製造業でのAI活用が進む中、「自社でのAIの活用の仕方が分からない」「実際の導入事例を知って社内で活かせそうか知りたい」と思う担当者の方は多いかもしれません。
具体的な成功事例を知ることで、AIの導入をスムーズに進められるようになるでしょう。また、業務効率化や製品の品質向上などの成果に繋がります。
この記事では、製造業でAIを活用している25の具体的な事例を挙げ、導入を進めるメリットやAIの種類などを詳しく解説します。
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製造業がAIの導入を必要としている背景

結論、製造業におけるAIの導入は、効率的で持続可能な生産体制を構築するために重要視されています。
現在、日本の製造業は人手不足や生産コストの増加が深刻な問題になっています。製造に携わる若者が減っており、原料や燃料の価格が上昇しています。このままでは高い技術力を保てず競争力を失う恐れがあるため、多くの企業がAIでの業務の効率化や自動化を進めています。
また、グローバル競争激化もAIの導入を後押ししています。世界の市場で戦うためには、高品質な製品を安定して生産することが求められます。ヒューマンエラーの発生による生産効率の低下は防がなければなりません。また、作業の属人化を防ぎ技術力を保つことも重要です。そこで、AIを活用し、生産ラインの無駄を減らす、熟練工の技術を解析してデータ化するなどの取り組みが必要とされています。
製造業でAIを活用する3つのメリット

製造業におけるAIの導入は、単なる業務のデジタル化にとどまらず、生産の最適化やコスト削減といった経営戦略にも直結しています。企業がAIを活用することで得られるメリットは多岐にわたります。
ここでは
- 生産性の向上
- 品質の向上
- コスト削減
これら3つのメリットについて解説します。
生産性向上:作業自動化でミス削減
AIを活用することで、製造工程の一部を自動化し、作業のスピードと精度を向上させることができます。人が行う作業にはどうしてもミスがつきものですが、AIによる自動制御を取り入れることで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。
例えば、ロボットによる組み立て工程の自動化や、AIが最適な生産スケジュールを算出する仕組みを導入することで、作業の効率が向上します。また、機械の稼働データを分析し、生産ラインの無駄な動きを最適化することも可能です。
これにより、同じリソースでより多くの製品を生産できるようになり、生産能力の向上につながります。
品質向上:AI検査で不良品削減
製品の品質を均一に保つことにもAIは効果的です。
特に不良品の検出に大きな効果を発揮するでしょう。AIによって製品表面の微細な傷や欠陥を検出し、精度の高い検査が実施できます。
従来の目視検査による不良品の見落としを防ぎやすくなるでしょう。また、AIに不良品のデータを分析させれば、発生原因の特定にも役立ちます。
コスト削減:最適な在庫管理が可能
コスト削減の面でもAIは活躍します。
AIは過去の販売データや市場動向を分析し、適切な部品などの調達タイミングを予測してくれます。また、AIを搭載したカメラを倉庫に設置すれば、滞留在庫の検知にも役立ちます。在庫が減ってきたタイミングで自動で発注するようなシステムを組むことも可能です。
過剰な在庫や誤発注を防ぎ、在庫管理で無駄なコストが発生しづらくなるでしょう。
製造業AIの6つの種類

製造業におけるAIの活用は多岐にわたります。生産工程の最適化から品質管理、設備の保守、安全対策まで、目的に応じたさまざまなAI技術が導入されています。どの種類のAIを導入するかによって、解決できる課題や得られるメリットが異なるため、自社の状況に応じた選択が重要です。
ここでは、製造業で活用されている代表的な6つのAIの種類について解説します。
- 品質管理AI
- 生産最適化AI
- 予知保全AI
- 自動化・ロボティクスAI
- サプライチェーン最適化AI
- 安全管理AI
それぞれ詳しく見ていきましょう。
品質管理AI
品質管理のAIはその名の通り製品の品質を一定に保つ役割を担います。
代表的なものは欠陥認識のシステムです。画像認識ができるAIを利用することで、製品の傷や歪みなどを検出し、品質のばらつきを抑えられます。また、製造データを分析し異常の兆候を早期に発見し、不良品の発生を未然に防ぐことにも役立ちます。
AIによって品質の安定化が実現でき、検査作業の負担軽減やコスト削減にもつながるでしょう。
生産最適化AI
AIには生産の最適化を実現するものもあります。
AIは消費者の動向や季節トレンドを分析し、高い精度の生産計画を自動で作成してくれます。また、設備の稼働率や従業員の作業状況を分析し、より効率よく人員を配置することも可能です。
熟練工の経験や勘に頼った生産管理を脱却し、より効率のいい生産体制を実現できるでしょう。
予知保全AI
設備の保守運用にもAIは役立ちます。
AIを導入したセンサーを活用して設備のデータを収集し、異常の兆候を検知することで、適切なタイミングでメンテナンスを実施できます。過去の故障データをもとに機械の状態を分析すれば、不具合の発生を予測し、計画的な保守作業につなげることも可能です。
突発的な設備停止を防ぐことで、生産ラインの安定稼働につなげられるでしょう。
自動化・ロボティクスAI
AIは作業の自動化にも利用されています。
代表的なものはロボットの導入です。人間が担っていた作業をAIを搭載したロボットが代わりに実施します。単純作業から精密な組み立てまで、幅広い工程で導入が進められています。
自動化により、作業の正確性が向上し、生産スピードの安定化が図れます。また、ロボットと人が協働することで、負担の大きい作業を分担でき、作業者の負担軽減にもつながります。
長時間の稼働が可能なため、生産効率の向上も期待できるでしょう。
サプライチェーン最適化AI
最適なサプライチェーンの構築にもAIは役立ちます。
よく活用される場面が在庫管理です。AIがいまある在庫の状態を把握することで、過剰在庫や欠品のリスクを抑えられます。また、消費者の動向や季節のトレンドを予測し、適切なタイミングで原料の発注を行うことも可能です。
製造業では、部品調達や物流の遅れが生産計画に大きく影響します。市場の変動や供給網のトラブルに柔軟に対応するため、データを活用したサプライチェーンの最適化が進められています。
安全管理AI
従業員の安全管理を行うAIもあります。
工場では危険を伴う作業が多く、リスクを最小限に抑える仕組みが必要とされています。その一環として、AIによる映像分析や動作検知の技術が導入されています。
AIを搭載したカメラが作業者の動きを監視し、不適切な姿勢や危険な動作を検知すると警告を発します。事故の発生を未然に防ぐことに役立つでしょう。また、機械の異常も即座に察知し、作業者へ警告を発することで、安全な作業環境を維持できます。
こうしたAI技術の活用により、労働災害のリスクが低減し、現場の安全性を高めることが可能です。
製造業AIの最新事例25選

AIの導入は、製造業のさまざまな分野で成果を上げています。生産の最適化や品質管理、設備保守など、各企業がどのようにAIを活用しているのかを知ることで、自社に合った導入方法を見つけやすくなります。
ここでは、AIを活用した最新の成功事例を前の章で挙げた、6つの種類ごとに分け、25の事例を紹介します。
- パナソニック|電気シェーバーのモーター設計効率化
- 東洋エンジニアリング|品質関連損失コストの削減
- ナブテスコ|風力発電機の故障予測
- 日本精工|品質管理の精度向上
- キユーピー株式会社|不良品の効果的な抽出
- 富士通|サポートデスクの業務効率化
- 日本触媒|生産計画の効率化
- ニチレイフーズ|AIで最適な生産・要員計画を自動立案
- 大阪ガス|設備の異常検知
- 金沢機工|「機工報」を用いた予防診断で製造ラインの損失を回避
- みつわポンプ製作所|ポンプ設備の故障予測とメンテナンス効率化
- ナブテスコ株式会社| 風力発電機の故障回避
- トヨタ自動車|プレス機の異常検知と最適な保全タイミングの確保
- オムロン|言語指示対応ロボット開発
- パナソニックコネクト|生成AI活用で年間18万時間の業務時間を削減
- デンソー|生成AI搭載自律型ロボットの開発で協働作業の革新へ
- 株式会社スプレッド|農作物のカット作業の自動化
- LIXIL|230万SKUのAI予測で欠品・過剰在庫リスクを低減
- マヒンドラ(インドの自動車会社)|拡大する事業規模に対応したサプライチェーンの効率化
- IBM| AI活用によるサプライチェーンの可視化と効率化
- キング醸造|在庫過多と欠品の同時発生リスク
- 東京エレクトロン×HACARUS|労災防止AIで製造現場の安全性向上へ
- JFEスチール|画像解析AIを用いた動作検知システム
- 富士通|姿勢推定による作業効率化
- キリンビール|異常兆候を検知するIoTシステム
どんな事例があるか見ていきましょう。
1.品質管理AIの事例
ここでは、品質管理AIを導入し、製品の品質を向上させた5つの事例を紹介します。
パナソニック|電気シェーバーのモーター設計効率化
パナソニックは、自社の電気シェーバーのヒゲの剃り残しや肌への負担の軽減を課題として抱えていました。そこで、電気シェーバーの深剃り性能と肌への優しさを向上させるため、AIを活用したモーター制御技術「ラムダッシュAI+」 を導入しました。
ラムダッシュAI+は、ヒゲの濃さをリアルタイムで検知し、最適なシェービングを自動制御 するAIです。AIが使用者のヒゲの状態を分析し、モーターの回転数を最適化します。
その結果、シェーバーの刃1枚あたりのカット効率が従来の製品に比べて約50%向上しました。また、肌への負担も軽減する結果となりました。
東洋エンジニアリング|品質関連損失コストの削減
東洋エンジニアリングは、品質管理に課題を抱えていました。熟練技術者の知見に依存する部分が多く、組織全体でノウハウを共有する仕組みが不足していたため、品質不良の要因分析や改善策の展開が遅れる課題がありました。
そこで、品質管理の精度を高めるため、ナレッジ活用AIを導入 しました。このAIは、過去の品質不良データを学習し、類似ケースを自動検出する機能を備えています。さらに、最適な改善策をリアルタイムで現場に提示することで、技術者の経験に依存せず、品質管理の標準化を可能にしました。
その結果、品質関連の損失コストが50%削減。ナレッジの共有と活用が進んだことで、対応スピードの向上と品質の安定化が実現しています。
出典:SOLIZE 品質関連損失コスト50%減へ、EPCプロポーザル業務のデジタル変革~組織知循環型・プッシュ式のナレッジ活用AI~
ナブテスコ|風力発電機の故障予測
ナブテスコは、遠隔地に設置される風力発電機の保守の難しさに直面していました。発電機に異常があると発電停止や高額な修理コストが発生するため、より高度な監視と予防保全が求められていました。
そこで、ナブテスコはAIを搭載した異常検知システム「Impulse」 を導入。このAIは発電機の旋回部にかかる負荷をリアルタイムで可視化し、異常の兆候を早期に検知します。結果、機器の長寿命化と突発的な発電停止の回数減少を実現しました。
出典:ブレインズテクノロジー ナブテスコ株式会社様:異常予兆検知プラットフォーム導入事例
日本精工|品質管理の精度向上
日本精工は製造製品の不良品検出に課題を抱えていました。従来の品質管理では、異常検知のために十分な不良データが確保できず、不良品のパターンを正確に学習させるのが難しい状況でした。
そこで、株式会社データグリッドが提供するAIである「Anomaly Generator」 を導入しました。Anomaly Generatorは、少量のデータから多様な不良品のパターンを生成するAIです。このAIにより、豊富な不良品データの学習が可能となり、不良品を高精度で検知するAIを自社で構築することに成功しました。不良品の発生率を低減しつつ、製造ラインでのリアルタイム検査に活用されています。
出典:PR TIMES データグリッドの生成AIを活用した製造業向けデータ生成基盤 『Anomaly Generator』を日本精工が導入
キユーピー株式会社|不良品の効果的な抽出
キユーピーは、2019年にマヨネーズの原料となる卵の品質チェックにAIシステムを導入しました。ひび割れや異常のある卵を迅速に排除することで、製品の品質維持と検査作業の効率化を実現しました。AIが食品の形状や色のわずかな違いを適切に識別してくれることが要因です。
従来の目視検査では作業者の負担が大きく、見落としのリスクがありますが、AIを活用することで検査精度を向上できます。
出典:AIを活用した原料検査装置をグループに展開 | ニュースリリース | キユーピー
2.生産最適化AIの事例
次に、AIによって生産を最適化した事例を3つ紹介します。
富士通|サポートデスクの業務効率化
富士通は、顧客からの問合せの対応時間の長さが課題となっていました。オペレーターがマニュアルを参照しながら回答していたことが原因です。
そこで、富士通はSalesforceのカスタマーサービス向けAI「Einstein for Service」を導入しました。このAIは、顧客からの問い合わせに対する返信内容の推奨や、オペレーターと顧客の会話内容の要約を自動生成する機能を備えています。
導入前、問合せに対するオペレーターの平均処理時間は約20分でしたが、導入後は約2分となり、約89%の削減効果が得られました。また、顧客対応後の事後処理業務にかかる時間も約3分から30秒に短縮されました。
サポートデスク業務の大幅な効率化を実現した事例だと言えるでしょう
出典:Salesforce 【生成AIで約8割工数削減】富士通のSalesforceサポートデスクが挑む顧客体験と生産性の向上
日本触媒|生産計画の効率化
日本触媒では、高吸水性樹脂(SAP)の多品種生産において、生産計画の作成に課題を抱えていました。熟練担当者の知見に依存しており、属人化やリソースの過剰投入が避けられない状況でした。
こうした課題に対応するため、生産計画を立てるAIをALGO ARTISと共同で開発。従来1日かかっていた生産計画の作成をわずか30分で完了させれるようになりました。
またAI導入後は生産の安定性が高まり、SAPの安定供給に加えて、省エネルギーやCO2排出量の削減にもつながっています。
出典:日本触媒 AI(アルゴリズム)を用いた生産計画最適化ソリューションを導入
ニチレイフーズ|AIで最適な生産・要員計画を自動立案
ニチレイフーズは、製造現場や間接部門の課題解決を目的に、業務効率化を推進している企業です。同社は2020年に「最適生産・要員計画自動立案システム」の導入を行いました。
このシステムでは、従来熟練工が担っていた計画立案をAIが代替します。熟練工が作成した過去の生産計画を分析することで、最適な生産・人員配置を自動で導き出し、計画を作成する仕組みです。システムの導入後は、計画作成に要する時間が従来の1/10に短縮されました。計画作成に頭を悩ませる必要がなくなったことから、心理的なストレスの緩和にもつながっています。
熟練者のノウハウをAIに落とし込むことで、現場全体の生産性向上に大きく貢献した事例です。
出典:ニチレイフーズ AI活用で生産計画を自動立案!生産性向上と働き方改革をめざす
3.予知保全AIの事例
続いて予知保全AIの導入事例を5つ紹介します。
大阪ガス|設備の異常検知
大阪ガスは、設備の異常検知に課題を抱えていました。従来の異常検知システムは過去のトラブルデータを基に判断するため、発声したことのない異常には対応が難しい という課題がありました。
そこで、AIを活用した異常予兆検知システム を開発。このシステムは、正常時の運転データをAIが学習し、通常とは異なる動きを検知する仕組み を採用しています。おかげで、過去に発生したことのない異常の兆候も早期に察知し、トラブルを未然に防げるようになりました。また、異常の発生前にメンテナンスできるようになったため、設備の維持コスト削減につながっています。
出典:大阪ガス AIによる異常予兆検知システムの開発と装置に合わせたAIシステム構築サービスの提供開始について~未経験のトラブルの早期検知と、お客さま自身でのAIの再学習が可能に~
金沢機工|「機工報」を自動車部品メーカーで活用
自動車部品メーカーA社では、設備の破損によって大きな損失が発生したことを受け、金沢機工が開発した「機工報」の導入を決定しました。「機工報」は、工作機械の稼働データをAIが自動で分析し、異常の予兆を検知できるソフトウェアです。
ソフトウェアの導入後は、部品製造機器の異常の兆候をいち早く把握することが可能になりました。迅速な部品交換によって、設備を正常な状態に保つことを実現しています。
出典:金沢機工株式会社 予知保全の事例5選! 導入のポイントについても徹底解説
みつわポンプ製作所|ポンプ設備の故障予測とメンテナンス効率化
みつわポンプ製作所は、ポンプ設備の安定稼働を維持するため、故障予測システム「RANDX」を開発しました。ポンプの長期間の運転によって突然の故障が発生し、業務に影響を及ぼすことが課題となっていたためです。
このシステムでは、AIがポンプの運転状況を定期的にチェックし、異常が見つかるとすぐにアラートを発信します。これにより、突発的なトラブルを減らし、設備の安定した運用を実現することができました。また、メンテナンス作業の効率も向上し、コスト削減にもつながるなど、よりスムーズな設備管理につながっています。
ナブテスコ株式会社|風力発電機の故障回避
ナブテスコ株式会社は、風力発電設備のメンテナンスに課題を抱えていました。特に、風力発電機の向きを調整するヨー駆動装置の劣化や故障に頭を悩ませていました。そこで同社は、風力発電機の故障を未然に防ぎ、安定稼働を実現するため、「CMFS(故障回避機能付き状態監視機器)」を開発しました。
このシステムでは、ヨー駆動装置にセンサーを設置し、負荷や温度などのデータをAIがリアルタイムで収集しながら分析を行います。負荷を自動で調整し、過度な負担がかからないよう制御することで、部品の消耗を抑え、装置の寿命を延ばします。さらに、収集データはクラウドに保存され、遠隔から状態を把握した上で、適切なタイミングで保守対応を行える仕組みも整備されました。
これにより、風力発電機の維持コストを削減し、安定した発電を継続でき、より効率的で持続可能なエネルギー供給に貢献しています。
出典:ナブテスコ株式会社 サステナブルな社会のために故障を「未然に防ぐ」風力発電機への挑戦 | イノベーション |
トヨタ自動車|プレス機の異常検知と最適な保全タイミングの確保
トヨタ自動車は、車製造用のプレス機の故障やトラブルを減らすことを目標としていました。これまでプレス機の点検は、定期的なチェックや熟練技術者の経験に頼っていましたが、異常検知システムの導入を決定しました。
トヨタ自動車は調和技研と共同で、AIを使った異常検出システムを開発。センサーで集めた電流、温度、振動、音などのデータをAIが分析し、故障の兆候をいち早くキャッチできるようになりました。これにより、最適なタイミングでメンテナンスを行い、機械が止まるリスクを最小限に抑えられるようになりました。
この技術の導入で、ダウンタイムの削減やコストカットを実現や作業の自動化が進み、より安定した生産ラインを構築することができました。
出典:調和技研 調和技研の画像系AIエンジン『visee』を活用した、トヨタ自動車 衣浦工場さまとの良品学習による製品異常検出AIの共同開発に関するお知らせ
4.自動化・ロボティクスAIの事例
AIによる自動化・ロボティクスを実現した事例も4つ紹介します。
オムロン|言語指示対応ロボット開発
オムロンは、人とロボットの協働を促進するため、自然言語による指示を理解し、学習するロボットの開発に取り組んでいます。特に調理作業に焦点を当て、レシピや料理動画から手順やコツを学習するAIを開発しました。
このAIは人間の言葉を理解し、適切な動作を自律的に実行します。従来のような専門的なプログラミングを必要とせず、作業者が簡単にロボットを操作できることが大きな特長です。
このAIにより、業務の効率化や労働負担の軽減が期待され、特に人手不足が課題となる飲食業での活用が見込まれています。
出典:Impress Watch オムロン、かしこく学ぶ・動く・繋ぐAIロボット実現へ
パナソニックコネクト|生成AI活用で年間18万時間の業務時間を削減
パナソニックコネクトは、自社開発のAIアシスタント「ConnectAI」を導入し、2023年6月からの1年間で社員1人あたりの平均労働時間を約20分削減しました。
OpenAIの大規模言語モデルをベースに開発されたこのサービスは、社内の質問応答や戦略策定に必要な基礎データの作成支援などに活用されています。品質管理に関する資料の社外秘情報1万ページ以上のデータを学習しており、質問に対して回答してくれる仕組みです。社員がわざわざ目視で資料を確認することが減り、業務効率を大きく向上させました。
今後は、ITサポートや人事、顧客対応などの分野にも対象を拡大し、職種ごとに最適化された個別AIの導入も検討しています。
出典:日経新聞 パナソニックコネクト、生成AIで社員1万2400人の労働時間を年間18万6000時間削減
デンソー|生成AI搭載自律型ロボットの開発で協働作業の革新へ
デンソーは、生成AI「ChatGPT」と音声認識技術を活用した自律型ロボットの開発を進めています。
デンソーの新型ロボットは人の自然な言葉を理解し、自ら判断して行動します。クラウドAIとロボット制御技術を連携させることで、「黒い飲み物を出して」といった曖昧な指示にも対応し、適切に動作します。
製造業での利用が期待されており、図面作成や工場内での荷物運搬などでの活用が見込まれています。
出典:マイクロソフト デンソーが生成 AI を活用し、人と協働できる AI ロボットを開発、人とロボットが共生する社会へと前進
株式会社スプレッド|レタス芯抜き作業の完全自動化で人手を8人分削減
植物工場を展開するスプレッドは、国内の食品生産工場でロビット社製のAIカットロボット「CUTR」を導入しました。レタスの芯抜き工程を対象に、人間の判断を必要としていたカット作業を完全自動化しています。
AIがレタスの外観から芯の位置や傾きを高精度に予測し、それに基づいて最適なカット方法を自律的に選択・実行する仕組みです。従来8人が必要だった作業が無人化され、作業時間と人件費の大幅削減につながりました。
加えて、可食部の廃棄量が減り、加工効率の向上と資源の有効活用にも寄与しています。今後は、白菜やキャベツなど他の葉物野菜への応用も視野に入れ、展開が予定されています。
5.サプライチェーン最適化AIの事例
続いて、AIによってサプライチェーンを最適化した事例も4つ紹介します。
LIXIL|230万SKUのAI予測で欠品・過剰在庫リスクを低減
LIXILは、PwCコンサルティングが提供するAI需要予測「Multidimensional Demand Forecasting(MDF)」を導入しました。サッシやドアなどの製品を対象に試験運用しています。
AI導入により、欠品や過剰在庫、廃棄リスクの低減を実現しました。高精度な需要予測が可能となり、適切なタイミングで原料などの発注ができるためです。さらに、海外工場から国内の物流センターへ最適な数量を出荷する仕組みにMDFを活用したことで、輸送コストの抑制にも成功しました。
出典:LIXIL AIを活用した需要予測を導入し、試験運用開始
マヒンドラ(インドの自動車会社)|拡大する事業規模に対応したサプライチェーンの効率化
インドの大手自動車メーカー・マヒンドラは、グローバルに拡大する事業規模に対応するため、AI搭載プラットフォーム「Maestro」を導入しました。
これにより、需要と供給の変化に柔軟に対応できるようになり、S&OP(販売・生産計画)の精度が大幅に向上しました。部門間の情報共有と連携も強化され、複雑な自動車部品調達における判断もスピーディーに行える体制も構築できました。
出典:https://www.businesswire.com/news/home/20240930633997/ja
IBM|AI活用によるサプライチェーンの可視化と効率化
IBMは、部品不足や輸送遅延が発生することに課題を感じていました。そこで、自社でAIを開発し、サプライチェーンの強化に努めました。
在庫をAIに管理させることで、適切なタイミングで部品を発注できるようになりました。また、道路の混雑状況のデータをAIが分析し、適切なルートや時間帯に配送を行うことで、部品調達を滞りなく実施しました。
結果として、1億6,000万ドルのコスト削減にもつながっています。
出典:IBMが世界初のコグニティブ・サプライチェーンを構築 – 日本
キング醸造|在庫過多と欠品の同時発生リスクの低減
キング醸造は、家庭用みりん風調味料・料理酒でトップシェアを誇る調味料メーカーです。従来は、原料の在庫過多と欠品が同時に発生し、管理の負担がの大きいという課題を抱えていました。需要の予測が難しかったためです。
そこで、ノーコードAI予測プラットフォーム「UMWELT」を導入し、販売実績や受発注情報などの社内データを分析。
導入後は、製品の需要を正確に予測することが可能になり、適切な在庫管理が実現できました。また、生産計画の効率化も進み、業務全体の負担軽減にもつながっています。
今後は、UMWELTを他部門にも展開し、さらなる業務改善を目指す方針です。
出典:需要予測AIで食品ロス削減と工数削減の実現へ|「日の出みりん」を展開するキング醸造が、ノーコード予測AIプラットフォーム「UMWELT」を導入 | 株式会社トライエッティングのプレスリリース
6.安全管理AIの事例
最後に、安全管理AIの導入事例も3つ紹介します。
東京エレクトロン×HACARUS|労災防止AIで製造現場の安全性向上へ
半導体製造装置の大手である東京エレクトロンと、AIソリューション企業のHACARUSは、製造現場における労働災害の未然防止を目指し、共同で労災防止AIを開発しています。
AIは小型カメラで作業現場を常時撮影し、HACARUS独自の画像解析技術で危険行動や保護具の不適切使用などの予兆をリアルタイムに検知します。検知された際は作業員と責任者に即座にアラートを通知し、アラート前後の映像は自動録画され、振り返りと対策に活用されています。
この取り組みは、スマート工場EXPOでも紹介され、工場内の安全確保とヒューマンエラー削減に向けた実用化が期待されています。今後は現場の声をもとにAI精度のさらなる向上を図り、より安全な労働環境の実現に貢献していく方針です。
出典:PR TIMES 東京エレクトロンとHACARUS 製造業の労災防止AIを共同開発
JFEスチール|画像解析AIを用いた動作検知システム
JFEスチールは、製造現場の労働災害削減を目的に、画像解析AIを活用した動作検知システムを導入しました。目視での作業員の安全行動の評価から脱却するためです。
同社が導入したAIは従業員による行動(階段昇降や物の持ち運びなど)をリアルタイムで評価します。作業員が安全行動を遵守した場合にはスピーカーから称賛の言葉を発し、違反時には警告を発することで、意識改革と習慣化を促進しました。
この導入により、安全行動の遵守率が向上。従業員からは「褒められることで前向きに取り組める」と好意的な反応があり、監視型のシステムとは異なるモチベーション向上の効果も確認されています。
参考:「労働災害の削減を目指す」。JFEスチールが取り組む、画像解析AIを用いた動作検知システム。 | Lightblue
富士通|姿勢推定による作業効率化
富士通は、AI技術を用いた高精度の姿勢推定技術を開発し、病院や介護施設における見守りの質を向上させています。
従来は、センサーから得られるデータが粗く、転倒の兆候を検知することが困難でした。しかし、富士通のAIモデルは微細な動作の変化を正確に捉えることが可能です。また、このシステムは人の転倒の予兆を検知すると、自動でアラートが出る仕組みになっています。
病院や高齢者施設での導入が進んでおり、介護現場での負担軽減と迅速な対応に貢献しています。
出典:ミリ波センサーで収集した点群データから人の姿勢を高精度に推定する新技術を開発 : 富士通
キリンビール|IoTとAIで異常兆候を検知し、生産ラインの安定化を実現
キリンビールは、AIを活用した異常検知システムを導入し、設備の予防保全体制を強化しました。
これまで熟練作業員の経験に頼っていた点検作業を、リアルタイムで収集される振動や温度、電流などのデータに基づいて数値で可視化し、異常の兆候を早期に検知する仕組みを構築しました。生産ラインの安定稼働やメンテナンスの効率化が実現し、現場の負担軽減にもつながっています。
今後は、他工場への展開やグループ会社による外販も視野に、さらなる技術活用を進めていく予定です。
出典:キリンビール北海道千歳工場で、センサー活用・ビッグデータ解析による 缶商品パッケージン
まとめ:製造業のAI活用事例を参考に、自社の導入を検討しよう
本記事では、製造業におけるAI導入の具体的な事例を通じて、品質管理や生産計画、予知保全など、さまざまな活用方法を紹介しました。AIを活用することで、生産性の向上やコスト削減、品質の安定化といった多くの効果が期待できます。
導入にあたっては、自社の課題を明確にし、現場の理解と協力を得ながら、最適なAIを選定することが重要です。導入後の定着や運用体制の整備も欠かせません。スムーズな運用体制を整えることで、競争力の強化や将来的な成長につながります。
まずは事例を参考に、自社で実現可能な領域から取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
AIをどうやって導入すればいいのかわからない方は、ぜひSHIFT AIの無料相談をご利用ください。AIの専門家があなたの疑問や課題にお答えし、AI導入を手厚くサポートします。