「うちの会社、もっと挑戦してほしいのに…」
「共創や透明性を掲げているけれど、現場は何も変わっていない」
そんなモヤモヤを感じている方へ。言葉として掲げた価値観が、社員の行動として根づかないのはなぜか?
その理由は、組織風土の醸成プロセスが欠けているからかもしれません。組織風土は、空気のようで目に見えませんが、意図的に育てることができるものです。
とくに、価値観を定着させるには以下の項目が大切です。
- 「挑戦」を後押しする心理的安全性
- 「共創」を促す横断的コミュニケーション
- 「透明性」を担保する情報開示や対話の文化
といった、一貫した設計と実行の仕組みが必要です。
掛け声や一過性の研修ではなく、日常に浸透する「風土」として定着させてこそ、行動が変わり、成果が変わるのです。
本記事では、そんな組織風土の醸成について、以下の点を徹底解説します。
- 「文化」との違い/なぜ今あらためて必要なのか
- 風土が定着しない“3つの落とし穴”とは
- 「挑戦・共創・透明性」を行動に変える5ステップ
- 実際に定着に成功した企業事例
- 制度・評価・対話とつなげる仕組み設計
単なる理論や抽象論ではなく、「今の組織でどう実装できるか」を主軸に構成しています。さらに、価値観を行動に変える研修設計のポイントもご紹介します。
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組織風土の醸成とは?「文化」との違いと今なぜ注目されているのか
組織風土の醸成という言葉を聞いたとき、「抽象的でよく分からない」と感じる方も多いかもしれません。実際、「組織文化」や「企業理念」と混同されやすく、その違いが明確に語られていないケースもあるでしょう。
しかし、この「風土」と「文化」の違いを理解しなければ、価値観をどう定着させるかという本質的な議論には進めません。
まずは、組織風土とは何か?文化とどう違うのか? という基礎から整理しましょう。
組織風土と組織文化の違いとは?
「組織風土」と「組織文化」は同じものとして扱われがちですが、実は役割もアプローチ方法も異なります。
組織文化は、企業理念や創業者の価値観、歴史の中で培われた組織としての信念体系のようなものです。いわば企業の「DNA」です。トップダウン的に定義され、比較的長期的・固定的な性質をもちます。
一方で、組織風土は、現場の日常で感じる空気感や“雰囲気に近いもの。
「この職場では新しいことを言いづらい」
「部門間で協力しようという雰囲気がない」
こうした無言のルールや当たり前の集合体こそが、組織風土です。
そして何より重要なのは、風土は変えられるという点です。文化を刷新するのは困難でも、風土は仕組みと運用によって、戦略的に醸成できます。
「醸成」と「改革」はどう違う?
組織風土に関する取り組みには、「醸成」と「改革」という似たような言葉が使われますが、アプローチの前提も手法もまったく異なります。以下にその違いを整理しました。
項目 | 醸成(じょうせい) | 改革(かいかく) |
意味 | 既存の良さ・価値を育て、広げる | 既存の在り方を壊し、新しくつくり直す |
前提 | 価値観や行動指針はある程度定まっている | 今の組織風土自体に問題がある・機能していない |
目的 | 定着・浸透・強化 | 大きな変化・仕切り直し |
手法 | 対話・制度連動・称賛設計・学習の仕組み化 | 組織設計の見直し・評価制度の刷新・人員再配置など |
難易度 | 中〜高(継続力が必要) | 高(現場抵抗・コストも伴う) |
自社が今必要なのは「育てること」か「壊して変えること」か?この視点が明確になることで、次に取るべき打ち手が見えてきます。
なぜ今、組織風土の醸成が注目されているのか?
変化の激しい時代において、もはや「上から指示されたことをやるだけ」の組織では持続的成長は望めません。
- DXの推進
- 多様性への対応
- Z世代の価値観の変化
- 心理的安全性の重視
こうした流れのなかで、多くの企業が「組織の中に眠っている力を、どれだけ引き出せるか」が問われています。そしてその鍵を握るのが、「風土」です。
- 挑戦が歓迎される
- 失敗しても責められない
- 違う部署とも協力できる
このような風土があるからこそ、人が動き、アイデアが生まれ、変革が起きる。だからこそ、今あらためて「組織風土の醸成」が注目されているのです。
価値観が“行動に変わらない理由!醸成を阻む3つの落とし穴
いくら「挑戦しよう」「共創を大切にしよう」とメッセージを掲げても、現場は変わらない。そんな悩みを抱えている組織は少なくありません。
しかし、現場の人材がやる気がないのではなく、変化を阻む構造的な原因が放置されている可能性があります。
ここでは、組織風土の醸成を難しくしている代表的な3つの落とし穴を取り上げます。
理念が抽象的すぎて、行動に翻訳されていない
「挑戦」「共創」「透明性」。どれも美しい言葉ですが、現場の社員が“明日からどう行動すればいいか”がわからない状態では、行動には結びつきません。
たとえば「挑戦を歓迎する」と言っても、「リスクを取って失敗したら本当に評価されるのか?」という不安があれば、人は動きません。
つまり、理念はそのままではスローガンにすぎず、具体的な行動指針や意思決定の軸にまで落とし込まれて初めて、意味を持つのです。
制度や評価と連動しておらず、損する風土が残る
「挑戦しろ」と言われつつも、評価制度はミスなく安全運転を良しとする設計のままです。これでは、行動するほど損をする風土が温存されてしまいます。
特にマネージャー層にとっては、失敗のリスクを取るよりも現状維持のほうが評価されやすいため、自らも挑戦を避け、部下にも消極的になる構造が生まれます。
価値観を醸成するには、「制度と現場のメッセージが矛盾していないか?」を見直す必要があります。
フィードバック文化がなく、変化が育たない
最後の落とし穴は、変化の兆しを見逃す組織になっていることです。現場で前向きな行動が生まれても、それが上司や同僚からポジティブにフィードバックされなければ、やがて潰れていきます。
特に日本企業では、良い行動への称賛よりも、減点や指摘が先行するケースが多く、挑戦や共創が浮いてしまう空気が醸成されてしまうことも。
風土の醸成には、日常のコミュニケーションの質が不可欠です。
👉 この観点については、以下の記事で詳しく解説しています。
フィードバック文化がない会社はなぜ人が辞める?AI時代の育成設計
組織風土を戦略的に醸成するための5ステップ
組織風土は自然と育つものではありません。ましてや、理念やスローガンを掲げるだけで変わるほど、職場の空気は単純でもありません。
だからこそ、風土は「戦略的に設計し、醸成するもの」であるべきです。ここでは、「挑戦」「共創」「透明性」といった価値観を社員の行動レベルに定着させるための5つのステップをご紹介します。
価値観を「行動指針」に翻訳する
最初のステップは、掲げる価値観を誰もが実践できる言葉に落とし込むことです。
たとえば「共創を大切にする」なら、行動指針としてはこうなります。
「関係部署との会話を週1回以上行う」
「アイデアを否定せず、まず受け止める」
このように、価値観を日常の選択や行動に結びつく形に明文化することで、現場に浸透する土台がつくられます。
評価制度・マネジメントと連動させる
価値観は、制度とセットでなければ行動に反映されません。「挑戦を歓迎する」と言いつつ、リスクを取った人が減点されるような評価制度では、誰も動かなくなります。
たとえば以下のような制度設計が有効です。
- 失敗を恐れず挑戦した行動に「加点」する
- 協働プロジェクトの推進をマネージャー評価に反映する
- 情報共有や透明性ある意思決定にインセンティブを設ける
行動した人が報われる仕組みがあるからこそ、価値観は定着していくのです。
現場の成功体験を称賛し、共有文化を育てる
風土を育てるのは、言葉よりも「体験」です。一人の挑戦が「評価された」「共感された」「真似された」。その積み重ねが、組織全体の空気を変えていきます。
たとえば
- 月次の全体朝会で「挑戦した行動」を全社共有する
- SlackやTeams上で称賛を“見える化”する文化をつくる
- 成功・失敗に関わらず「取り組んだ行動」自体を讃える
行動が可視化され、称賛されることで、「やっていい空気」が生まれる。これが風土醸成の起点です。
日常に対話の場を仕組みとして組み込む
どれだけ仕組みや制度を整えても、風土は「日常の対話」がなければ根付きません。1on1やピアフィードバック、オープンミーティングなど、人と人が本音で向き合う機会を意図的に増やすことが必要です。
とくに、「透明性」「共創」といった価値観は、対話の文化を通じて初めて現場に実装されます。
- 月1回の1on1ミーティングを全社で標準化
- 「対話のガイドライン」を明文化
- ミーティングでの意見出しを促進するファシリテーション教育
対話の質を上げることで、組織の空気は確実に変わります。
定点観測とアップデートで風土の仕組み化を図る
最後に必要なのは、変化の兆しを捉え、定着を継続する仕組みの設計です。風土は一度つくって終わりではなく、見直し・再設計を前提に設計するべきものなのです。
- 価値観の定着度をサーベイで定期測定する
- フィードバック結果から制度や言語表現を柔軟に見直す
- 組織変化や人事異動に合わせて風土方針も“進化”させる
「風土醸成を管理できるようにする」ことこそ、持続的組織づくりの核になります。
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成功事例:価値観の定着に成功した企業の取り組み
価値観を掲げるのは簡単です。しかし、それを「行動として定着させる」には、仕組みと実行の工夫が不可欠です。
ここでは、実際に「挑戦」「共創」「透明性」などの価値観を、組織風土として根づかせている企業の取り組みを紹介します。
サイボウズ:挑戦を支える100通りの働き方
サイボウズは、「100人いれば100通りの働き方があっていい」というメッセージを掲げ、実際の制度と風土にまで落とし込んでいます。
フレックスタイム制度やリモートワークの自由化に加え、「失敗を咎めず、挑戦を称える文化」が徹底されています。
組織として“心理的安全性”を重視し、どんな意見も否定せず受け入れる姿勢を貫いているからこそ、挑戦が行動として根付いているのです。
出典:サイボウズは「100人100通りの働き方」をやめます。社員数1000人を超えても、成長と幸福を両立させるための挑戦
リクルート:共創を促進する「Ring」制度の設計思想
リクルートでは、社員が新規事業アイデアを提案できる「Ring」という制度を運用しています。この制度の本質は、提案が採用されるかどうかではなく、「挑戦すること自体が評価される」という風土設計です。
若手や中堅社員が経営陣と直接やり取りできる機会が制度として開かれており、それが共創を組織に根づかせるエンジンとなっています。
「共創は行動で示す」その設計思想が、職場の風通しと連携力を大きく底上げしています。
出典:日常の違和感や自らの好奇心を新しい価値の創造へつなげる
メルカリ:透明性を支える情報開示文化
メルカリは、「透明性」を企業文化の中核に据えています。社内Slackは原則オープンチャンネル運用で、経営層の発信もリアルタイムで社員全体に共有されます。
意思決定の理由や背景が“常に見える”状態をつくり、社員が納得感を持って行動できるようにしています。
また、社員同士が互いにフィードバックを送り合う文化も醸成されており、情報共有と対話の質が自然と高まっています。
出典:組織が拡大しても、社内の「情報格差」を生まない!メルカリの、組織カルチャーを支える Slack 活用
これらの企業に共通するのは、「価値観×行動×制度」が一体化していることです。スローガンで終わらせず、社員が日常で体感できる仕組みとして設計されているからこそ、組織風土として根付いています。
変化を根づかせる鍵はミドルマネジメントにある
価値観を定着させる仕組みを設計しても、思ったほど現場が動かない。その原因の多くは、“変化の中継点”であるミドルマネジメントの不在にあります。
経営層は理想を語ります。現場は実務に追われています。この間に立つ管理職こそが、価値観と日常業務をつなぐ風土の翻訳者であり、最も影響力のある存在なのです。
ミドルが「納得していない」風土改革は失敗する
組織風土醸成がうまくいかない職場に共通するのは、管理職が「部外者」になっている状態です。
「また本社が何か言い出した」
「現場に落ちてきた施策をやらされているだけ」
こうした温度差のある状態では、ミドル層はむしろ“変化の抵抗勢力”になりかねません。
逆に、価値観の意味や目指す姿に対して腹落ちしている管理職がいれば、そのチームは着実に動き出します。
マネージャー自身が「価値観の体現者」になる
価値観は、トップの言葉や制度設計だけでなく、目の前の上司がどう振る舞うかによって強く伝播します。
たとえば、
- 部下がリスクを取って失敗したとき、マネージャーがどう反応するか
- 会議での意見をどう拾い、どう応援するか
- 他部署との連携を促進するか、それともブロックするか
これら日常の一つひとつの振る舞いが、組織風土の実像をつくっていきます。つまり、マネージャーが行動で示すことこそが、価値観の最強の伝達手段なのです。
ミドルを巻き込む3つの実践アプローチ
では、管理職をどうやって風土改革の推進者に変えていくか?ポイントは3つあります。
まず1つ目は、「価値観を評価項目に組み込む」ことです。共創行動や挑戦支援などをマネジメント評価の指標とすることで、行動と報酬を連動させる仕組みができます。
2つ目は、「マネージャー向けの価値観研修・1on1研修の実施」。制度の背景や目的を伝えると同時に、現場で起きているリアルな疑問や不安を拾う対話の場を設けることが重要です。
そして3つ目が、「部門横断で“語る場”をつくること」です。他部署の成功事例や工夫を共有できる社内コミュニティは、ミドル層の学びと納得を後押しします。
価値観は、制度で定義するだけでは定着しません。それを日々の行動に変えるのは、目の前のマネージャーです。だからこそ、風土の醸成には、ミドルマネジメント層の巻き込みが欠かせないのです。
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組織風土を定着させるには「教育」で終わらせない仕組みが必要
「研修で価値観は伝えた。あとは現場に任せている」もし、そう考えているなら、組織風土の醸成はほぼ確実に途中で止まってしまうでしょう。
風土は、スポット的な“教育”では変わりません。必要なのは、仕組みとしての風土醸成=意図的に育ち続ける構造です。この最終章では、「教育で終わらせない」ための実装ポイントを整理します。
学びっぱなしで終わらせない「仕組み」の設計
学びの場があっても、現場で活かされなければ意味がありません。むしろ、研修後のほうが重要なのです。
価値観を定着させるためには、以下のサイクルを日常業務の中に組み込む仕組み化が必要です。
ステージ | やるべきこと | 支援の仕組み例 |
学ぶ | 価値観の背景と意味を理解する | 研修・ワークショップ、行動指針マニュアル |
実践する | 現場で行動に移す | 1on1、OKR/評価連動、部内プロジェクト設計 |
共有する | 行動の成果や気づきを見える化する | Slack/Teams共有、社内報、朝会で称賛共有 |
振り返る | 行動と価値観が結びついたか確認する | フィードバック面談、360度評価、チーム振り返り |
改善する | 制度や言語の“アップデート”を行う | 社内サーベイ、ボトムアップ提案制度、役員定例レビュー |
風土づくりは全社プロジェクトであると位置づけよ
制度・人材開発・経営メッセージ・現場リーダー・情報システム……。あらゆる部門が関係するのが、組織風土の醸成です。
つまり、「人事部だけの仕事」でも「マネージャー研修だけやればOK」でもない。会社全体として、風土醸成を“経営アジェンダ”として扱うかどうかが成否を分けるのです。
SHIFT AIが支援する企業の多くも、「風土プロジェクトチーム」をつくり、横断で取り組むことで成果を出しています。
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教育から定着への橋渡しに、外部支援を活用するという選択肢
「研修は実施できても、そのあとの設計が難しい」
「どう行動指針に翻訳し、評価制度とつなげればよいか分からない」
「現場を動かす設計や支援が属人化していて再現性がない」
こうした課題を感じている企業には、第三者の支援が変革のブースターになります。
まとめ:組織風土の醸成に必要なのは「言語化」「制度化」「行動化」
組織風土の醸成は、単なるスローガンづくりでも、1回の研修で完結するものでもありません。必要なのは、価値観を“行動できる言葉”に翻訳し、制度に落とし込み、日常に定着させる仕組みです。
そしてそれを実現するには、
- 経営層のコミットメント
- 管理職の巻き込み
- 現場への称賛とフィードバック
- 継続的な見直しと仕組み化
これらの連携が必要不可欠です。価値観を語るのではなく、育てていく。その覚悟が、組織を変える第一歩になります。
▶ 組織風土を言葉で終わらせない。行動に変え、成果につなげたい。
そんな想いを持つ方は、まずは下記をご覧ください。
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組織風土に関するよくある質問(FAQ)
- Q組織風土と組織文化は何が違うのですか?
- A
組織文化は企業の歴史や価値観に根ざした“信念体系”であり、比較的長期的・固定的です。
一方、組織風土は“現場の空気感”のようなもので、日常の行動や関係性のなかで変化・醸成が可能です。
- Q組織風土を醸成するには、どれくらいの期間がかかりますか?
- A
組織の規模や現状によりますが、半年〜2年程度の中長期プロセスが一般的です。
特に初期段階では「対話と仕組みの設計」を丁寧に行うことで、変化の加速が期待できます。
- Q組織風土が定着しない最大の原因はなんですか?
- A
多くの場合、価値観が“行動に翻訳されていない”ことが原因です。
理念やスローガンだけでなく、評価制度・行動指針・日常のフィードバックにまで落とし込む必要があります。
- Q管理職やミドルマネジメントが動いてくれません…
- A
風土醸成の鍵はミドルマネジメントの“納得と行動”です。
管理職向けの研修や制度連動、部門横断の共有の場を設けることで巻き込みやすくなります。
👉 詳しくはこちら:組織風土改革を成功に導く3ステップ
- Q外部パートナーに支援を依頼するメリットはありますか?
- A
あります。内部リソースでは難しい「制度設計の客観視」「定着設計のノウハウ」「抵抗の乗り越え方」などを支援でき、変革スピードが高まります。SHIFT AIでは、単なる研修ではなく、価値観を行動・仕組みに変える支援を行っています。
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