自治体DXの推進に向けて、「どのコンサル会社に依頼すべきか」「費用はどれくらいか」「どんな支援を受けられるのか」と悩む担当者は少なくありません。
デジタル庁や総務省が方針を打ち出しても、現場では人材不足・ノウハウ不足・推進体制の壁が立ちはだかり、計画が止まってしまうケースも多く見られます。
そんな中で注目されているのが、自治体DXを専門に支援するコンサルティング会社の存在です。
外部の知見を取り入れることで、計画策定から実装、職員育成まで一気通貫でDXを進めることが可能になります。
しかし、提供内容や得意分野は会社によって大きく異なり、「どこに頼むべきか」を誤ると、成果が一時的で終わることもあります。
この記事では、自治体DXコンサルの支援内容・費用相場・選定ポイント・成功の鍵を整理し、さらに「人が育つDX」を実現するための研修と伴走支援の活用法までを解説します。
コンサルを“選ぶ立場”から、“成果を出す立場”へ──その一歩を踏み出すための実践ガイドです。
なぜ自治体DXに“外部コンサル”が必要なのか
自治体DXは、単なるシステム導入ではなく、行政サービスの在り方そのものを変革するプロジェクトです。
しかし現場では、「職員の異動が多く、専門人材が育たない」「デジタルよりも目の前の業務で手一杯」という状況が少なくありません。
結果として、DX推進計画を立てても“実行に移せない”“継続できない”という課題が各地で起きています。
こうした背景のもと、外部コンサルの役割は単なる助言者ではなく、“伴走するパートナー”へと進化しています。
現状分析から課題整理、業務プロセスの見直し、住民サービス改善、データ活用まで、自治体が自走できるように支援するのが彼らのミッションです。
なかでも最近は、単発の計画書策定ではなく、「実装まで支援する伴走型コンサル」や「職員育成と連動した内製化支援」が主流になっています。
また、総務省が公表する「自治体DX推進計画」でも、外部人材・専門家の活用が推奨されています。
DXを短期間で進めるには、専門的な知識や経験を持つ外部パートナーの力を借り、職員のスキル移転を並行して行うことが効果的です。
外部コンサルをうまく活用すれば、
- 計画策定のスピードアップ
- 補助金申請やベンダー調整の効率化
- 成果を可視化するKPI設定
- 職員が“学びながら進める”仕組みづくり
といった実利が得られます。
重要なのは、コンサルに“丸投げする”のではなく、自分たちの変革をリードするパートナーとして共に進める姿勢です。
DXを「外からやってもらうもの」から「内側から動かすもの」へ──。
この意識の転換こそが、成功する自治体DXの第一歩です。
関連記事:
自治体DXを成功に導く5ステップ|現場課題とAI人材育成の実践法
自治体DXコンサルの主な支援内容
自治体DXを支援するコンサル会社と一口に言っても、そのアプローチや得意分野はさまざまです。
大きく分けると、支援内容は次の5つのフェーズに整理できます。
① DX戦略・計画策定支援
最初のステップは、「どこから取り組むか」を定める戦略設計です。
現状の業務フローや課題を可視化し、行政サービスの改善方針を整理します。
総務省が定める「自治体DX推進計画」や、デジタル田園都市構想交付金の要件を踏まえ、全庁横断で取り組むためのロードマップを策定します。
ここで重要なのは、“システム導入ありき”ではなく、住民目線の価値提供を軸に据えること。
この視点を持つコンサルが、結果的に成果の出るプロジェクトを実現しています。
② 業務プロセス改革支援
次に行われるのが、業務の可視化と改善支援です。
紙業務や押印手続き、窓口対応など、非効率な業務を洗い出し、RPAやクラウドツールによる業務のデジタル化・標準化を進めます。
一方で、単なる“システム導入支援”に留まらず、職員が自ら改善を続けられる仕組みを整えるのもコンサルの重要な役割です。
③ データ利活用・AI導入支援
近年のDXでは、AIやデータの活用が不可欠です。
業務データや住民アンケートを分析し、政策立案や行政サービス改善に活かす取り組みが進んでいます。
生成AIやデータ可視化ツールの導入を支援するコンサルも増えており、「人の勘」から「データで判断する行政」への転換を後押ししています。
④ DX人材育成・研修設計支援
DXを持続させるためには、職員自身がデジタルを使いこなすことが欠かせません。そのため、近年は「研修・人材育成」を伴う支援を行うコンサルが急増しています。
- 生成AIやデータ活用の基礎研修
- DXリーダー育成プログラム
- 業務改善ワークショップの設計 など
⑤ システム・ツール導入伴走支援
戦略と実行をつなぐのが、技術導入のフェーズです。
RPA、電子決裁、クラウド基盤、AIチャットボットなど、自治体業務に適したツールの選定・導入・運用を支援します。
単に導入するだけでなく、「使い続けられる設計」=現場の運用フローに合わせる支援が重要です。
コンサル会社を選ぶときの5つのポイント
自治体DXコンサルは数多くありますが、支援スタイルや専門分野はそれぞれ異なります。
「実績がある会社に頼めば安心」と思われがちですが、DXは自治体ごとの課題に最適化できるかどうかが成果を分けるポイントです。
ここでは、コンサルを選定する際にチェックすべき5つの視点を紹介します。
① 自治体・公共分野での実績があるか
自治体業務には、行政特有のルールや文化があります。
民間のDX経験が豊富でも、補助金申請・議会承認・予算管理などの行政手続きに精通していなければ、スムーズに進みません。
実績を確認するときは「どの規模の自治体を支援したか」「どの分野で成果を出したか」を具体的に見ることが大切です。
② 得意領域と支援範囲の明確さ
コンサル会社によって、得意とする領域は異なります。
- 戦略策定に強い会社
- 業務改革・RPA導入を得意とする会社
- 人材育成や研修に強みを持つ会社
など、特化領域が違うため、自分たちの課題フェーズに合った支援を選ぶことが重要です。
もし現状整理や課題抽出から始めるなら、「戦略立案+業務分析+伴走支援」を一貫して担える会社が適しています。
③ 実行まで伴走できるか
計画書を作るだけで終わってしまうコンサルでは、DXは定着しません。
最近の成功自治体の多くは、実装・運用まで伴走してくれるパートナーを選んでいる点が共通しています。
具体的には、
- 定例ミーティングで進捗と課題を共有できるか
- 職員と一緒にプロジェクトを進めてくれるか
- 成果の可視化(KPI・レポート)を支援してくれるか
といった視点で見極めましょう。
④ 人材育成・リテラシー支援を重視しているか
外部支援だけではDXは続きません。
コンサルが去った後も職員が改善を続けられるように、リテラシー教育や現場トレーニングを提供する仕組みがあるかがポイントです。
AI・データ活用の研修やワークショップを組み合わせて、「人を育てるDX」を実現する企業を選ぶと定着率が高まります。
⑤ 成果検証と改善の仕組みがあるか
DXは“終わりのないプロジェクト”です。
支援後も定期的に効果を測定し、改善提案を続けてくれるコンサルを選ぶことが大切です。
成果が見える化されることで、議会・住民・職員の納得感も得やすくなります。
費用の目安と契約の流れ
自治体DXコンサルの費用は、支援内容や規模によって大きく異なります。
一般的には、下記のように「支援範囲」と「関与期間」によって変動します。
費用の目安
| 支援区分 | 主な内容 | 費用の目安 | 
| 戦略策定型 | DX推進計画の策定、現状調査、課題整理 | 約100〜400万円 | 
| 実装伴走型 | 業務改善・RPA導入・住民サービス改革など | 約400〜1,000万円 | 
| 人材育成・研修型 | DXリーダー・AIリテラシー研修、ワークショップ設計 | 約30〜150万円 | 
| 包括支援型 | 計画策定〜実装・研修を一体で伴走 | 約800〜1,500万円 | 
このように、単発の「計画書づくり」よりも、実装と人材育成を組み合わせた“包括型”のほうが成果が出やすい傾向があります。
短期間で終わる支援よりも、1年単位で成果を蓄積できるパートナー選定が重要です。
契約までの一般的な流れ
自治体DXコンサルの発注は、次のようなプロセスで進みます。
- 現状課題の整理
 庁内でDX推進方針や対象業務を明確化。
- RFP(提案依頼書)の作成
 支援範囲・目的・成果目標などを文書化。
- ヒアリング・提案依頼
 複数社にヒアリングを行い、比較検討。
- 契約・キックオフ
 契約締結後、推進チームと定例会を設定。
- 実行・モニタリング・改善
 KPI設定・成果共有・改善提案を継続。
この過程で特に重要なのは、「成果の可視化と報告体制」を契約時に明確化することです。
担当者の異動が多い自治体では、引き継ぎや記録が不十分になりがちですが、定期レポート形式で整理しておけば、継続的な改善が可能になります。
補助金・交付金の活用も視野に
DX関連のコンサル費用は、デジタル田園都市国家構想交付金や地方創生推進交付金など、国の支援制度を活用できる場合があります。
申請の際にコンサル会社がサポートしてくれるケースも多く、「予算が限られていても支援を受けられる」可能性があります。
また、AI研修や職員リスキリングに関しては、デジタル人材育成補助金や地域DX推進加速化事業の対象となることもあります。
- 費用は「支援範囲+期間+成果報告体制」で決まる
- 計画策定だけでなく実装・育成まで支援する会社を選ぶと効果的
- 交付金を活用すれば、財政負担を抑えて導入可能
よくある失敗と回避のポイント
DX推進において、「計画は立てたのに、結果が出ない」「外部コンサルに頼んだが定着しなかった」という声は少なくありません。多くの自治体で見られる失敗のパターンは、実は共通しています。
ここでは、代表的な4つの落とし穴と、その回避策を紹介します。
① コンサルに“丸投げ”してしまう
最も多い失敗が、「支援=委託」と誤解してしまうこと」です。
計画策定を外部に任せきりにすると、職員がDXの目的やプロセスを理解できず、プロジェクト終了後に何も残らない状態になります。
成功している自治体は、コンサルを“実行のパートナー”として活用し、職員が主体的に学びながら進めている点が共通しています。
② 目的が曖昧なまま進めてしまう
「デジタル化=DX」と思い込んでしまうケースも多く見られます。
DXの目的は、住民サービスの向上や業務効率化による価値創出であり、ツール導入そのものではありません。
最初に“何を変えたいのか”を明確にし、成果指標(KPI)を設定することが不可欠です。
コンサルと一緒にKPIを設計することで、方向性のズレを防げます。
③ 庁内の合意形成が不十分
部署ごとの温度差や理解度の違いが、DX停滞の大きな要因です。
特に「情報政策課だけが推進」「現場が置き去り」という構造では、改善は進みません。
計画段階から総務・企画・現場部門を巻き込むこと、そしてコンサルが対話ファシリテーションを担う体制を整えることで、推進力が高まります。
④ “学び”を仕組みにできていない
一度研修を実施して終わり――では、組織は変わりません。
DXを継続的に進めるには、理解 → 実践 → 振り返り → 改善のサイクルを回せる仕組みが必要です。
この「学びの定着」をサポートできるコンサルや研修プログラムを選ぶことが、長期的な成果につながります。
回避のカギは「人と仕組みの両輪」
成功している自治体は、
- 外部支援を受けながら職員が主体的に改善を進めている
- 小さな成功体験を積み上げて、庁内に波及させている
- 研修・人材育成を通じて“自走力”を身につけている
という特徴があります。
DXを「やらされるもの」から「育てる文化」へ変えることが、失敗しない最大のポイントです。
成功する自治体DXの共通点
全国の自治体でDXが進む中、継続的に成果を出している組織にはいくつかの共通点があります。それは、単に最新のツールを導入したからではなく、“人”と“文化”の変化を起こしている点にあります。
ここでは、成功する自治体に共通する4つの特徴を紹介します。
① 推進責任者を中心とした“横断型チーム”がある
DXは特定部署の業務改善ではなく、組織全体の変革です。
成功している自治体の多くは、CIO・CDOや情報政策課のリーダーを中心に、企画・総務・現場部門が連携する横断チームを設けています。
これにより、現場の課題が政策に反映されやすく、プロジェクトが止まりにくくなります。
外部コンサルはこのチームの“伴走者”として機能し、推進体制を支えています。
② 小さな成功体験を積み上げている
「すべてを一度に変える」のではなく、一つの課題を確実に解決する。
この“小さな成功”を庁内で共有し、他部門へ広げることがDX定着の第一歩です。
たとえば、窓口申請の電子化や内部稟議のペーパーレス化など、身近な業務の変革から始めた自治体は、住民満足度・職員のモチベーションともに高い傾向にあります。
③ 職員リテラシーと外部支援のバランスが取れている
DX推進には、外部専門家の知見だけでなく、職員自身の理解と主体性が欠かせません。
成功自治体は、コンサルと協働しながら職員研修を体系化し、「デジタルを扱える人」ではなく「デジタルで考えられる人」を育てています。
このようなリテラシー定着こそ、DXを“持続可能な仕組み”へと変える原動力です。
関連記事:
自治体DXを成功に導く5ステップ|現場課題とAI人材育成の実践法
④ データを活かし、継続的に改善している
DXの真価は、データを活用して政策判断や業務効率化を改善し続けることにあります。
住民ニーズの変化をリアルタイムで把握し、根拠に基づいた意思決定を行うことで、行政の信頼性とスピードが向上します。
コンサルが初期設計を支援し、職員が運用と改善を担う――この分担が理想的です。
まとめ|外部支援×人材育成で“自走するDX”へ
自治体DXを成功させるには、計画やシステムよりもまず“人”が変わることが重要です。
どれほど優れた外部パートナーを選んでも、職員がDXの目的を理解し、現場で実践できなければ、変革は一時的で終わります。
外部コンサルの力を活用することで、専門知識・ノウハウ・最新技術を短期間で取り入れることができます。
しかし本当の成果は、支援を通じて職員が学び、次の改善を自ら生み出せる状態をつくることにあります。
そのためには、「伴走型支援」と「人材育成」の両輪が欠かせません。
AIやデータを活用できる人材が庁内に増えれば、日々の業務改善も、政策立案も変わっていきます。
DXの取り組みを「計画」で終わらせず、“現場で動く力”へと変えていきませんか?

自治体DXコンサルに関するよくある質問(FAQ)
- Q自治体DXコンサルの費用はどのように決まりますか?
- A支援範囲・期間・人員構成によって大きく変わります。 
 一般的に、戦略策定支援は100〜400万円、実装伴走型は400〜1,000万円ほどが目安です。
 研修やリスキリング支援など短期型のプログラムであれば、数十万円規模で実施できる場合もあります。費用よりも「どこまで成果を出したいか」を基準に検討すると良いでしょう。
- Qコンサル導入と職員研修、どちらを先に行うべきですか?
- A並行して進めるのが理想です。 
 コンサルによる計画策定だけではDXは定着しません。職員がデジタルやAIの基礎を理解した状態でプロジェクトを進めることで、現場からの提案力が高まり、成果の再現性も上がります。
- Q補助金や交付金でコンサル費用をまかなうことはできますか?
- Aはい。条件を満たせば活用可能です。 
 たとえば「デジタル田園都市国家構想交付金」や「地方創生推進交付金」は、DX推進計画の策定や人材育成事業にも活用できます。
 詳細はコンサル会社や研修事業者に相談し、申請サポートを受けながら進めるのがおすすめです。
- Q小規模自治体でもコンサル支援を受けられますか?
- A可能です。 
 最近では、複数自治体が連携してDX推進を行う「広域連携型支援」も増えています。
 コストを抑えつつ、ノウハウ共有や研修の共同実施を行う事例もあります。規模の小ささよりも、“変革を進める意志”があるかどうかが最大のポイントです。

