業務が増える一方で、「どの仕事にどれだけ時間がかかっているのか分からない」「非効率な作業を減らしたいけれど、何から手をつけるべきか分からない」——そんな悩みを抱えていませんか?
こうした状況を打破する第一歩が、「業務棚卸し」です。
業務を一つひとつ洗い出して可視化し、ボトルネックや属人化を発見できれば、ムダや非効率な業務を大幅に削減できます。
この記事では、業務棚卸しの基本から進め方、改善へのつなげ方までを分かりやすく解説します。
後半では、AIやRPAといったツール活用による業務改善の具体策や、改善を定着させる運用設計のコツにも触れています。
現場主導でもできる実践的な方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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そもそも業務棚卸しとは?目的と必要性を整理しよう
業務棚卸しを進めるうえで、まず押さえておきたいのが「そもそも業務棚卸しとは何か?」という基本です。
単なる業務の“洗い出し”で終わってしまうと、形骸化したり、改善に結びつかないリスクもあります。
この章では、業務棚卸しの定義・目的・必要性を整理しながら、なぜ多くの企業が今、あらためて棚卸しに注目しているのかを解説します。
業務棚卸しとは「業務の見える化と分類」のこと
業務棚卸しとは、組織内の業務を一つひとつ洗い出し、内容・担当者・時間・目的などの情報を整理・分類する取り組みです。
言い換えれば、「今、誰が・どの業務に・どれくらいの工数をかけているか」を可視化するプロセスです。
この工程を通じて、業務の重複や属人化、ムダな手作業といった非効率の根本原因を発見できます。
なぜ今、業務棚卸しが注目されているのか?
近年、業務棚卸しの重要性が再注目されている背景には、次のような課題があります。
- 人手不足と退職リスクの増加
→担当者依存の業務構造は大きなリスクに - テレワークやハイブリッドワークの定着
→業務フローの把握が困難に - 生成AIや自動化の導入拡大
→導入前に業務を整理しておかないと効果が出ない
こうした背景の中で、業務棚卸しは「改善の第一歩」として多くの企業で実践されています。
業務改善とのつながり:「棚卸しで終わらせない」ことが重要
業務棚卸しは、あくまで改善のスタート地点に過ぎません。
大切なのは、洗い出した課題をどのように改善につなげるかです。
例えば、以下のような改善施策は、棚卸し結果があるからこそ実現できます。
- 属人化業務のマニュアル化・標準化
- 重複・ムダな業務の廃止または統合
- RPAやGASによる定型作業の自動化
- 生成AIの活用による文書作成・分類の高速化
業務の可視化だけで満足せず、「定着する改善」まで見据えて棚卸しを活用することが、生産性向上や経営効率化につながります。
関連記事:会社の生産性を向上させるには?意味・メリット・施策まで徹底解説
業務棚卸しの進め方5ステップ|効率よく抜け漏れなく進める方法
業務棚卸しは、ただ「業務を洗い出す」だけでは不十分です。
実際に業務改善へとつなげていくためには、目的の設定から、情報収集・分類・分析・優先順位付けまでを一連の流れとして進める必要があります。
ここでは、業務棚卸しの基本的な進め方を、5つのステップに分けて紹介します。
①対象業務の範囲と目的を明確にする
まず最初に行うべきは、「何のために」「どの範囲の業務を」棚卸しするのかを明確にすることです。
目的が曖昧なまま進めてしまうと、手間ばかりかかり、改善にもつながりません。
- 属人化解消?
- 時間のムダ削減?
- 自動化の適用範囲把握?
目的が明確になれば、情報収集の粒度や分析の観点もブレずに進められます。
②業務一覧化・ヒアリングで情報を集める
次に、現場担当者へのヒアリングや業務日報の確認を通じて、実際の業務をすべて洗い出します。
この段階では、業務名・担当者・頻度・工数・使用ツール・成果物などをリスト化すると、後の分析がしやすくなります。
エクセル・スプレッドシート・専用ツールなど、扱いやすいフォーマットを使って進めましょう。
③業務の分類(重要度・頻度・所要時間など)を行う
一覧化した業務は、そのままでは分析しにくいため、いくつかの軸で整理・分類します。
- 所要時間(多い/少ない)
- 実施頻度(毎日/週1/不定期)
- 業務の重要度(コア業務/ルーチン業務/雑務)
この分類によって、改善すべき業務や自動化対象が見えてきます。
④可視化フレームで課題を発見する(ECRS・業務フロー)
分類された業務は、フレームワークを使って「本当に必要か?」「効率化できるか?」を検討します。
たとえば、以下のような手法がよく使われます。
- ECRS(排除・結合・交換・簡素化)
- 業務フロー図(BPMNなど)
- タイムスタディ(時間観測)
視覚化することで、無駄や重複、属人化の実態が明らかになります。
⑤改善対象を選定し、優先順位を決める
最後に、洗い出した業務の中から「改善すべき業務」「自動化できる業務」「委託・省略可能な業務」などを選定し、改善の優先順位をつけていきます。
重要なのは、「成果が見えやすいもの」「負担が軽減されるもの」から着手すること。
社内の納得感を得やすく、改善の成功体験が次につながります。
業務棚卸しを改善につなげるための考え方|形骸化を防ぐ3つのポイント
業務棚卸しを実施しただけで満足してしまうと、その効果は一時的なものにとどまります。
重要なのは、棚卸し結果をもとに「何をどう改善するか」を設計し、現場に定着させることです。
この章では、業務改善に確実につなげるための考え方とポイントを解説します。
棚卸し結果を「可視化」して共有しよう
まずは、洗い出した業務内容や改善案を、チーム内でわかりやすく共有することが重要です。
属人化や重複が可視化されると、「なぜこの改善が必要か」が明確になり、協力が得やすくなります。
おすすめの方法
- 業務フロー図の作成(Before/After)
- 課題と改善案を対応づけた一覧表
- 週次ミーティングなどでの継続的な確認
「人」起点で変えるvs「業務」起点で変えるを区別する
業務改善では、「この人の負荷を減らす」視点と、「この業務そのものを見直す」視点の2つの軸を区別することが大切です。
- 人起点:担当者が特定スキルに依存している→マニュアル化・教育
- 業務起点:業務自体が煩雑・非効率→フローの見直しや自動化
区別がついていないと、「担当者を変えても改善しない」といったズレた対策を打ってしまう恐れがあります。
「実施→効果→定着」のサイクル設計を忘れずに
棚卸しから改善施策を打ち出しても、実際に効果を計測し、改善を定着させる仕組みがなければ、元に戻ってしまうケースが多く見られます。
以下のような「運用設計」が欠かせません。
- 改善施策ごとにKPI(時間削減・コスト削減など)を設定
- 施策導入後、3ヶ月以内のモニタリング期間を設ける
- 改善状況を定期的にレポート・共有
改善が“やりっぱなし”にならないよう、社内全体で改善サイクル(PDCA)を意識しましょう。
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業務棚卸しで使えるおすすめのツール・テンプレート|現場がすぐ使える形式で紹介
業務棚卸しは、「やり方はわかっても、進め方が分からない」「リストをどう作ればいいのか迷う」という声が非常に多い工程です。
だからこそ、現場ですぐに使えるテンプレートやツールを使いこなすことが、効率化と定着のカギになります。
この章では、業務棚卸しに役立つ代表的なツールとテンプレートを紹介します。
スプレッドシート形式の「業務リスト」テンプレート
もっともシンプルかつ実用的なのが、エクセルやGoogleスプレッドシートを使った「業務一覧表」です。
以下のようなカラムを設けて記入すると、集計・分析がしやすくなります。
業務名 | 担当者 | 頻度 | 所要時間 | 使用ツール | 成果物 | 課題 | 改善案 |
社内ヒアリングと併用しながら、まずはこのフォーマットで棚卸しを進めましょう。
業務フロー図作成に使える無料ツール
業務の流れを見える化するには、業務フロー図(プロセスマップ)の作成がおすすめです。
特に以下のような無料ツールが使いやすく、複数人での同時編集も可能です:
- draw.io(diagrams.net)
- Lucidchart(無料プランあり)
- Cacoo(ビジネス向けUI)
定型業務や承認フローの全体像を掴みやすく、ボトルネックや重複作業の発見にも役立ちます。
ツールだけで終わらせない!運用定着に必要な視点
どんなに優れたテンプレートやツールを使っても、現場で使われなければ意味がありません。
棚卸しの「運用」を社内に定着させるには、以下の視点が大切です。
- 「毎月更新」や「四半期レビュー」など、定期的に見直す仕組みを設ける
- 担当者を決め、改善プロセスを明文化しておく
- テンプレートの活用ルール(例:新業務発生時は必ず追記)を共有する
ツールはあくまで“手段”です。改善を継続させる運用デザインと組み合わせることで、棚卸しの価値が最大化されます。
まとめ|業務棚卸しは「可視化」から始める改善の第一歩
業務棚卸しは、単なる業務の洗い出しではなく、「非効率の見える化」と「改善の起点」として非常に重要なプロセスです。
とくに近年では、属人化・人手不足・自動化の前提整理といった観点からも、その必要性が高まっています。
本記事では以下のポイントを中心に解説しました。
- 業務棚卸しの定義・目的・必要性
- 5ステップで進める実践的な手順
- 改善につなげるための考え方とポイント
- すぐ使えるテンプレートやツールの紹介
業務改善を成功させるには、「現場の納得感」と「継続的な運用設計」が欠かせません。
棚卸しから改善へ。改善から仕組み化へ。そんな“流れを作る”ところから始めてみませんか?
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- Q業務棚卸しはどれくらいの頻度で実施すべきですか?
- A
理想的には、半年〜1年に1回の頻度で実施するのが望ましいです。
ただし、組織変更・ツール導入・業務フローの大幅な見直しがあった際には、都度実施するのがおすすめです。
- Q棚卸しをやっても現場が協力してくれません。どうすればいい?
- A
「現場にメリットがある」と伝えるのが重要です。
例えば「属人化が減る」「残業削減につながる」など、現場視点の利点を丁寧に共有することで協力が得やすくなります。
また、簡易なテンプレートを用意して負担を軽減するのも効果的です。
- QITツールを使った棚卸しは可能ですか?
- A
はい、可能です。
Googleスプレッドシートの共有機能や、業務可視化に特化したSaaS(例:Asana、Jooto、Backlogなど)を活用することで、リアルタイムでの情報集約や、タスクの可視化がしやすくなります。
- Q棚卸しから改善施策を決めるときのコツは?
- A
ECRS(排除・結合・交換・簡素化)や重要度・緊急度マトリクスなどのフレームワークを用いることが有効です。
また、「短期間で成果が出やすい業務」から優先して改善することで、社内の納得感と改善意欲を得やすくなります。
- Q棚卸し結果を改善につなげるにはどうしたら良いですか?
- A
「見える化→改善施策立案→定着支援」という3ステップを意識することが大切です。
改善後の業務が継続的に回る運用設計(例:ルール化、KPI設定)まで設計することで、棚卸しの効果を持続できます。
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