生成AIの進化により、ChatGPTで「画像を読み取って解析する」機能が一般化しました。
資料の内容を要約したり、写真の中の文字を抽出したりと、便利さは日々向上しています。
しかし同時に、「その画像をアップロードしても本当に安全なのか?」という不安を抱く声も急増しています。
顔写真・社内資料・顧客データなど、画像の中には多くの機密情報が含まれており、
不用意にアップロードすれば、情報漏洩・著作権侵害・プライバシー侵害につながるリスクがあります。
実際、海外では社員がAIツールに社内図面をアップした結果、
外部AIサービスの学習データに含まれてしまったという事例も報告されています。
つまり、「画像アップロード」は便利な反面、企業の情報資産を外部に送信する行為でもあるのです。
本記事では、ChatGPTの画像アップロード機能の仕組みとリスクを整理し、
プライバシー・著作権・セキュリティの観点から安全に使うための具体的な対策を解説します。
また、企業が社内でAI活用を進める際に欠かせないルール設計・教育の重要性についても紹介します。
ChatGPTを安全に業務へ取り入れたい担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
ChatGPTの画像アップロード機能とは?
ChatGPTには、画像を読み取り内容を解析する「GPT-4 with Vision(GPT-4V)」機能が搭載されています。
テキストだけでなく画像や資料をもとに回答を生成できるようになったことで、
「AIにグラフを読ませて分析させる」「写真から文字を抽出する」といった使い方が広がりました。
ただし、この画像解析機能の仕組みを理解せずに使うと、
知らないうちに個人情報や社外秘データを外部サーバへ送信しているケースもあります。
まずは「どんな画像が対象で」「どこへ送られ」「どんな扱いを受けるのか」を正確に理解しましょう。
どんな画像をアップロードできる?(GPT-4の画像解析機能を解説)
ChatGPTの画像アップロード機能は、GPT-4(Vision)対応プランで利用できます。
ドラッグ&ドロップやクリップアイコンから画像を添付すると、 AIがその画像を解析し、テキスト回答や補足説明を生成します。
読み取れる内容は幅広く、例えば次のようなものがあります。
- 画像内の文字(OCR)や数字
- グラフ・図表などのデータ構造
- 書類やホワイトボードに記載された社内メモ
- 人物や背景などの被写体情報
- 顔や風景からの特定可能な個人・場所情報
つまり、AIは「画像の内容」をテキストと同じように解析するため、 顔写真・免許証・名刺・社内資料などをアップロードすれば、
その情報がOpenAIのシステムに一時的に送信・処理されるということです。
利便性の裏に、「画像=情報」というリスク認識が欠かせません。
アップロードした画像はどこに送られる?
アップロードされた画像データは、OpenAIのクラウドサーバ上で一時的に処理されます。
画像はAIモデル(GPT-4V)に入力され、内容がテキストデータとして解析される仕組みです。
OpenAIの公式ポリシーでは、以下のように定められています:
- 無料版・Plus(個人)利用時:送信データは品質向上(モデル学習)に利用される場合がある
- Team/Enterprise利用時:学習には一切使用されず、ログも一定期間で削除される
つまり、同じ「画像をアップロードする」行為でも、 利用しているプランや契約形態によってデータの扱いが大きく異なるという点が重要です。
また、アップロード時には通信経路上で暗号化(TLS)が行われますが、 社外ネットワークを経由している時点で“外部送信”に該当するため、
企業の情報セキュリティポリシー上は「慎重な扱い」が求められます。
無料版・有料版・Enterpriseの違い
ChatGPTでは、利用プランによってデータの保存・学習・利用目的が異なります。
特に画像アップロードを業務で行う場合は、この違いを理解しておくことが安全運用の第一歩です。
| プラン | データの保存・学習利用 | セキュリティレベル | 想定利用 |
| 無料版(ChatGPT Free) | 入力データがAI学習に利用される場合あり | 低 | 個人の試用・学習向け |
| 有料版(ChatGPT Plus) | OpenAIの内部で品質向上目的に利用される場合あり | 中 | 個人業務・個人開発向け |
| Team/Enterprise | 学習に一切利用されない・ログも暗号化・監査機能あり | 高 | 企業・組織利用に最適 |
つまり、無料版で社内資料や顧客画像をアップロードすることは、情報漏洩と同義になり得ます。
反対に、ChatGPT Enterpriseなど法人向けプランでは、 学習利用が完全にオフになり、アクセス制御・監査ログなどが実装されています。
関連記事: ChatGPT無料版の使い方と制限を徹底比較|GPT-4との違い・企業での安全な活用法
無料版・有料版でアップロードデータの扱いがどのように異なるのかを、より詳しく解説しています。
ChatGPTに画像をアップロードする際の主なリスク3つ
ChatGPTで画像を解析できるようになったことで、 「手書きメモを読み取る」「グラフを分析する」「写真から文章を生成する」など、
活用の幅は一気に広がりました。
しかし、その便利さの裏には“3つの重大リスク”が存在します。
ここでは、利用者が見落としがちなプライバシー・著作権・情報漏洩という三方向から、
ChatGPTの画像アップロードに潜む危険性を整理します。
① 個人情報・顔写真が特定されるプライバシーリスク
最も身近でありながら見落とされやすいのが、個人情報が特定されるリスクです。
ChatGPTの画像解析機能は、単なる「画像認識」ではなく、AIが画像内の文字や背景情報まで読み取ります。
たとえば――
- 顔写真をアップロードした際、背景の看板や建物から撮影場所を特定できる可能性がある
- 社員証や名札、名刺などが写っていれば氏名・所属・社名が自動抽出される
- 写真データに埋め込まれたEXIF情報(撮影日時・GPS座標・端末情報)が送信される
このように、画像は見えている情報以上に“個人を特定できるデータ”の集合体です。
特に、家庭や職場で撮影した写真には、想像以上に多くの「メタデータ(間接情報)」が含まれています。
一度アップロードした画像はOpenAIのサーバで処理されるため、
無料版を使っている場合、そのデータがAI学習に再利用されるリスクも否定できません。
つまり、顔写真=個人情報であることを常に意識し、
「他人の写り込み」や「背景情報」まで配慮した上で利用することが重要です。
② 他人の写真・素材をアップする著作権・知財リスク
次に注意すべきは、著作権や知的財産権の侵害リスクです。
ChatGPTは画像の中身を解析し、その内容を学習や生成に活用する可能性があります。
そのため、アップロードした画像の権利関係が不明確な場合、
意図せず第三者の著作物をAIの学習データとして送信してしまうことになります。
たとえば――
- 顧客企業のパンフレットや社内プレゼン資料をアップして要約させた
- デザイナーが制作した社内ロゴや広告素材を読み取らせた
- 他人が撮影した写真をAIに“加工指示”として利用した
これらはいずれも、著作権法上の無断利用・二次利用にあたる可能性があります。
また、AIが生成した画像をさらに再利用する場合にも、 「生成物に含まれる素材の権利関係が曖昧」になるリスクがあります。
特に、ChatGPTで解析した画像を商用利用する場合は、 著作権者・モデル権・肖像権など、複数の法的リスクが絡む点に注意が必要です。
③ 業務データや社外秘情報の流出リスク
企業で最も重大なのが、業務データ・社外秘資料のアップロードによる情報漏洩リスクです。
ChatGPTはクラウド上で動作するため、画像をアップロードした瞬間にデータが外部サーバへ送信されます。
以下のようなケースは特に危険です。
- 会議ホワイトボードを撮影した写真をアップして議事録化
- 製品設計図面や試作品写真を読み取らせて説明を生成
- 契約書や見積書を撮影して「要約して」と依頼
このような行為は、社外秘情報をそのままクラウドに送信しているのと同じこと。
特に無料版ChatGPTを利用している場合、アップロードデータがAIモデルの学習に利用される可能性があり、
一度送った情報を完全に削除することはできません。
つまり、「ChatGPTを使って便利にまとめたつもりが、 社外情報をAIに渡してしまっていた」という事態が簡単に起こり得ます。
このリスクを回避するには、企業としてアップロード禁止情報を明文化し、
使用できる環境(プラン)を統一することが不可欠です。
補足BOX:「“画像をアップロード=入力情報を送信”と同義」
ChatGPTで画像を扱う際は、単に「ファイルを送る」ではなく、 “クラウドに預ける”行為と捉える必要があります。
つまり、アップロードした瞬間に「外部へ情報を出した」と考えるべきです。
この意識があるかどうかで、セキュリティ対策の精度が大きく変わります。
企業利用で特に注意すべき画像アップロードの落とし穴
個人で使う分には「便利で面白い」で済むChatGPTも、 企業の情報資産を扱う現場で使われるとき、リスクの性質は一変します。
実際に、社内で生成AIの利用を広げようとした企業の多くが、 「社員が知らずにリスク行為をしていた」「無料版を使っていた」といった課題に直面しています。
ここでは、組織で特に注意すべき3つの“落とし穴”を紹介します。
社員が個人判断で社内資料をアップしてしまうケース
最も多いのが、「これくらいなら大丈夫だろう」という個人判断による誤利用です。
たとえば、
- 社内マニュアルを要約させようとしてPDFを画像化してアップロード
- 顧客提案書をChatGPTに「改善点を教えて」と入力
- 手書きメモやホワイトボードの写真を整理させる目的でアップ
このようなケースでは、社員本人に悪意がなくても、 社外秘情報や顧客データがOpenAIのサーバーに送信されることになります。
特に、ChatGPTが社内で正式導入されていない状態では、 「誰がどのアカウントで、どんなデータをアップしたか」を把握できず、 情報漏洩の追跡(トレーサビリティ)が不可能です。
AIツールは「一人ひとりの判断力」に依存しがちなため、 利用ガイドラインと教育をセットで整備することが不可欠です。
無料版の利用を放置した結果、データが学習対象に
もう一つの落とし穴が、「無料版を使ってしまう」こと。
ChatGPT Freeでは、アップロードした画像を含むすべてのデータがAIモデルの学習に利用される可能性があります。
たとえば、社員が自分のアカウント(無料版)で業務中にChatGPTを使った場合、 社内資料や顧客データが外部学習データに混入するリスクがあります。
一度学習に使用された情報は完全に削除することが不可能なため、 企業として制御できない範囲に拡散してしまうことになります。
しかもこのリスクは、利用者本人も気づかないまま発生します。
「画像を消した」「履歴を削除した」だけでは不十分で、 OpenAI側の学習システムにはすでに反映されている可能性があるのです。
したがって、企業としてChatGPTを活用する場合は、 無料版利用を明確に禁止し、TeamやEnterprise環境に一本化することが必須です。
外部連携アプリ・拡張機能経由で画像データが転送
もうひとつ見落とされがちなのが、外部連携ツール経由のデータ流出です。
ChatGPTの周辺には、Chrome拡張機能やZapierなどの自動化ツールが数多く存在します。
これらの拡張機能の中には、ChatGPTと連携してアップロード画像や入力テキストを第三者のサーバーに転送するものもあります。
つまり、ユーザーがChatGPT上で画像を扱っているつもりでも、
実際には別のアプリを経由して情報が外部に送られている場合があるのです。
特に、以下のようなケースでは注意が必要です。
- 「ChatGPTで自動翻訳」などの便利系拡張機能を使っている
- 業務フローをZapierなどで自動化している
- ChatGPTの出力を他ツール(Notion・Slackなど)に自動転送している
外部サービスの利用規約を確認せずに連携すると、 画像データがどのサーバーを経由しているか、誰が閲覧できるのかを把握できなくなります。
警告BOX:「公式ChatGPT以外の連携ツールは要確認」
ChatGPTと連携するツールや拡張機能の中には、
利便性を高める代わりにデータアクセス権限を広く要求するものがあります。
導入時には、
- 開発元が信頼できる企業か
- どの情報にアクセスしているか
- 通信経路が暗号化されているか
を必ずチェックしてください。
“便利な自動化”が最大の情報漏洩経路になるケースも珍しくありません。
画像アップロードを安全に使うための実践的対策
リスクを理解しただけでは、ChatGPTを安全に使いこなすことはできません。
重要なのは、「どのように防ぐか」を具体的な行動レベルに落とし込むことです。
ここでは、個人・企業のどちらでも実践できる5つの安全対策を紹介します。
いずれも大きな投資を必要とせず、すぐに始められるものばかりです。
① 機密情報・個人情報を含む画像はアップしない
最も基本的で、最も効果的な対策は「アップロードしない判断」です。
ChatGPTに画像を送信した時点で、内容は外部サーバに転送されます。
そのため、次のような情報を含む画像は絶対にアップロードしないようにしましょう。
- 顧客名・住所・電話番号・顔写真などの個人情報
- 社外秘の製品図面・会議メモ・試作品写真
- 社員の氏名や社内メールが写ったスクリーンショット
AIに情報を「見せる」という行為は、クラウドに預けることと同じです。
「一度アップしたら外には出ない」と考えるのは大きな誤解です。
リスクを最小化する最初のステップは、“アップしない勇気”を持つことです。
② アップロード先プランのデータポリシーを理解する(無料版は避ける)
前章でも触れた通り、ChatGPTはプランによってデータの扱い方が異なります。
無料版では、アップロードした画像がAIの学習データに利用される可能性があり、
業務情報や個人データを扱う場合には不適切です。
企業や組織で利用する場合は、Team/Enterpriseプランの導入を検討しましょう。
これらのプランでは、アップロードされたデータが学習に使われず、 ログ管理や監査も行えるため、情報統制が可能になります。
さらに、利用前にOpenAIのデータ利用ポリシーやプライバシー規約を必ず確認すること。
「どの範囲まで保存され、どの目的で使用されるのか」を理解しておくことが、
安全なAI活用の“土台”になります。
③ 画像をアップする前にメタデータ(EXIF)を削除
写真には「EXIF(Exchangeable Image File Format)」と呼ばれる隠れた情報が含まれています。
これは、撮影日時・場所(GPS)・使用端末などのメタデータで、 AIにとっては個人特定のヒントになり得る情報です。
ChatGPTに画像をアップする前に、このEXIF情報を削除しておくことで、 特定リスクを大幅に下げることができます。
無料で使えるツール例
- ExifEraser(ブラウザ上で安全に削除)
- ImageOptim(Mac向け軽量アプリ)
- Windows標準機能:「プロパティ」→「詳細」→「プロパティと個人情報を削除」
わずか数秒の操作で、プライバシーリスクを大幅に減らせます。
④ Enterprise環境や社内限定環境でAI活用を行う
社内業務でChatGPTを利用する場合は、利用環境の統一と制限が欠かせません。
推奨されるのは、次のような構成です。
- ChatGPT EnterpriseやMicrosoft Copilotなど、法人契約環境で統一
- 社内VPNやゼロトラスト環境からのみアクセスを許可
- 管理者が利用ログやアクセス履歴を監査できる設定にする
このように環境レベルで制御することで、 「誰が」「どこから」「どんな画像を」アップしたかを把握でき、 “使い方を監視する”ではなく“安全に使える状態を整える”ことが可能になります。
⑤ 社員教育で「どの情報が危険か」を理解させる
どれほど仕組みを整えても、使う人の意識が変わらなければ事故は防げません。
多くの情報漏洩は、社員の「うっかり」や「知らなかった」で発生しています。
ChatGPTのように直感的で便利なツールほど、リスク認識が薄れやすいもの。
だからこそ、社員が自ら判断できるリテラシーを身につけることが大切です。
有効なのは、AIリテラシー研修の実施です。
「なぜ危険なのか」「どの情報が外部送信にあたるのか」を
事例を交えて学ぶことで、現場判断の精度が格段に上がります。
Tips:EXIF削除ツールや社内ガイドラインテンプレートの活用
研修や教育の一環として、実際に使えるツールやテンプレートを社内で共有すると効果的です。
- 無料EXIF除去ツールを紹介して“体験的に理解”させる
- 「画像アップロード禁止情報一覧」テンプレートを配布する
これらの実務支援ツールが、ルールを“運用できる形”にします。
「安全に使う」には、仕組み+教育の両輪が不可欠です。
社員がリスクを理解し、正しくChatGPTを使える体制を整えましょう。
事例で学ぶ|画像アップロードを軽視して起きたトラブル
どれほど注意喚起しても、「うちでは起こらない」と思われがちなAI利用のトラブル。
しかし、実際には「画像をアップしただけ」で大きな炎上や情報漏洩に発展した事例が世界中で報告されています。
ここでは、ChatGPTを含む画像解析・生成AIで実際に起きた4つの代表的なトラブルを紹介します。
いずれも「たった一度の油断」から生まれた事故です。
AI画像変換ツールに社外データを誤送信した企業事例
ある製造業の企業では、社員がAI画像変換ツールを使って 「図面をわかりやすいイラスト化」にしようとしました。
しかし、その図面には未発表製品の構造情報が含まれており、 アップロードと同時にクラウド上のAIモデルに送信されました。
さらに、そのツールがChatGPT連携型のAPIを利用していたことが後に判明。
つまり、社外秘データが別のAIサービスにも転送されていたのです。
結果として、社内での使用が全面停止となり、 全社員のAI利用を監査・制限する新ルールを急遽導入することになりました。
教訓:「画像を加工しただけ」でも社外送信になる。
外部ツールや自動変換サービスの利用前には、必ずデータ送信先を確認しましょう。
社員が顧客写真をアップ→SNSで“AI流出疑惑”炎上
ある小売業の担当者が、顧客アンケートに添付された写真を 「ChatGPTでキャッチコピーを考えさせるため」にアップロードしました。
その後、別のAI画像生成サービス上で、 そっくりな写真がサンプル画像として使われているのが発見され、 SNS上で「顧客写真が流出したのでは」と炎上。
実際にはデータが自動学習に使われただけでしたが、 企業ブランドへの信用低下は避けられませんでした。
教訓:「社外に送る=制御できなくなる」。
顧客・社員・協力会社など、個人が特定できる画像をAIに送ることは避けましょう。
生成画像に社内マニュアル素材が混入(著作権トラブル)
別の企業では、デザイン担当者がChatGPTを通じて生成AIを利用し、 新しいパンフレット用のイラストを作成しました。
ところが、完成画像をよく見ると、過去に制作した社内マニュアルの一部レイアウトが
そのまま反映されていることが判明。
後に、過去にその素材をアップロードしていたことが原因と分かり、 自社コンテンツがAI学習データとして再利用されていたのです。
このケースでは著作権侵害には至りませんでしたが、 「AIに渡した情報は戻らない」ことを痛感する結果となりました。
教訓:AIに渡した素材=外部共有と同義。
自社制作物であっても、アップロード前に権利・利用範囲を再確認しましょう。
無料版利用で画像が学習データ化→社外AIに類似出力
特に深刻なのが、無料版ChatGPT利用によるデータ再利用問題です。
あるベンチャー企業の開発チームでは、製品デモ用の画像をChatGPT Freeにアップロードし、
コピーライティングの生成に使っていました。
数週間後、別のAIサービス上で類似したプロトタイプ画像が生成され、 「自社デザインが流出したのでは?」という疑念が社内で広がりました。
厳密にはChatGPTの学習データとして利用された結果でしたが、 「無料版を使って業務データを扱った」という事実自体が問題視されました。
教訓:無料版は“検証用”であって“業務利用”ではない。
業務データを扱う場合は、必ず学習除外設定のある法人プランを選択しましょう。
補足:ChatGPTに限らず「画像生成AI全般での共通リスク」
これらの事例はChatGPTに限らず、すべての画像生成・解析AIに共通するリスクです。
Midjourney、Stable Diffusion、Canvaなどでも、
アップロードした画像やプロンプトがサーバに保存・学習される仕組みを採用しています。
つまり、「AIツールの違い」よりも、 “データの扱い方”こそがリスクを左右する最大のポイントなのです。
社内で安全なAI利用を定着させるには
画像アップロードをはじめとする生成AIの利用は、 「ルールを作るだけ」では安全に運用できません。
社内規程を整備しても、実際の現場では 「知らなかった」「そこまで考えていなかった」という誤操作が後を絶たないのが現実です。
安全なAI活用を社内に根づかせるには、仕組みと教育の両輪が不可欠です。
なぜルールだけでは防げないのか(属人化・理解不足)
多くの企業で共通するのが、ルールはあるのに守られないという課題です。
原因はシンプルで、「理解がないまま形式的に導入している」からです。
たとえば、
- 「ChatGPTの業務利用は禁止」と伝えても、具体的な理由を説明していない
- 「画像をアップするな」と言われても、どの情報が“危険”なのかが分からない
- 「リスクがある」と聞いても、何がどう危険なのか実感できない
このように、理解が伴わないルールは形骸化し、現場判断で崩れていくのです。
しかも、AIツールは操作が直感的で便利なため、 「少しくらいなら」といった心理が働きやすく、事故の温床になりがちです。
つまり、AI利用を安全に根づかせるには、 単なる禁止ではなく、“なぜ危険なのか”を理解させるプロセスが欠かせません。
AIリテラシー研修で判断力を底上げする
AIリテラシー研修は、ルール遵守を“自発的行動”に変えるための最も効果的な手段です。
特にChatGPTのような生成AIでは、管理者がすべての利用を監視することは不可能。
だからこそ、「何が危険か」「どんな情報を出してはいけないか」を 社員一人ひとりが自分で判断できる状態を作ることが重要です。
実践的なAI研修では、
- 実際の入力事例を見ながら“リスクの線引き”を体感
- 無料版・有料版の違いを理解し、プラン選択の根拠を学ぶ
- 社内で共有すべきガイドラインの作成・運用をワークショップ形式で体験
といった、「使える教育」が行われます。
研修を通じて現場判断の精度が上がれば、 AI活用のスピードと安全性を両立させることが可能になります。
管理者・利用者それぞれの責任とチェック体制を明確化
AI活用は全員参加型の取り組みです。
しかし、責任の所在が曖昧なままでは、トラブル発生時に対応が後手に回ります。
安全な運用を実現するには、 管理者と利用者それぞれの役割を明確に分けることが重要です。
| 役割 | 主な責任・実施内容 |
| 管理者 | 利用環境・プランの統一、利用ログの監査、ガイドライン策定 |
| 利用者 | 入力・アップロード前の情報確認、社内ルールの遵守、事例共有 |
| 経営層 | 教育機会・研修体制の整備、全社的なAI方針の明文化 |
このように、責任範囲を可視化しておくことで、 「誰が」「どこまで」判断できるのかが明確になり、属人化を防げます。
安全なAI活用は、教育から始まります。
実践型のAIリテラシー研修で、 “画像・情報・アカウント管理”まで体系的に整えませんか?
まとめ|画像アップロードも「安全設計」でリスクをゼロに
ChatGPTの画像アップロード機能は、業務効率を高める強力なツールです。
しかしその一方で、情報漏洩・著作権侵害・プライバシー流出といった
“三つのリスク領域”が常に隣り合わせにあります。
便利さを享受するためには、ただ禁止するのではなく、
「安全に使うための設計」を組織全体で整えることが求められます。
そのためのポイントは、次の3つです。
- 機能理解:どんな情報がどこに送られるのかを正しく知る
- ルール整備:アップロード禁止範囲・利用環境・責任分担を明確にする
- 教育定着:社員が自らリスク判断できる状態をつくる
AI活用において“安全”は偶然に生まれません。
仕組みと文化の両輪で守ることが、真のAI活用力につながります。
企業の信頼は、社員一人ひとりの入力・アップロードの積み重ねで守られています。
安全なAI活用は、“全社員でリスクを共有する文化”から始まるのです。
関連記事:ChatGPT無料版の使い方と制限を徹底比較|GPT-4との違い・企業での安全な活用法
- QChatGPTに画像をアップロードすると、データは保存されますか?
- A
無料版・Plus版では、アップロードした画像が一時的にOpenAIのサーバで処理されます。
さらに、品質向上目的でAIモデルの学習データに利用される可能性があります。
一方、ChatGPT EnterpriseやTeam版では、アップロードデータは学習対象から除外され、暗号化された状態で一定期間後に削除されます。
業務での利用は、学習除外設定のある法人プランが推奨です。
- QChatGPTに顔写真をアップロードするのは危険ですか?
- A
顔写真は個人を特定できる情報(個人情報)にあたるため、アップロードは避けるべきです。
画像の背景・名札・位置情報などから個人が特定される可能性があるうえ、EXIFデータに端末情報や撮影場所が含まれることもあります。
AIがどこまで情報を解析できるかを過小評価せず、個人を識別できる画像は扱わないのが原則です。
- Qアップロードした画像は他のユーザーに見られることがありますか?
- A
ChatGPTでは、あなたがアップした画像が直接他ユーザーに公開されることはありません。
ただし、無料版で学習利用されたデータが、将来的にAI出力に間接的に反映される可能性はあります。
このため、業務資料や社外秘データを含む画像のアップロードは避け、法人環境で利用することが安全です。
- Q無料版と有料版(Plus/Enterprise)で画像データの扱いはどう違いますか?
- A
主な違いは「学習利用の有無」と「管理・監査機能」です。
プラン データの学習利用 管理機能 セキュリティレベル 無料版(Free) あり(学習対象) なし 低 Plus(個人) あり(品質改善目的) なし 中 Team/Enterprise なし(完全除外) あり(監査ログ・権限設定) 高 詳細は関連記事
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で解説しています。
- Q画像アップロード前にできる安全対策はありますか?
- A
はい。次の3つを実施するだけでもリスクを大幅に減らせます。
- EXIF情報(撮影場所・端末情報)を削除する
- 個人・顧客情報を含む画像をアップしない
- 利用プランのデータポリシーを確認する
さらに、社内ではAI利用ガイドラインを明文化し、定期的なリテラシー研修を実施することで、人的リスクも最小化できます。
