業務のムダや属人化を解消し、組織全体の生産性を底上げする。
その第一歩として注目されているのが「業務棚卸し」です。
しかし、「どこから着手すればいいのか」「何を洗い出せば改善につながるのか」と、最初の一歩で立ち止まる総務・人事担当者は少なくありません。業務量は多岐にわたり、部門ごとに手順やルールもバラバラ。感覚だけで整理しようとしても、改善効果が見えづらく、DX推進やシステム導入の足かせになってしまいます。
この記事では、業務棚卸しを効率的に進めるための具体的な6ステップを、実務で再現しやすい形で詳しく解説します。さらに、棚卸しを一度きりのイベントで終わらせず、改善を社内文化として定着させるために役立つSHIFT AI for Bizの法人研修もあわせて紹介します。
この記事でわかること一覧🤞 |
・業務棚卸しを進める具体的6ステップ ・改善計画を定着させる仕組みづくり ・ムダ削減とコスト削減の実践法 ・AIやRPA活用で継続的に効率化 ・SHIFT AI研修で改善を社内文化に |
「現状を見える化し、改善を継続できる体制を整えたい」。そんな中小企業の総務・人事担当者にとって、今日から実践できるロードマップです。
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業務棚卸しとは?いま注目される背景と目的
業務棚卸しは、組織の業務を可視化してムダや属人化を排除するための基本プロセスです。
働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む今、部門ごとの役割や業務量を把握せずにシステムを導入すると、かえって混乱を招く恐れがあります。
ここでは、業務棚卸しの定義と、企業が取り組む背景を整理しておきましょう。
DXや働き方改革で「業務の見える化」が急務に
テレワークやクラウド活用が一般化するなか、業務フローを見える化しないままでは属人化が進み、ボトルネックの特定も困難になります。国の働き方改革関連法など制度面の変化もあり、現場の業務を正しく棚卸してから改善施策を打つ重要性は一段と高まっています。
関連情報:業務棚卸しで得られる効果とは?
業務改善・コスト削減・属人化解消に直結する
棚卸しを行えば、業務にかかる工数やコストを定量的に把握でき、優先度をつけて改善に着手できます。
例えば、同じ内容の報告書を複数部署が作成しているなどの重複業務を発見できれば、作業時間の短縮と人件費削減が同時に実現します。こうした成果は単なる効率化にとどまらず、DX推進やシステム導入の成功確率を高める基盤となります。
業務棚卸しの目的と背景を理解すれば、このあとに解説する具体的な手順が「なぜ必要なのか」が一層クリアになります。続いて、実務でそのまま活用できる6ステップを段階的に見ていきましょう。
事前準備:棚卸しを成功させるための下ごしらえ
業務棚卸しを始める前に、方向性とルールを固めておくことが成否を分けます。
目的があいまいなまま走り出すと、ヒアリングの段階で情報が散らばり、後工程でやり直しが発生しかねません。ここでは、準備段階で押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
目的と範囲を明確にする
まず「何のために棚卸しを行うのか」を経営層と現場が共有します。コスト削減を目指すのか、DXに向けて現状を把握するのか、ゴールを明示することで調査範囲や優先順位がはっきりします。範囲が広すぎると作業が長期化するため、最初は主要部門や影響が大きい業務に絞るのがおすすめです。
必要なデータとツールを揃える
次に、ヒアリングや業務量の定量化に使うデータやツールを事前に選定します。Excelシートや業務可視化ツールを使えば、作業工程や工数を一元管理でき、進捗の見える化が容易です。社内システムのログデータなど、定量的な裏付けを集めておくと後で議論がスムーズになります。
関係者を巻き込みスケジュールを設定する
総務・人事担当だけでは全容をつかめません。各部署のキーパーソンを早い段階で巻き込み、ヒアリングの日程を確定しておくことが重要です。スケジュールは「現状把握→分析→改善案検討」のフェーズごとに余裕を持たせ、繁忙期を避けることで現場の協力も得やすくなります。
関連情報:業務棚卸しが進まない原因と解決策
この下ごしらえを終えておけば、次に紹介する「6ステップの棚卸し手順」をスムーズに進められ、改善効果を最短で引き出せます。
業務棚卸しを効率的に進める6ステップ
事前準備が整ったら、いよいよ具体的な作業に移ります。ここでは、中小企業の総務・人事担当者でもそのまま実践できる6つのステップを紹介します。各ステップで目的と成果物を意識すると、後の改善計画まで一貫した流れを作れます。
Step1:現状業務を洗い出す
最初に、部署や担当者ごとにすべての業務をリストアップします。
会議体、日常の定型業務、突発的に発生する対応まで、抜け漏れを防ぐためにヒアリングシートを活用しましょう。
この段階では質より量を重視し、「関係ないかも」と思う業務も一旦リストに加えることが重要です。
Step2:業務量・時間を定量化する
次に、リスト化した業務について作業時間や担当人数などを数値化します。
Excelや業務可視化ツールを使えば、集計とグラフ化が容易になり、業務の負荷が一目で把握できます。
定量化することで「何となく大変そう」から「月○時間かかっている」という根拠ある議論が可能になります。
Step3:重複・ムダ業務を抽出する
定量化されたデータをもとに、重複や付加価値の低い業務を特定します。
ECRS(排除・結合・入替・簡素化)の視点でチェックすると、改善ポイントが見えやすくなります。
例えば、複数部署が同じ報告資料を作成しているケースなどは、フォーマット統一や自動化で工数削減が可能です。
Step4:改善施策を検討する
抽出したムダ業務に対して、削減・自動化・外注化など複数の改善策を比較検討します。
現場の声を取り入れながら、実現可能性やコストを踏まえた優先順位をつけることが、スムーズな実行につながります。
この時点で、将来的にAIやRPAを活用する構想を盛り込むと、DX推進への一歩にもなります。
Step5:改善後の業務フローを再設計する
改善策を決定したら、新しい業務フローを図式化して共有します。
工程ごとに担当者・システム・期日を明示しておくことで、運用開始後の混乱を防げます。
業務フロー図を関係者全員で確認することで、抜け漏れや役割の重複を最終的にチェックできます。
Step6:結果をドキュメント化し共有する
最後に、棚卸しの成果と改善フローを文書化し、社内に共有します。
手順や判断基準を残しておくことで、次回以降の棚卸しや新メンバーへの教育にも活用できます。
関連情報:業務棚卸しが失敗する原因と対策
ここまで実行すれば、業務の可視化と改善案は一通り揃います。次は、この改善計画をどう社内に定着させるかが成果を左右します。SHIFT AI for Bizの法人研修を活用すれば、現場と経営層双方の理解を深め、改善を継続する仕組みを早期に築くことができます。
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成功事例:中小企業での業務棚卸し改善効果
6ステップを実行した企業では、業務の可視化が単なる整理にとどまらず、具体的な数値成果へとつながっています。ここでは実際に報告されている改善効果をまとめ、棚卸しがもたらすインパクトをイメージできるようにします。
総務部門:棚卸し後に年間残業30%削減
総務部門が全業務を洗い出し、書類管理や備品発注のフローを統一した結果、年間残業時間が約30%削減されました。
Excelを活用して発注状況を一元管理したことで、依頼や承認の二重対応が解消され、担当者の負担も軽減。
この取り組みは人件費削減だけでなく、社員のワークライフバランス改善にも寄与しています。
人事部門:採用・教育業務の属人化を解消
人事部門では、採用・教育関連の業務を可視化したことで、特定社員だけが担当していた作業を複数人で分担可能に。
棚卸しをきっかけに業務マニュアルを整備し、新人でも同水準の業務遂行が可能になりました。
属人化の解消は、担当者の異動や退職時のリスクを大幅に低減します。
DX推進部門:システム導入コストを20%削減
DX推進部門では、新システム導入前に現行業務を徹底的に棚卸し。
その結果、不要な機能や重複システムが判明し、導入予定コストを約20%削減できました。また、棚卸しデータをもとに要件定義を行ったことで、導入後のトラブルも最小限に抑えられました。
これらの事例が示すのは、棚卸しが単なる業務整理にとどまらず、組織全体のコスト構造や働き方に直接的な効果を与えるということです。
ここで紹介した成果を自社で再現するためには、単発の施策ではなく「改善を定着させる仕組みづくり」が不可欠です。次章では、その仕組みを作るために欠かせない失敗回避のポイントを確認します。
業務棚卸しのよくある失敗と回避策
業務棚卸しはシンプルに見えて、進め方を誤ると手間ばかり増えて成果が出ないという落とし穴があります。ここでは現場でよく起きる失敗と、その回避策を整理します。事前に知っておくことで、6ステップの効果を最大限に引き出せます。
範囲が広すぎて進まない
最初から全社を対象にすると、ヒアリング対象が多くなり調査が長期化します。
影響度の高い部門や課題が顕著な業務から優先的に着手することで、早期に成果を出しつつ次のフェーズへと展開できます。
スモールスタートで得た知見を社内に共有すれば、後続部署の協力も得やすくなります。
データが集まらない・現場が非協力的
業務量や工数を定量化するには、各部門の積極的な協力が欠かせません。
現場から情報が集まらない場合は、目的とメリットを経営層からしっかり伝えてもらうことが鍵です。
「属人化を減らす」「残業を減らす」といった具体的な利点を示せば、協力姿勢は大きく変わります。
関連情報:業務棚卸しが進まない原因と解決策
改善案が実行されない
棚卸し後に改善計画を立てても、現場の習慣や評価制度が変わらなければ実行は進みません。
提案を「一度限りのプロジェクト」で終わらせず、運用ルールや人事評価に反映させる仕組みづくりが必要です。
また、SHIFT AI for Bizなどの研修を活用し、経営層と現場が共通認識を持てるようにすることで、改善が持続します。
これらの失敗は、事前にリスクを理解しておくことで未然に防げます。次は、棚卸しの成果を継続的に活かし、DX推進へとつなげる「次の一手」を見ていきましょう。
棚卸し後に取り組むべき次の一手
6ステップを終えれば業務の可視化と改善計画はそろいます。
しかし、そこで止まってしまうと効果は一過性で終わり、数か月後には元通りということも少なくありません。
棚卸しの成果を長く活かすためには、改善を「仕組み」として定着させる必要があります。
改善計画を定着させる仕組みづくり
改善策を実行した後は、定期的に成果を測定し、次の改善サイクルに反映させましょう。
具体的には、KPI(主要評価指標)を設定し、四半期ごとの進捗レビューを経営層と現場で共有します。
これにより改善が「一度きりのプロジェクト」ではなく、組織の文化として根づくようになります。
AI活用・自動化で継続的な効率化を実現
業務フローが可視化された後は、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの自動化技術を活用する絶好のタイミングです。
単純作業をAIに任せれば、社員はより付加価値の高い業務へシフトでき、継続的な効率化とDX推進が同時に進みます。
棚卸しで明らかになった課題を改善し、さらにSHIFT AI for Bizの法人研修を活用することで、現場と経営層が同じゴールを共有しながらDXを加速できます。単発の改善を超え、持続的な成長へとつながる「次の一手」を確実に打ち出しましょう。
まとめ|業務棚卸しを継続的な成長の起点にする
業務棚卸しは、現状を正確に可視化してムダや属人化を解消するための最初の一歩です。
ここまで紹介した6ステップを実践すれば、業務改善やDX推進に向けた土台が整い、コスト削減や業務効率化といった具体的な成果へつなげられます。
ポイントは、
- 目的と範囲を明確化してから取り組むこと
- 工数を定量化し、データにもとづいて改善策を検討すること
- 改善を仕組み化して継続的な見直しを行うこと
これらを押さえることで、棚卸しは一過性ではなく組織文化として定着します。
さらに、可視化した業務フローをSHIFT AI for Bizの法人研修で全社に共有・浸透させれば、現場と経営層の理解が一致し、改善のスピードと効果を飛躍的に高められます。
業務棚卸しは単なる業務整理ではありません。持続的な成長と競争力強化を実現する戦略的プロジェクトとして、今日から着手してみてください。
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FAQ|業務棚卸しでよくある疑問
ここでは、検索ユーザーから特に多く寄せられる質問をまとめました。
実務担当者がつまずきやすいポイントを先に理解しておくことで、棚卸しをスムーズに進められます。
- Q業務棚卸しはどのくらいの頻度で実施すべき?
- A
目安としては年に1回、または大きな組織改編やシステム導入の前後です。
変化が大きいタイミングで現状を正しく把握しておけば、改善計画が最新の実態に合致し、次の投資判断がしやすくなります。
- Qどの部署から始めるとスムーズ?
- A
最初は業務量が多く、他部署への影響が大きい部門から着手すると効果が見えやすく、社内の理解も得やすいでしょう。
例えば総務や人事、経理など、全社に関わるバックオフィス業務は改善効果が全社に波及しやすい代表例です。
- Q無料で使えるテンプレートはある?
- A
無料で使えるテンプレートはある?ExcelやGoogleスプレッドシートで作れる業務棚卸し用の簡易テンプレートで十分に始められます。
「業務名」「担当者」「作業時間」「課題」などを項目化するだけでも、改善対象が可視化されます。 より高度な分析をしたい場合は、業務可視化ツールの活用も検討しましょう。
