紙の書類、ハンコ文化、Excel管理——。
総務部門では、いまだに“アナログな仕組み”が業務の中心となっている企業が少なくありません。
一方で、リモートワークや人手不足が進む今、総務が企業全体の生産性を支える役割を担うことが求められています。

その実現の鍵が「総務DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
しかし、いざDXを進めようとしても、 「どこから手をつければいいのか」「ツール導入だけで本当に変わるのか」と迷う担当者も多いのではないでしょうか。

DXを成功させるためには、やみくもにシステムを導入するのではなく、 **現状を把握し、段階的に仕組みを整える“進め方の設計”**が欠かせません。
また、ツールを使いこなせる“人”を育てることが、真のDX定着には不可欠です。

本記事では、総務DXを実現するための5つのステップを軸に、 現場で実践できる手順と成功のポイントをわかりやすく解説します。
「効率化」だけでなく、「戦略的に働ける総務部門」へ進化するためのヒントを一緒に探っていきましょう。

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なぜ今、総務部門にDXが求められているのか

総務部門は、社内のあらゆる部署を支える“縁の下の力持ち”です。
しかしその一方で、いまだに紙・ハンコ・Excelといったアナログな運用が残り、 日々の業務が煩雑になっている企業も少なくありません。

たとえば、契約書は紙で保管され、押印や郵送に時間がかかる。
勤怠や経費精算はExcelで手入力し、確認や転記にミスが発生する。
こうした仕組みが続くことで、属人化や情報分散が進み、組織全体の生産性が下がるという課題が生まれています。

加えて、テレワークや働き方改革が進む中で、 「リモートでも回せる総務体制」や「データを活用した意思決定」が求められています。
その実現に欠かせないのが、**DX(デジタルトランスフォーメーション)**です。

DXの目的は、単なる**効率化(業務を早く・楽にする)**にとどまりません。
テクノロジーを活用して、

  • 現場の情報をリアルタイムに可視化し、
  • 戦略的な意思決定に活かし、
  • 付加価値を生み出す「経営を支える総務」へ進化すること。

つまり、総務DXの本質は**「効率化 × 戦略化」**にあります。
ツールを導入することが目的ではなく、 “人が考え、仕組みが動く”環境を整えることこそが、DXのゴールです。

総務DXの全体像や成功事例については、こちらの記事も参考にしてください。
総務DXとは?今求められる理由と成功の進め方

総務DXを成功させるための5つのステップ

DX推進を掲げても、どこから手をつけるべきか分からない――。
そんな悩みを抱える総務担当者は少なくありません。
DXを成功させるためには、感覚ではなくプロセスで進める設計が欠かせません。

ここでは、AI経営メディアが提唱する「総務DXを成功させる5つのステップ」を紹介します。
それぞれの段階で押さえるべきポイントを整理しながら、着実に変革を進めていきましょう。

① 現状を把握し、課題を可視化する

最初のステップは、現状の棚卸しです。
属人化している業務、手作業が多い工程、重複入力が発生しているプロセスなど、 現場レベルで「ムリ・ムダ・ムラ」を洗い出しましょう。

このとき有効なのが、「業務棚卸しシート」などの見える化ツールです。
タスク単位で所要時間や担当者を整理することで、 どこを優先的にデジタル化すべきかが明確になります。

ポイント:ツール導入の前に「問題構造」を明らかにすることが、DX成功の出発点です。

② DXの目的とゴールを設定する

DXの失敗でよくあるのが、「目的が曖昧なままツールを導入してしまう」ケースです。
目的が“効率化”だけだと、一時的な改善で終わってしまいます。

総務DXの真の目的は、戦略的な時間創出にあります。
ツールで削減した時間を、「社員サポート」「働き方改善」「戦略的総務施策」に再配分する。
この発想を持つことで、DXが単なるコスト削減ではなく、企業価値向上の投資へと変わります。

目的を明確にすることで、“ツール選定の軸”も自ずと定まります。

③ 優先領域を決め、スモールスタートで導入

次に、改善効果が出やすい領域から取り組みましょう。
たとえば、契約書の電子化・勤怠管理のクラウド化・経費精算の自動化など、 定型業務の中でも特に負担とリスクが大きい領域が効果的です。

ここでは、いきなり全社展開を狙わず、**小規模でのPoC(試験導入)**を行います。
実際に現場で使ってみることで、

  • 操作のしやすさ
  • 定着率
  • 改善すべき点

を早期に検証でき、全社展開時の失敗リスクを大幅に減らせます。
DXは“一度に完璧を目指さない”ことが、長期的成功の鍵です。

④ 全社展開に向けて仕組みを標準化する

PoCの結果を踏まえて、次に行うのが運用の標準化です。
このフェーズでは、部署ごとに異なっていたルールや権限設計を整理し、 共通ルール・マニュアルを整備します。

特に注意したいのは、ガバナンス設計です。
「誰が承認するのか」「どの範囲までアクセスできるのか」などを明確にすることで、 セキュリティとスピードの両立が可能になります。

また、導入後の改善を支えるために、 “DX推進担当×現場代表”の二軸体制を設けるのも有効です。
現場の声を拾いながら改善を重ねることで、DXは一過性ではなく継続的な仕組みになります。

⑤ 定着・教育フェーズを設ける

DXの本当のスタートは、導入後です。
ツールが現場で使われなければ、どれほど優れた仕組みも形骸化してしまいます。

そのためには、定着と教育のフェーズを意識的に設けることが重要です。

  • 操作マニュアルやナレッジ共有の仕組みを整える
  • 新人・異動者向けの定期研修を実施する
  • 活用状況を定期的にモニタリングする

特に、現場が主体的にツールを活用できるようにするためには、 **「デジタルリテラシー研修」や「生成AI活用研修」**が効果的です。

DXを成功に導くのは、ツールではなく“人”です。

 DXを成功させるカギは、ツールではなく「使いこなす人材」。
現場が自ら考え、動ける“デジタル総務”を育てませんか?

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総務DXで直面する3つの壁と乗り越え方

総務DXを進めるなかで、多くの企業が途中でつまずくポイントがあります。
それは技術的な問題よりも、“人と組織”に関する壁です。

どれだけ優れたツールを導入しても、現場が使わなければ成果は出ません。
ここでは、DX推進時に多くの企業が直面する3つの壁と、その乗り越え方を解説します。

① 現場の理解・協力を得られない

DX推進で最初に立ちはだかるのが、現場の抵抗感です。
「新しいツールを覚えるのが大変そう」「自分たちの仕事が増える」といった声が上がり、
推進担当者が孤立してしまうケースも少なくありません。

この壁を乗り越えるには、まず**“目的の共有”と“小さな成功体験”**が重要です。
いきなり全社で進めるのではなく、 一部のチームで試験導入を行い、「これでここまで業務が楽になった」という成果を見せること。
現場が「自分たちにメリットがある」と実感すれば、DXは一気に前進します。

DXは“現場に負担をかける施策”ではなく、“現場を楽にする仕組み”だと伝えることが第一歩です。

② 導入したツールが定着しない

ツールを導入しても、「結局使われなくなった」「元に戻った」という声もよく聞かれます。
この原因の多くは、教育・ルール・運用体制の欠如です。

導入後に“放置”してしまうと、操作が分からない人が出て現場が混乱し、 結果として「使いづらいツール」という印象だけが残ります。

定着のためには、以下の3点を仕組み化しましょう。

  • 研修・マニュアル整備:誰でも操作できる基盤をつくる
  • DX推進担当と現場代表の連携:活用状況をモニタリング
  • 改善サイクルの運用:課題を都度アップデート

これらを回すことで、ツールは「導入して終わり」ではなく、「成長する仕組み」へと変わります。
特に、“使いこなせる人材”を育てることがDX定着のカギです。

③ 効果測定が曖昧で改善が進まない

もう一つの壁は、「効果をどう測るか分からない」という課題です。
定量的な成果が示せなければ、経営層や現場の納得感が得られず、DXの継続が難しくなります。

導入効果を測定する際は、以下の3つの軸で可視化するのが効果的です。

  • 時間:処理時間や承認スピードがどれだけ短縮されたか
  • 工数:担当者あたりの作業負担がどれほど減ったか
  • 満足度:現場や利用者の使いやすさ評価

これらを定期的にKPIとしてモニタリングし、 「導入前→導入後」での改善率を数値で示すことで、効果が見える化されます。

さらに、改善会議や報告書の場で成果を共有し、次の施策に反映するサイクルを構築することが大切です。

DXは一度導入して終わりではなく、“継続的に進化させるプロジェクト”です。

DX推進を成功に導く仕組みづくり|“人×プロセス”で継続する変革へ

DXを「導入プロジェクト」と捉える企業は少なくありません。
しかし、本来のDXとは、一度きりの導入ではなく、仕組みとして組織に根づく変革です。

ツールやシステムは、あくまで“仕組みを動かすための手段”。
真のDX推進とは、現場が自ら課題を見つけ、改善を繰り返せる状態をつくることにあります。

DXは「プロジェクト」ではなく「仕組み」

DXは一過性の改革ではなく、日常の業務改善を継続的に進化させる仕組みとして機能させる必要があります。
プロジェクト型で終わってしまうと、担当者の異動や環境変化のたびに停滞してしまいます。

重要なのは、「人が変わっても、仕組みが動き続ける状態」をつくること。
業務フローやデータ管理、ツール活用ルールを“仕組み化”し、改善が自動的に循環するよう設計しましょう。

継続の鍵は、“現場が考える仕組み”を持つこと

DXはトップダウンで進めるだけでは定着しません。
現場の知見を活かし、**「現場が考える仕組み」**を組み込むことが不可欠です。

たとえば、

  • 各部署にDX推進リーダーを設ける
  • 月次で「業務改善ミーティング」を開催する
  • 現場の声をデータとして集約し、ツール改善に反映する

このような“現場発の改善サイクル”を仕組み化することで、 DXは「与えられた施策」ではなく、「自分たちの文化」として根づいていきます。

DXの持続力を高めるのは、“現場が考える力”を仕組みの中に埋め込むことです。

DXを支える人材に必要な3つの力

DX推進を継続するには、仕組みだけでなく、それを動かす“人”の存在が欠かせません。
AI経営メディアでは、DXを担う総務・管理部門の人材に必要なスキルを次の3つに整理しています。

  1. 業務理解力(課題発見)
     現場の流れやボトルネックを理解し、どこをデジタル化すべきかを見極める力。
  2. デジタル活用力(ツール理解)
     システムや生成AIなど、ツールの仕組みを理解して業務に最適化できる力。
  3. 巻き込み力(現場調整)
     部門横断で関係者を動かし、改善を“チームで進める”リーダーシップ。

この3つをバランスよく備えた人材が、DXを“プロジェクト”から“文化”へと進化させます。

 DXを根づかせるには、“自走できる人材”の存在が不可欠です。
現場が自ら考え、改善を回せる「デジタル総務」へ進化するために、

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総務DXを進めるうえで知っておきたい最新トレンド

総務DXは、単なるデジタル化の取り組みにとどまりません。
ここ数年で、生成AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術が急速に発展し、 「バックオフィスの知的業務そのものを自動化する時代」が到来しています。

ここでは、これからの総務が押さえておくべき3つの最新トレンドを紹介します。

① 生成AIによるバックオフィス自動化

いま最も注目されているのが、生成AI(Generative AI)による総務業務の支援です。
すでに多くの企業が、ChatGPTなどのAIを社内システムと連携させ、 定型的な問い合わせ対応や情報整理を自動化し始めています。

たとえば、

  • FAQ自動応答:福利厚生・勤怠・経費などの社内問い合わせをAIが即時回答
  • レポート生成:会議議事録や月次報告書を自動で要約・整形
  • 文書整理:契約書や申請書の内容を要約し、ナレッジとして蓄積

これにより、担当者の対応時間を大幅に削減し、“考える業務”に集中できる環境が整います。

総務の役割は「対応」から「企画・判断」へ。生成AIはそのシフトを後押しする存在です。

② RPA+AI連携で事務作業の負担をさらに削減

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、 経費精算・勤怠集計・請求処理など、ルール化された業務を自動で実行できる仕組みです。
これにAIを組み合わせることで、従来の「定型作業の自動化」から、 “判断を伴う業務”の自動化へと進化しています。

たとえば、AIがメール内容を分析して処理ルートを判断したり、 申請データの異常を検知して担当者に通知したりと、 「考えて動くRPA」が現場で活躍し始めています。

RPA+AIの連携は、事務作業の自動化から意思決定支援への進化を象徴する取り組みです。

③ データドリブン総務:ナレッジ蓄積と改善サイクルの自動化

DXの最終段階では、ツールで生まれた業務データを“次の改善”に生かす仕組みが重要になります。
勤怠データ・経費データ・問い合わせ履歴など、総務には企業全体の行動データが集まります。

これらを分析し、

  • 業務のボトルネックを特定
  • 繁忙期のリソース配分を最適化
  • 社員満足度や生産性の変化を可視化

といった施策につなげることで、“データで運営する総務”=データドリブン総務が実現します。

AIが自動でパターンを抽出し、改善提案を出す仕組みを取り入れれば、 現場の改善サイクルが半自動化され、DXは**“止まらない仕組み”**へと進化します。

総務DXの全体像や、導入を成功させるステップを詳しく知りたい方はこちら。
総務DXとは?今求められる理由と成功の進め方

まとめ|“ツール×人”の両輪で、総務DXを文化に変える

総務DXの目的は、単に業務を効率化することではありません。
ツール導入によって生まれた“時間”や“データ”を活用し、 新しい価値を生み出す総務部門へ進化することが真のゴールです。

ツールを導入した瞬間が終着点ではなく、そこからがスタートライン
現場の声を吸い上げ、改善を重ねながら仕組みを育てていくことで、 DXは単なるプロジェクトではなく、企業文化として根づく変革になります。

総務が変われば、会社が変わる。
業務のハブである総務がデジタル化とデータ活用をリードすることで、 組織全体の生産性と働き方の質が飛躍的に向上します。

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Q
総務DXは、まず何から始めるのが良いですか?
A

まずは業務の棚卸しと課題の可視化から始めましょう。
属人化・二重入力・紙やExcel依存など、現場で負担になっている業務を洗い出すことが最初の一歩です。
そのうえで、契約書・勤怠・経費など、影響範囲が広く効果の出やすい領域から着手するとスムーズです。
総務DXとは?今求められる理由と成功の進め方

Q
DXを進めても現場がなかなか協力してくれません。どうすればいいですか?
A

現場の理解を得るためには、「小さな成功体験」を共有することが効果的です。
いきなり全社展開ではなく、一部部署で試験導入(PoC)を行い、成果を数字で示すことで「DXの効果」を体感してもらえます。
また、DXは“現場を助ける仕組み”であることを丁寧に伝えることも大切です。

Q
 DXの目的を「効率化」だけにしてはいけないのはなぜですか?
A

効率化はDXの入り口にすぎません。
本来の目的は、生まれた時間やデータを活用して戦略的な業務を生み出すことです。
たとえば、勤怠データを分析して人員配置を見直したり、経費データを可視化してコスト構造を最適化したり。
“価値を生み出す総務”に変わるためには、効率化の先を見据えたゴール設計が欠かせません。

Q
導入したツールが定着しないのはなぜですか?
A

多くの場合、教育とルール整備が不足していることが原因です。
導入後に操作研修を行わない、マニュアルが整っていないなど、現場が「どう使えばいいのか分からない」状態では定着しません。
ツール導入後は、教育・運用ルール・改善サイクルをセットで設計することが重要です。

Q
 DXの効果をどのように測定すればいいですか?
A

DX効果は、以下の3軸で可視化するのがおすすめです。

  • 時間削減:処理・承認スピードの変化
  • 工数削減:担当者あたりの作業時間の変化
  • 満足度向上:現場・社員アンケートの結果

 これらをKPIとして定期的に測定し、改善に反映する仕組みをつくることで継続的に成果を高められます。

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