ChatGPTを業務で活用する企業が増える一方で、セキュリティ設定を正しく行えていないケースも少なくありません。
履歴や学習設定を初期状態のまま使うと、入力内容が学習データとして保存されるリスクがあります。

特に社内文書や顧客情報を扱う部門では、設定を誤るだけで情報漏洩やコンプライアンス違反につながる可能性があります。

本記事では、ChatGPTを安全に使うための具体的なセキュリティ設定手順と、
企業が取り組むべき運用ルール・教育のポイントをわかりやすく解説します。

「どこを設定すれば安全なのか」「社内ではどう管理すればいいのか」――
その疑問をすべて解消できる内容です。最後には、安全なAI活用を文化として定着させる方法も紹介します。

導入だけで終わらせない。成果につなげる設計を無料資料でプレゼント
AI活用を成功に導く5ステップを見る

ChatGPTのセキュリティ設定が重要な理由

ChatGPTを安心して使うためには、初期設定のまま利用しないことが大切です。
ChatGPTは入力内容をもとに学習を行う仕組みを持ち、履歴や設定の状態によっては意図せぬ情報共有や漏洩が起こる可能性があります。

多くの企業が生成AIを業務に導入する今だからこそ、「どの設定を変更すべきか」「どの情報を扱わないか」を明確にすることが求められています。

入力内容が学習に使われる可能性がある

ChatGPTは、ユーザーが入力したテキストをモデル改善のための学習データとして利用する仕組みを持っています。
このため、履歴設定をオフにしないまま利用すると、社内文書や顧客情報などの機密データが学習対象になるリスクがあります。

特に無料版ChatGPTでは、学習を停止する設定ができません。
業務で活用する場合は、履歴を学習に使わない設定が可能な有料版(ChatGPT Plus)またはAPI利用を検討するのが安全です。

履歴・認証の設定次第で情報漏洩リスクが変わる

ChatGPTでは、初期設定のままだと入力履歴が自動保存されます。
履歴の中には、ユーザーが入力した質問や生成結果がすべて残るため、他者がアクセスできる環境では情報流出の危険があります。

また、アカウントに多要素認証(2FA)を設定していない場合、
万が一パスワードが流出した際に、第三者による不正ログインやデータ閲覧が発生するおそれもあります。

セキュリティを高める第一歩は、履歴設定と2FAの有効化を徹底することです。

企業利用では「個人設定+社内ルール」の両輪が不可欠

個人利用であれば設定変更だけでも一定の安全性は確保できますが、
企業利用の場合は「個人設定」と「組織全体のルール整備」を組み合わせることが不可欠です。

たとえば、

  • 入力禁止情報(顧客名、未公開資料など)の明文化
  • 社員ごとのアクセス権・監査ログの管理
  • 定期的な教育とリスクレビューの実施

こうした体制を整えることで、ChatGPTを「安全に使える業務インフラ」へと進化させられます。

 無料版と有料版では設定できる項目が異なります。違いを詳しく知りたい方は、
 ChatGPT無料版の使い方と制限を徹底比較|GPT-4との違い・企業での安全な活用法

ChatGPTで必ず確認すべき主要なセキュリティ設定【個人・一般利用向け】

ChatGPTを安全に使うための第一歩は、基本設定の見直しです。
初期状態のままでは、入力履歴や認証情報がリスク要因になる場合があります。
ここでは、利用前に必ず確認しておきたい4つのセキュリティ設定を紹介します。

① Chat History & Training(履歴・学習設定)をオフにする

ChatGPTは、入力した内容を今後のモデル学習に活用する仕組みを持っています。
この設定を変更しないと、入力内容がAIの学習データとして蓄積される可能性があります。

設定手順:

  1. 画面左下の「Profile(プロフィールアイコン)」をクリック
  2. 「Settings(設定)」を開く
  3. 「Data controls(データ管理)」を選択
  4. 「Chat History & Training」をOFFに切り替える

効果:

  • 入力内容が今後の学習データとして利用されなくなる
  • 保存履歴も「Temporary Chat」として一時的に保持され、一定時間後に削除

注意点:

  • 無料版(ChatGPT Free)ではこの設定が利用できません。
  • 機密情報を扱う場合は、ChatGPT PlusまたはAPI利用(OpenAI API)を推奨します。

補足:
企業利用では、履歴オフ設定の有効化を全社員必須とするガイドライン化が効果的です。

② 履歴を削除して過去の入力を残さない

履歴をオフにしても、過去の会話データはアカウント内に残ります。
定期的に履歴を削除することで、過去の入力内容からの情報漏洩リスクを防げます。

削除手順:

  1. 画面左側メニュー上部の「…(三点アイコン)」をクリック
  2. 「Clear conversations(履歴を消去)」を選択
  3. 「Delete all chats(すべて削除)」をクリック

保存場所のポイント:

  • ChatGPTの履歴はクラウド上に保存されており、デバイス側の削除では完全に消えません。
  • 定期削除+履歴オフの併用で、最も安全な運用状態を保てます。

③ データエクスポート・削除リクエストの送信方法

ChatGPTでは、ユーザーが自分のデータをエクスポート・削除申請することが可能です。
個人情報や過去の会話データを完全に消去したい場合に活用します。

手順:

  1. 「Settings」→「Data controls」を開く
  2. 「Export data」を選択すると、登録メールアドレスにダウンロードリンクが送信される
  3. 「Delete account」を選択すると、アカウントと全データの削除をリクエスト可能

補足事項:

  • 削除申請後の処理には数日かかる場合があります。
  • OpenAIはGDPR(一般データ保護規則)に準拠しており、
     一定期間を過ぎるとサーバー上のデータは完全に消去されます。

注意点:
削除操作は取り消せません。業務アカウントの場合、情シス承認を経て実施しましょう。

④ 二要素認証(2FA)を有効にする

パスワードだけでログインできる状態は、乗っ取りリスクが高いとされています。
ChatGPTのアカウントを守るため、必ず二要素認証(2FA)を設定しましょう。

設定手順:

  1. 「Settings」→「Security」→「Two-Factor Authentication」へ進む
  2. 「Enable 2FA」をクリック
  3. 認証アプリ(例:Google Authenticator)でQRコードを読み取り、生成コードを入力

効果:

  • 不正ログイン・アカウント乗っ取りの防止
  • 新しい端末からのアクセス時に追加認証が求められるため、
     外部からの侵入をほぼ遮断できる

企業利用時のポイント:

  • 組織管理者が2FAを強制設定できるようにする
  • アカウント削除・譲渡時の2FA解除ルールも明文化しておく

設定だけでは防げない!ChatGPT利用時の3大リスク

履歴オフや二要素認証を設定しても、それだけで安全とは言えません。
ChatGPTはあくまで外部サービスであり、利用方法や連携範囲次第でリスクが再び生じます。

ここでは、企業が見落としやすい3つの実務的リスクを整理します。
これを理解することで、「設定=安全」という思い込みから脱却できます。

① 入力情報の漏洩リスク

ChatGPTは、入力した内容をクラウド上で処理します。
つまり、入力した瞬間に外部サーバーへデータが送信される仕組みです。

このため、もし機密情報や顧客データ、未発表の企画内容などを入力すると、 意図せず外部に情報が保存・参照されるリスクが発生します。

実際、2023年には海外企業で「開発コードをChatGPTに入力した結果、情報が第三者に流出した」事例が報告されています。
こうしたケースは、“設定の有無”よりも“入力ルールの不徹底”が原因です。

企業で利用する際は、「ChatGPTに入力してはいけない情報リスト」を社内で明確に定義することが必須です。

② 生成内容の誤情報リスク

ChatGPTが生成する文章は非常に自然で説得力がありますが、すべてが正確とは限りません。
ときに“もっともらしい誤情報(ハルシネーション)”を提示することがあります。

この誤情報を社外資料・提案書・顧客対応文にそのまま使うと、 誤認・炎上・法務リスクへ発展する可能性があります。

特に企業利用では、AIの出力をそのまま信用せず、 「人のレビュー」「情報源確認」「社内承認プロセス」を必ず挟むことが重要です。

設定では防げないリスクだからこそ、運用フローに“チェック工程”を組み込むことが必要です。

③ 外部連携・拡張機能による脆弱性

ChatGPTの利便性を高めるために、外部サービスとの連携機能(プラグイン・拡張機能・API接続)を利用する企業も増えています。
しかし、これらの機能は便利な反面、データの共有範囲が広がることで新たな脆弱性を生む可能性があります。

たとえば、ブラウザ拡張機能や外部ツール経由でのアクセスは、
情報が第三者サーバーに送信されるケースもあり、データ管理の範囲が不透明になりがちです。

企業で利用する場合は、

  • 許可された拡張機能のみ利用(ホワイトリスト制)
  • 情シス部門による承認フロー
  • 利用ログ監査・APIキー管理

といった仕組みを整えることが求められます。

この3つのリスクに共通するのは、「設定だけでは防げない」という現実です。
安全に使い続けるには、社内ルール・教育・管理体制まで含めた仕組み化が欠かせません。

ChatGPTを社内で安全に使うための設定・運用ルール【企業向け】

個人レベルの設定だけでは、企業全体の安全性を確保することはできません。
社内でChatGPTを利用するなら、組織単位でのアカウント管理・利用ルール・監査体制を整備する必要があります。
ここでは、企業が押さえるべき運用設計の4つのポイントを解説します。

1. 組織アカウントで統一運用する

ChatGPTを業務で利用する場合、個人アカウントでの利用は禁止するのが原則です。
個人契約のアカウントでは、履歴管理やアクセス制御ができず、誰がどの情報を入力したかの追跡が困難になります。

そのため、企業は公式アカウントを発行して一元管理することが重要です。
利用者・部門別にアクセス権限を分けることで、データ入力範囲や履歴を可視化できます。

また、退職者のアカウント削除や権限剥奪を即時対応できるよう、人事システムと連携した管理フローを整備しましょう。

2. 禁止情報リストと承認フローを設ける

ChatGPTの利便性が高まるほど、社員が無意識のうちに機密情報を入力するリスクも増えます。
これを防ぐには、まず「ChatGPTで扱わない情報リスト」を明文化することが有効です。

たとえば、

  • 顧客情報(氏名・住所・メールアドレス)
  • 未公開の契約内容・営業データ
  • 社内システムのソースコードや設計図

 など、具体的な禁止例を提示することで判断基準を統一できます。

さらに、部署単位でChatGPTを利用する場合は、利用目的を明示して情シス承認を得るフローを設けましょう。
これにより、利用範囲を把握しながら安全と生産性を両立する統制が実現します。

3. API利用でデータ管理・アクセス制御を行う

ChatGPTを業務システムに組み込みたい場合は、API経由で利用する方法が最も安全です。
ブラウザ利用と異なり、APIではデータの保存範囲・アクセス制御・利用ログを管理者が設定可能だからです。

たとえば、

  • 社内サーバー側で入力データを匿名化してから送信
  • APIキー単位で利用履歴を記録・監査
  • 機密データの送信制限を自動化

といった運用が可能になります。

APIを活用することで、セキュリティを保ちつつChatGPTを業務アプリケーションの一部として活用できます。
「利便性」と「統制」のバランスをとる手段として有効です。

4. 定期的な設定チェックとログ監査を実施

セキュリティ設定や利用ルールは、一度整備して終わりではありません。
ChatGPTは頻繁に仕様変更が行われるため、設定の再確認と監査の仕組みを定期的に運用することが大切です。

たとえば、

  • 半期・四半期ごとの設定点検
  • 利用ログの分析による不正アクセス検出
  • ルール違反が見つかった際の教育リマインド

これらを情シス部門主導でチェックリスト化し、定例業務として定着させましょう。
継続的な監査サイクルを回すことで、「運用しているつもり」から「運用できている」状態に変わります。

 “設定”だけでは守れない。
ChatGPTを「安全に使える文化」へ変える、実践型生成AI研修はこちら。

導入だけで終わらせない。成果につなげる設計を無料資料でプレゼント
AI活用を成功に導く5ステップを見る

設定を“続ける仕組み”をどう作るか|教育・運用のベストプラクティス

セキュリティ対策は、設定を一度変えて終わりではありません。
ChatGPTの仕様は頻繁にアップデートされるため、継続的に運用を見直す仕組みが欠かせません。
ここでは、セキュリティ設定を“維持・定着”させるための3つの実践ポイントを紹介します。

1. 教育・AIリテラシー研修を制度化

まず取り組むべきは、社員一人ひとりの理解レベルを底上げすることです。
設定やルールが整っていても、「なぜ入力してはいけないのか」を理解していなければ運用は形骸化します。

AIリテラシー研修では、

  • ChatGPTの仕組みとリスク構造
  • 実際に起きた情報漏洩事例
  • 正しい使い方・プロンプト設計の基礎

などを実践的に学び、“危険だから禁止”ではなく、“安全に使うための知識”を浸透させます。

また、年1〜2回の研修+全社員テストを制度化し、理解度を定量的に把握することも効果的です。
教育を継続することで、社員の行動変容がセキュリティ文化として根づきます。

2. 利用状況の定期レビュー

設定やルールを整備した後は、実際の運用状況を定期的に可視化・評価することが重要です。

たとえば、

  • ChatGPTの利用ログを分析してルール逸脱を早期発見
  • 利用目的・入力傾向を可視化し、改善すべき箇所を特定
  • 部門ごとに「安全利用レポート」を作成し共有

このように“数字で把握する”仕組みを導入すれば、 問題の早期発見だけでなく、安全運用の成功事例を横展開することも可能になります。

レビューの定着は、「対策を形にする」だけでなく、成長するセキュリティ運用を実現する基盤になります。

3. 設定・運用の“継続チェックリスト”を用意

ChatGPTは月単位で仕様変更や新機能が追加されるため、 「一度設定したから大丈夫」という考えでは安全を維持できません。

そのため、企業としては“継続チェックリスト”を運用に組み込むことが有効です。

たとえば、以下のような項目を定期確認します。

  • ChatGPTの設定項目に変更がないか
  • アップデートで履歴や共有範囲の仕様が変わっていないか
  • 最新の法改正(個人情報保護法・GDPR等)に準拠しているか
  • 社内ルール・教育内容が現状に合っているか

このチェックリストをもとに、四半期・半期単位の見直しサイクルを運用すれば、
「組織が成長しても安全に使い続けられる」状態を維持できます。

セキュリティを“守るための負担”ではなく、 成果を出すための文化に変える研修を。

導入だけで終わらせない。成果につなげる設計を無料資料でプレゼント
AI活用を成功に導く5ステップを見る

まとめ|ChatGPTのセキュリティ設定は「設定+運用+教育」で完成する

ChatGPTのセキュリティは、ボタンを押すだけで守れるものではありません。
履歴オフや二要素認証といった技術的設定を整えても、 それをどう運用し、どう社内に浸透させるかによって安全性は大きく変わります。

真に安心して使うためには、技術対策・運用ルール・社員教育の3つをそろえることが欠かせません。
どれか一つでも欠けると、リスクは再び生まれます。

また、ChatGPTの仕様や法規制は日々進化しています。
だからこそ、定期的に見直す“仕組み”を持つことが最大のセキュリティ対策です。
社内の誰もが安心して生成AIを使える――そんな環境づくりこそが、AI時代の企業競争力になります。

導入だけで終わらせない。成果につなげる設計を無料資料でプレゼント
AI活用を成功に導く5ステップを見る
Q
ChatGPTのセキュリティ設定はどこで変更できますか?
A

画面左下のプロフィールアイコンから「Settings(設定)」→「Data controls」を開きます。
ここで「Chat History & Training」をOFFにすれば、入力内容が学習データとして使われなくなります。
また、同じメニューで履歴削除やデータエクスポートも実行可能です。
企業で利用する場合は、各社員がこの設定を適用しているかを情シス部門が定期監査する体制を整えると安心です。

Q
無料版でもセキュリティ設定はできますか?
A

無料版ChatGPTでは、一部の設定(履歴オフ・学習停止など)が利用できません。
そのため、業務や機密情報を扱う用途には有料版(ChatGPT Plus)またはAPI利用を推奨します。
無料版を使う場合は「入力内容に機密を含めない」「履歴を定期削除する」など運用ルールで補完しましょう。
ChatGPT無料版の使い方と制限を徹底比較

Q
履歴を削除すれば情報漏洩の心配はなくなりますか?
A

履歴削除は過去のチャットを見られなくする効果はありますが、完全な安全対策ではありません。
削除操作をしても、一定期間はOpenAIのサーバー上にバックアップが残る場合があります。
根本的な漏洩対策としては、①履歴オフ設定、②機密情報の非入力、③アクセス権限の制御をセットで実施することが重要です。
削除=安全ではなく、運用ルールとの併用でリスクを最小化しましょう。

Q
APIを使えばより安全にChatGPTを活用できますか?
A

はい。API経由で利用すれば、データ保存範囲やアクセス権限を自社で制御できます。
ブラウザ利用に比べ、入力ログや監査設定を企業側で管理できるため、セキュリティ水準を高めやすいのが特徴です。
ただし、APIキーの管理や利用者制限を怠るとリスクが残ります。
APIを導入する際は、情シス主導のアクセス管理ルールと利用ログ監査をあわせて設計しましょう。

Q
 ChatGPTのセキュリティを維持するには社員教育も必要ですか?
A

 非常に重要です。
技術設定を整えても、「なぜ入力してはいけないか」を理解していないと事故は防げません。
社員研修では、ChatGPTの仕組み・入力禁止情報・誤情報リスクを学び、実際の事例でリテラシーを高めます。
特に年1〜2回の定期研修と理解度テストを組み合わせることで、セキュリティ文化が定着します。

導入だけで終わらせない。成果につなげる設計を無料資料でプレゼント
AI活用を成功に導く5ステップを見る