「人的資本経営」という言葉を聞く機会が増えたものの、いざ自社で取り組もうとすると、「何を測ればいいのか」「どんなKPIを設定すればいいのか」で立ち止まる企業が多いのではないでしょうか。
経営層からは「人的資本の開示を進めたい」「投資家に説明できる指標を整えたい」という声。一方、人事部門では離職率や研修時間などの従来指標では経営価値とのつながりが見えないという課題があります。
人的資本経営の本質は、「人材をコストではなく資本として捉え、企業価値向上にどう貢献させるか」を可視化すること。
その核心にあるのが、経営戦略と人材戦略をつなぐKPI(重要業績評価指標)です。
本記事では、
- 経営目線でのKPI設計の考え方
- 人的資本経営で注目される主要指標カテゴリ
- KPIを経営価値へと結びつける実践ポイント
を体系的に整理しながら、測るを価値に変えるための具体的アプローチを解説します。
「人的資本経営とは?」の基本から整理したい方は、こちらの記事で定義・目的を先に確認しておくと理解が深まります。
人的資本経営におけるKPIの位置づけとは
人的資本経営におけるKPI(重要業績評価指標)は、経営戦略と人材戦略を結びつける羅針盤です。従来の人事指標(離職率・研修時間など)は活動の量を測るものでしたが、経営的な価値を示すには不十分でした。
人的資本経営では、人材施策を「企業価値をどう高めるか」につなげて測定することが求められます。つまりKPIは、成果を定量化するための「経営の共通言語」です。次では、こうしたKPIをどのように設計すれば経営に貢献する指標となるのか、3つのステップで整理します。
人的資本経営のKPIを設計する3ステップ
人的資本経営のKPIは「とりあえず測れる数値」を並べても意味がありません。重要なのは、経営戦略と人材戦略を一本の線で結ぶ設計プロセスを持つことです。どんなに優れたKPIでも、経営の目的と切り離されていれば、施策は点で終わり、成果につながりません。だからこそ、人的資本経営では測る前に考えることが不可欠です。ここでは、経営目線でKPIを構築し、組織の成果につなげるための3つのステップを解説します。
ステップ1|経営目標と人材戦略を接続する
最初に行うべきは、経営目標から逆算してKPIを設計することです。「人事で何を測るか」ではなく、「経営として何を実現したいか」から考えます。たとえば「営業利益率を上げたい」なら、それを支える人材要素(営業スキル・リーダー育成・顧客対応力)を特定し、そこに紐づく指標を設定します。経営目標を整理する際は、次の3軸を使うと明確です。
- 財務的ゴール:利益率・売上高・生産性など
- 非財務的ゴール:ブランド価値・イノベーション創出・社員満足度など
- 支える人材施策:採用・育成・配置・評価など
この「逆算思考」により、KPIは経営方針と一体化した戦略指標になります。
ステップ2|測定可能な指標を定義する
KPIは誰が見ても測れる具体的な数値でなければ意味がありません。基本原則はSMART(Specific/Measurable/Achievable/Relevant/Time-bound)。つまり「明確で、測定可能で、期限内に改善できるもの」です。人的資本経営でよく用いられる主な測定軸は次の通りです。
- スキル・育成:研修受講率/スキル保有率/資格取得率
- エンゲージメント:満足度スコア/離職意向率
- 多様性・インクルージョン:女性管理職比率/外国籍社員比率
- 健康・安全:メンタルヘルス休職率/健康診断受診率
これらを経営ゴールに結びつけて設計すると、指標に「経営の言葉」が宿ります。
| 経営目標 | 対応する人的資本KPI例 | 測定目的 |
| 新規事業創出 | 新規企画参加率/社内公募応募率 | イノベーション人材の活性化 |
| 生産性向上 | スキル保有率/業務効率指数 | 稼働最適化と成果の向上 |
| 離職抑制 | エンゲージメントスコア/キャリア満足度 | 組織の安定化 |
| 多様性推進 | 女性管理職比率/異動後定着率 | 多様な人材活躍の可視化 |
ステップ3|可視化と改善を回す仕組みをつくる
KPIは設定して終わりではありません。運用して成果を変える仕組みづくりが欠かせません。BIツールやダッシュボードを活用し、経営層がリアルタイムで確認できる環境を整えましょう。
レビューのたびに「何が変化したか」「なぜ変化したか」を分析すれば、測るためのKPIから変えるためのKPIに進化します。さらに、KPIを活かすうえで重要なのが人材データの可視化です。データ統合や分析体制の構築については、人的資本経営とは?の記事でも詳しく解説しています。
人的資本経営で重視される主要KPIカテゴリ
人的資本経営のKPIは、経営戦略や事業特性に合わせて設計されますが、共通して重視されるのは「人材の活用状況」と「組織の健全性」を数値で捉えることです。多くの企業で導入が進むKPIは、大きく5つのカテゴリに分類できます。それぞれの意味と測定ポイントを整理しておきましょう。
1. エンゲージメント(働きがい・定着)
エンゲージメントKPIは、社員の会社への信頼度・満足度・貢献意欲を測るものです。人的資本経営では、単なる満足度調査ではなく、企業業績と相関するモチベーション指標として扱われます。
代表的な指標
- エンゲージメントスコア
- 離職率・離職意向率
- 社員満足度(ES)
- キャリア成長実感度
特に「エンゲージメントスコア」と「業績KPI(営業利益率・生産性)」を掛け合わせて分析することで、人材投資の成果を見える化できます。
2. スキル・育成・学習
スキルデータや育成KPIは、人的資本の質を測る核心領域です。研修時間や受講率のような活動指標に加え、どのスキルが経営成果に寄与しているかを可視化することで、育成施策のROI(投資対効果)が明確になります。
代表的な指標
- 研修受講率/学習時間
- スキル保有率・資格取得率
- リーダー候補者比率
キャリアパス満足度
「学習KPI」は、DX・イノベーション推進の文脈でも注目されています。学びの可視化は、人的資本開示の中でも重要なテーマです。
3. 多様性・インクルージョン(D&I)
多様性は今や開示義務にも直結するKPI領域です。多様な人材が活躍できる環境を整備しているかを測ることで、企業の社会的信頼や投資家評価に影響します。
代表的な指標
- 女性管理職比率
- 外国籍社員比率
- 障がい者雇用率
- 育児休業後復職率
特に「定着率」や「異動後パフォーマンス」などを組み合わせると、D&I施策がどの程度実効性を持っているかが把握できます。
4. 健康・安全・ウェルビーイング
健康経営KPIは、社員が長期的に能力を発揮できる環境を定量的に示すものです。人的資本経営の枠組みでは、健康や安全も「生産性・創造性を支える資本」として扱われます。
代表的な指標
- 健康診断受診率
- メンタルヘルス休職率
- 長時間労働者比率
- ストレスチェック実施率
これらはESG開示の観点からも重視されており、人的資本の「持続可能性」を示す基盤となります。
5. 生産性・人材活用効率
生産性KPIは、人的資本を経営価値に結びつける最も直接的な指標です。人材一人あたりの成果や付加価値を可視化し、経営の成果と連動させることで、人的投資の効果を定量的に説明できます。
代表的な指標
- 一人当たり営業利益/付加価値額
- 稼働率・業務効率指数
- 社内異動後の成果変化率
- プロジェクト生産性(納期遵守率など)
これらのKPIを複合的に活用すれば、単なる「人事評価」ではなく、経営レベルでの人的資本最適化が可能になります。人的資本経営のKPIは、どれか1つを選ぶのではなく、組み合わせて企業の成長ストーリーを描くためのものです。
人的資本経営におけるKPI設計のポイントと注意点
人的資本経営のKPIは「定める」だけでなく、使える指標として機能させる設計思想が重要です。上位企業と中位企業を分けるのは、KPIそのものの内容よりも、設計時の一貫性と運用設計の深さです。ここでは、KPIを実務で活かすために押さえるべきポイントと、陥りやすい落とし穴を整理します。
KPI設計の3つの成功ポイント
1つ目は、経営戦略との整合性です。KPIは「現場で測れる指標」ではなく「経営方針を可視化する指標」であることを前提にします。指標が部門ごとにバラバラでは、経営資源の最適配分ができません。
2つ目は、成果とプロセスのバランスを取ることです。成果指標(例:離職率・利益貢献度)だけでは、問題の原因が見えません。研修受講率やスキル保有率などのプロセス指標を組み合わせることで、改善の手が打てるKPI体系になります。
3つ目は、経営層と現場の共通理解です。数値を報告するためのKPIではなく、「何を成功とみなすか」を共有する指標にすること。設定段階から関係部門を巻き込むことで、運用フェーズでの定着率が格段に高まります。
陥りやすいKPI設計の落とし穴
よくあるのは、測定しやすい指標だけに偏ることです。離職率や研修時間などは比較的簡単に取得できますが、それだけでは「人的資本をどう活かしているか」を説明できません。
次に、データ収集と分析体制を軽視すること。人事システムやBIツールが未整備のままでは、KPIの精度も継続性も確保できません。さらに、経営との結びつきを意識しないKPIの氾濫も典型的な失敗例です。数値は多いのに、経営判断に使えないという状態は避けなければなりません。
KPIを設計する目的は、測るためではなく、経営を動かすためです。可視化された数値が、経営層と人事をつなぐ共通言語となるとき、人的資本経営は初めて実践段階に入ります。
より体系的なKPIの枠組みを学びたい方は、人的資本経営とは?の記事内で紹介している「人的資本経営の全体設計」をあわせて確認しておくとよいでしょう。
KPIを経営価値に結びつけるための実践アプローチ
人的資本経営のKPIを真に機能させるには、「数値のモニタリング」から「経営価値への転換」へとステージを進める必要があります。KPIは最終ゴールではなく、経営判断の質を高めるツールです。ここでは、KPIを実際の経営成果につなげるための実践アプローチを3つ紹介します。
1. KPIを財務指標とリンクさせる
人的資本の価値を説明するためには、非財務指標を財務成果と結びつけるロジックが不可欠です。たとえば「エンゲージメントスコアの上昇が生産性をどれだけ改善したか」「研修受講率が営業利益率にどう影響したか」を分析することで、人材投資のROI(投資対効果)を明確に示せます。こうした定量的な説明が、経営層や投資家にとっての説得力を生みます。
2. KPI間の相関を分析する
KPIは単独で見るよりも、複数指標を掛け合わせて分析する方が本質的な洞察を得られます。たとえば「エンゲージメント×離職率」「多様性比率×組織生産性」など、関連性を可視化することで、経営課題の本質を把握できます。データドリブン経営の観点では、こうしたKPI相関マップの設計が次世代の人的資本マネジメントにおいて鍵を握ります。
3. 改善サイクルを内製化する
人的資本KPIを活用する企業の多くがつまずくのは、「分析まではできても改善が続かない」点です。ここで重要なのが、KPIレビューと改善アクションを社内サイクルとして仕組み化することです。月次・四半期単位でKPIを振り返り、変化の背景を関係部署で共有することで、データが報告から変革へと進化します。
KPIを経営価値に結びつけるというのは、単なる可視化ではなく、企業が人材を通してどんな未来を描くのかを定義することに等しいと言えます。SHIFT AI for Bizでは、こうしたKPI運用や改善体制を実装フェーズから支援しています。自社で人的資本経営を本格化させたい方は、実践型の支援プログラムを活用してみてください。
人的資本経営のKPIを運用・改善するための仕組みづくり
人的資本経営のKPIは、設定して終わりではなく、運用・改善を繰り返すことで初めて経営の意思決定に役立つ資産となります。KPIを企業文化として定着させるためには、データを活用できる仕組みと、継続的な見直し体制の両方を整えることが重要です。ここでは、運用フェーズで成果を上げるための実践ポイントを解説します。
KPIダッシュボードで見える化を徹底する
人的資本データは、人事システム、勤怠、評価、アンケートなど複数の領域に分散しています。これらを統合的に可視化するダッシュボードを構築すれば、経営層がリアルタイムに状況を把握し、施策を迅速に修正できます。
BIツールや人事データプラットフォームを使うことで、「人材情報を分析可能な経営データに変える」ことが可能です。
特に、人事データ×経営データを結合できる設計はKPI運用の肝です。これにより、社員の学習量が生産性や利益率にどう寄与しているかを定量的に確認できます。
定期レビューと改善サイクルを制度化する
KPIの運用で最も大切なのは、定期的な見直しを制度として定着させることです。四半期ごとにKPIの変化を分析し、改善ポイントを抽出する仕組みをつくりましょう。その際、「数値の変化」だけでなく、「なぜ変化したのか」「どの施策が寄与したのか」を分析することが不可欠です。ここを定性・定量の両面で記録することで、次回以降の施策設計の精度が上がります。
また、KPIの改善結果を社内で共有することで、測定文化から学習文化への転換が促されます。
経営・人事・現場が連動するPDCA体制をつくる
KPIは部門単位で完結させず、経営・人事・現場が共通の指標で議論できる体制を整えることが理想です。経営層は戦略視点で成果をモニタリングし、人事はデータを整理・分析、現場は改善アクションを実行する——この循環が生まれると、KPIが単なる数値管理ではなく、経営戦略の実践ツールとして機能します。
KPI運用の成熟度が上がるほど、企業は勘ではなく根拠で意思決定を行えるようになります。人的資本経営の成果を持続的に伸ばすには、可視化・分析・改善の一連の流れを仕組み化することが不可欠です。
人的資本経営のKPIを定着させるための社内浸透とマネジメント
どれだけ優れたKPIを設計しても、現場で理解され、行動につながらなければ意味がありません。KPIを人的資本経営の実行基盤として機能させるには、経営層・人事・現場が同じ指標を「自分ごと化」できる状態をつくることが必要です。ここでは、社内への定着とマネジメントの実践ポイントを紹介します。
経営層がKPIの意義を語る
まず大切なのは、トップメッセージとしてKPIの意義を発信することです。人的資本経営は人事主導ではなく、経営戦略そのものに関わるテーマです。経営層が「なぜこのKPIを設定したのか」「どんな価値を生み出したいのか」を言語化して伝えることで、全社の理解度が一気に高まります。数値だけでなく、背景にある経営ストーリーを共有することが現場の納得感を生みます。
マネージャー層にKPIを浸透させる
次に、中間管理職を中心としたマネージャー層の理解と行動変化が鍵となります。KPIは現場の目標管理と直接つながるため、マネージャーがKPIの意味を理解していなければ実行が止まります。
社内研修やマネジメント会議でKPIの読み方・活かし方を共有し、チーム単位でモニタリングできる環境を整えましょう。KPIを評価のためではなく、改善のために使う文化を育てることが、長期的な定着につながります。
データリテラシーを高める
KPI運用を持続させるうえで見落とされがちなのが、データを正しく読み解くスキルです。人事や経営企画部門だけでなく、現場マネージャーやリーダー層にもデータリテラシーを浸透させることが重要です。社内で簡単にデータを可視化できる仕組みを整えると同時に、「数値をどう解釈するか」の教育を行うことで、数字に強い組織文化を形成できます。
KPIが企業に根付くと、意思決定が早くなり、施策の精度も向上します。人的資本経営の真価は、指標そのものよりも、それを使いこなせる組織の成熟度に表れます。SHIFT AI for Bizでは、こうしたKPIの社内定着や運用支援を体系的に行っています。経営と現場をつなぐ「使える指標設計」を進めたい企業は、研修プログラムの導入を検討してみてください。
人的資本経営のKPIで成果を出す企業の共通点
人的資本経営の成果は、制度の新しさや分析ツールの高度さではなく、「KPIを経営にどう組み込むか」という運用の質によって決まります。上位企業ほど、KPIを単なる報告指標として扱わず、意思決定の中核に置いているのが特徴です。ここでは、成果を出している企業に共通する3つのポイントを整理します。
1. KPIを戦略の一部として扱っている
成果を出している企業のKPIは、経営方針の中で明確な位置づけを持っています。たとえば、「人的資本の強化=成長戦略の柱」と定義し、経営会議で他の財務KPIと同じレベルでモニタリングする体制を整えています。人事部門単独ではなく、経営企画・財務・現場マネージャーが共通の指標で議論できる環境をつくることで、KPIが経営の言葉として機能します。
2. KPIを組織文化にまで浸透させている
人的資本経営の先進企業では、KPIが日常のマネジメント会話や評価基準の一部に組み込まれています。「数字で語る文化」が定着しており、現場がKPIを報告義務ではなく改善ツールとして活用しています。また、KPIが「経営ビジョンと一貫している」ことを理解しているため、現場が自主的に目標を追える環境が形成されています。
3. 可視化と改善のループを継続している
KPIは一度設定して終わりではありません。成果を出している企業ほど、可視化→検証→改善のループを継続的に回す運用習慣を持っています。数値の変化を経営層と共有し、改善の方向性を全社で議論するプロセスを制度化している点が特徴です。こうした仕組みを持つ企業では、人的資本データが経営判断のスピードと精度を高める武器になっています。
人的資本経営のKPI運用を成功させる最大の鍵は、KPIを経営管理ではなく経営実践の領域に持ち込むことです。データをもとに人材戦略を更新し続ける企業こそ、人的資本を競争優位に変えることができます。
自社でも同様の仕組みを整えたい場合は、SHIFT AI for Bizが提供する法人研修プログラムが、実践フェーズへの移行を支援します。
人的資本経営のKPIを継続的に進化させるために
人的資本経営は一度の設計で完成するものではなく、社会環境・事業構造・人材ニーズの変化に合わせてKPIを進化させる運用思考が求められます。KPIを定期的に見直し、改善サイクルを内製化できている企業ほど、経営と人材の両面で持続的な成長を実現しています。ここでは、KPIを時代に合わせてアップデートしていくための考え方を整理します。
社会変化と連動したKPI見直しを行う
人的資本の評価軸は、時代や業界の変化に応じて常に変わります。DX推進、リスキリング、ウェルビーイングなど、新たな価値観や制度改正に合わせてKPIを更新する姿勢が重要です。たとえば、かつては「離職率の低下」が重視されていましたが、現在では「キャリア自律度」や「学習参加率」など、より活かす人材を測る指標が注目されています。定期的なKPI棚卸しを行い、「今の経営戦略と本当に連動しているか」を見直しましょう。
定量指標と定性評価を組み合わせる
人的資本経営では、数値だけで測れない質的な価値も重要です。エンゲージメントや企業文化、リーダーシップなどは、定性評価を組み合わせることで理解が深まります。
アンケート調査や1on1面談のフィードバックを数値化し、「数字に現れない成果を補完する指標」として扱うと、より立体的なKPI体系が構築できます。特に多様性やイノベーションといったテーマでは、定性データを軽視しないことが成果に直結します。
データドリブン経営の基盤を整える
KPIの精度を高めるには、データ収集・統合・分析をスムーズに行える仕組みが不可欠です。データを蓄積するだけで終わらせず、意思決定に活かすまでを一連の流れとして設計することが重要です。人事システムやBIツールを連携させ、経営指標と人的指標を同一ダッシュボードで確認できる環境を整えると、KPIの信頼性とスピードが飛躍的に向上します。
人的資本経営のKPIを継続的に進化させるためには、「設計→運用→改善→再設計」の循環を組織に埋め込むことが不可欠です。SHIFT AI for Bizでは、こうしたサイクル構築やKPI改善の実行支援を行っています。作って終わりではなく、使い続けて成長するKPIを目指すことが、これからの人的資本経営のスタンダードです。
まとめ:人的資本経営のKPIは「測る指標」から「経営を動かす指標」へ
人的資本経営のKPIは、単なる人事データの集計ではなく、企業がどのように人材を価値創造の源泉として活かすかを示す経営コンパスです。KPIを設計し、運用し、改善するプロセスそのものが、経営と人材をつなぐ仕組みの中核になります。
本記事で紹介したように、重要なのは「何を測るか」よりも、なぜその指標を設定するのかを明確にすることです。経営戦略と人材戦略を結びつけ、データを通じて組織の意思決定をアップデートできる企業こそが、人的資本経営の実践者といえます。
そして、KPIを継続的に活かすには、設計・運用・改善を自走できる体制づくりが不可欠です。SHIFT AI for Bizでは、人的資本KPIを経営に結びつけるための研修やデータ活用支援を行っています。自社の人的資本経営を本格的に進化させたい方は、下記の法人向けプログラムをご確認ください。
人的資本経営のKPIに関するよくある質問(FAQ)
- QQ1. 人的資本経営のKPIは、どのくらいの頻度で見直すべきですか?
- A
KPIの見直しは年1回を基本、経営方針や組織戦略が変わったタイミングで随時更新するのが理想です。環境変化のスピードが速い今、固定化したKPIはすぐに形骸化します。経営計画のレビューや人事制度改定と連動させて見直すと、KPIが経営の現実に追随しやすくなります。
- QQ2. 離職率やエンゲージメントスコア以外に注目すべきKPIはありますか?
- A
はい。近年では学習・スキルデータ(リスキリング率、資格取得率など)や多様性指標(女性管理職比率、年齢・職種の構成比)が注目されています。これらは企業の成長力や変化対応力を示す重要なKPIであり、人的資本の質を可視化する上で欠かせません。
- QQ3. KPIが定量化できない項目(モチベーション・組織風土など)はどう扱えばよいですか?
- A
定性項目はアンケート結果やインタビュー内容をスコア化することで活用可能です。例えば、心理的安全性や上司の支援度などを5段階評価で集計し、トレンドを追うだけでも十分に意味があります。数値化が難しいからといって放置せず、見える形にして継続観測することがポイントです。
- QQ4. KPIが多すぎて運用が追いつきません。どう整理すればいいですか?
- A
KPIが増えすぎた場合は、まず「経営と直結する指標」と「改善行動を示す指標」に分類します。そのうえで、前者を経営ダッシュボード、後者を人事部門の運用指標として整理すると無理がありません。重要なのは数ではなく、使われる指標に絞り込むことです。
- QQ5. 中小企業でも人的資本経営のKPIを導入できますか?
- A
もちろん可能です。むしろ、データ活用を早期に取り入れる中小企業ほど生産性と採用力が高い傾向にあります。最初は「離職率」「研修参加率」「スキル保有数」など、シンプルなKPIから始めてOKです。SHIFT AI for Bizでは、企業規模に応じたKPI設計支援も提供しています。

