社内で新しいツールを導入しても、「使いこなせる社員」と「ほとんど触らない社員」の差が開いていませんか。特に製造業や非IT部門では、日常業務に追われるあまりITの知識や活用スキルを学ぶ機会が少なく、結果として生産性や安全性に影響を及ぼすケースが増えています。
IPA(情報処理推進機構)の調査によれば、日本企業の約6割が「社員のITリテラシー不足」を経営課題として認識しています。情報漏えい、ツールの未活用、DX推進の遅れ――これらの多くは、社員一人ひとりのITリテラシーの底上げで防げる問題です。
本記事では、
- ITリテラシーの正しい定義と不足時のリスク
- 社員の現状を診断する具体的な方法
- 非IT部門・製造業でも実践できる向上施策と成功事例
- 定着化と効果測定の仕組み
を体系的に解説します。もし「すぐにでも取り組みを始めたい」という方は、SHIFT AI for Bizの研修資料をご覧ください。診断から研修、定着支援までワンストップで実現できる仕組みを、事例とともにご紹介しています。
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社員のITリテラシーとは?ビジネスで求められる4つの領域
「ITリテラシー」という言葉はよく耳にしますが、現場で求められる範囲は意外に広く、単なるパソコン操作のスキルだけではありません。ビジネスの現場では、正確な情報を入手・活用し、適切なツールやシステムを安全に使いこなす能力全般を指します。
特に非IT部門や製造現場では、業務フローが長年固定化され、紙や口頭伝達に依存しているケースも少なくありません。その結果、クラウドサービスや共同編集ツールなどの基本機能さえ活用できず、DXや業務効率化の取り組みが形骸化することがあります。
4つの領域が1つでも欠けると、組織全体のパフォーマンスに影響を及ぼします。
- 情報リテラシー:正確な情報の検索・選別・活用スキル
- コンピュータリテラシー:OSやアプリケーション、ファイル管理の基本操作
- ネットワークリテラシー:クラウド利用、オンライン会議、共同編集などのネット環境活用スキル
- セキュリティリテラシー:パスワード管理、アクセス権限設定、情報漏えい防止策
こうした領域を理解することが、後述する「社員のITリテラシー向上施策」を設計する第一歩です。
関連記事:中小企業のITリテラシー課題は生成AI研修で解決!段階的アプローチで実現する5つのステップ
ITリテラシーが低いと発生する5つのリスク
社員のITリテラシー不足は、「ちょっとした不便」では済みません。放置すると、経営や顧客関係にまで波及する深刻な問題に発展します。特に非IT部門や製造業では、「気付いたら大損害」というケースも珍しくありません。
ここでは、実際の企業で起きた事例や調査データをもとに、5つのリスクを解説します。
1. 情報漏えいリスクの増大
USBの持ち出しやメール誤送信など、初歩的なミスから重大な情報漏えいにつながることがあります。IPAの統計では、情報漏えいインシデントの約4割が人的ミスによるものです。
セキュリティリテラシーの欠如は、顧客・取引先の信頼を一瞬で失わせます。
2. 業務効率の低下と残業増加
便利なツールを導入しても、「使い方がわからない」「古いやり方のほうが楽」という理由で活用が進まない。結果、同じ作業に倍の時間がかかり、残業代も膨らみます。
3. 誤情報の拡散によるブランド毀損
SNSやチャットツールでの不用意な発言・誤情報の共有は、炎上や顧客離れを招きます。特に営業や広報に関わる社員が誤った情報を拡散すると、企業ブランドに長期的なダメージが残ります。
4. DX推進の停滞
DXプロジェクトは、現場社員がITを使いこなせなければ進みません。どれだけ優れたシステムを導入しても、現場のITリテラシーが低ければ、投資は無駄に終わります。
5. 採用・人材定着への悪影響
若手人材はIT環境の整った職場を求める傾向が強く、リテラシーの低い環境は「古い会社」という印象を与えます。結果、優秀人材の採用や定着が難しくなります。
これらは「うちでは大丈夫」と思っている企業ほど起きやすい問題です。次の章では、自社の現状を可視化する診断方法をご紹介します。
関連記事:なぜ今DX人材が必要なのか?不足の背景と育成・確保の実践戦略【2025最新版】
社員のITリテラシーを向上させる5つの実践策
診断で現状を把握したら、次は具体的な向上策に移ります。ここでは、非IT部門や製造業でも取り組みやすく、効果の出やすい5つの方法を紹介します。単発の研修だけで終わらせず、日常業務に根付かせる工夫がポイントです。
階層別・役割別の研修設計
ITリテラシーは業務内容や責任範囲によって求められるレベルが異なります。新入社員と管理職が同じ内容を学んでも、成果には結びつきません。階層別にカスタマイズした研修設計が重要です。
例としては、以下のような区分が考えられます。
- 新入社員向け:基本操作、情報検索、セキュリティの基礎
- 中堅社員向け:業務ツール活用、データ共有、効率化スキル
- 管理職向け:DX推進、セキュリティ管理、IT戦略の理解
こうした分け方をすることで、受講者が「自分の仕事に直結する内容」と感じやすくなり、学習効果も高まります。
eラーニング+マイクロラーニングの活用
時間や場所を選ばず学べるeラーニングは、特に現場が忙しい部門で有効です。さらに、短時間で一テーマを学べるマイクロラーニングを組み合わせれば、負担なく継続できます。
活用例:
- 1本5分程度の動画で操作方法を解説
- 毎朝の朝礼で1トピックずつ共有
- 社内ポータルで復習コンテンツを公開
この形式は、社員のスキマ時間を最大限に活用でき、知識の定着を促します。
資格取得支援制度の導入
客観的なスキル証明として資格を活用する方法です。企業として受験料の補助や合格祝い金を設ければ、社員の学習モチベーションが高まります。
代表的な資格
- ITパスポート試験(基礎IT知識の習得)
- 情報セキュリティマネジメント試験(セキュリティ意識の向上)
資格取得は個人のスキルアップだけでなく、企業全体の信頼性向上にもつながります。
日常業務と連動させたOJT
研修で学んだ知識は、実務で使わなければすぐに忘れます。OJTの中でIT活用を組み込み、「教わったことをその場で試す」流れを作りましょう。
実践ポイント
- 新しいツールを使った業務プロセスを先輩が横でサポート
- チーム単位でIT活用アイデアを出し合う
- 成功事例を社内SNSで共有する
これにより、学習が机上の知識で終わらず、業務改善につながります。
社内ナレッジ共有とメンター制度
ITスキルは属人化しやすいため、知識の共有基盤を作ることが重要です。メンター制度を組み合わせると、初心者が気軽に質問できる環境が整います。
具体策
- 社内Wikiやナレッジベースを整備
- 月1回の勉強会や情報交換会を開催
- メンターが新人やスキル低位層をフォロー
この仕組みが定着すれば、教育コストの削減とスキル平準化が同時に進みます。
5つの施策を組み合わせれば、短期的なスキル向上だけでなく、長期的な社内文化の変革にもつながります。
関連記事:中小企業のためのDX人材育成ガイド|現実的な進め方と成功の秘訣
非IT部門・製造業でも成果を出した事例
現場でIT研修や診断から定着まで仕組み化して成果を出した、リアルな企業事例を紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、実践イメージを描いてください。
コマツ:「デジタルブートキャンプ」で40%のIT活用率向上を実現
三井不動産では、RPAとAIを組み合わせた自動化により、以前は複数社員が分担していたデータ収集やレポート作成が大幅に効率化されました。その結果、年間で約9,000時間もの業務時間を削減することに成功しています。
これは単なる作業負荷の軽減にとどまらず、プロセスの見える化と改善に繋がる好事例です。
出典:三井不動産、RPAで95本のワークフローを開発し年間9000時間を削減
ローム浜松:社内全員に研修×セキュリティ教育を実施し底上げに成功
ローム浜松株式会社では、製造業にありがちな「事務職と現場職での教育ギャップ」という課題を抱えていました。そこでITリテラシーとセキュリティ教育を職種を問わず全社員に実施。
結果、職種を超えて基礎知識の理解を浸透させることに成功しました。研修内容は専門用語を避け、親しみやすさを重視した設計だったため、非IT部門の納得感も高められました。
出典:自社オリジナル研修動画で現場社員の情報セキュリティ強化
アイシン高丘:非エンジニアにもノーコードRPA研修を実施
アイシン高丘株式会社では、非エンジニアでも業務効率化に変革を起こせるよう、Power Automate Desktopを使った研修を導入。
結果、現場の事務スタッフが自らExcelデータの集約や反復作業の自動化に取り組み、実務レベルでのIT活用が進みました。業務効率化が社員自らの手で進む文化形成に成功しています。
出典:業務効率化目指し非IT職向け講師派遣型PAD研修を実施
Pointまとめ(差別化ポイント)※修正版
企業名 | 施策概要 | 成果・特徴 |
三井不動産株式会社 | RPA + AIの融合による業務自動化 | 年間9,000時間の作業削減、業務可視化と改善に繋がる |
ローム浜松株式会社 | 全社員向けIT+セキュリティ研修 | 部門間の理解格差を解消し、ITリテラシーの底上げを実現 |
アイシン高丘株式会社 | Power Automate研修(非エンジニア対象) | 現場社員が自主的に業務改善へ取り組む文化を形成、Excel業務などの自動化に成功 |
これらの事例は、単なる研修ではなく「業務への定着」「現場主導の定着」「部門を超えた教育浸透」といった視点で組まれています。SHIFT AI for Bizの研修システムも、こういった構造に基づいた支援が可能です。
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効果を定着させる仕組みと測定方法
ITリテラシー向上施策は、研修を一度実施しただけでは長続きしません。知識やスキルは、日常業務で使い続けることで定着し、初めて組織の力となります。
ここでは、教育効果を持続させるための仕組みと、その成果を測定する方法をご紹介します。
1. スキルマップの作成と定期更新
施策開始時に社員ごとのスキルマップを作成し、定期的に更新します。スキルの見える化によって、教育の優先順位が明確になり、個々の成長も把握しやすくなります。
更新頻度の目安
- 半年〜1年ごとに全社員を対象に更新
- 部門ごとの平均スコアも算出し、改善計画に反映
2. KPI設定と進捗モニタリング
「何をもって改善とみなすか」を明確にするため、定量的な指標(KPI)を設定します。
- 社内ツールの利用率(ログイン回数・機能利用率)
- セキュリティインシデント件数の減少率
- 業務効率化による時間削減(工数ベース)
KPIは数値化するだけでなく、定期会議で共有し、改善策を都度調整します。
3. 評価制度との連動
スキル向上を評価制度や人事考課に反映することで、学習意欲を持続させます。例として、資格取得やツール活用による業務改善を評価項目に追加する方法があります。
4. 定期診断とフォローアップ研修
最初の診断から半年後・1年後に再診断を行い、必要に応じてフォローアップ研修を実施します。
これにより、「やりっぱなし」ではなく、改善サイクルが回る体制が整います。
こうした仕組みを整えることで、ITリテラシーの向上は一過性の施策ではなく、組織文化の一部として根付きます。
関連記事:業務効率化とDX連携を成功させる方法!定着する仕組みと成果を出す手順を解説
まとめ:診断→教育→定着の3ステップで全社底上げ
社員のITリテラシー向上は、一度きりの研修や資料配布だけでは実現できません。
効果を最大化するには、
- 現状を正確に診断する
- 自社の課題に沿った教育を実施する
- 日常業務での定着を仕組み化する
この3ステップを着実に回すことが不可欠です。
本記事で紹介した診断方法・実践策・成功事例は、いずれも「現場の納得感」と「継続可能な仕組み作り」が共通点でした。非IT部門や製造業であっても、適切な設計とサポートがあれば確実に底上げは可能です。
もし「自社でも始めたい」と感じたなら、動くのは今です。ITリテラシーは放置すればするほど格差が広がり、教育コストも増大します。逆に、今から始めれば半年〜1年で全社の底上げを実感できます。
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ITリテラシーに関するよくある質問(FAQ)
- QITリテラシー向上にはどれくらいの期間が必要ですか?
- A
施策の規模や社員のスキルレベルにもよりますが、基礎的なITリテラシーの底上げにはおおよそ6か月〜1年が目安です。
短期間で集中的に研修を行い、その後OJTやマイクロラーニングで定着させるのが効果的です。
- Q研修とeラーニング、どちらが効果的ですか?
- A
双方にメリットがあります。集合研修は双方向のやり取りや実技指導に向いており、eラーニングは繰り返し学習や自分のペースで進めるのに適しています。
多くの企業では、研修とeラーニングを組み合わせて効果を最大化しています。
- Q非IT部門でもDX人材になれますか?
- A
可能です。基本的なITリテラシーを身につけた上で、業務課題に直結するツール活用やデータ分析スキルを学べば、非IT部門からでもDX推進に貢献できます。
実際、製造現場や総務部門からDXプロジェクトに参加して成果を出している事例もあります。
- QITリテラシー向上の成果はどう測ればいいですか?
- A
ツールの利用率やセキュリティインシデントの減少率、資格取得率などをKPIとして設定すると効果が見えやすくなります。半年〜1年ごとに再診断し、数値の改善度を追跡しましょう。
- QSHIFT AI for Biz研修はどのようなサポートがありますか?
- A
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