「良い企画だと思ったのに、上司や投資家から首を縦に振ってもらえない」。
新規事業の現場では、そんな経験をした方も多いのではないでしょうか。
原因は、アイデアそのものよりも「企画書の見せ方」や「構成」にあることがほとんどです。
新規事業企画書は、単なるアイデアメモではありません。
社内の承認を取り、資金や人材を引き出し、事業化への道筋をつくるための戦略ツールです。
しかし、背景や数字が不足していたり、競合との差別化が伝わらなかったりすると、どれほど優れたアイデアでも採択されません。
本記事では、上位企業やスタートアップの実例を交えながら、通る企画書の型・用途別の書き方・生成AIを活用した作成プロセスまで詳しく解説します。
さらに、社内外の承認後を見据えた「事業化逆算設計」もご紹介。
最後には、そのまま使える企画書テンプレートやAIプロンプト集への案内もありますので、ぜひ最後までお読みください。
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新規事業企画書とは?(役割と目的)
新規事業企画書とは、新たな事業構想を具体化し、関係者へ提案・承認を得るための公式資料です。
単なるアイデアメモやブレスト記録ではなく、「誰に、何を、なぜ、どのように提供し、どのような成果を上げるのか」を体系的に示すことが求められます。
2-1.提案書・事業計画書との違い
- 提案書:アイデアや施策を短くまとめ、興味喚起や方向性の確認を目的とする資料
- 事業計画書:事業の収支計画・資金繰り・KPIなど、実行段階を前提とした詳細な計画書
- 新規事業企画書:提案と計画の中間に位置し、承認を得るために必要な情報と実行の可能性を提示する資料
つまり企画書は、「この事業に投資する価値がある」と判断してもらうための入口資料です。
ゴールは“通す”ことであり、そのためには読み手の立場・関心・判断基準に合わせた構成が欠かせません。
2-2.社内向けと社外向けの違い
- 社内向け(上司・経営層)
→リスクと効果、リソース配分、既存事業とのシナジーを重視 - 社外向け(投資家・金融機関)
→市場規模・成長性・収益性・競合優位性・投資回収シナリオを重視
2-3.企画書が果たす役割
- 意思決定のための情報提供:数字・根拠・シナリオを整理
- 合意形成の促進:関係者間での共通理解を作る
- 実行計画の出発点:承認後、事業計画やMVP開発のベースになる
多くの失敗例では、「熱量はあるが根拠が薄い」「市場・競合の分析が不十分」など、読み手が“判断に必要な情報”を欠いています。
新規事業企画書の必須項目テンプレ(8〜10項目)
新規事業企画書は、読み手が短時間で事業価値を理解できるよう、情報の順序と粒度が鍵になります。
以下は多くの企業で通用する基本フォーマットです。
①表紙(タイトル・提案者情報)
- 事業名(キャッチーかつ内容が想像できるもの)
- 提案者名・所属部署・作成日
- サブタイトルで事業の特徴を一言補足すると効果的
②企画概要(エレベーターピッチ)
- 1〜3文で事業の全体像を説明
- 「誰に/何を/なぜ/どうやって」の4要素を簡潔に記載
最初の30秒で興味を持ってもらうことが重要。詳細は後で説明できるため、最初は全体像と独自性に集中。
③課題・ニーズの明確化
- ターゲット顧客の具体像(ペルソナ)
- 顧客が抱える課題や未充足ニーズ
- 課題の市場規模や発生頻度
④解決策(事業コンセプト)
- 提供する商品・サービスの概要
- 競合との差別化ポイント
- 顧客に提供する価値(ValueProposition)
⑤市場規模・成長性
- TAM(全市場)・SAM(狙う市場)・SOM(獲得可能市場)
- 市場成長率やトレンドデータ
- 参入タイミングの妥当性
⑥ビジネスモデル
- 収益の仕組み(売上源)
- 主な顧客獲得チャネル
- LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)の見通し
⑦実行計画(ロードマップ)
- フェーズごとのマイルストーン(例:PoC→MVP→本格展開)
- 必要なリソース(人材・技術・資金)
- スケジュール感
⑧財務計画(簡易版)
- 初期投資額
- 3〜5年の売上・利益予測
- 損益分岐点の見通し
⑨リスクと対応策
- 事業実行における主要リスク(市場・技術・法規制など)
- リスク軽減策・代替案
⑩まとめ・提案
- 改めて事業の魅力と優位性を強調
- 「承認いただきたい事項」を明確に記載
テンプレを使えば、抜け漏れなく作成できますが、質の高い根拠データや事例の充実度が採択率を左右します。
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企画書を通すための書き方・見せ方のコツ(読み手視点)
どれだけ斬新な事業アイデアでも、読み手の“YES”を引き出せなければ企画は動きません。
ここでは、承認者や投資家が企画書を見るときの心理を踏まえた書き方・見せ方のポイントを解説します。
読み手の評価基準を理解する
承認者は次の3点を軸に判断します。
- 収益性:利益を生み、持続可能か
- 実現性:リソース・スキル・期間内で実行できるか
- 戦略整合性:会社の中長期戦略に合致しているか
POINT
社内決裁では「リスク回避」が優先される傾向があり、社外(投資家)は「成長性」に重きを置きます。
この違いを意識し、同じ企画でも説明内容を変えることが重要です。
数字と根拠で説得力を出す
- 市場規模や成長率は、信頼できる調査データを引用
- 競合比較は定量情報(価格、シェア、顧客数)を活用
- 財務計画には前提条件(前提売上・単価・獲得率)を明示
ストーリーラインを設計する
読み手が自然に「なるほど」と思える流れを作るには、
課題提示→解決策提示→実現方法→収益予測→リスク対応→承認要請の順が効果的です。
図解とビジュアルの活用
- 市場規模はグラフ化、競合比較はマトリクス図に
- ロードマップは時系列の図表で示す
- 複雑な内容は「一目で理解できる」形に
生成AIを活用して精度とスピードを両立
- 課題整理やペルソナ設計のドラフトを作成
- 競合情報や市場トレンドのサマリーを自動生成
- 資料の文章校正や要約で表現の精度を向上
TIP
AIはあくまで補助ツール。一次情報の検証と独自視点の追加は必ず人が行うことで信頼性を確保できます。
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企画書作成を加速する生成AI活用例(プロンプト付き)
新規事業企画書は、「情報収集」→「構成設計」→「文章化」→「ブラッシュアップ」の各工程で時間と労力がかかります。
生成AIを適切に活用することで、作業時間を半減しつつ、より説得力のある企画書に仕上げることが可能です。
アイデア発想支援
- 他業界の成功事例や市場トレンドをリストアップ
- 課題に対する複数の解決策案を生成
- 想定外の視点(異業種コラボ、海外事例など)を提示
プロンプト例
あなたは新規事業の企画担当者です。
「○○業界」における最新トレンドと顧客課題を5つ挙げ、
それぞれに対する新規事業アイデアを3案ずつ提案してください。
表形式で出力してください。
ペルソナ設定
- 顧客像を明確化するための属性・行動・ニーズ整理
- 実在しそうな生活背景や購買動機まで描写
プロンプト例
「○○サービス」を利用しそうなBtoB顧客ペルソナを3人設定してください。
会社規模、役職、課題、意思決定プロセス、情報収集チャネルを含めて表形式で出力してください。
市場調査サマリー
- 公開情報やレポートを要約
- 市場規模・成長率・競合状況の整理
プロンプト例
日本国内の「○○市場」について、
市場規模・成長率・主要プレイヤー・参入障壁を簡潔にまとめてください。
出典も併記してください。
文章作成・校正
- 読みやすく論理的な文章へのリライト
- タイトル・見出しの案出し
プロンプト例
以下の文章を、社内提案用企画書に適したトーンに整えてください。
また、タイトル案を5つ提案してください。
文章:
[ここに原稿を貼り付け]
図表作成案
- 競合比較マトリクスやロードマップの構成案を生成
- 視覚的にわかりやすいレイアウトを提案
プロンプト例
新規事業企画書に入れる「競合比較表」の項目案を作成してください。
縦軸:主要機能、横軸:競合企業名(3社)+自社案
優位性が伝わるレイアウト案も提案してください。
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企画書を承認に導くプレゼン術
企画書が完成しても、それを承認に導く最後の関門がプレゼンテーションです。
紙面だけでなく、説明の仕方・場の作り方で結果は大きく変わります。
読み手ではなく「聞き手」に合わせる
- 承認者は限られた時間で判断するため、最初の3分で結論とメリットを伝える
- 詳細説明は後半に回し、質疑応答時間を十分に確保する
- 投資家相手ならROI(投資収益率)、社内決裁ならリスク軽減策を強調する
ストーリー型プレゼンの構成
効果的な順番は以下の通りです。
- 課題提示:現状の問題点を数値で明確化
- 解決策提示:自社案がどう解決するか
- 市場機会:成長ポテンシャルを提示
- 実現方法:体制・スケジュール・パートナー
- 収益予測とリスク対策
- アクションリクエスト:承認・投資依頼
図・ビジュアルの活用で印象付ける
- 市場規模は円グラフ、成長率は折れ線グラフで
- 競合比較はマトリクス図にして一目で優位性を伝える
- プロトタイプ画像やモックアップを提示して「現実味」を出す
質疑応答の準備
- 反論・懸念への回答を事前に想定してメモ化
- 質問がなかった場合は、自ら追加情報を補足して説得力を高める
- AIで過去の類似プレゼンや想定問答をシミュレーションしておくのも有効
生成AIプロンプト例
以下の新規事業企画書に基づき、承認者から想定される質問と回答例を10個作成してください。
[企画書の概要を記載]
最後のひと言で印象を残す
- 「この事業は、今だからこそやる価値がある」など感情に訴える
- 自分の熱意・信念を一文で言い切る
- 承認者が「やってみよう」と思える心理的後押しを作る
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まとめ|承認される新規事業企画書は「型+数字+説得力+実行力」が鍵
新規事業企画書を通すために必要なのは、「型」+「数字」+「説得力」+「実行力」です。どれか一つでも欠けると、どんな魅力的なアイデアでも承認は遠のきます。
また、情報収集や資料作成に時間をかけすぎると、チャンスを逃すリスクもあります。
そこで有効なのが生成AIの活用です。市場分析や文章作成、想定問答の準備までをAIに支援させれば、準備期間を半減しながら、より精度の高い企画書を短期間で仕上げられます。
今こそ、ツールとフレームワークを味方につけ、あなたの新規事業を一歩前に進める行動を始めましょう。
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- Q新規事業企画書と事業計画書の違いは何ですか?
- A
新規事業企画書は、主にアイデア段階〜立ち上げ初期の提案に使われ、事業の目的・概要・市場性・収益モデルなどを簡潔にまとめます。一方、事業計画書は、実行段階での詳細な計画や数値予測、資金調達計画まで網羅します。
- Q企画書の作成にかかる期間はどのくらいですか?
- A
内容の深さや調査範囲によりますが、通常は2〜4週間程度が目安です。生成AIを活用すれば、調査・文章化の時間を半分以下に短縮可能です。
- Q企画書に必ず入れるべき項目は何ですか?
- A
概要、課題と背景、解決策、ターゲット市場、競合分析、収益モデル、実行計画、リスクと対策、期待効果が基本です。これらを網羅することで、説得力が増します。
- Qプレゼン資料と企画書は別々に作るべきですか?
- A
はい。企画書は詳細情報を含む文章主体の資料ですが、プレゼン資料は要点を視覚的に伝えるスライド形式が適しています。企画書を基にプレゼン用に再構成するのがおすすめです。
- Q生成AIは企画書作成のどこまで使えますか?
- A
アイデア発想、文章作成、競合調査の要約、図解案の生成、想定問答作成など、多くの工程で活用可能です。ただし、最終的な戦略判断や数値精査は人間が行う必要があります。
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