経理DXを進めようとしても、現場では「結局なにから始めればいいのか」が見えず、立ち止まるケースが少なくありません。
ツールを導入したのに紙とハンコが残り、結局Excelの転記作業が続いている。そんな形だけDXが全国の経理部門で起きています。
本来のDXとは、単にシステムを入れ替えることではなく、「業務の流れ」「人の動き」「データの使い方」を同時に変える取り組みです。
にもかかわらず、進め方を誤ると効率化どころか混乱を招くのが経理DXの難しさ。
この記事では、「経理DX 進め方」というキーワードで多くの人が探している正しい順序を、5つの実践ステップで解説します。
属人化・紙文化・制度対応など、現場の課題を乗り越えながら、経理部門が経営の意思決定に貢献するチームへ変わるまでの道筋を示します。
経理DXとは?目的と本質を3分で整理
経理DXとは、単なる「デジタル化」ではなく、経理業務そのものを再設計し、経営の意思決定を支える仕組みに変えるプロセスです。紙とハンコの文化をデジタルに置き換えるだけでは、真のDXとは言えません。重要なのは「人」「業務プロセス」「データ」を三位一体で変革し、継続的に改善できる体制を作ることです。
DX化とデジタル化の違い
「デジタル化」は、紙の請求書をスキャンして電子保存するなど、既存業務を効率化するための手段を指します。一方で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、その業務のあり方や意思決定の構造そのものを変える取り組みです。
経理DXでは、経費処理や入金消込といったルーチン業務を自動化するだけでなく、経営が迅速に判断できるようデータを集約・分析できる仕組みを整えることが求められます。
たとえば、請求処理が早くなっただけでは不十分。
処理スピードが上がった結果、どの経費が利益を圧迫しているのかを即座に可視化し、意思決定に反映できる状態を作ることがゴールです。
| 区分 | デジタル化 | DX(デジタルトランスフォーメーション) |
| 目的 | 作業効率化 | 業務と経営の変革 |
| 対象 | 個別業務 | 全体の業務プロセス |
| 担い手 | 現場担当 | 経営・部門横断チーム |
| 成果 | 時間削減・ミス防止 | 意思決定スピード・付加価値向上 |
経理DXがもたらす本質的な価値
経理DXの最終的な目的は、経理を「数字を処理する部門」から「経営を動かす部門」へと変えることです。定型作業を減らし、人の時間をデータ分析や経営支援に充てることで、企業全体の競争力を高めます。
これにより、経営判断のスピードが上がるだけでなく、属人化の解消や内部統制の強化にもつながります。
DX化を成功させた企業は、決算の早期化や業務の見える化だけでなく、経理部門が戦略的な意思決定の中心に立つという文化変革を実現しています。
このように、経理DXの本質は「テクノロジー」よりも「組織と人の変化」にあります。次の章では、こうした変革を求められる背景と、なぜ今それが重要なのかを掘り下げていきましょう。
より詳しいDXの全体像は「経理DXとは?導入から定着までのステップと成功のポイントを解説」で解説しています。
経理DXが必要とされる背景
経理DXは一時的な流行ではなく、制度改革・人材環境・働き方の変化が同時に押し寄せている構造的な必然です。今、経理部門に変化を求める圧力は過去最大級に高まっています。その背景を理解することが、正しい進め方を描く第一歩になります。
法改正による業務変化の加速
経理DXを後押ししている最も大きな外的要因が、電子帳簿保存法とインボイス制度です。これらは「紙とハンコ」を前提とした旧来の業務を抜本的に変え、デジタルでの証憑管理と承認を標準化しました。
紙の請求書を回覧して押印するプロセスは、もはや法的にも非効率的な遺産です。今後は「法対応=DX対応」と捉え、制度をきっかけに業務プロセスそのものを刷新する企業が生き残る時代になります。
人手不足と属人化の深刻化
中堅企業を中心に、経理人材の採用難と離職リスクが深刻化しています。担当者ごとにノウハウが分断され、「この処理はあの人しかできない」という属人構造が業務停滞を招く典型的なボトルネックです。経理DXは、自動化と標準化によってこの属人化を解消し、誰でも処理できる体制を作る手段です。結果として、業務継続性が高まり、経理部門全体の生産性が底上げされます。
働き方改革とリモートワークの対応
リモートワークが一般化する中で、経理部門は「紙がある限り出社が必要な最後の部署」と揶揄されてきました。請求書処理や経費精算が物理的な書類を前提にしている限り、柔軟な働き方は実現できません。
経理DXを通じてクラウド会計や電子承認フローを導入すれば、場所に縛られない経理運営が可能になります。それは単なる効率化ではなく、優秀な人材を確保し続けるための環境投資でもあります。
経営スピードとデータ活用の要求
経営判断のスピードが競争力を左右する今、経理にはリアルタイムなデータ分析と報告が求められています。従来のように「月次締めを終えてから報告」では遅く、意思決定の遅れがそのまま損失につながります。経理DXで業務データを統合・可視化すれば、経理が報告する部署から導く部署へと進化します。これはツールの話ではなく、企業全体の意思決定構造を変える取り組みです。
これらの要因が重なり合い、今まさに経理DXが全社的な優先課題になっています。次章では、こうした課題を整理しながら、現場で確実に成果を出すための5つの進め方ステップを解説します。
経理DXの進め方【5ステップでロードマップ化】
経理DXを成功させるには、勢いではなく「正しい順序設計」が欠かせません。ツールを導入する前に、現状の課題と目的を整理し、ステップごとに着実に進めていくことが重要です。ここでは、多くの企業が成果を上げている進行プロセスをもとに、現場で実践しやすい5つのステップを解説します。
① 現状を見える化する ― 属人タスクとボトルネックの洗い出し
最初のステップは、今どんな業務がどのように行われているかを可視化することです。ここを飛ばすと、課題が曖昧なままツール導入に進み、後で「結局使いこなせない」事態に陥ります。経費精算、支払処理、請求書発行、入金消込などの主要業務を棚卸し、担当者、使用ツール、処理時間を一覧化しましょう。
以下のような表を作ると、属人タスクや重複作業が浮き彫りになります。
| 業務プロセス | 担当者 | 使用ツール | 所要時間 | 問題点 |
| 経費精算 | Aさん | Excel・紙申請 | 3時間/日 | 二重入力・承認遅延 |
| 請求書発行 | Bさん | 会計ソフト | 1時間/日 | フォーマット統一されていない |
| 入金消込 | Cさん | 銀行明細CSV | 2時間/日 | 手作業によるミス多発 |
この「現状把握」がDXの起点です。属人化している業務や手戻りが多いプロセスを明確にし、どこにデジタル化の効果が出やすいかを見極めましょう。
② 目指す姿を描く ― KPIと業務設計を設定
次に、理想の状態(To-Be)を定義します。経理DXの目的は「ツール導入」ではなく、経営判断のスピードを上げるための業務変革です。そのため、ゴールを数値で表すKPIを設定します。たとえば「月次決算を10営業日→5営業日に短縮」「紙の伝票をゼロ化」「経理部門の残業を30%削減」など、定量的な目標を設定しましょう。
現状(As-Is)と理想(To-Be)を並べたギャップ分析を行い、課題を優先度ごとに分類することがポイントです。この段階で「どこからDXを始めるか」が決まり、無理のないロードマップが描けます。
③ ツールを選ぶ ― DX推進の技術基盤を整える
課題を明確にしたうえで、必要なツールを選定します。代表的なのはクラウド会計ソフト、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、AI-OCR(紙帳票の自動読み取り)などです。
ただし、ここで注意したいのは部分最適の罠です。請求書処理だけ、経費精算だけを個別に自動化すると、システム間でデータが分断され、逆に手間が増えることがあります。ツール選定時には、将来的にデータが一元化できる構成を意識し、IT部門やベンダーと連携して全体設計を行いましょう。
また、法対応を見据えた選定も必須です。電子帳簿保存法対応、インボイス対応がスムーズにできるかどうかは、導入後の運用負担を大きく左右します。
④ 運用設計と社内ルールの統一
ツールを導入しただけではDXは定着しません。運用ルールを標準化し、組織全体で共通認識を持つ仕組みを整えることが肝心です。承認フローの順序、ファイル保存先、エラー対応の手順などを明文化し、運用マニュアルを整備します。
特に経理DXは、他部署との連携(営業、総務、人事など)が欠かせません。全社的に「誰が・いつ・どのデータを扱うのか」を明確にし、情報の流れを統一することで、後のトラブルを防げます。ここでのルールづくりが、DXを一過性の施策で終わらせない鍵です。
⑤ 教育・定着 ― 人材育成と継続的改善
最後のステップが、人と文化の定着です。DXを支えるのはシステムではなく、使いこなす人材です。ツール操作の研修はもちろん、データ分析や業務改善の思考法など、DXを推進できる「現場リーダー」を育てることが不可欠です。
さらに、定着後も改善サイクル(PDCA)を回し続ける仕組みを持つことが重要です。定期的にKPIを見直し、業務フローをアップデートすることで、DXが企業文化として根づきます。
この「人と仕組みの定着」こそ、他社との大きな差を生む要素です。SHIFT AI for Bizの法人研修では、この定着フェーズを支援する実践プログラムを提供しています。現場を動かす力を強化したい方は、研修プログラムの詳細をこちらで確認してください。
経理DXの成功に必要な3つの視点
経理DXを形だけで終わらせないためには、単なるツール導入や業務効率化にとどまらず、「業務」「組織」「人材」。この3つの視点を同時に整えることが不可欠です。どれか一つでも欠けると、改革は一時的な効果で止まり、組織に定着しません。DXを持続的に成功させるための3つの柱を、具体的に整理していきましょう。
業務プロセスの再設計|ツールに業務を合わせない発想
多くの企業がつまずく原因は、「ツールに合わせて業務を変えよう」とする発想にあります。経理DXの目的は、単に業務を効率化することではなく、業務全体を再構築し、価値を生み出す仕組みへと進化させることです。
そのためには、まず「何を自動化すべきか」「どこを人が判断すべきか」を明確に切り分けることが重要です。人が行うべき業務を減らすのではなく、判断や分析といった人にしかできない仕事を最大化するための仕組みづくりがDXの本質です。
たとえば請求書処理を自動化するだけでなく、その処理データを分析に活かして原価やキャッシュフローを可視化すれば、経理部門は単なる事務処理部署ではなく、経営判断を支える戦略部門へと変わります。
現場主導の推進体制|経理がDXの旗を振る
DXを進めるうえで最も多い失敗パターンは、「システム部門任せ」にしてしまうことです。経理DXは現場を理解している人が推進しなければ成功しません。現場の課題を一番よく知っているのは経理担当者自身です。
だからこそ、プロジェクトの中心に経理部門が立ち、他部門や経営層と連携して「なぜ変えるのか」「何がゴールか」を明確に共有する必要があります。現場が納得していない状態で進めるDXは、いずれ現場からの反発を受けて頓挫します。
SHIFT AI for Bizの法人研修でも強調しているように、現場が自ら課題を発見し、改善を推進するマインドセットを育てることこそが、持続的なDXの基盤になります。
スキルアップと学習文化|DXを支える人材を育てる
経理DXの真価はツールそのものではなく、それを使いこなす人のスキルと学習文化にあります。導入直後に成果が出ない理由の多くは、「操作できない」「活用できない」など人材面の課題にあります。
必要なのは単なるITリテラシーではなく、データを読み解き、改善策を提案できる「経理×デジタル」の複合スキルです。OJTや定期研修を通じてスキルを育てつつ、ナレッジ共有の場を設け、学びがチーム全体に循環する仕組みをつくりましょう。こうした継続的に学ぶ文化を根づかせることで、経理部門は変化に強い組織へと成長します。
実践的な育成支援として、SHIFT AI for Bizの法人研修では、DX思考と現場推進力を体系的に学ぶカリキュラムを提供しています。現場を変える力を磨くことで、DXを「一過性のプロジェクト」ではなく「成長を続ける仕組み」として定着させることができます。
この3つの視点を意識して進めることで、ツール導入だけの表面的な改革から脱し、定着し、成果を生み出すDXを実現できます。次章では、導入後に陥りやすい落とし穴と、DXを継続的に定着させるためのポイントを解説します。
経理DXを定着させるためのポイントと注意点
経理DXは導入して終わりではなく、「定着して成果が出て初めてDXが完了」と言えます。多くの企業がここでつまずくのは、ツールや仕組みは整っても、それを運用し続ける文化や体制が育っていないためです。定着させるには、導入後の運用フェーズを戦略的に設計し、よくある落とし穴を避けることが欠かせません。
導入初期に起きやすいDX疲れの原因を防ぐ
導入初期にありがちな失敗が、「現場の負担増加によるDX疲れ」です。新しいツールやフローに慣れないうちは、かえって作業時間が増えることもあります。これを防ぐには、初期段階で「なぜこの仕組みを導入するのか」「最終的に何が楽になるのか」を現場全員に共有することが重要です。
短期的な不便さを超えて得られる長期的なメリットを理解してもらうことで、導入への心理的抵抗を最小化できます。また、操作研修やFAQ整備など、使い始めの壁を下げる工夫も有効です。
属人化の再発防止とルールの維持
DX導入後に意外と多いのが、新しいツールを特定の担当者しか使いこなせない状態になる新しい属人化です。せっかくシステムを導入しても、設定や運用ルールを一部の人に依存してしまえば、以前と同じリスク構造に逆戻りします。
これを防ぐには、操作手順や運用フローをドキュメント化して共有し、誰でもアクセスできる状態にすることが不可欠です。さらに、月に一度などの頻度でルールを見直し、実際の運用状況に合わせて改善を繰り返しましょう。DXは静的な仕組みではなく、継続的にチューニングしていく動的な仕組みです。
定着を支える経営層と現場の両輪体制
DXを継続させるには、現場の努力だけでなく、経営層の理解と支援が欠かせません。経営層がDXの成果を評価し、継続的な投資やサポートを行うことで、現場は安心して改善活動を続けられます。一方、現場は成果を数値で報告し、経営判断にどう寄与したかを見える化する必要があります。この「現場と経営の双方向コミュニケーション」が、DXの継続力を生み出します。
DXを定着させるというのは、システムを維持することではなく、人と仕組みが自走し続ける文化をつくることです。次の章では、その文化を成果に変えるためのKPI設計やROIの考え方を整理し、経理DXの効果を最大化する方法を見ていきましょう。
経理DXの成果を最大化するために
経理DXを「定着」から「成果創出」へと進化させるためには、効果を測定し、改善を続ける仕組みが必要です。成果を数値化できなければ、経営層の理解も得られず、DXは一過性の施策で終わってしまいます。ここでは、経理DXの効果を最大化するために押さえておくべき視点を整理します。
成果を測るKPIとROIを明確に設定する
DXの成功を測る指標は、「導入したツールの数」ではなく、業務効率・経営貢献・人材活用の3軸で評価すべきです。
たとえば業務効率では「月次決算期間の短縮」「経費精算処理時間の削減率」、経営貢献では「レポート提出のスピード」「経営会議への反映頻度」、人材活用では「分析・提案業務への時間割合」などが具体的なKPIになります。さらに投資対効果(ROI)を算出し、ツールや研修への支出がどれだけ成果に結びついたかを定期的に検証しましょう。
ROIは単にコスト削減額を測るだけでなく、「意思決定の迅速化」「人件費以外の間接コスト削減」「経営精度の向上」といった質的効果も含めて評価することがポイントです。これにより、経理DXを「経費削減の手段」ではなく「企業価値向上の投資」として位置づけられます。
継続的な改善サイクルを仕組み化する
DXの成果を維持するには、導入後もPDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを定常業務に組み込むことが欠かせません。定期的にKPIを振り返り、改善点を洗い出す会議体を設けましょう。
とくに、現場担当者の声を吸い上げる「ボトムアップ型レビュー」は有効です。現場が課題を共有し、改善提案を出せる文化が育つと、DXは制度から習慣へと変わります。
改善のたびに外部ツールや新技術を取り入れることも有効ですが、その際には既存システムとの整合性を重視しましょう。連携設計を意識した段階的なアップデートこそ、無理なく成果を積み上げるコツです。
定着を支える学習と外部リソースの活用
DXの成果を長期的に維持するためには、人材の成長と外部の知見の活用が不可欠です。経理担当者が新しい技術や制度改正にキャッチアップし続けるためには、定期的な学習機会が必要です。社内勉強会やEラーニングを活用するのも効果的ですが、社外のプロフェッショナルが提供する体系的な研修を併用することで、より実践的なスキルを短期間で身につけられます。
経理DXは短距離走ではなく、組織が成長し続けるための長距離戦です。成果を測り、改善を続け、人が育つ。この3つの循環を回すことで、経理部門は「企業の意思決定を支える中核」として進化し続けます。
まとめ|ツール導入だけではDXは進まない。進め方の順序が鍵
経理DXを成功させる最大のポイントは、何を導入するかではなく、どう進めるかにあります。DXを掲げながら成果が出ない企業の多くは、ツール選定や制度対応ばかりに意識が向き、業務構造や人材の変化を伴っていません。DXはツールの問題ではなく、「組織と文化のアップデート」です。だからこそ、進め方の順序を正しく設計することが成果への最短ルートになります。
まず、現状を正しく見える化し、属人化や非効率なフローを整理することがスタートラインです。そのうえで、KPIを明確に設定し、最も効果が出る領域から段階的に取り組む。ツール導入はあくまで手段であり、運用ルールと教育体制を整えることで初めて成果が定着します。そして最後に、現場が継続的に改善し続ける文化をつくることで、DXは「プロジェクト」ではなく「日常業務」として根づきます。
経理DXの本質は、人・業務・データをつなぎ、経営判断を支える仕組みを作ることです。そのためには、経理部門が自ら変化を起こし、企業全体を巻き込んで推進する姿勢が欠かせません。SHIFT AI for Bizでは、こうした現場起点のDX推進力を養うための研修プログラムを提供しています。実践的なスキルとマインドを持った人材が増えるほど、DXは加速し、企業の競争力そのものが変わります。
経理DXを成功させたいなら、まずは順序を間違えない進め方を押さえることから始めましょう。ツール導入、業務改善、人材育成の3つを連動させることで、経理部門は「数字を処理する部署」から「経営を動かす中枢」へと進化します。
経理DXのよくある質問(FAQ)
- Q経理DXの最初の一歩は何から始めればいいですか?
- A
最初の一歩は、現状業務の棚卸しと課題の見える化です。いきなりツールを導入するのではなく、「どの業務が時間を奪っているのか」「どこでミスや属人化が発生しているのか」を把握することが重要です。業務フローを整理すると、改善すべき優先領域が自然と見えてきます。この段階で課題が明確になっていないと、導入後に使われないシステムになるリスクが高まります。
- Q経理DXの効果はどれくらいで実感できますか?
- A
一般的に、小規模なデジタル化(請求書処理や経費精算など)では3〜6か月、全社的な業務再設計を伴うDXでは1〜2年ほどで成果が表れます。ただし、効果の出方は「目標設定の明確さ」と「運用体制の継続性」に大きく左右されます。短期的には業務時間の削減、長期的には決算スピードの向上や意思決定の迅速化といった形で、段階的に成果を感じられるようになります。
- QDX推進を担当する人がいません。どうすればいいですか?
- A
中小・中堅企業で多い悩みです。この場合、既存の経理リーダーがDX推進リーダーを兼務する形がおすすめです。初期段階では外部の専門家や伴走型研修を活用しながら、社内にノウハウを蓄積していくのが現実的です。
- Q経理DXは中小企業でも実現できますか?
- A
はい、むしろ中小企業こそ経理DXの効果が出やすい領域です。人手が限られる中で業務を効率化し、属人化を防ぐことが経営の安定につながります。最近では、クラウド会計やAI-OCRなど、初期費用を抑えて導入できるツールも増えています。重要なのは、すべてを一度に変えようとせず、「効果の大きい業務から小さく始める」ことです。
- QDXを進めるときに経営層をどう説得すればいいですか?
- A
経営層を動かすには、感覚ではなく数値で語ることが効果的です。たとえば「経費精算1件あたりの処理コストを50%削減」「月次決算を5日短縮」といった具体的な数値を示し、その結果どれだけ経営判断が早くなるかを説明しましょう。また、DXが経営リスク(法改正対応や人材不足)を回避する手段であることを伝えると、投資対効果が明確になり、意思決定が進みやすくなります。
- QDXが一巡した後、次に何をすべきですか?
- A
DXのゴールは「ツール導入完了」ではなく、継続的に改善し続ける文化を育てることです。業務が安定した後は、データ活用や経営指標の分析など、より付加価値の高い領域にシフトしていきましょう。定期的にKPIを見直し、改善の成果を社内で共有することが、次の成長サイクルを生み出します。DXを推進できる人材を増やすためにも、継続的な教育・研修を行うことが重要です。
これらのポイントを押さえておけば、経理DXの推進は「やるべきこと」から「成果を出す仕組み」へと進化します。より実践的に学びたい方は、SHIFT AI for Bizの法人研修プログラムで、自社のDX推進力を強化する一歩を踏み出してください。

