「同じ部署からばかり人が辞めていく…」「数カ月の間に何人も退職してしまった」。
そんな状況に直面すると、採用や引き継ぎに追われるだけでなく、残ったメンバーの士気や業務効率にも影響が出ます。離職が特定の部署・拠点に集中する背景には、職場環境やマネジメントの歪み、人間関係の不調和など、見えにくい原因が潜んでいることが多いものです。

本記事では、部署・拠点単位で離職が多い職場の共通する兆候と原因の見極め方、そして短期・中長期で実行できる改善策を解説します。さらに、AIやデータ分析を活用した「予兆の見える化」にも触れ、現場の判断と施策を加速させる方法をご紹介します。

より幅広い原因別の対策や定着率向上のステップは、離職防止の完全ガイド|原因別の対策と定着率を上げる実践ステップでも詳しく解説しています。あわせて参考にすることで、より確度の高い改善計画が立てられます。

今の状況を変える一歩は、原因を正しく知ることから始まります。

SHIFT AI for Bizを見る

離職が多い職場に共通する兆候とサイン

離職率が高まる職場には、早い段階で現れる“サイン”があります。これらを見逃すと、気づいたときには複数人が同時期に退職し、現場の業務や人間関係に大きな負担を与えます。

1. 数値で現れる兆候

部署別離職率の急上昇
前年に比べて特定部署の退職者数が急増している場合は要注意です。

1年未満離職者の割合が高い
入社後すぐに辞める人が続くのは、業務内容や人間関係のギャップが大きい証拠です。

他部署との比較で突出
全社平均と比べて2倍以上の離職率を示している部署は、構造的な問題を抱えている可能性が高いでしょう。

2. 職場の空気感から見える兆候

  • 雑談や情報共有が減り、必要最低限の会話しかない
  • 会議や面談で意見が出ず、発言者が限られている
  • 新人や中途入社者が孤立している

    こうした状態は、心理的安全性の低下を示すサインです。

3. 社外での評判や情報から見える兆候

  • SNSや口コミサイトでの評価が短期間で悪化
  • 退職者が知人にネガティブな情報を広めている

部署別離職率の簡易チェック方法

  1. 部署ごとの年間退職者数を集計
  2. 部署別在籍人数で割り、離職率を算出
  3. 全社平均と比較し、著しく高い部署を抽出

:全社平均離職率 10%、A部署 25% → 要因の深掘りが必要

こうした早期兆候を定量・定性の両面から把握することで、原因の仮説立てや優先度設定がスムーズになります。

なぜ特定の部署・拠点で離職が集中するのか|5つの主因カテゴリ

同じ企業内でも、離職が特定の部署や拠点に偏ることがあります。これは全社的な課題ではなく、その組織単位に特有の要因が影響しているケースが少なくありません。ここでは、離職集中を引き起こす主な原因を5つに整理します。

1. マネジメント要因

  • 上司のマイクロマネジメント(細かすぎる指示)や逆に放任しすぎるケース
  • 部下の成果や努力を正当に評価しない
  • 意見や改善提案を受け入れる風土がない

    こうしたマネジメントの歪みは、短期間で職場の雰囲気を悪化させます。

2. 業務負荷要因

  • 特定部署に業務が集中し、残業時間が突出している
  • 業務フローや役割分担が曖昧で、常に「火消し」状態
  • 他部署との連携不足による業務のやり直しや二重作業

    結果として、疲弊や燃え尽きが起こりやすくなります。

3. 人間関係要因

  • 派閥やグループ化による孤立
  • ハラスメントや陰口が放置されている
  • 新人・中途社員がなじみにくい文化や価値観の押しつけ

    人間関係のストレスは、給与や待遇よりも退職を早める傾向があります。

4. 制度・待遇要因

  • 同じ仕事でも部署によって給与や手当が異なる
  • 評価基準が不透明で、昇進や昇給が一部の人に偏る
  • 福利厚生や勤務条件が現場ニーズに合っていない

    制度面の不公平感は、静かに不満を蓄積させます。

5. 採用・配置要因

  • 配属時の適性判断が不十分で、ミスマッチが発生
  • 急な人員異動による負担増
  • スキルや経験の偏りによって業務負担が一部の人に集中

採用から配置までの流れが不適切だと、早期離職につながります。

部署別の離職集中は、複数要因が組み合わさっていることが多く、1つの原因に絞ると誤った対策を取るリスクがあります。

関連記事
離職防止の完全ガイド|原因別の対策と定着率を上げる実践ステップでは、各原因ごとの具体的な改善方法も紹介しています。

原因を特定するための分析・ヒアリング手法

離職が多い職場では、「なぜ辞めるのか」という原因の特定が改善の出発点です。感覚や憶測だけで判断すると、根本的な課題を見落とし、対策が空振りに終わる可能性があります。ここでは、定量・定性の両面から原因を明らかにする方法を紹介します。

1. 定量分析で全体像を把握する

部署別離職率の比較
期間を統一して退職者数を集計し、在籍人数で割って離職率を算出します。全社平均と比較して突出している部署は重点調査が必要です。

在籍期間別の分析
1年未満、1〜3年、3年以上など在籍年数ごとに区分し、どの層で離職が集中しているかを確認します。

業務データとの照合
残業時間、案件数、クレーム件数など、業務負荷の指標と離職率を照らし合わせると相関関係が見えやすくなります。

2. 定性分析で背景を掘り下げる

退職者ヒアリング
建前と本音が異なることが多いため、面接では「辞めた理由」だけでなく「辞める決断に至った経緯」も聞きます。

残存者インタビュー
辞めた人の視点だけでなく、現場に残っている人の声からも課題を浮き彫りにします。

1on1面談の活用
定期的な1on1で、小さな不満や不安を早期にキャッチできます。

3. AI・データ分析による“予兆”の見える化(差別化ポイント)

テキストマイニング
従業員アンケートの自由記述や社内チャットを分析し、ネガティブワードの頻度や感情の変化を把握します。

感情分析
ポジティブ・ネガティブの傾向をAIで自動分類し、特定部署の心理的安全性の低下を数値化します。

異常値アラート
残業時間や欠勤日数などの急激な変化を検知し、早期対応につなげます。

定量データで“どこ”に問題があるかを特定し、定性データで“なぜ”を掘り下げる。この両輪で初めて、効果的な対策が打てます。

他社事例を見てみる

優先度付けと初動ステップ|どの改善策から着手するべきか

原因特定後は、すべてを一度に解決しようとせず、影響度の高い要因から順に対応します。
たとえば、マネジメント不全や業務負荷の偏りは短期間で離職を増やすため、即時対応が必要な最優先課題といえます。

優先度の目安は以下の順がおすすめです。

  1. 心理的安全性やハラスメント関連の課題(即対応が必要)
  2. 業務負荷の集中や長時間労働(短期改善策で負担軽減)
  3. 評価制度・待遇の不公平感(中期的見直し)
  4. 採用・配置のミスマッチ(中長期での改善)

影響度と改善スピードを軸に優先順位を設定すると、短期間で改善効果を体感できます。

離職集中を食い止める短期&中長期改善策

原因が明らかになったら、早急な対応と将来を見据えた改革を並行して進めることが重要です。ここでは、すぐに着手できる短期施策と、時間をかけて根本改善を図る中長期施策を整理します。

原因別改善策の早見表

原因カテゴリ短期改善策中長期改善策
マネジメント上司と部下の1on1強化/臨時フィードバック管理職研修・評価基準の透明化
業務負荷タスク棚卸・他部署応援体制業務フロー再設計・人員増員
人間関係外部相談窓口設置チームビルディング施策の定着
制度・待遇臨時手当や短期インセンティブ評価制度再構築・福利厚生見直し
採用・配置適性診断の導入配属基準の見直し・採用プロセス改善

短期施策(即効性重視)

業務負荷の一時的な軽減
業務の棚卸しを行い、緊急性の低いタスクを削減。必要に応じて他部署からの応援体制を組みます。

臨時の評価・面談の実施
モチベーションの低下を食い止めるため、成果や努力を即時にフィードバックします。

メンタルケアの導入
外部カウンセラーやEAP(従業員支援プログラム)を活用し、安心して相談できる環境を用意します。

中長期施策(構造的改善)

評価制度の見直し
成果だけでなくプロセスやチーム貢献も評価に反映させることで、不公平感を解消します。

キャリアパスの明確化
社員が自分の成長と将来像を描けるよう、職種別・等級別のキャリアモデルを提示します。

マネジメント層の育成
部下のモチベーション管理やコミュニケーションスキル向上を目的とした研修を定期的に実施します。

予兆管理による継続改善(差別化ポイント)

サーベイの定期実施
エンゲージメント調査を四半期ごとに行い、数値の変化をモニタリング。

AI分析による早期警告
アンケートや業務データから「退職リスクスコア」を算出し、基準値を超えた場合はアラートを出す仕組みを導入します。

改善効果のフィードバック
施策実施後に再度測定を行い、効果を可視化して次の改善に活かします。

短期策は“出血を止める”、中長期策は“体質を改善する”という役割分担が必要です。両方を並行することで、離職集中を防ぎながら組織の持続的成長を支えられます。

関連記事離職防止の施策大全|原因別の解決策と90日実行ロードマップでは、各施策の詳細と事例も紹介しています。

外部リソースを使って解決を加速させる方法

離職率の改善は社内だけで取り組むことも可能ですが、部署・拠点単位の問題は当事者だけでは原因を見誤ることがあります。
第三者の視点や専門的な分析ツールを活用することで、短期間で原因を可視化し、効果的な施策を導入できるのが外部リソース活用の強みです。

外部活用のメリット

客観性の確保
利害関係のない第三者が分析することで、感情や社内政治に左右されない結果が得られます。

専門知識と実績
組織診断や離職防止に特化したノウハウを持つプロの知見を取り入れられます。

スピード感
社内でゼロから調査・施策立案を行うよりも、短期間で実行フェーズに移れます。

活用できる外部リソースの例

  • 組織診断ツール:エンゲージメントや職場環境の状態を数値化
  • 外部研修プログラム:管理職のマネジメント改善や若手の定着率向上に特化
  • 制度設計コンサルティング:評価制度やキャリアパスの再設計を支援

導入の進め方

  1. 現状把握と目的設定(どの部署の何を改善したいか明確化)
  2. 試験導入(小規模で効果を検証)
  3. 効果測定と全社展開(数値化して改善を繰り返す)

離職集中は時間が経つほど改善コストと影響範囲が拡大します。 3カ月後に結果を出すためには、今の行動が必要です。

支援内容を詳しく見る

離職集中は“今”の行動で変えられる

部署や拠点で離職が集中する背景には、マネジメント・業務負荷・人間関係・制度・配置など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
感覚や憶測ではなく、定量データと現場の声の両面から原因を特定し、短期の応急処置と中長期の構造改革を並行して進めることが、定着率向上の近道です。

離職は待っていても自然に減ることはありません。「気づいた今」が改善のスタートラインです。

法人企業向けサービス紹介資料

支援内容を詳しく見る

FAQ|よくある質問

Q
離職率は何%から高いと判断すべきですか?
A

一般的には、年間離職率が15%を超えると高いとされます。業種や職種によって基準は異なるため、同業平均や自社の過去データと比較して判断することが重要です。

Q
特定部署だけ離職率が高い場合、最初にやるべきことは?
A

まずは部署別の離職率を算出し、他部署や全社平均との比較を行います。その上で、ヒアリングやサーベイを使って現場の声を集め、要因を特定します。

Q
離職改善は社内だけで可能ですか?
A

可能ですが、客観的な視点や専門的な分析が不足しやすく、原因特定に時間がかかる傾向があります。外部の診断ツールや研修を併用することで、短期間で効果的な施策を打てる可能性が高まります。

Q
離職率改善の効果が出るまでの期間は?
A

改善策の内容や組織規模にもよりますが、短期施策であれば3〜6カ月以内に離職率の減少やエンゲージメントの向上を実感できるケースがあります。制度改定や文化醸成などの中長期施策は、1〜2年スパンでの変化を見据える必要があります。

Q
AI分析を導入する際の費用相場は?
A

導入規模や機能によりますが、月額5万円程度から始められる簡易型ツールから、年額数百万円の包括的分析サービスまで幅広く存在します。まずは小規模トライアルでROIを確認する企業が多い傾向です。