紙の伝票、Excelの手入力、属人化した経理業務。
毎月の締め処理が終わるころには、チーム全員がぐったりしていませんか?

いま、経理部門は大きな転換点に立っています。電子帳簿保存法やインボイス制度など、法改正の波に追われる一方で、「人手不足」「在宅対応」「スピード経営」への対応も求められています。

そこで注目されているのが、経理DXツールです。入力・承認・仕訳・請求といった定型業務を自動化し、経理担当者が数字を打ち込む人から経営を動かす人へと進化するための基盤です。

しかし、ツールを導入した企業のうち、約3割が「期待した効果を得られなかった」とも言われています。原因は単純。「自社に合わないツールを選んでしまった」、または「導入後の運用・教育設計が不十分だった」のです。

本記事では、
「経理DXを実現するツールを比較したい」「自社に合う選定基準を知りたい」
と考える方に向けて、以下のポイントをわかりやすく整理します。

  • 経理DXを支える主要ツールとその役割
  • 導入に失敗しないための選定・比較の基準
  • 電子帳簿保存法・インボイス制度対応の視点
  • 導入後に成果を出すための運用と教育のポイント

ツール導入はゴールではありません。それは、経理を「作業部門」から「戦略部門」に変える第一歩です。

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経理DXとは?ツール導入だけでは「効率化」にならない理由

経理DXとは、経理業務そのものを再設計する取り組みです。単に紙やExcelをシステムに置き換えるのではなく、データを一元化し、経営判断に活かせる仕組みをつくることが目的です。

法改正や人手不足、リモート対応など、経理部門を取り巻く環境は急速に変化しています。いま求められているのは「作業の自動化」ではなく、経営スピードと精度を高める経理体制への変革です。

クラウド会計ソフトやRPA、AI-OCRといった経理DXツールは、その実現を支える手段のひとつ。ただし、業務設計が変わらないまま導入しても、非効率なプロセスは残ったままです。だからこそ、導入前に業務を整理し、「どの業務をどのツールで自動化するか」を明確にすることが成功の前提になります。

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経理DXを支える主要ツールと機能領域

経理DXを進めるうえで重要なのは、目的に合ったツールを選ぶことです。DXツールと一口に言っても、得意領域や導入効果は大きく異なります。ここでは、主要なツールカテゴリを整理しながら、それぞれがどの課題を解決するのかを見ていきましょう。

クラウド会計ソフト

帳簿や仕訳を自動で処理し、レポートをリアルタイムで共有できるツールです。入力作業を減らすだけでなく、経営層がすぐに数字を確認できる環境を整えます。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

定型業務を自動化する仕組みで、「人が行っていた単純作業」をロボットが代行します。たとえば、請求データの転記や支払処理の自動化など、日常的なタスクの効率化に最適です。

AI-OCR

紙の請求書や領収書を読み取り、デジタルデータに変換する技術です。ペーパーレス化と入力ミスの削減に効果的で、RPAやクラウド会計ソフトと組み合わせると処理がさらにスムーズになります。

ワークフロー・経費精算システム

稟議・承認・経費申請などを電子化し、承認ルートを自動で設定します。メールや紙でのやり取りを減らし、決裁スピードの向上と内部統制の強化を実現します。

電子帳簿保存法・インボイス制度対応ツール

法改正に対応するための記録・保存管理を行うツールです。電子帳簿保存法やインボイス制度に準拠した処理を行うことで、監査対応や法令順守リスクを軽減します。

ツールカテゴリ主な目的導入効果の例
クラウド会計ソフト記帳・仕訳の自動化入力工数の削減・リアルタイム集計
RPA定型業務の自動処理転記・支払処理などの省力化
AI-OCR紙帳票のデジタル化入力ミス防止・ペーパーレス化
ワークフロー申請・承認の効率化承認スピードの向上
電子帳簿保存法対応ツール法令対応・文書管理監査リスク低減・電子保存対応

このように、経理DXを支えるツールは多岐にわたります。次の章では、これらをどう比較・選定すれば失敗せず導入できるのか、経理部門が押さえるべき選び方の基準を解説します。

経理DXツールの選び方と比較ポイント

経理DXツールを導入する際に失敗しないためには、「比較の軸」を明確にすることが欠かせません。機能や価格だけを見て判断すると、導入後に「想定していた効果が出ない」という事態を招くことがあります。ここでは、経理部門が押さえておくべき選定基準を5つに整理しました。

機能範囲はどこまで自動化できるか

最初に確認すべきは、ツールが対応する業務領域の範囲です。入力・承認・仕訳・レポートなど、どこまでを自動化できるかを把握しましょう。RPAは転記や登録の自動化に強い一方で、会計分析までは対応しないなど、ツールごとの得意分野を理解しておくことが重要です。

既存システムとの連携性

DXの真価は、ツール単体ではなく全体の仕組みとして動くかどうかにあります。会計ソフト、販売管理、給与計算など、既存システムとの連携が取れなければ、結局どこかで手作業が発生します。APIやCSVなどの連携形式を確認し、業務フローを途切れさせない設計を意識しましょう。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応

近年の法改正はDX推進の大きな原動力ですが、同時に対応漏れが経理リスクにつながる要因でもあります。電子帳簿保存法における検索要件やタイムスタンプ、インボイス制度での区分記載処理など、実務レベルでの運用が可能かをチェックしてください。

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導入コストと運用負担

DXツールの費用対効果を判断する際は、初期費用と月額コストだけでなく、設定や教育、運用にかかる時間も含めて検討する必要があります。導入支援やオンボーディング体制が整っているかどうかも、定着率を左右する重要なポイントです。

サポートとアップデート体制

DXは導入して終わりではなく、運用しながら進化させていくプロセスです。法改正への対応や不具合の修正、機能拡張などをどのようにサポートしてくれるかを確認しましょう。継続的なアップデートと支援体制があるベンダーを選ぶことが、長期的な成功につながります。

比較項目確認すべきポイント評価の目安
機能範囲自動化できる業務領域入力〜分析まで対応しているか
連携性他システムとのAPI・CSV連携データ連携が双方向で行えるか
法制度対応電帳法・インボイス対応証跡保存・検索要件を満たすか
コスト初期費用・運用負担ROI(費用対効果)が見込めるか
サポート体制導入支援・保守・教育継続的な更新と伴走支援の有無

これらの基準を整理して比較することで、自社に合うツールがより明確になります。次の章では、目的別にどのツールがどの課題に強いのかを、実際の比較軸に沿ってわかりやすく整理していきます。

目的別に見る経理DXツールの比較一覧

経理DXツールは、それぞれ得意とする領域が異なります。重要なのは「どの課題を解決したいのか」を明確にしたうえで選ぶことです。ここでは、目的別に最適なツールタイプと導入効果を整理します。どの領域に投資すべきかを見極めることで、ムダのないDX推進が可能になります。

手入力の多さを解消したい場合

請求書や領収書などの紙帳票が多く、入力作業がボトルネックになっている企業には、AI-OCRやRPAの組み合わせが効果的です。AI-OCRで帳票をデジタル化し、RPAでシステム登録まで自動化すれば、入力業務の大部分を削減できます。これにより、人為的ミス防止と業務スピードの大幅な向上が期待できます。

申請・承認の遅れを改善したい場合

経費精算や稟議承認などのワークフローが紙やメールで回っていると、意思決定が遅れます。この課題には、ワークフローシステムや経費精算システムが最適です。承認ルートの自動設定や進捗可視化により、承認漏れを防ぎ、決裁スピードを飛躍的に高めることができます。

法制度対応を効率化したい場合

電子帳簿保存法やインボイス制度の対応は、経理部門にとって避けて通れません。ここでは、電子帳簿保存法対応ツールやインボイス対応システムが重要な役割を果たします。自動で要件を満たすデータ形式に変換し、法改正に強い経理体制を構築できます。

集計・報告業務を自動化したい場合

経営レポートや月次決算の集計に時間がかかる場合は、クラウド会計ソフトとBIツールの連携が効果的です。会計データをリアルタイムで可視化し、経営層が即座に意思決定できる環境をつくります。特に、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを組み合わせることで、数字を分析資産に変える経理を実現できます。

解決したい課題有効なツールタイプ主な導入効果
手入力が多いAI-OCR/RPA自動入力・ミス防止・工数削減
承認が遅いワークフロー/経費精算システム承認スピード向上・内部統制強化
法対応が複雑電子帳簿保存法/インボイス対応ツールコンプライアンス強化・監査対応効率化
集計が手作業クラウド会計+BIツールリアルタイム分析・経営判断の迅速化

目的に応じたツールを選ぶことで、経理部門の負担は確実に減り、戦略的な時間の使い方が可能になります。
ただし、導入時に注意すべき落とし穴もあります。次の章では、ツール選定の際に陥りがちな3つの誤りを紹介します。

導入前に押さえておくべき3つの落とし穴

経理DXツールの導入で失敗する企業の多くは、ツールそのものよりも「導入プロセス」や「社内体制」に原因があります。便利な機能を備えたツールでも、準備不足のまま進めると期待した成果は得られません。ここでは、導入前に注意すべき3つの落とし穴を整理します。

1. 現場フローを整理せずにツールを選んでしまう

多くの企業が「現状の業務をそのままシステム化すれば効率化できる」と考えがちです。しかし、非効率なフローをデジタル化しても自動化された無駄が生まれるだけです。ツールを導入する前に、現場ヒアリングを行い、業務の重複や手戻りを整理することが不可欠です。DXは、現状を見直すところから始まります。

2. DXを経理部内だけのプロジェクトにしてしまう

経理DXは、経理部門だけで完結するものではありません。購買・営業・総務など、他部署とのデータ連携や承認フローが一体化してこそ効果を発揮します。部門を横断した体制を整えずにツールを導入すると、「結局、経理だけが負担増になった」という結果に陥りがちです。DX推進チームを社内横断で立ち上げ、全社視点での運用設計を意識しましょう。

3. 教育・定着フェーズを軽視してしまう

導入後に最も多い課題が、「現場がツールを使いこなせない」という問題です。便利なツールでも、操作に慣れていなければ定着しません。初期研修やマニュアル整備だけでなく、運用開始後もフォローアップ体制を維持することが大切です。

特に、経理業務は月次や四半期単位で動くため、「使って慣れる期間」を設ける設計が成功のカギになります。

落とし穴よくある失敗例回避するためのポイント
業務整理をせずに導入現状のムダをそのままデジタル化現場ヒアリングと業務フローの棚卸し
経理部門だけで進める他部署との連携が取れず混乱全社的なDX推進チームの設置
教育・定着を軽視操作が定着せず元の運用に戻る研修+運用フォロー体制の構築

DXは「導入して終わり」ではなく、「運用しながら育てる仕組み」です。次の章では、ツール導入後に成果を出すための運用設計と教育のポイントを解説します。ここからが、経理DXを本当に成功させるためのステップです。

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経理DXはツールの導入後に成果を出すための運用設計と教育のポイント

経理DXはツールを導入した瞬間に終わりではなく、そこから成果を生み出す「運用フェーズ」こそが本番です。導入後に効果を感じられない企業の多くは、運用設計や教育を後回しにしているケースが目立ちます。ここでは、DXを定着させるための3つの実践ポイントを紹介します。

スモールスタートで運用を安定させる

DX導入初期にすべての業務を一気に自動化しようとすると、現場に混乱が生じやすくなります。まずは特定の業務領域(例:請求処理や経費精算)からスモールスタートし、成果を確認しながら段階的に範囲を拡大するのが理想です。成功体験を積み上げることで、現場の抵抗感を減らし、社内全体の理解と協力を得やすくなります。

定着ロードマップを設計する

DXの効果を定量的に実感するには、導入後3〜6か月の定着ロードマップを設計しておくことが重要です。たとえば「1か月目は入力精度の安定」「3か月目は承認スピードの改善」「6か月目はレポートの自動化」といった形で、成果のマイルストーンを明確に設定します。これにより、定着状況を可視化し、改善点を早期に発見できます。

定着期間主な取り組み内容期待される効果
1か月目現場トレーニング・運用ルール整備操作習熟・混乱防止
3か月目自動化範囲の拡大・承認プロセス調整業務スピード向上
6か月目レポート自動化・分析活用の定着経営判断の迅速化・定量効果の把握

教育と評価の仕組みを整える

ツールを定着させる最大の鍵は、「人の理解と習慣化」にあります。単発の研修で終わらせず、継続的な教育の仕組みを整えることが必要です。新任担当者向けマニュアルの作成や、操作テスト・活用事例共有などを定期的に行うことで、全員がツールを使いこなす状態を維持できます。また、DX活用を評価制度に組み込むと、モチベーション向上にもつながります。

経理DXを成功させるには、「ツールを使う人」と「仕組みを支える体制」の両輪を回すことが欠かせません。次の章では、こうした運用を通じて経理部門を作業部門から戦略部門へ変革するための最終ステップを解説します。

ツール導入は「経理変革」の第一歩

経理DXツールの導入はゴールではなく、経理部門を「作業部門」から「戦略部門」へ進化させるための第一歩です。業務効率化によって空いた時間を「経営に貢献する業務」に振り向けられるかどうかが、DX成功の分かれ道になります。単なる自動化にとどまらず、データを活用して経営判断を支援する攻めの経理へと変わることが、次のステージです。

経理DXを通じてデータが蓄積されれば、原価構造の分析やキャッシュフローの改善、将来予測といった意思決定支援が可能になります。こうした経営視点のデータ活用が進むことで、経理は「結果をまとめる部署」から「未来をつくる部署」へと役割を拡張できるのです。

さらに、ツールを使いこなす人材が育つことで、現場が自走する経理組織が生まれます。仕組みだけでなく「考える力」を持つ人材を増やすことで、法改正や新システムへの対応スピードも格段に高まります。これが本当の意味でのDX、つまり変革が定着した状態です。

SHIFT AI for Bizの研修プログラムでは、こうした「仕組み+人の変革」を同時に進めるためのノウハウを体系的に提供しています。経理部門を単なる効率化の対象ではなく、企業の意思決定を支える戦略基盤へと導くことが目的です。

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まとめ|経理DXの成功は「ツール×運用×人材」で決まる

経理DXは、単に便利なツールを導入すれば成功するものではありません。自社の課題を正確に把握し、最適なツールを選び、現場に定着させる運用と人材育成が揃ってこそ、真の効果が現れます。DXの目的は効率化ではなく、「経理を経営の意思決定に活かす」ことです。

ツール選定では、クラウド会計・RPA・AI-OCR・ワークフローなどの機能を比較しながら、自社の業務に合った組み合わせを見極めることが重要です。そして、導入前の業務整理と教育体制の設計を怠らないことで、DXの効果を最大化できます。

SHIFT AI for Bizでは、単なるツールの使い方ではなく、DXを現場で自走させるための実践研修を提供しています。経理部門の自動化・標準化・戦略化を同時に進めることで、経理が「数字を扱う部門」から「経営を動かす中枢」へと変わることを支援します。

経理DXは、未来の経営を支える基盤づくりです。今日の改善が、明日の競争力を生み出します。

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経理DXツールの導入に関するよくある質問(FAQ)

Q
Q1. 経理DXツールの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A

ツールの種類や導入範囲によって異なりますが、平均的には3〜6か月程度が目安です。小規模な経費精算システムなどは1〜2か月で運用開始できる場合もあります。一方で、会計ソフトやRPAを含む全社的なDXでは、業務設計・テスト・教育を含めて半年ほどかかるケースが一般的です。重要なのは、スピードよりも「定着までの設計」です。

Q
Q2. 経理DXを進めるには、まずどの業務から着手すべきですか?
A

おすすめは、処理量が多く、定型化しやすい業務から着手することです。たとえば、請求書処理・経費精算・支払申請などが代表的です。これらはRPAやAI-OCRとの相性がよく、早期に効果を実感できます。導入初期はスモールスタートで成果を出し、徐々に範囲を拡大していくのが定着のコツです。

Q
Q3. 経理DXツールを導入すると、コストはどのくらい削減できますか?
A

ツールの導入規模にもよりますが、業務時間を30〜50%削減できるケースが多く見られます。たとえば、AI-OCR+RPAを導入した企業では、月末処理の作業時間を約半分に短縮できた例もあります。人件費削減だけでなく、残業時間の削減や決算スピードの向上など、間接的なコスト削減効果も大きいのが特徴です。

Q
Q4. ツールを入れたのに効果が出ない場合、どうすればいいですか?
A

原因の多くは「業務設計」と「教育体制」の不足です。まずは、現状の業務プロセスを見直し、ツールが正しく機能しているかを確認しましょう。そのうえで、定着を支援する研修や運用サポートを導入すると改善が早まります。SHIFT AI for Bizでは、導入企業の課題に合わせたDX推進研修を提供しており、ツールの活用と現場運用の両面から支援します。

Q
Q5. 中小企業でも経理DXは実現できますか?
A

もちろん可能です。むしろ中小企業ほど、DXの効果が早く出やすい傾向にあります。クラウド型ツールの普及により、初期費用を抑えたスモールスタートが可能になっています。経理DXは「規模の問題」ではなく「体制と意志の問題」です。小さく始めて確実に成果を積み上げることで、持続的な変革を実現できます。

経理DXを成功させるには、ツール導入後の使いこなし方が鍵です。現場が自走できるDX推進体制を築きたい方は以下をチェックしてください。

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