理的AI活用の基本原則は以下の3つです。

  • 公正性:特定の個人や団体を不当に模倣・排除しない
  • 安全性:誤情報や不正確な生成物を流通させない
  • 信頼性:利用ルールを公開し、再現可能な手順でAIを運用する 

これらを社内ポリシーとして定着させることで、企業ブランドの信頼を守りながらAIを活用できます。

SHIFT AI for Bizでは、法務・広報・制作部門を対象にしたAI倫理と法的リスクマネジメント研修を提供しています。

まとめ|安全な商用利用には「体制」と「知識」の両輪が必要

画像生成AIを商用利用する際の最大のポイントは、ツールの性能ではなく、使う側の理解とルール設計にあります。どれほど優れたAIでも、著作権やライセンスを軽視すればリスクは避けられません。逆に、企業として法的・倫理的な体制を整えれば、AIは強力な生産性向上ツールとして活用できます。

本記事では、商用利用に関する著作権・ライセンスの基本から、ツールごとの利用条件、ガイドラインの作り方、そして法的・倫理的なフレームワークまでを整理しました。AI活用を個人スキルではなく企業戦略として扱うことが、これからの時代の競争力になります。

生成AIを安全かつ効果的に導入したい企業は、社内ルールの整備と従業員教育をセットで進めることが重要です。SHIFT AI for Bizでは、実際の商用利用リスクを踏まえたAI活用ルール設計・ガイドライン策定研修を提供しています。

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画像生成AIの商用利用に関するFAQ(よくある質問)

Q
画像生成AIで作った画像は商用利用できますか?
A

多くのツールで商用利用は可能ですが、有料プラン限定や利用条件付きである場合がほとんどです。必ず各ツールの最新利用規約を確認し、プランによる制限や再配布の可否を把握しておきましょう。

Q
無料プランでも商用利用は可能ですか?
A

無料プランでは商用利用が禁止されているケースが多いです。たとえばMidjourneyやCanvaなどは、有料プランに加入しない限り商用利用不可と明記しています。無料版を業務目的で使用すると規約違反となる可能性があります。

Q
AI生成画像の著作権は誰に帰属しますか?
A

生成画像の著作権は、原則として「人間による創作性が認められない」とされていますが、ツールによってはユーザーに利用権を付与しています。DALL·E 3やAdobe Fireflyでは、ユーザーが生成物を自由に利用できる契約形態を採用しています。

Q
商用利用で違反になるケースは?
A

代表的な違反は、他者の著作物を模倣した画像の使用、商標や人物の無断利用、ライセンス未確認の素材活用などです。これらは著作権・肖像権・商標権の侵害につながるため、公開前に確認フローを設けることが推奨されます。

Q
企業でAIを使う場合、どんなルールを作ればいいですか?
A

まず、AIの利用目的を明確にし、社内で使用できるツールと禁止ツールを定義します。さらに、生成・承認・公開のプロセスに責任者を設け、運用状況を定期的に監査することで安全に活用できます。詳しいガイドライン策定方法はこちらの記事で紹介しています。

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