「うちもそろそろ業務効率化を進めよう」
そう社内で決まり、とりあえず現場に「ムダを減らして効率化しよう」と声をかけてみた。けれど、実際には何が改善されたのか分からないまま、数ヶ月が経っている。こんな状況に、心当たりはありませんか?
業務効率化の取り組みがうまくいかない企業の多くに共通するのは、「目的が曖昧」「目標が数値化されていない」「現場が動かない」という課題です。
「がんばろう」「改善しよう」といった抽象的な声かけでは、成果につながらないのが実態です。
だからこそ重要なのが、「目標設定」です。具体的な指標(KPI)や、現場に落とし込めるSMARTな目標を設計し、進捗を見える化することが、業務効率化を単なる掛け声から実行フェーズへと引き上げます。
この記事では、業務効率化を計画的に進めるための目標設定の考え方・手順・定量化のポイントを徹底解説。さらに、目標を「立てて終わり」にしないための運用・定着の仕組み化や、成功事例も紹介します。
現場が本当に動く、成果につながる業務効率化を実現したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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なぜ、業務効率化には目標設定が欠かせないのか?
業務効率化の取り組みは、意外と簡単に始められます。会議を短くする、帳票のフォーマットを見直す、無駄な報告書を減らす。こうした小さな改善は現場の工夫でも実行可能です。
しかし、こうした改善が本当に効率化につながっているのか?という問いに、はっきりと答えられる企業は多くありません。つまり、成果を測る基準=目標設定がなされていないことを意味します。
現場の行動を効率的に変えていくには、明確なゴールとそこへ至る道筋が必要です。逆にそれが曖昧なままだと、改善は空回りし、やがて「効率化疲れ」が起こってしまいます。
ここでは、目標設定がなければ業務効率化がなぜ機能しないのか、その本質的な理由を解説します。
目標がなければ「改善した気になるだけ」で終わる
効率化の施策は、一見すると成果が見えやすいようでいて、数値で確認しなければ意味がありません。
たとえば、「会議を10分短くした」という変化が、本当に業務時間の削減や生産性向上に寄与したのか?そこを測定する明確な指標(KPI)がなければ、判断は感覚に頼るしかなくなります。
結果、「なんとなくやっている」「やったけど変わらない」といった空気が現場に漂い始め、形だけの改善活動に陥ってしまうのです。
現場が納得しない効率化は進まない
もう一つの大きな壁は、現場との温度差です。経営層やマネジメント側が「効率化せよ」とトップダウンで方針を出しても、現場が何をどう改善すればよいのか分からないという状況では、行動は変わりません。
この乖離を埋めるのが、具体的で納得感のある目標設定です。
- 何を改善するのか(目的)
- どこまでやるのか(目標値)
- どう進めるのか(手段)
こうした要素がセットで共有されてこそ、現場は「自分ごと」として改善に取り組み始めます。
業務効率化を単なる掛け声で終わらせず、実行と成果につなげるための出発点が、まさにこの目標設定なのです。
業務効率化に使える「目標設定フレームワーク」3選!SMART・KPI・MBO
業務効率化を推進するうえで、「どのように目標を立てるか」は極めて重要です。なんとなくの努力目標では、現場も動かず、成果の検証もできません。
そこで活用したいのが、実務で使われている3つの目標設定フレームワークです。それぞれ特性が異なるため、「どんな効率化をしたいのか」「どのレイヤーで使うのか」によって使い分けが必要になります。
ここでは、代表的な3つの手法を比較しながら紹介します。
SMART目標:短期施策や個別業務の改善に向いている
SMARTとは、目標を「具体的(Specific)・測定可能(Measurable)・達成可能(Achievable)・関連性(Relevant)・期限付き(Time-bound)」で定義するフレームワークです。
たとえば、「無駄な会議を減らす」という曖昧な目標を、以下のようにSMARTで整理するとどうなるでしょうか。
- S(具体的):30分以上の定例会議を対象に
- M(測定可能):月10回→月5回に削減
- A(達成可能):議題共有と事前資料化で可能
- R(関連性):業務時間の圧縮と意思決定の高速化につながる
- T(期限付き):3ヶ月以内に実施
こうした設計により、目標は「管理されるもの」から「実行されるもの」へと変わります。SMARTは特に、部門単位の改善活動や、短期施策の進捗管理に効果を発揮します。
KPI・KGI:数値で進捗を管理し、全体最適を図る
より広範な業務改善やプロジェクト単位での効率化には、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とKGI(Key Goal Indicator:最終目標指標)が有効です。
たとえば「営業業務の効率化」を目指す場合、次のような指標設計が考えられます。
- KGI(最終目標):月間売上を20%増加させる
- KPI(中間指標):営業1件あたりの商談時間を30分以内に短縮、クロージング率を15%→20%に改善
このように、最終目標と進捗を測る指標を因果関係でつなげることがポイントです。
KPI設計が曖昧なまま施策を進めると、「何を改善したか分からない」という事態に陥ります。逆に、正しく設計できれば、施策の見直しや改善も定量的に判断できるようになります。
MBO:マネジメントや評価制度と連動して活用する
MBO(Management by Objectives:目標による管理)は、もともと人事評価や人材育成の手法として使われてきましたが、業務効率化との相性も良いフレームワークです。
特徴は、「目標を現場と一緒に設定し、達成度を評価に反映させる」という点です。トップダウンの命令ではなく、現場の納得感を得ながら推進できるのが強みです。
たとえば、管理職が「自部署の定型業務を20%削減し、その分を戦略業務に充てる」といった目標を持つ場合、
- そのために必要な業務棚卸
- 改善策の実行
- 結果に対する評価
このように一貫して実施することで、効率化が「やらされごと」で終わらなくなります。MBOは特に、マネジメント層の巻き込みや組織的な意識改革に効果的なアプローチです。
目標設定の型を状況に応じて使い分けることで、業務効率化の成果は段違いに高まります。とはいえ、理論を知っていても、実際に現場で定着させるには“仕組み”が必要です。
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目標設定で数値化するには?適切な指標と目標例のつくり方
目標が明確でも、「結局どうやって成果を測ればいいのか分からない」と悩むケースは多くあります。とくに業務効率化では、改善の実感があっても定量的に成果を示せないと、評価も予算も得にくいのが実情です。
だからこそ重要なのが、「指標=KPI」の設計です。単なる数値の羅列ではなく、現場の改善行動と結びついた指標を選ぶことで、初めて意味のある目標設定が可能になります。
ここでは、業務の種類ごとに使える指標例や、数値化の落とし穴とその対策を整理していきます。
業務別:定量化しやすいKPIの設計例
業務の種類ごとに「どこをKPIとして設計しやすいか」を把握しておくと、数値化のハードルが一気に下がります。以下の表では、代表的な職種・業務ごとに、定量化しやすいKPIと改善アプローチの例を整理しています。
業務タイプ | よく使われるKPI(指標) | 改善アプローチの例 |
事務・総務系 | ・処理件数/日・書類作成時間・入力ミス率 | ・RPAによる自動化・マニュアル整備・フォーム統一化 |
営業・商談系 | ・商談数/週・提案資料作成時間・クロージング率 | ・営業資料のテンプレ化・AIによる提案文書生成・顧客管理効率化 |
カスタマーサポート | ・初回応答時間・解決までの平均時間・CSATスコア | ・FAQ拡充・チャットボット連携・問い合わせ内容の分類自動化 |
マーケティング | ・資料DL数・CVR・コンテンツ制作時間 | ・LP改善・AIによる下書き生成・効果測定ツール導入 |
人事・教育 | ・研修完了率・受講満足度・離職率 | ・eラーニング導入・動画マニュアル・オンボーディング設計 |
これらは一例ですが、重要なのは改善対象に応じて適切な指標を選び、行動と結びつけることです。
その上で、日々の業務で見える形に落とし込むことで、効率化の成果をチーム全体で共有できるようになります。
定性目標を数値に落とし込むにはどうすればいい?
業務効率化には、「顧客満足度が上がった」「社内の空気が良くなった」といった定性的な改善も少なくありません。ただし、それらを放置すると、結果が曖昧になり、経営層への説明や社内評価が難しくなります。
そこで活用したいのが、定性指標を定量のかたちに翻訳する工夫です。
- 「満足度が上がった」→ NPSやCSATのスコア調査で可視化
- 「チームの雰囲気が良くなった」→ 会議時間の短縮率・メンバーの発言数
- 「属人化が減った」→ 業務マニュアル整備率・タスク引継ぎ完了件数
こうした間接的なKPIを設けることで、抽象的な目標も管理可能な形になります。曖昧さを排除しつつ、現場の変化を正当に評価するための仕掛けといえるでしょう。
OKRやダッシュボードで目標を業務に組み込む
目標を立てても、現場に共有されず、気づいたら誰も覚えていなかった……。そんなケースを防ぐには、日々の業務の中に目標を見る仕組みを組み込むことが重要です。
たとえば
- OKR(Objectives and Key Results)を導入し、1on1や週次会議で進捗を見える化
- KPIダッシュボードでリアルタイムに数値を可視化し、部署内に常時掲示
- KPI進捗をChatやタスク管理ツールと連携させ、自然に目に入る環境を整える
こうした工夫により、目標が掲げるものから行動を促すものへ変わります。
さらに、「目標は立てても現場が使わない」という課題に対しては、生成AIやRPAと連携した自動レポーティング・業務ログの活用も非常に効果的です。
関連記事:「業務効率化とDX連携を成功させる方法」
数値化された目標があれば、改善の方向性も成果の検証も明確になります。しかし本当の勝負はここから。目標は立てるだけでなく“定着させることが重要です。
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設定した目標を「定着」させる運用・管理の仕組みとは?
どれだけ優れた目標を立てても、それが日々の業務に活かされていなければ意味がありません。ありがちな失敗として、「掲げただけ」「会議のときだけ」「進捗が見えず形骸化」という状態に陥るケースがあります。
この形だけの目標を避け、現場が自律的に改善を回し続ける状態をつくるには、運用と定着の仕組み化が不可欠です。ここでは、具体的な実践方法を詳しく解説します。
進捗確認のリズム設計が、行動を継続させる
目標は立てて終わりではなく、「定期的な振り返り」があって初めて効果を発揮します。そのためには、進捗確認のリズムを仕組みとして組み込むことが重要です。
- 週次/隔週の定例レビューを実施し、KPIの進捗を見える化
- 四半期ごとの中間チェックで目標の妥当性を見直す
- チーム単位で改善の打ち手を持ち寄る場を設け、共通言語としてのKPIを定着させる
このように、目標を見る→考える→修正するというループを“定例化”することが、継続的な効率化の第一歩です。
ツールで「目標の見える化と習慣化」を促す
人の記憶や意識に頼るのではなく、ツールの力を借りて仕組みに落とし込むことも重要です。
たとえば、
- KPIをダッシュボードやBIツールで可視化し、進捗を常に“見える化”
- SlackやTeamsに自動通知ボットを設定し、数値の定期共有を習慣化
- タスク管理ツール(Notion、Asanaなど)に目標別のToDo連携を組み込む
これにより、目標が「文書の中」ではなく、「日常の動線上」に存在する状態を作れます。つまり、目標が意識される環境をつくることで、自然と行動が変わっていくのです。
関連記事:「業務効率化ツールおすすめ20選」
人材育成や研修で仕組みの使い手を育てる
定着のもう一つのポイントは、ツールやフレームワークを使いこなせる人を現場に配置することです。仕組みはあっても、使える人がいなければ回りません。
ここで鍵になるのが、マネージャー層や現場リーダーへの教育です。業務効率化の目標をどう読み取り、現場にどう落とし込むか。現場からの声をどうKPIにフィードバックするか。
こうしたスキルをもつ人材が育てば、効率化は一過性ではなく文化として根づいていきます。
また、生成AIやRPAを活用した定型業務の自動化と組み合わせれば、より高いレベルで目標達成が可能になります。
関連記事:「業務効率化とDX連携を成功させる方法」
目標を見える化し、運用し、定着させる。その先にこそ、「目標が動く」「現場が変わる」業務効率化が待っています。そして、それを一気に加速させるのが、目標設計×人材育成×AI活用という組み合わせです。
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【事例】目標設定で業務効率化に成功した企業のアプローチ
目標設定はあくまでスタート地点にすぎません。大切なのは、そこから現場がどう動き、成果を出せたかという「実行」のリアルです。
ここでは、実際に目標設定を軸に業務効率化に取り組み、数字としての成果を出した企業の事例を紹介します。
いずれも、フレームワークやツールだけでなく、“人”と“仕組み”をどう組み合わせたかが成功の鍵になっています。
事例①RPAとKPIで月50時間の作業削減(製造業・経理部門)
経理業務の「月末請求書処理」が属人化・アナログ運用に陥っていた某製造業。現場の負担は大きく、毎月残業が恒常化していました。
そこで、KPI=月末処理時間を50%削減を掲げ、以下の流れで改善を実行。
- 作業を分解・見える化し、定型ルールを洗い出し
- RPAを導入し、データ入力・照合作業を自動化
- 進捗ダッシュボードで作業時間をリアルタイムに把握
結果、月50時間分の業務が削減され、残業時間も25%削減。KPIの“見える化”がマネジメントの意思決定をスピードアップさせた好例です。
事例②営業効率をKPIで可視化、AI活用で資料作成時間を40%短縮(ITベンチャー)
営業活動の非効率に悩んでいたIT企業では、KPI=提案資料作成にかかる時間を60分以内にと設定。既存では、営業ごとに資料がバラバラで、準備に2〜3時間を要していました。
改善策として、
- 営業資料をテンプレート化し、社内ナレッジを一元化
- 生成AIツールで提案文書の初稿を自動生成
ダッシュボードで資料作成時間を定点観測
結果、平均作成時間が96分→57分に短縮され、営業はより提案の質やクロージングに集中できるようになりました。効率化の効果が「数値」で明示されたことで、全社的なAI活用の加速にもつながった成功例です。
事例③MBOを通じて管理職の業務改善意識を醸成(人材系・大手企業)
マネジメント層の業務効率に課題を感じていた大手人材企業では、「マネージャー1人あたりの会議時間を週3時間以内にする」という目標をMBOに組み込みました。
施策としては、
- 会議の目的・ゴール・所要時間を事前定義
- 議事録を自動生成・共有し、無駄な振り返りを削減
- 効率化の成果を人事評価に反映する制度を導入
これにより、マネージャーの会議時間が40%削減されただけでなく、「業務の目的意識が明確になった」「部下への共有が早くなった」などチーム全体の生産性向上にもつながりました。
このように、目標を定めて動けば、成果は確実に“数字”で表れます。ただし、それを正しく設計し、定着させる仕組みを持っているかどうかが最大の分かれ道です。
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まとめ|目標設定から「現場が動く業務効率化」を進めよう
業務効率化を実現するには、ツールでもスローガンでもなく、まず目標を設計することが出発点です。しかもその目標は、「見える」「測れる」「行動に落とし込める」ものでなければ、現場は動きません。
今回は、成果につながる業務効率化のために押さえるべきポイントを整理しました。
- SMART・KPI・MBOなど、目的に応じたフレームワークの使い分け
- 業務内容ごとの定量・定性KPI設計と、現場に即した具体例
- 目標を「定着」させるための、運用リズム・可視化ツール・育成設計
- 実際に成果を出した企業の事例と成功のポイント
こうした設計と運用が整えば、業務効率化は「やったつもり」から「成果が見える」ものへと進化します。そして、その推進を担うのは経営層でも現場でもなく、仕組みをつなぐ中間層のマネジメント力です。
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業務効率化に関するよくある質問(FAQ)
- Q業務効率化の目標は、どのくらいの頻度で見直すべきですか?
- A
目標は四半期ごとの見直しがおすすめです。業務環境やツール導入状況によって進捗の早さや難易度が変わるため、定期的な振り返りを組み込みましょう。
特にKPIは「チェック→修正→再設定」のループ運用がカギとなります。
- QSMARTとKPIの違いがよく分かりません。どう使い分ければよいですか?
- A
SMARTは目標そのものの設計手法(どう立てるか)、KPIは目標達成の進捗を測る指標(どう測るか)です。
SMARTは目標を明確化するフレームワーク、KPIは数値で追うチェックポイント。両者を組み合わせることで、行動と結果をブレずに進める設計が可能になります。
- Q数値化できない目標はどうすればよいですか?
- A
「数値化できない」ではなく、「間接的な指標に変換できるか」がポイントです。たとえば「満足度」はアンケートやCSATスコアで、「チームの風通しの良さ」は1on1回数や発言量で捉えられます。定性目標こそ、評価に使える“翻訳力”が問われます。
- Q現場にKPIを定着させる方法が知りたいです。
- A
定着には次の3つの仕組みが有効です。
- 可視化:ダッシュボードや通知ボットで“目に触れる設計”に
- 定例化:週次レビュー・月次共有で“考える習慣”に
- 巻き込み:リーダー層への研修・評価反映で“動機づけ”に
関連リンク:「業務効率化とDX連携を成功させる方法」
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