「結果にコミットする」
一世を風靡したこのキャッチコピーで、日本のフィットネスのあり方を変えたRIZAPグループ。
徹底した「人と情熱」による寄り添いで信頼を築いてきた同社は今、その情熱をテクノロジーと掛け合わせ、組織そのものを「AIネイティブ」へと作り変えようとしています。
資料作成時間は以前の10分の1以下に圧縮。新卒エンジニアが未経験の開発テーマにも挑戦できる体制を整え、全国1,800店舗・会員100万人を擁する無人店舗「chocoZAP(チョコザップ)」では、AIだけで店舗運営を完結させる実証が進んでいます。
その変革を牽引するのが、鈴木隆之氏です。本記事では、AIによって「脱皮」の最中にある同社の組織変革の裏側と、これからの時代に求められるプロフェッショナル像を伺います。

RIZAPグループ取締役 / RIZAPテクノロジーズ 代表取締役
野村総合研究所でのコンサルティングを皮切りに、DeNA、リクルート、ロイヤリティマーケティング(CDO)を経て、2021年にRIZAPグループへ参画。グループ全体のDXとAI戦略を指揮し、デジタルとリアルが融合した新たな体験価値を創造している。
※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介する企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。
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独自開発から始まったAI民主化の土壌
RIZAPグループのAI変革が驚異的なスピードで進んだ背景には、参画直後から着手された「組織のスクラップ&ビルド」があります。
鈴木氏は参画後、外部ベンダー頼みではない「自ら開発し、判断できる内製組織」の構築に動きました。この土台があったからこそ、独自の「ChatGPT for RIZAP」を開発し、全社活用の起点を作りました。現在はGeminiをメインに、Claudeなど複数のツールを組み合わせながら、グループ全体でのAI活用をさらに加速させています。
同社が徹底したのは、「AI活用を文化にする」ための経営層からのアプローチです。
ツールを配布するだけでなく、「役員メンバーは資料作成時にはまずAIを使う」という明確なルールを導入。「生成AI活用研修」を通じてプロンプトの基礎から実務への応用までを浸透させたことで、組織全体の心理的ハードルを大幅に引き下げました。

「入社当初は、DX人材がほぼ不在の状態で、採用活動とchocoZAPの立ち上げを同時に進めていました。そこから100名超の組織を作り上げてきた経験が、今のAI実装スピードを支えています」
現在、同グループでは資料作成時間が以前の10分の1以下に削減されています。リサーチやアイデア出しも含め、かつては膨大な工数を要していた工程が、今では誰でも、圧倒的なスピードで効果を出せるようになっています。
AIがスキルの壁を壊す。新卒エンジニアを「即戦力」に変える教育の再定義
この変革の波は、実行部隊であるRIZAPテクノロジーズにおいてより鮮明に現れています。
同社では、エンジニアがAIによるコーディング支援や自動化をフル活用することで、開発を内製化しつつスピードを大幅に向上。特筆すべきは、AIが「スキルの差を補完する」ことで、経験不足をテクノロジーでカバーし、新卒メンバーの戦力化スピードを飛躍的に高めている点です。
同社が新卒採用を重視するのは、単なる人材確保の論理ではありません。従来の経験則やスキルにこだわりがないゼロベースの人材こそが、AIを当たり前に使いこなす「AIネイティブ」として育ちやすく、今後の開発組織の核になるという確信があるからです。

「AIとのやり取りを通じて実装を進めることができるため、社内に前例のない開発テーマにも新卒メンバーが取り組めるようになりました。スピードや効率性だけでなく、個人が『できることのレベルや幅』が格段に広がった。これは内製開発組織にとって極めて大きな武器になります」
AI時代に生き残るエンジニアの定義。技術の先に求められる「テーマ設定力」
AIがコードを書き、開発行為そのものの付加価値が相対的に下がっていく中で、エンジニアに求められる役割も変化しています。
鈴木氏は、これからの時代に生き残るエンジニアには大きく分けて「二つの道」があると語ります。
一つは、AIが生成したアウトプットを高い専門性と経験に基づき正確にレビューし、開発全体を最適化する「リーダー・マネージャー」としての道。もう一つは、技術そのものではなく、事業や現場の切実な課題を深く読み解き、「何を解決すべきか」という問いを立て直す「テーマ設定のプロ」としての道です。

「AIが開発を自動化すればするほど、エンジニアが向き合うべきはコードではなく『事業や店舗の課題解決』そのものになります。何を作るべきかというテーマ設定に注力できる人材こそが、組織において真に価値を発揮し続けます」
AIがどれほど進化しても、そのAIに「何をさせるか」という意志決定は人間にしかできないと考えています。RIZAPでは、AIを「スキルの標準装備」とした上で、その先にある「人間にしか出せない付加価値」を生み出せる人材育成に舵を切っています。
「無人」こそが最強の実験場。AIとハードウェアの融合が描く未来
RIZAPのAI戦略の最前線にあるのが、全国に拡大する無人店舗「chocoZAP」です。
多くの企業が「人のサポート」としてのAI活用を模索する中、RIZAPテクノロジーズは「AIだけで店舗を回す」という、人を介在させない究極の自動化に挑んでいます。
ソフトウェア開発だけでは差別化が難しくなる未来を見据え、同社はエアコンの自動温度制御やトレーニングマシンへのセンサー設置といった「ハードウェア・IoT」領域への注力を強めています。AIカメラによる来店者の運動量解析などを組み合わせることで、人による物理的な管理を超えた、より高度な顧客体験を目指しています。

「無人店舗は、人間がいることを前提としません。だからこそ、AI店長エージェントによる運営の自動化や、AIカメラを通じた解析など、テクノロジーをフル活用して新たな価値を創造するのに、これほど適したフィールドはありません。ソフトウェアに留まらず、ハードとソフトを融合させた開発こそが、次なる差別化の鍵となります」
約1,800店舗に広がる無人フィールドは、人的コストに依存しないデジタルとリアルの融合の最前線であり、そこで積み上げられる知見こそが、RIZAPテクノロジーズならではの競争優位の源泉となっています。
「何をさせるか」を問う。テクノロジーの先に残るプロフェッショナルの仕事
AIがあらゆる業務を自動化した先に、人間の仕事は何が残るのか──。
鈴木氏は、現在のRIZAPグループをテクノロジーによって自己変革を遂げる「脱皮の最中」にあると強調します。
その自己変革は、働き方にも及んでいます。RIZAPテクノロジーズがフルリモートという柔軟な働き方を継続しているのも、従業員を「プロフェッショナル」として信頼し、場所にかかわらず結果にコミットできるかを重視しているためです。
では、AIが業務を担う時代に、人間が果たすべき役割とは何か。鈴木氏はこう語ります。

「AIが進化しても、AIに何を求めるかを考えること、そして顧客が喜ぶ新しいサービスを構想する力は人間にしか持てないと思っています。清掃や修繕、あるいは物理的な体験を通じた価値提供。これらは依然として、我々が担うべき重要な領域です」
テクノロジーの進化は、人間をルーティンから解放し、より創造的な仕事に集中できる環境を整えてくれます。
RIZAPグループが推進するAI経営の真髄は、効率化の先にある「新しい価値」をいかに生み出し続けるかという、終わりのない挑戦です。
RIZAPグループから学ぶ3つのポイント
1.「経営層の率先垂範」によるAI民主化
ツール導入に留まらず、役員自らが「10分の1」の効率化を体現することで、組織全体のAI活用への心理的ハードルを払拭している。
2. 新卒×AIによる「スキルの民主化」と即戦力化
AIをスキルの補完材とし、経験不足をテクノロジーでカバー。従来のような修行期間を要せず、新卒が高度な課題に挑戦できる組織を構築している。
3.「人間不在(無人)」を前提とした破壊的イノベーション
人の補助ではなく「AIだけで完結させる」ことを前提にした無人店舗という特異なフィールド。この制約が、ソフトとハード(IoT)を融合させた新しい価値を生んでいる。
RIZAPはかつて「人と情熱」でフィットネスの常識を変えた会社です。
今、同社はその情熱の矛先をテクノロジーへと向け、AI導入を「効率化」の枠に閉じ込めず、組織のあり方と「人間にしかできない価値」の再定義にまでつなげようとしています。
自社の文化に即した本質的なAI活用とは何か。AI時代に求められる人材をどう育てるか。RIZAPの「脱皮」のプロセスは、変革を志すすべての企業にとって示唆に富む問いを突きつけています。
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