生成AIに社内の資料や顧客情報を貼り付けた瞬間、そのデータがモデルの学習に使われるのか。この疑問は、AI活用を進めたい現場と、情報漏洩を防ぎたい情報システム部門の両方が最初にぶつかる論点です。
結論から言えば、主要なAIサービスの多くは設定変更またはプラン選択によって学習利用を止められます。しかも操作自体は数分で終わります。難しいのは設定そのものではなく、「どのサービスのどのプランが、初期状態でどう扱っているか」を正確に把握し、それを全社の運用ルールに落とし込むことです。
この記事では、ChatGPT・Claude・Microsoft 365 Copilot・Geminiの4系統について、公式ドキュメントで確認できる初期状態と設定手順を整理します。あわせて、設定しても学習を止めきれない抜け穴と、実際に全社展開している企業がどう運用しているかを、AI経営総合研究所が独自に取材した企業の記録から紹介します。
弊社では、生成AIの安全な運用に役立つ資料を配布しています。リスク対策やルール設計、プロンプトの考え方などが分かる内容です。情報漏洩や不要な学習を防ぐ、AIを適切に組織に根付かせるノウハウを知れますので、ぜひご覧ください。
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AIに学習させない理由|なぜ企業にオプトアウト設定が必要なのか
企業がAIの学習利用を止める理由は、機密情報の外部流出、個人情報保護法などへの抵触、独自ノウハウの競争優位性の喪失という3点に集約されます。いずれも一度発生すると事後的な回収が困難です。
機密情報が他社に流出するから
生成AIに入力したデータが学習に使われる場合、そのデータはモデルの内部表現に取り込まれます。入力した文章がそのまま他のユーザーに表示されるわけではありませんが、未公開の製品仕様や取引条件、原価構造といった情報を外部サービスの学習データに渡すこと自体が、多くの企業の情報管理規程に抵触します。
とくに問題になりやすいのが、従業員が個人アカウントで無料版を使うケースです。会社が契約した法人プランであれば学習対象外でも、個人アカウントの無料版は初期状態で学習に使われる可能性があります。同じ「ChatGPTを使った」でも、アカウントの種類によってデータの扱いが正反対になります。
法的責任を問われるリスクがあるから
顧客の氏名や連絡先、健康情報などを含むデータを外部のAIサービスに入力する行為は、個人情報の第三者提供や委託にあたる可能性があります。海外のサービスを使う場合は越境移転の論点も加わります。
さらに、他社から秘密保持契約のもとで受け取った情報をAIに入力した場合、契約違反を問われる余地が生まれます。「業務効率化のために使った」という説明は、契約上の抗弁になりません。
競争優位性を失う可能性があるから
営業トークのパターン、提案書のテンプレート、独自の分析ロジック。これらは社内では当たり前に見えても、外部から見れば模倣価値のある資産です。学習に使われた場合、その知見が一般化された形でモデルの回答能力に取り込まれる可能性を否定できません。
AIが何をどう学習するのかという仕組み自体を押さえておくと、どの情報を守るべきかの判断が速くなります。AI学習の仕組みと種類をゼロから整理した解説もあわせて確認してください。
主要AIサービスの初期状態と学習オフ設定の一覧
ChatGPTとClaudeの個人向けプランは設定でオフにできます。法人プランとAPIは既定で学習対象外です。一方でGoogle AI StudioとGemini APIの無料枠だけは、設定でオフにできません。
以下は各社の公式ドキュメントに記載された内容を整理した一覧です。設定変更が必要なのは、実質的に個人向けプランに限られます。
| サービス・プラン | 初期状態でモデル学習に使われるか | 学習を止める方法 |
|---|---|---|
| ChatGPT 個人向け(無料・Plus・Proなど) | 使われる可能性がある | 設定>データ コントロール>「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ |
| ChatGPT Business・Enterprise・Edu | 使われない | 設定変更は不要 |
| OpenAI API | 使われない(明示的にオプトインした場合のみ利用) | 設定変更は不要 |
| Claude 無料・Pro・Max | 「モデルの改善」を有効にした場合のみ使われる | プライバシー設定>Model Improvement をオフ |
| Claude for Work・Government・Education・API | 使われない(消費者向け規約の対象外) | 設定変更は不要 |
| Microsoft 365 Copilot | 使われない | 設定変更は不要 |
| Gemini API・Google AI Studio の無料枠 | 使われる(人手によるレビューを含む) | 有料枠に切り替える |
| Gemini API 有料枠・Gemini for Google Cloud | 使われない | 設定変更は不要 |
| Gemini アプリ(個人向け) | プランと設定により異なる | アプリ内のアクティビティ設定で管理 |
Microsoft 365 Copilot について、Microsoftは公式ドキュメントで「Microsoft Graph 経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、Microsoft 365 Copilot で使用されるものを含め、基礎 LLM のトレーニングには使用されません」と明記しています。任意で送信するフィードバックについても、基盤モデルの学習には使われないとしています。
OpenAIも法人向けについて、ChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・APIを含む法人ユーザーの入出力を既定で学習に使わないと説明しています。APIについては、明示的にオプトインしない限り学習には使われず、不正利用監視のためのログが最大30日間保持される仕様です。事前承認を得た場合はゼロデータ保持の構成も選べます。
Google AI Studio と Gemini API の無料枠は、この中で唯一「初期状態で学習に使われ、かつ設定でオフにできない」区分です。Googleの利用規約には、無料枠では送信内容と生成された応答を製品の改善・開発に使用し、人間のレビュアーが読み・注釈を付け・処理する場合があると記載されています。有料枠に切り替えると、プロンプトと応答は製品改善に使われなくなり、ログは違反検知目的で限定的な期間のみ保持されます。検索グラウンディングを使う場合のプロンプト保存期間は30日間です。
Gemini アプリ(個人向け)については、プランとアカウント種別で扱いが変わります。Geminiのアクティビティ設定と学習利用の関係を整理した記事で、自社のアカウント構成に近いパターンを確認できます。開発用途でAPIを使う場合は、Gemini APIのデータ利用条件を無料枠と有料枠で比較した記事が判断材料になります。
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戦略・失敗回避・プロンプトの3冊を無料DL →AIに学習させない設定手順|ChatGPT・Claude・Copilot・Gemini
設定が必要なのはChatGPTの個人向けプランとClaudeの消費者向けプランの2つです。どちらも3ステップ以内で完了し、アカウント単位で全デバイスに反映されます。
ChatGPT|データ コントロールから学習利用をオフにする
ブラウザ版での手順は以下のとおりです。
- 画面のプロフィールアイコンをクリックして「設定」を開く
- 「データ コントロール」を選ぶ
- 「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする
モバイルアプリの場合は、サイドバーを開いてプロフィールアイコンをタップし、「データ コントロール」から同じ項目をオフにします。この設定はアカウントに紐づくため、片方のデバイスで変更すれば全デバイスに反映されます。
オプトアウトしても会話履歴は残ります。履歴が消えることを心配して設定をためらう必要はありません。
OpenAIのプライバシーポータルから「自分のコンテンツで学習しないでほしい」というリクエストを送る方法も用意されています。設定画面が見当たらない環境や、複数アカウントをまとめて処理したい場合はこちらを使います。
より細かい画面遷移や、社内展開時の説明資料に使える手順はChatGPTの学習オフ設定を画面ごとに追える記事にまとめています。
Claude|Model Improvement をオフにする
Anthropicは無料・Pro・Maxの各プランについて、「モデルの改善」設定を有効にしたユーザーのデータのみを学習に使う方針を公表しています。設定は claude.ai/settings/data-privacy-controls のプライバシー設定内にある Model Improvement 項目で、いつでも変更できます。
データ保持期間も設定と連動します。学習利用を許可した場合は5年間、許可しない場合は従来どおり30日間です。学習を止めることは、そのまま保持期間の短縮につながります。
シークレットチャット(Incognito)で行った会話は、Model Improvement がオンでも学習には使われません。ただし安全性レビューの対象となった会話は、設定にかかわらず分析される場合があります。
Claude for Work・Claude for Government・Claude for Education・APIは、そもそも消費者向け規約の対象外です。法人契約であれば設定作業は発生しません。プラン別の詳細はClaudeの学習設定と保持期間を整理した記事で確認できます。
Microsoft 365 Copilot|設定は不要、管理すべきは活動履歴
Microsoft 365 Copilot は基盤LLMの学習にデータを使わないため、学習を止めるための設定項目はありません。管理対象になるのは、保存されるプロンプトと応答の履歴です。
- 履歴は保存時に暗号化され、Microsoft Purview やコンテンツ検索、保持ポリシーで管理できる
- ユーザー自身は myaccount.microsoft.com から Copilot の活動履歴を削除できる
- Azure OpenAI にある人間のレビューを伴う不正利用監視について、Microsoft 365 Copilot サービスはオプトアウト済みと明記されている
つまりCopilotで検討すべきは「学習させないか」ではなく「履歴をどの期間残し、誰が参照できる状態にするか」です。Microsoft Copilotで起こりうる情報漏洩パターンと対策で、テナント内の権限設計まで含めた注意点を確認できます。
Gemini|無料枠と有料枠で扱いが分かれる
Gemini API と Google AI Studio では、無料枠のデータが製品の改善・開発に使われ、人間のレビュアーが内容を処理する場合があります。この扱いは設定でオフにできません。業務データを扱うなら有料枠に切り替えるのが唯一の対処です。
Gemini for Google Cloud についてGoogleは「Gemini はプロンプトとその応答をモデルの学習データとして使用しません」と明記しています。クラウド上で完結させたい場合はこちらが基準になります。
オプトアウト設定の限界とAI学習を完全に防ぐ追加対策
設定変更で止められるのは「モデルの学習利用」だけです。データがサーバーに送信される事実、送信済みデータの扱い、従業員が別経路で入力してしまう行動は、設定では制御できません。
オプトアウトしても学習される3つの抜け穴
設定を正しく行った後も、以下の3経路からデータが学習に流れる可能性が残ります。競合記事の多くが触れていない部分です。
- フィードバック送信:OpenAIは「フィードバックを提供することを選択した場合、そのフィードバックに関連する会話全体がモデルの学習に使われる可能性がある」と説明しています。回答への高評価・低評価ボタンを押した時点で、学習オフ設定とは別扱いになります
- 設定変更前の会話:オプトアウトは将来の会話に適用されます。設定前に入力したデータの扱いは、削除リクエストや保持期間の経過を待つ形になります
- 個人アカウントでの利用:会社が法人プランを契約していても、従業員が私物端末の個人アカウントで同じ資料を扱えば、その入力は個人向けプランのルールで処理されます
3つ目が実務上もっとも起こります。法人プランの契約は入り口を作る作業であり、そこを通らせる仕組みは別途必要です。
設定だけでは情報漏洩は防げない
学習に使われないことと、データが外部に出ないことは別の話です。学習利用を止めても、プロンプトと応答はサービス提供者のサーバーを経由し、一定期間保持されます。不正利用監視のために人間が閲覧する運用が残るサービスもあります。
OpenAIの一時チャット(Temporary Chat)は、この点で有効な選択肢です。一時チャットの内容は30日後にシステムから削除され、学習にも使われず、履歴やメモリにも残りません。悪用監視のためのレビュー対象にはなりますが、一回限りの機密度の高い作業には適しています。
ただし履歴が残らないため、継続的な作業には向きません。「機密度の高い単発作業は一時チャット、通常業務は学習オフ設定+履歴あり」という使い分けが現実的です。
技術的なセキュリティ対策を追加する
設定と運用ルールの間を埋めるのが、技術的な制御です。
- 会社が承認していないAIサービスへのアクセスをネットワーク側で制限する
- 法人プランのSSO連携を必須にし、個人アカウントでのログインを塞ぐ
- DLP(データ損失防止)で機密度の高いファイルのアップロードを検知する
- プロンプトと応答のログを取得し、何が入力されたかを追跡できる状態にする
ログ取得は、事故が起きた後の影響範囲特定に直結します。プロンプトログの取得範囲と保管期間の設計で、実装時に決めるべき項目を確認できます。
プライベートAIツールに切り替える
扱う情報の機密度が高い場合、そもそも外部にデータを出さない構成を選ぶ判断もあります。自社テナント内で完結するクラウド構成、あるいはオンプレミス環境でのモデル運用です。
コストと運用負荷は上がるため、全社一律で切り替える必要はありません。研究開発部門や法務部門など、扱う情報の機密度が突出している部署に限定して適用する形が導入しやすい設計です。外部にデータを残さないAIツールの選定基準で、比較軸を整理しています。
なお、自社が公開している文章や画像を生成AIの学習データとして収集されたくない場合は、この記事とは対策の系統が変わります。公開コンテンツをAI学習から守る手段を検証した記事で、何が実効性を持ち、何が意思表示にとどまるのかを整理しています。
企業でAI学習させない体制を作る方法|社内ガイドライン策定
設定そのものは個人が数分で終える作業ですが、全従業員に確実に実行させ、実行された状態を維持するには文書と仕組みが要ります。AI利用ポリシー・利用状況の監査・従業員研修の3点セットが最小構成です。
AI利用ポリシーを作成する
ポリシーで決めるべき項目を絞ると、以下の4つになります。
- 使ってよいAIサービスとプランを列挙する(列挙にないものは申請制にする)
- 入力してはいけない情報の種類を具体例つきで示す(顧客の氏名・未公開の財務数値・他社から受領した秘密情報など)
- 学習オフ設定を必須とし、確認方法を手順として記載する
- 違反時の報告経路と対応フローを定める
抽象的な「機密情報は入力しない」だけでは判断が現場に丸投げされます。判断に迷う具体例を10個ほど載せるだけで、問い合わせ件数が目に見えて減ります。他社のAI利用ポリシーの構成と記載粒度を参照すると、自社版の骨子を短時間で組めます。
利用状況を監査する
ポリシーを配布しただけでは、実際に守られているかは分かりません。監査の観点は3つです。
- 承認していないAIサービスへのアクセスが発生していないか
- 法人プランのアカウントが全対象者に発行され、実際に使われているか
- 学習オフ設定が個人向けプラン利用者で完了しているか
3つ目は、管理者側から一括確認できないサービスが多いため、自己申告とスクリーンショット提出を組み合わせる運用が現実的です。AI利用状況を継続的に点検する方法で、頻度と担当の決め方を確認できます。
従業員に研修を実施する
研修で伝える中身は、禁止事項の暗記ではなく「なぜその線引きなのか」です。理由を理解していない状態のルールは、業務が忙しくなった瞬間に迂回されます。
学習オフ設定の画面操作は、研修中にその場で全員に実施してもらうのが確実です。持ち帰りの宿題にすると完了率が下がります。生成AIのセキュリティ研修で扱うべき論点に、プログラム構成の例をまとめています。
その生成AI利用、情報漏えいは大丈夫?
失敗6パターン・回避策・安全な使い方。実務リスクを避ける“必須3要素”を、無料の3冊に。
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無料ホワイトペーパー3冊をダウンロード→業界別AI学習防止の重要ポイント|金融・医療・製造業の対策
規制業種では、社内ポリシーの前に業法や監督指針が制約条件として存在します。AI利用ルールは、既存の情報管理規程の延長線上に位置づけるのが実装しやすい進め方です。
金融業界は法規制を遵守する
金融機関では顧客の資産情報や取引履歴が扱う情報の中心にあり、監督官庁のガイドラインと外部委託先管理の枠組みがすでに整備されています。AIサービスの利用は、この外部委託先管理のプロセスに乗せる形が整合的です。
チェック項目としては、データの保存場所(国内か国外か)、保持期間、再委託の有無、監査権の有無が該当します。学習利用の有無はこのうちの1項目に過ぎず、それだけを確認して導入を決めると他の要件で差し戻しが発生します。
医療業界は患者情報を保護する
医療機関では、患者の氏名・病歴・検査結果が要配慮個人情報にあたります。匿名化したつもりの症例データでも、希少疾患や特徴的な経過を含む場合は個人が特定される可能性が残ります。
実務上は、患者情報を扱う業務と扱わない業務を明確に切り分け、AIの利用範囲を後者に限定するところから始める形が安全です。文献調査、院内文書の下書き、シフト調整といった領域であれば、患者情報を経由せずに効果を出せます。
製造業は技術情報を守る
製造業で守る対象は、図面、加工条件、歩留まりデータ、サプライヤーとの取引条件です。これらは特許化されていないノウハウとして蓄積されているものが多く、流出しても侵害を立証しにくい性質を持ちます。
設計部門と生産技術部門については、外部サービスへのデータ送信を伴わない構成を優先し、それ以外の部門は法人プランでの利用を標準とする。この二層構造にすると、全社の生産性を落とさずに中核情報を守れます。
学習されたデータが実際にどう影響しうるのかを押さえておくと、部門ごとの線引きの説明がしやすくなります。AIに学習されたデータがどう扱われるかを整理した記事を参照してください。
他社の取り組み|LINEヤフー・九州旅客鉄道に学ぶ、設定を運用に定着させる方法
設定と規程を整えた企業が次に直面するのは、それを日常業務の中で回し続ける段階です。全社規模で生成AIを展開している2社は、いずれも「制限」ではなく「通過させる関門」を設計しています。
LINEヤフー|全従業員約11,000人に、講習合格を条件としたAI利用を展開
LINEヤフーは2025年7月14日、全従業員約11,000人を対象に生成AI活用を前提とした働き方を開始しました。3年間で業務生産性を2倍にする目標を掲げています。
同社の設計で注目すべきは、AIツールの利用者にセキュリティ講習の受講とテスト合格を課している点です。使わせないための制限ではなく、使う人全員に同じ知識を持たせるための関門として機能させています。義務化の対象も、議事録作成・調べ物・資料作成といった全社員が共通して行う業務に限定し、適用範囲を明確にしています。ChatGPT Enterpriseの利用率やカスタムGPTの作成数を定量的に追跡し、展開状況を数値で把握する運用も併走させています。
同社は「生成AIを使わない世界は多分もう来ないだろうなっていうところが、社員の共通認識としてあると思います。」と語っています。禁止から入るのではなく、正しく使う前提を全員に共有する。この順序が、設定の徹底を負担ではなく当然の手続きに変えています。
九州旅客鉄道|外部ガイドラインを土台に自社ルールを策定し、非エンジニアまで展開
九州旅客鉄道は、JDLAのガイドラインをベースに自社ルールを策定しました。ゼロから作らず、既存の公的な枠組みを土台にすることで、策定にかかる時間と社内合意のコストを抑えています。
ツール選定では、Copilot・Gemini・NotebookLMを目的別に使い分ける構成をとっています。1つのサービスに統一するのではなく、用途ごとに適したものを選び、それぞれのデータ扱いを把握したうえで運用する形です。展開範囲も広く、非エンジニアがRPAのエラー解析や社内アプリの試作を行うところまで到達しています。
同社は「非エンジニアが自律的に対応できる体制を目指しています。」と語っています。ルールを情報システム部門が抱え込まず、現場が自分で判断できる状態に持っていく設計思想が表れています。
2社に共通する設計思想
- 禁止ではなく通過条件で管理する:使わせない方向ではなく、講習合格や承認ツールの利用といった関門を置き、そこを通れば自由に使える状態を作っている
- 外部の枠組みを土台にする:JDLAのガイドラインのように公的な枠組みを起点にすることで、策定コストと社内説得のコストを同時に下げている
- 状況を数値で把握する:利用率や作成数を追跡し、ルールが守られているかを感覚ではなくデータで確認する仕組みを持っている
まとめ|AIに学習させない設定で企業の機密情報を守ろう
AIに学習させない設定で対応が要るのは、ChatGPTの個人向けプランとClaudeの消費者向けプランの2つです。法人プランとAPIは既定で学習対象外のため、企業が注力すべき対象は設定作業よりも運用の徹底に移ります。
- 設定変更が必要なのはChatGPTの個人向けプランとClaudeの消費者向けプランの2つに絞られる。法人プランとAPIは既定で学習対象外
- Google AI Studio と Gemini API の無料枠だけは設定でオフにできない。業務データを扱うなら有料枠に切り替える
- 設定後も、フィードバック送信・設定前の会話・個人アカウントでの利用という3経路からデータが流れる余地が残る
- 学習を止めることとデータを外部に出さないことは別問題。一時チャット、ネットワーク制御、ログ取得を組み合わせて塞ぐ
- 設定の徹底は個人の努力ではなく、ポリシー・監査・研修の3点セットで担保する
設定作業そのものは数分で終わります。取り組みの成否を分けるのは、その数分を全従業員に確実に実行させ、実行された状態を維持する仕組みを持てるかどうかです。
LINEヤフーと九州旅客鉄道が講習や自社ルールで実現しているのは、この「維持する仕組み」の部分です。
そこで次に決めるべきは、承認するAIサービスとプランの一覧、入力禁止情報の線引き、設定完了をどう確認するかという3点を、誰がいつまでに文書化するかです。この3点が決まらないまま個別の設定案内だけを配ると、数か月後には設定済みの部署と未設定の部署が混在し、どこから漏れたのかを追えない状態になります。自社の現在地を確認し、AI利用ルールの骨子を組み立てる段階へ進んでください。
以下の資料では、リスク対策やルール設計、プロンプトの考え方などをより深く解説しています。情報漏洩や不要な学習を防ぐ、AIを適切に組織に根付かせるノウハウを知れますので、ぜひご覧ください。
ルールと教育を整えて定着へ。3冊(計94ページ)。
3冊セットを無料で受け取る →よくある質問
- QAIに学習させない設定をすると、過去の会話も学習対象から外れますか?
- A
オプトアウト設定は、設定を変更した後の会話に適用されます。設定前に入力したデータについては、サービス提供者への削除リクエストや、各サービスが定める保持期間の経過を待つ形になります。ChatGPTでは会話履歴自体は設定後も残るため、履歴が消えることを心配して設定を先延ばしにする必要はありません。
- Q無料版と有料版で、AIに学習させない設定の有無は変わりますか?
- A
変わります。OpenAIは ChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・API を含む法人向け利用について、入出力を既定で学習に使わないと説明しています。Anthropicも Claude for Work・Government・Education・API を消費者向け規約の対象外としています。一方、Google AI Studio と Gemini API の無料枠は送信内容が製品の改善・開発に使われ、設定でオフにできないため、有料枠への切り替えが必要です。
- Q一時チャット(Temporary Chat)を使えば設定は不要ですか?
- A
一時チャットの内容は30日後にシステムから削除され、学習には使われず、履歴やメモリにも残りません。機密度の高い単発の作業には有効です。ただし履歴が残らないため継続的な業務には向かず、悪用監視のためのレビュー対象にはなります。通常業務は学習オフ設定を有効にしたうえで履歴を残す運用と使い分けるのが現実的です。
- Qオプトアウト設定にデメリットはありますか?
- A
回答精度が下がるといった直接的な影響は、各社の公式ドキュメントに記載されていません。実務上の注意点は、回答への高評価・低評価ボタンを押すと扱いが変わる点です。OpenAIはフィードバックを提供した場合、その会話全体がモデルの学習に使われる可能性があると説明しています。学習オフ設定を有効にしていても、フィードバック送信は別扱いになります。
- QClaude Pro や ChatGPT Enterprise は自動的に学習がオフになりますか?
- A
ChatGPT Enterprise は既定で学習対象外です。一方 Claude Pro は消費者向けプランに含まれるため、「モデルの改善(Model Improvement)」設定の状態によって扱いが変わります。この設定を有効にした場合はデータ保持が5年間、無効の場合は30日間となります。プライバシー設定から現在の状態を確認してください。

