採用担当者の業務が限界を迎えつつあります。

求人票の作成、応募者対応、面接日程の調整、社内連携──毎日のルーティンは多忙を極め、それらが人に依存しきった属人化によって、さらに複雑化しています。

「ツールは導入したのに、なぜか現場が回らない」「他部署に引き継げない」。そんな声があとを絶ちません。

こうした課題の裏には、「業務プロセスの見える化不足」と「人手不足による現場の疲弊」が潜んでいます。そして、その打開策として今、多くの企業が注目しているのが生成AIによる業務効率化です。

とはいえ、「AIを使えば効率化できると聞くけど、具体的にどの業務に?どうやって導入するの?」 「現場の反発や混乱なく、どう社内に浸透させられるのか?」。こうした疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、採用業務のよくある非効率の構造を明らかにした上で、生成AIを活用した6つの業務改革ステップと、現場へのスムーズな定着方法を詳しく解説します。

さらに、実際に業務工数を大幅に削減した企業の成功事例や、研修を通じたAI内製化支援についても紹介。自社でもすぐに活用できる視点とノウハウをお届けします。

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採用業務が非効率になる3つの原因

採用業務を効率化したい。そう考えても、なかなかうまく進まない現場は少なくありません。原因は「忙しいから」ではなく、仕組みと体制の問題です。ここでは、採用業務が非効率に陥る根本的な3つの構造課題を見ていきましょう。

1. 属人化によるブラックボックス化

採用担当者が1人に固定化され、「あの人にしかできない仕事」が増えていく。これは中小企業に限らず、大手企業でも頻発する課題です。

業務が属人化すると、担当者が休んだ途端に業務が止まり、引き継ぎもままならなくなります。さらに、業務全体の見える化がされていないことで、改善や効率化の余地も見えにくくなります。

ポイントは、生成AIは属人業務の「標準化」に最も効果を発揮することです。テンプレ化できる業務は自動化し、属人依存から解放する第一歩になります。

2. ツール乱立による逆非効率

採用業務には、求人媒体やスプレッドシート、メール、チャット、ATSなど、複数のツールが絡みます。

しかし、「便利そうだから」と導入したツールがかえって業務フローを複雑にし、手間を増やしていることもあるでしょう。

ツール同士が連携しておらず、結局「全部手作業で入力し直し」という事態に陥ることも少なくありません。

<解決のヒント>
複数ツールの連携設計に加え、RPAや生成AIでつなぐ・置き換える視点を持つことが重要です。

3. 定型業務に追われ、改善に手が回らない

採用現場では、応募者への対応、面接日程の調整、合否連絡など、定型業務が大量に発生します。

本来、戦略的に取り組むべきは「母集団形成」「スクリーニング精度向上」「面接体験の設計」などの高付加価値業務。しかし実際には、やるべきことに追われ、やりたいことに手が出せない状況に陥ってしまっています。

「人が足りないから」ではなく、「人の時間が奪われているから」進化できない状況です。

採用業務を効率化する6つのステップ【生成AI活用モデル】

「業務を効率化したい」と考えても、ツールを入れただけでうまくいくほど、採用現場は単純ではありません。

大切なのは、現場のリアルに即したステップを踏むことです。ここでは、属人化・ツール乱立・人手不足。そんな課題を生成AIの力で変革するための6ステップを詳しく紹介します。

STEP1:業務フローの棚卸しと分類

まずは、「何に、どれだけ、時間を使っているか」を可視化することから始めましょう。

  • 応募者対応
  • 求人票の作成
  • 日程調整
  • 社内報告

などを【定型業務】と【非定型業務】に分類することで、「どこをAIに任せられるか」が見えてきます。

<ここがPOINT>
ExcelでもOKです。業務を見える化することで、次の打ち手が明確になります。

STEP2:自動化できる業務を見つける

分類した業務の中で、「反復的」「ルール化されている」ものは、生成AIやRPAで代替可能な業務です。

  • 応募者への一次返信文の作成
  • 面接日程調整の候補出し
  • 求人票のたたき台作成

これらはChatGPTやZapier、Notion AI、RPAツールで大幅に効率化が可能です。「人の目がいらないか?」が自動化の判断軸となります。

STEP3:生成AIで回る業務設計&プロンプト作成

AIに「何を」「どう指示するか」は重要です。たとえば求人票作成であれば、以下のようなプロンプトがおすすめです。

「第二新卒向け、営業職、3年以内に成長できる環境が魅力の企業。要素:勤務地、年収、必須スキル、歓迎条件。読み手が“挑戦したくなる”表現で」

このように、AIが的確にアウトプットするためには、現場に合わせたプロンプト設計が必要不可欠です。プロンプト設計=業務設計です。現場知見を言語化できるかがカギとなります。

STEP4:小さく始める「現場PoC」で信頼を得る

いきなり全社導入するのではなく、1部門/1業務から試すのが鉄則です

  • 「求人票だけAIで作ってみる」
  • 「日程調整メールの下書きをAIにさせてみる」

など、小さな成功体験を積むことで、現場の信頼と再現性が得られます。失敗しにくい、巻き込みやすいPoCを設計しましょう。

STEP5:ナレッジ化し、他部署に展開する

うまくいった施策は型として文書化し、チーム内・他部署へ展開していきます。

  • AIに使うプロンプト一覧
  • 成果レポート
  • よくあるトラブルと対応法

これにより、「AI活用は一部の人だけのスキル」ではなく、組織知として再利用可能になります。

STEP6:定着させるための育成と仕組み化

そして最後に重要なのが、“属人化させない”ための仕組みと育成です。

  • AIリテラシーの底上げ
  • 社内ルールやガイドラインの整備
  • スキル研修の実施

生成AIの導入ではなく活用と定着がゴールです。SHIFT AIでは、こうした定着までを支援する法人向け研修をご提供しています。

成功事例に学ぶ:生成AIで採用業務を効率化した企業の実例

実際に生成AIやAIアシスタントを活用し、採用業務において大きな成果を実現した企業を紹介します。現場での定量的な削減効果から信頼性の高さまで、導入検討層にとっての安心材料になります。

横浜銀行|AIスコアリングで選考作業の70%を削減

横浜銀行では、新卒採用においてエントリーシート(ES)選考にかかる負担の高さが大きな課題でした。そこで導入されたのが、フューチャーアーキテクト社のAI「KIBIT」です。

このAIは、過去の評価データをもとにESを自動でスコアリングし、人事担当者の判断を支援します。

導入後は、従来手作業で行っていたES評価のプロセスが大幅に効率化。実際に、作業時間は従来比で約70%削減され、選考の質を担保しながらスピードも向上しました。

さらに、AIによるスコア選考で通過した学生の質も統計的に高く、「効率」と「質」の両立を実現しています。

出典:株式会社横浜銀行


ソフトバンク|IBM Watson活用で年間510時間以上の業務工数を削減

ソフトバンクは、ES(エントリーシート)選考にIBM Watsonを導入し、文章の一貫性や表現力などを数値化してスコアリングする仕組みを構築しました。

この取り組みにより、年間約680時間かかっていたES選考業務を、約170時間に短縮。作業量としては75%以上の削減に成功しています。

AI導入によって定量評価が可能になったことで、公平性や透明性も担保され、社内の納得感も向上。採用担当者は戦略的な業務に時間を振り分けられるようになりました。

出典:SoftBank


トランスコスモス・デジタル・テクノロジー|ChatGPT活用でPoC段階から400時間削減を見込む

同社では、採用業務に**生成AI(ChatGPT)を活用したPoC(概念実証)**を実施。

対象となったのは、応募書類の一次スクリーニングや求人票の自動作成といった反復性の高い業務。生成AIが自然言語を理解し、業務補助として機能するかどうかを検証した結果、年間換算で約400時間分の削減効果が見込まれるという試算が出されました。

このPoCでは、ChatGPTのアウトプット精度と現場負荷のバランス、リスク管理(情報漏洩対策)なども評価対象とし、将来的な全社展開に向けた足がかりを得る結果となりました。

出典:HRproニュース|トランスコスモス、生成AI導入の実証

キリンホールディングス|新卒採用にAI面接官を導入し、選考の質とスピードを両立

キリンホールディングスは、2025年度の新卒採用において、株式会社VARIETASが提供する「AI面接官」を本格導入しました。

これは、2024年10月に実施されたトライアル導入の結果、AIによる評価と人事による一次面接の判断に非常に高い相関(0.8以上)が見られたことを受けての決定です。

このAI面接官は、経済産業省が定義する社会人基礎力の12項目に基づき、応募者のポテンシャルを多角的に分析。学歴や経歴だけでは測れない候補者の素質を公平かつ一貫性のある形で可視化できるのが特徴です。

キリンはこの導入を通じて、自社のバリューである「多様性(Diversity.)」を体現し、幅広い人材の発掘と最適配置の実現を目指しています。

さらに、AIの導入によって創出された人的リソースを面接後の深い対話や育成設計に充てることで、採用全体の質向上にもつなげています。

出典:PR TIMES|キリン、AI面接官を新卒採用に導入

成果のある企業は「小さく始めて、大きく変えている」

これらの企業に共通しているのは、いずれも段階的に導入し、定量的な成果を検証したうえで全社展開へと進んでいることです。

また、生成AIを誰でも使える仕組みに落とし込む工夫や人材育成にも投資しており、それが定着のカギとなっています。

他企業の生成AI導入事例はこちらでも詳しくご紹介しています。
AI採用とは?導入事例8選

導入前に確認!採用業務効率化のための10のチェックリスト

「導入事例はすごい。でも、うちで本当に活用できるのか?」そう感じた方のために、生成AIを活用した採用業務効率化が“自社で実現可能か”を確認できるチェックリストを用意しました。

あなたの組織が抱える課題を“見える化”し、次の一手を明確にしましょう。

<採用業務効率化|10のチェック項目>

No.チェック項目該当するなら…
1業務の属人化が進んでおり、担当者が変わると混乱するフローの標準化&AI導入で再構築の余地大
2採用業務がExcel・メールで複雑に管理されているRPAやAIツールで自動化対象に
3求人票の作成に毎回1時間以上かかっているChatGPTによるテンプレ自動生成が効果的
4面接日程調整・応募者対応に毎日30分以上かかる自動化で確実に削減可能な領域
5応募者対応の品質やスピードにムラがある応対文テンプレ+AI対応で均質化可能
6面接評価が属人化しており、判断基準がバラバラAIスコアリングの導入で定量化できる
7採用活動のレポート作成が毎回大変データ収集・分析を自動化可能
8採用成功要因(どこが効いたか)が把握できていないプロンプトと記録を可視化すれば改善できる
9AI活用に関心はあるが、何から始めるべきかわからない小さなPoCから始めるのが最適解
10現場のITリテラシーやリソースに不安がある外部研修・伴走支援が必要なフェーズ

5つ以上当てはまったら、すでにAI活用の準備が整っている状態です。

今こそ、仕組みの見直しとAI活用で、採用業務を「人が疲弊する仕事」から「価値を生み出す仕事」へシフトしましょう。

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まとめ:採用業務の未来は「人材×AI×仕組み」でつくられる

属人化・工数過多・ツールの混乱。今、採用現場で起きている非効率の多くは、「人が足りない」以前に「仕組みが足りない」状態です。

生成AIは、その仕組みの再構築に最適なパートナーです。うまく活用すれば、「求人票作成に1時間かかっていた」「日程調整に何往復もメールしていた」そんな状態から、短時間で精度の高い成果を出せる体制へ変わります。

そして何より重要なのは、仕組みと人材育成をセットで設計すること。

<AIを使える現場をつくるなら、まずは育成から>

SHIFT AIの法人向け研修は、こんな方におすすめです。

  • 採用業務に生成AIを導入したいが、何から始めればいいかわからない
  • 担当者がITに不慣れで、定着するか不安
  • PoCから伴走してくれるプロに相談したい
  • 効果の出るプロンプトや業務設計を学びたい
  • 社内に“使える人材”と再現できる型を残したい

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よくある質問(FAQ)で不安を解消!

導入事例を見て「やってみたい」と思っても、現場や上層部からはこんな声が聞こえてくるかもしれません。ここでは、採用業務に生成AIを導入する際によくある疑問・不安を、事前に解消しておきましょう。

Q
生成AIって、結局何ができるの?
A

人が時間をかけて考えていたこと」を、瞬時に下書きできるパートナーです。求人票のドラフト作成、面接の質問案、候補者への返信文、スクリーニングの要点まとめなど、手間だけど考えることが同じな作業を、数秒でアウトプットしてくれます。完璧ではないですが、8割完成のたたき台ができるだけで、大幅に時間が浮きます。

Q
担当者のITリテラシーが高くなくても大丈夫?
A

はい。むしろ「ふだんのメール作成や報連相ができるレベル」でOKです。ChatGPTや生成AIのツールは、日常的な文章作成に似た操作性なので、特別なスキルは不要。SHIFT AIでは、現場目線で使える“プロンプト設計”の型も研修で提供しており、「どんなふうに使えばいいか分からない」という不安も解消できます。

Q
セキュリティや情報漏洩が心配です
A

セキュアな環境で使えば、社内規程に準拠した活用が可能です。外部チャットツールではなく、ログ管理やアクセス制御ができる法人向け環境で使うことが前提です。

Q
PoC」って何?小さく始めるには何をすればいい?
A

PoCとは「小さな実証実験」です。まずは1業務・1部署での活用から始めましょう。たとえば、求人作成だけ/日程調整メールだけ/テンプレ作成だけなど、1つの業務で効果と反応を見てから展開するのが、現場の納得を得る最も効果的な方法です。
SHIFT AIの研修では、PoC設計から伴走支援も行っています。

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