企業でGemini APIを活用する際、最も重要な懸念事項の一つが「入力したデータが学習に使用されるリスク」です。機密情報や顧客データを誤って学習データとして提供してしまうと、情報漏洩や競合他社への情報流出といった深刻な問題につながる可能性があります。

本記事では、Gemini APIで確実に学習させない設定を行う方法を、2025年最新の利用規約に基づいて詳しく解説します。

Google AI Studio、Vertex AI、Geminiアプリそれぞれの設定手順から、企業が安全にAIを導入するためのガイドライン策定まで、データセキュリティの観点から包括的にご紹介します。

情報セキュリティ担当者や経営層の方が、安心してGemini APIを業務活用できる環境を構築するための完全ガイドとしてお役立てください。

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Gemini APIで学習させない設定が必要な理由

Gemini APIを企業で利用する場合、入力データが学習に使用されることで深刻なセキュリティリスクが発生します。

特に機密情報を扱う企業では、適切な設定を行わないと重大な情報漏洩につながる可能性があります。

企業の機密情報が学習データに使われるから

Gemini APIの無料版では、入力したすべてのデータが学習データとして活用される仕組みになっています。

企業が顧客情報、財務データ、新商品の開発計画などをGemini APIに入力した場合、これらの情報がGoogleのAIモデル改善のための学習データとして蓄積されます。学習されたデータは、将来的に他のユーザーへの回答に反映される可能性があるのです。

例えば、営業担当者が「A社との契約金額は500万円で、来月クロージング予定」という内容をGeminiに入力すると、この機密情報が学習データとして処理されてしまいます。

データ漏洩による法的リスクが発生するから

個人情報保護法や業界固有の規制に違反する重大な法的責任を企業が負うリスクがあります。

特に個人情報を含むデータがGemini APIで学習された場合、個人情報保護法第23条の「第三者提供の制限」に抵触する可能性が高くなります。金融業界のFISC安全対策基準や、医療業界の個人情報保護ガイドラインなど、厳格なデータ管理が求められる業界では致命的です。

実際に2023年には、生成AIへの不適切なデータ入力により、某金融機関が金融庁から業務改善命令を受けた事例も報告されています。

競合他社に情報が流出する可能性があるから

学習されたデータが間接的に競合他社の質問に対する回答として企業の戦略情報が露出するリスクが存在します。

AIの学習メカニズムでは、大量のデータから抽出されたパターンが新しい回答生成に活用されるため、直接的なコピーでなくても類似した情報が出力される場合があります。マーケティング戦略、技術仕様、価格設定などの企業機密が、競合他社のGemini利用時に参考情報として提供される可能性は否定できません。

このリスクを回避するためには、Gemini APIで学習させない適切な設定が不可欠となります。

Gemini APIの学習させない設定の仕組み

Gemini APIには無料版と有料版で異なるデータ取扱いルールが設定されており、企業利用では必ずこれらの違いを理解しておく必要があります。また、Google AI Studio、Vertex AI、Geminiアプリそれぞれで学習設定の方法が大きく異なります。

無料版では学習データとして使用される

Google AI Studioなどの無料版Gemini APIでは、入力データが必ず学習に使用される規約になっています。

Gemini API追加利用規約には「本無料サービスを使用する場合、Googleは使用者が送信したコンテンツと生成された回答を使用し、Googleのプロダクト改良、開発を行います」と明記されています。つまり、無料版を選択した時点で学習データ提供に同意したことになるのです。

この規約は回避できないため、企業が機密情報を扱う場合は無料版の利用を避けるしかありません。

有料版では学習使用を制限する規約になっている

有料版Gemini APIでは、ユーザーデータを学習に使用しない方針が利用規約で定められています。

具体的には「有料サービスを使用する場合、Googleは使用者のプロンプトまたは回答をプロダクトの改善に使用することはありません」との条項があります。ただし、この制限は従量課金での利用が前提となり、完全無料での利用では適用されません。

Vertex AIやGoogle Workspaceの有料プランでも同様の保護措置が講じられており、企業向けのエンタープライズ契約では更に厳格なデータ保護が約束されています。

サービス別で学習設定のルールが異なる

Google AI Studio、Vertex AI、Geminiアプリでは学習データの取扱いが全く違うため注意が必要です。

Google AI Studioは無料版のため、学習オプトアウトができません。一方、Vertex AIは初期設定で学習に使用されない仕組みになっており、追加設定は不要です。Geminiアプリの場合は「Geminiアプリアクティビティ」をオフにすることで学習を停止できます。

この違いを理解せずに使い分けると、意図しないデータ学習が発生する危険性があります。企業では利用目的に応じて適切なサービスを選択することが重要です。

Gemini APIで学習させない設定方法

Gemini APIで確実に学習を防ぐには、利用するサービスに応じた正しい設定手順を実行する必要があります。

Google AI Studio、Vertex AI、Geminiアプリそれぞれで設定方法が異なるため、段階的に解説していきます。

Google AI Studioでオプトアウト設定する

Google AI Studioでは学習オプトアウト設定が提供されていないため、代替手段が必要です。

Google AI Studioの利用規約では、無料版利用時に入力データが必ずプロダクト改善に使用されると明記されています。設定画面にもオプトアウト機能は存在しません。企業が機密情報を扱う場合は、Google AI Studioの利用を避け、有料のVertex AIまたはGemini for Workspaceへの移行を検討しましょう。

どうしてもGoogle AI Studioを使用する場合は、機密情報を含まないテスト用途に限定し、本格運用では必ず有料サービスを選択してください。

Vertex AIで企業向け設定を行う

Vertex AIでは初期設定でデータが学習に使用されない仕組みが構築されています。

Google Cloudコンソールにログイン後、プロジェクトを選択し「Vertex AI」→「Generative AI Studio」にアクセスします。課金アカウントが設定されたプロジェクトでは、自動的に学習制限が適用されます。

追加の設定変更は不要ですが、プロジェクトの「IAMと管理」で適切なアクセス権限を設定することを推奨します。

利用規約の「トレーニングの制限」条項により、お客様の事前許可なしにデータが学習に使用されることはありません。

Geminiアプリ連携のアクティビティを停止する

Geminiアプリでは「Geminiアプリアクティビティ」をオフにすることで学習を停止できます。

Googleアカウントにログインし、アクティビティ管理ページ(myactivity.google.com)にアクセスします。「Geminiアプリアクティビティ」の項目を見つけ、トグルボタンをオフに切り替えてください。確認画面で「オフにする」を選択すると設定完了です。

ただし、設定をオフにしても最大72時間はデータが保存される点に注意が必要です。完全な情報保護を求める企業では、機密情報の入力自体を避けることが最も安全な対策となります。

企業でGemini APIを安全に導入するポイント

企業がGemini APIを安全に活用するには、技術的な設定だけでなく、組織全体でのガバナンス体制構築が不可欠です。

情報セキュリティガイドラインの策定から従業員教育、継続的な監査まで、包括的なアプローチが求められます。

情報セキュリティガイドラインを策定する

企業独自のAI利用ガイドライン策定が情報漏洩防止の第一歩となります。

ガイドラインには、入力禁止情報の明確化(個人情報、財務データ、技術仕様など)、利用可能なGeminiサービスの指定、承認フローの設定を盛り込みましょう。特に「機密度レベル別の利用制限」を設け、機密度の高い情報は一切入力禁止とする規則が効果的です。

技術的な設定方法だけでなく、なぜこれらの制限が必要なのかという背景を従業員が理解することで、より実効性の高いセキュリティ対策が実現できます。

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定期的な監査とリスク管理を行う

継続的な監査体制により、設定の維持と新たなリスクの早期発見を実現します。

月次でGemini API利用状況をチェックし、設定変更の有無、利用者の追加、異常なアクセスパターンがないかを確認しましょう。また、Googleの利用規約変更やプライバシーポリシー更新に対応するため、四半期ごとの包括的なリスク評価も必要です。

監査で発見された問題は速やかに対処し、再発防止策を全社で共有することで、組織全体のセキュリティレベルを継続的に向上させられます。

従業員向けAI利用研修を実施する

定期的な研修実施により、従業員のAIリテラシー向上と誤操作防止を図ります。

研修内容には、Gemini APIの学習リスク説明、正しい設定方法の実演、情報漏洩事例の共有、緊急時の対応手順を含めてください。特に「うっかり機密情報を入力してしまった」というヒューマンエラーを防ぐため、実際の業務シーンを想定したロールプレイング形式の研修が有効です。

技術的な設定方法を教えるだけでは不十分で、AIのリスクと適切な活用方法を体系的に学習する研修が不可欠です。

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まとめ|Gemini APIの学習させない設定は企業データ保護の必須対策

Gemini APIで学習させない設定は、企業の機密情報保護において極めて重要な取り組みです。無料版では学習を回避できないため、機密情報を扱う企業は必ず有料版を選択し、適切なサービス(Vertex AIやGemini for Workspace)を利用しましょう。

技術的な設定だけでなく、社内ガイドライン策定と従業員教育の両輪で進めることが成功の鍵となります。AI規制が強化される中、今から包括的なセキュリティ体制を構築することで、安心してAIの恩恵を受けながら競争優位性を確保できます。

適切な設定と継続的な管理により、Gemini APIは企業の強力なビジネスツールとなるでしょう。しかし、技術の進歩に合わせて従業員のAIリテラシーを向上させることも欠かせません。

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Gemini API学習設定に関するよくある質問

Q
Google AI Studioでは本当に学習させない設定ができないのですか?
A

はい、Google AI Studioでは学習オプトアウト機能が提供されていません。利用規約上、無料版利用時は必ず入力データが学習に使用される仕組みになっています。企業で機密情報を扱う場合は、Vertex AIやGemini for Workspaceなどの有料サービスへの移行が必要です。どうしてもGoogle AI Studioを使用する場合は、機密情報を含まないテスト用途に限定してください。

Q
Geminiアプリでアクティビティをオフにしても完全に安全ですか?
A

アクティビティをオフにしても、最大72時間はデータがサーバーに保存されるため完全ではありません。また、技術的な不具合やシステムエラーの可能性も否定できません。企業の重要な機密情報については、設定に頼るのではなく、そもそも入力を避けることが最も確実な保護策となります。オプトアウト設定は基本的な防護策として捉え、追加の安全対策も併用しましょう。

Q
他社のAI APIと比較してGeminiは安全性が低いのですか?
A

Gemini APIの有料版は他社サービスと同等レベルの安全性を提供しています。OpenAI、Anthropic、AWSなど主要なAI APIプロバイダーは、いずれも有料版で学習制限を設けています。重要なのは無料版と有料版の違いを理解し、企業利用では必ず有料版を選択することです。各社とも利用規約でデータ保護を約束していますが、100%の保証はないため適切なリスク管理が必要です。

Q
従業員が誤って機密情報を入力してしまった場合はどうすればよいですか?
A

まず速やかにIT部門またはセキュリティ担当者に報告してください。72時間以内であればデータ削除の可能性があるため、迅速な対応が重要です。Googleサポートへの連絡、関連する会話履歴の削除、影響範囲の特定を行います。再発防止のため、インシデント内容を分析し、ガイドラインの見直しや追加研修の実施を検討しましょう。事前の緊急時対応マニュアル整備が被害軽減の鍵となります。