約10億件という膨大なオーディエンスデータを保有し、企業のデジタルトランスフォーメーションを牽引する株式会社インティメート・マージャー。同社は現在、生成AIの社内活用において先進的な取り組みを進めています。

生成AIの全社導入に踏み切った背景には、「データ活用をより、誰でも使えるものに」という創業以来のミッションがありました。

本来、データの分析や活用には高度な専門スキルが求められますが、生成AIの介在により技術的なハードルを劇的に下げることに成功したのです。

特筆すべきは、代表取締役社長であり現役のデータサイエンティストでもある簗島亮次氏のリーダーシップです。

簗島氏自らが業務を効率化・最大化するツールを開発・配布するという、圧倒的な「トップダウン」の姿勢が、社員の意識変革を一段と進めるきっかけとなりました。

今回は簗島氏に、非エンジニアが自律的に広範囲の業務をこなせる組織の作り方から情報の格差を解消するための知見共有の仕組み、AIと人間が共に働く未来の展望までを詳しく伺いました。

簗島亮次

株式会社インティメート・マージャー
代表取締役社長

株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科を2010年に首席で修了。2013年、レイ・カーツワイル氏が提唱した「あらゆるデータがひとつに統合される」未来像に着想を得て、株式会社インティメート・マージャーを創業。2019年10月に東証マザーズへ上場を果たす。2020年にはデータ活用領域のさらなる拡大を目的に、FinTech事業会社クレジットスコア株式会社、PrivacyTech事業会社Priv Tech株式会社を設立。データサイエンティストとしてのアカデミックな視点と、経営者としてのビジネス視点を併せ持ち、日本最大級約10億件のオーディエンスデータを活用し、さまざまな業界の課題解決を支援している。

※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介する企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。

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生成AIが変えた組織のかたち──データ活用企業が全社導入に踏み切った理由

インティメート・マージャーが生成AIの全社的な推奨に踏み切ったのは、GPT-3.5が登場し、社会に大きなインパクトを与えた直後の2023年初頭でした。

簗島氏

「GPT-3.5が出た頃に、作業の効率化ができる実感があって、社内的な活用を推奨し始めました」

この決断の背景には、約10億件のパブリックDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)データを保有し、「データはAIのガソリンである」という思想のもと事業を展開してきた同社の強みがあります。

データ活用のプロ集団としての視点から、AIとデータを組み合わせた業務変革を自ら実践してきたことが、この取り組みの出発点となりました。

また、こうした視点を組織全体で育てていく中で、非エンジニア社員への技術教育に多大な時間を要していたことも課題の一つでした。

生成AIの導入は、そのボトルネックを解消し、非エンジニア社員であっても業務範囲を広げながら、より付加価値の高い業務へシフトする後押しとなりました。

その結果、AIと人が役割分担をしながら成果を最大化できる組織へと変化してきたのです。

社長がユーザーとして先頭に立つAI活用

インティメート・マージャーのAI活用における最大の特徴は、代表の簗島が自らユーザーとして最前線に立ち、実際にツールを使いながら活用方法を磨いている点にあります。

自身で日常的に活用することで、ツール同士を連携させたり、業務効率につながるようにカスタマイズする方法を現場レベルで編み出しています。

それらは、議事録の文字起こしから提案資料の構成案を自動生成するなど、実務に直結したものばかりです。

多くの企業で見られるボトムアップや専門部署による推進ではなく、トップがAIの利便性を体現し、活用法を直接発信するスタイルが、社員の意識を大きく変える原動力となりました。

社内ではGeminiが標準化され、それ以外にもさまざまな生成AIの利用も進められています。しかし、単にツールを揃えるだけでなく、簗島氏が構築した「具体的なノウハウ」そのものが配布されていることが、高い活用率を維持する鍵となっています。

効率化の先にある「価値の最大化」へ

多くの企業がAI導入の目的を「業務効率化」に置く中、インティメート・マージャーが掲げるのは「最大化」の視点です。これは、リソース不足で断念していた業務や未知の価値創出にAIを用いるという考え方です。

簗島氏

「効率化と最大化の両方に取り組んでいますが、社員がより意欲的に動くのは、これまで手が届かなかったことを実現する“最大化”の使い方でした」

この思想は、アウトプットに対する考え方にも表れています。

同社では、生成AIを使って業務において完璧を目指しすぎるのではなく「スピードと品質のバランスを重視する」スタイルを採用しています。

このようなアウトプットに対する向き合い方が組織に根付いており、こうした風土が生成AIのポテンシャルを引き出す土台となっています。

会議の記録や営業の重要な情報を短時間で把握できる

インティメート・マージャーでは、生成AIを使って社内の情報格差をなくす取り組みも進めています。

簗島氏は自分が出席した打ち合わせの音声をすべて記録として残し、生成AIで解析したうえで社内データベースに蓄積しており、会議に参加していない社員でも社長がどんな提案をし、どんな事例を語っているかをいつでも確認できる環境を整えています。

簗島氏

「僕がどういう風な提案をしたかとか、外部でどういう話をしたのかは、社員が見ようと思えばいつでも見られる状態になっています」

また、営業部門のSlackのやり取りも直近30日分を社内に公開しAIに取り込めるようにしています。膨大なログをすべて読む必要がなく、重要な情報を短時間で把握できる仕組みです。

こうした情報のオープン化は、組織全体の知識レベルの向上につながるだけでなく、社員が自発的に情報を求めて動くきっかけにもなっています。

非エンジニアによる自律的な開発が加速

インティメート・マージャーでは、エンジニア以外の社員が生成AIを活用して自らプログラムを書き、業務を改善する動きも広がっています。

バックオフィス担当者がコードを書けるようになったり、営業担当者がサイトを作れるようになるといった事例が生まれています。

簗島氏

「文系職がプログラムを書くのは、できる人はやればいいし、無理にやらなくてもいいくらいに思っています。でも今は、やろうと思えば誰でもできる時代になったので、実際にプログラムを書いたり、業務を効率化する社員も増えてきています」

これは、生成AIの登場によって技術的なハードルが大きく下がったことが背景にあります。

簗島氏は、AIを使いこなせるかどうかはリテラシーの問題ではなく、どのデータを活用すれば効率化・最大化できるだろうという想像力と、実際に試してみようとする意欲の問題だと考えています。

私生活でのAI利用を勧める理由

AI活用を社内に根づかせるためにインティメート・マージャーが勧めているのは、私生活でも積極的にAIを使うことです。

仕事の場だけで覚えようとしても限界があるという考えから、日々のちょっとした困りごとをAIで解決する経験を全社員に促しています。

簗島氏自身も、子供の学校のプリントをスキャンして問題集を作ったり、予定を自動で登録するなど、生活の中でAIを積極的に使っています。

簗島氏

「一番価値を実感しやすいのは、自分が一番時間を使っていることにAIを活用することです。プライベートで時間を取られていることに生成AIを使うと、効率化の効果をダイレクトに感じられるので、まずはそこから始めるのがおすすめです」

簗島氏は人事評価でも組織により生成AI活用が進んでいくように組織全体としての画一的な目標設定を行うのではなく、各人のAI活用浸透度を上げるために過去の自分と比べてAI活用の量や質を改善してくことを重視しています。

簗島氏

「これまでの3ヶ月間の生成AI活用レベルよりも、次の3ヶ月はさらにレベルを上げてくださいねと言っています。他人や他部署、他社と比べるのではなく、過去の自分よりもちゃんと使っている状態を目指すようにと各部署の担当者や中途入社の方にも伝えています」

インティメート・マージャーに学ぶ5つのポイント

インティメート・マージャーの生成AI活用は、データリーディングカンパニーとしての強みと、経営者の強いコミットメントによって、着実に成果を上げています。

同社の取り組みから、他社のDX・AI推進にも活かせるポイントを5つに整理しました。

  1. 経営者自らが誰よりも使い込み、ツールとして社員に届ける
    言葉で推奨するだけでなく社長自らがAI活用を行い、実務に即したツールを社員に提供し続けています。リーダーが最大のユーザーであることが、組織への浸透を加速させる最も強力なエンジンになります。

  2. 既存業務の置き換えだけではなく、できなかったことを実現する
    AIの目的を効率化だけでなく「最大化」にも置くことで、社員が新しい価値創出に前向きに取り組める環境を作りました。リソース不足で諦めていた業務こそ、AIの使いどころです。

  3. スピードを最優先し、完璧ではないを許容する
    完璧主義を捨て、AIで素早く形にして人間が補足するサイクルを徹底しています。速さが価値になる領域では特に有効なアプローチです。

  4. 情報の非対称性をなくし、組織の知識をオープンにする
    打ち合わせやチャットのログを全社員がアクセスできるデータベースとして整備しています。個人の経験を組織全体の共有知に変えることで、意思決定のスピードと質が向上します。

  5. 私生活での活用を推奨し、好奇心を自律的な学習につなげる
    業務の制約がない私生活でAIを使うことで、その利便性をリアルに体感できます。日常での成功体験が業務への応用アイデアを生み出し、活用レベルを更新し続ける自走型の組織につながっています。

インティメート・マージャーの事例は、AIを単なるツールとしてではなく、組織文化や個人の能力を広げるインフラとして捉えることの大切さを教えてくれます。

「AIが空気のように当たり前にある状態」を目指すには、仕組みの導入だけでなく、社員の好奇心と挑戦を後押しするリーダーの姿勢が欠かせません。

一方で、

「社長自らツールを作るのはうちでは難しい」
「非エンジニアが開発を始めるための具体的なステップは?」
「AI活用の成果をどう定量評価すればいいのか」

といった実務上の壁に直面する企業も多いはずです。最適なアプローチは組織によって異なります。

私たちSHIFT AIは、こうした「導入したが定着しない」「具体的な成果が見えない」という課題解決を得意としています。 

貴社の業務内容に合わせたAI活用のロードマップ策定から、現場を巻き込んだ推進体制の構築支援、さらには実務に即したAIスキルの習得まで、定着に必要なプロセスを一気通貫で伴走します。

「AIを導入しただけで終わらせたくない」「現場が自発的に使いこなす文化を作りたい」そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちの支援内容をご覧ください。

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