「属人化、非効率、時間だけが奪われる」
マニュアルに落とし込めない業務、誰がどうやっているのか曖昧な業務、属人化しすぎて引き継ぎも難しい業務……。それがいわゆる「非定型業務」です。
メール対応や議事録作成、調整・報告業務、資料のドラフト作成など、一見すると単純な作業に見えるこれらの業務。しかし、担当者によって判断や処理が異なり、時間も工数も想定以上にかかっている。そんな現場の声は少なくありません。
この記事では、
- 非定型業務とは何か?定型業務との違い
- なぜ非定型業務は効率化が難しいのか
- 属人化を防ぎ、再現性を持たせるには
- 生成AIやツールをどう活用するか
- 実際に改善した企業はどんな取り組みをしたのか
といった内容を、現場視点×経営視点の両面から徹底解説します。
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /
非定型業務とは?定型業務との違いと見分け方
「この作業って、どうやるのが正解なんだろう?」「やり方が人によって違う気がする…」
そんな風に感じたことはありませんか?その原因の多くは「非定型業務」にあります。
非定型業務とは?
非定型業務とは、毎回の対応が変わる、判断や工夫を要する業務のことです。明確なルールがなく、プロセスも人によって異なるため、効率化や引き継ぎが難しくなります。
一方、定型業務とは?
対照的に、定型業務は決まった手順やルールに沿って繰り返し処理できる業務です。多くの場合、マニュアル化や自動化が可能で、再現性のある業務スタイルが取られます。
非定型業務と定型業務の違い
以下の表は、非定型業務と定型業務の違いを明確に示したものです。
項目 | 非定型業務 | 定型業務 |
手順 | 状況に応じて変わる | 一定で繰り返し可能 |
判断 | 担当者の裁量が大きい | ルールや基準に従う |
属人化リスク | 高い | 低い |
自動化との相性 | 限定的(補助的支援) | 高い(RPA活用しやすい) |
業務例 | 問い合わせ対応、資料作成、調整業務 | 勤怠集計、請求処理、入力作業 |
このように、非定型業務は人に依存しやすく、業務改善の難易度が高いのが特徴です。逆に言えば、「定型業務とは違うアプローチ」が求められる、ということでもあります。
定型業務の効率化について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
👉 事務作業を減らすには?定型業務の効率化・自動化を実現する5つの方法と進め方を解説
非定型業務が属人化・非効率になりやすい3つの理由
「ツールも入れているし、効率化にも取り組んでいるはずなのに、なぜか回らない」。そんな現場の停滞感は、非定型業務の構造そのものに原因があります。
原因①「やり方」が人に依存している
非定型業務は、その場その場での判断や対応が求められる仕事です。だからこそ、「正解が1つではない」。その結果、業務の進め方が属人化しやすくなります。
例えば、
- お客様へのメール返信
- 社内調整や上司への報告
- クレーム対応やその判断
といった業務は、経験やセンスに頼る場面が多く、引き継ぎが難しい。結果的に「〇〇さんにしかできない仕事」が増えていきます。
原因②全体像が見えないまま、手探りで回している
非定型業務の多くは、複数の人・部門をまたいで行われています。しかしその流れを全員が把握しているかというと、そうではありません。
「あれ、これって先月もやってなかった?」
「誰がこの対応をしたのか分からない」
「なんとなくやっているけど、目的がはっきりしない」
こうした“曖昧さ”が、非効率を生む温床になります。
原因③「ツールを入れれば解決する」という誤解
非定型業務の効率化というと、RPAやAIツールを思い浮かべる方も多いかもしれません。
確かに、補助的な役割としては有効です。ですが、そもそも何を効率化すべきかが曖昧な状態でツールを入れても、成果は出ません。
よくある失敗例としては、
- ツール導入だけで「業務設計」は放置されている
- 現場の理解が追いつかず、使われなくなる
- 結局、設定・運用も一部の人に集中して属人化
こうなると、「改善のために導入したはずが、かえって複雑化した」という本末転倒な事態に陥ります。
非定型業務が非効率になるのは、やり方が人任せで、流れも曖昧、しかも“型”がないからです。だからこそ必要なのは、まず「見える化」し、再現性ある形に組み直す必要があります。
「改善したいけど、何から始めるべきか分からない…」と感じている方へ
👉 定型業務が多すぎて改善できない職場に必要な視点とは?“改善不能”を脱する3つの戦略
非定型業務を効率化する4ステップ!何から手をつけるべきか?
非定型業務の効率化には、「これさえやればOK」という魔法のツールはありません。必要なのは、構造を見直し、仕組みを整えるという地に足のついたステップです。
ここでは、属人化した非定型業務を誰でも再現できる仕組みに変えるための4ステップを紹介します。
ステップ①業務の棚卸しと分類
まず最初にやるべきは、業務全体の可視化です。非定型業務は「見えないところ」で発生しがちなので、現場の実態を拾い上げて整理する必要があります。
<やること例>
- 日々の業務を書き出す(業務リスト作成)
- 定型と非定型に分ける
- 頻度・担当者・所要時間も記録
業務時間がかかっている割に成果が見えづらい仕事が、非定型の代表格です。
ステップ②判断基準・進め方の“型”をつくる
属人化の最大の要因は、「どう対応するかの基準が明文化されていないこと」です。そこで必要になるのが、判断ポイントや対応フローの“見える化です。
<やること例>
- 返信テンプレートや対応パターンを整備する
- よくあるケースに対する「判断のガイドライン」をつくる
- 誰に何を相談すればよいかを明確化する
これにより、担当者が変わっても対応の質が安定し、再現性が高まります。
ステップ③テンプレート・ナレッジを整備して共通資産化
非定型業務を減らす近道は、一度やった仕事を資産化することです。判断や対応を都度ゼロから考えるのではなく、使い回せるようにしておきましょう。
<やること例>
- よく使う文面・構成・提案などをテンプレ化
- 対応履歴・事例・対応策などをナレッジDBに蓄積
- 社内ポータルやNotionなどで「探せる仕組み」を作る
ここまでくると、「非定型のようで、実は準定型」な業務に変わっていきます。
ステップ④生成AIやRPAで補助的に自動化する
最後に、補助的な役割としてのツール活用です。重要なのは、ツールありきではなく、業務の型ができたうえでの活用にすることが重要です。
<やること例>
- ChatGPTを使って、メールや提案書のたたき台を作成
- 定型に近い一部プロセスをRPAで自動化
- Slackボットなどで「問い合わせ→回答」の一時対応を代替
AIやツールは“再現性を持たせる仕組みの一部”として設計するのがベストです。
ツールよりも「業務の整備」が先
多くの企業がツール導入から入って失敗するのは、仕組みが整っていないからです。
非定型業務を効率化するには、
- 見える化
- 判断の言語化
- ナレッジの資産化
- ツールによる支援
という順序で進めることが、最短ルートになります。
「そもそもムダな仕事を減らしたい」なら、こちらもおすすめです。
👉 無駄な仕事を減らす方法10選|生成AI活用で実現する生産性向上
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /
非定型業務に効くツールと生成AIの活用法
非定型業務は、「一見するとツールでは対応できなさそう」と思われがちです。しかし実際には、ゼロからの思考やすべてを人が判断する必要がある業務はごく一部。多くは「ある程度の型」があれば効率化できます。
ここでは、非定型業務を支援する代表的なツールと、生成AIの具体的な使い方を紹介します。
① ChatGPT|たたき台作成・アイデア出し・応対文面など初動を支援
非定型業務では、ゼロから考える思考の初速が重いという悩みがつきものです。ここでChatGPTを使えば、「一度形にしてから調整する」流れを作ることができます。
<活用例>
- お客様対応メールのドラフト作成
- 社内文書・報告書・議事録のひな形づくり
- アイデア出し・要点整理・構成案の下書き
- よくある質問への“仮回答”生成(一次対応)
<メリット>
- 思考のハードルが下がる
- 経験が浅い人でも「まず書いてみる」ができる
- たたき台文化が生まれると属人化しにくくなる
② ノーコード業務管理ツール|情報の整理・共通化・属人化の緩和
業務が属人化している背景には、「業務知識がバラバラに点在している」ことがあります。
Notion・kintone・esaなどのノーコード型業務プラットフォームは、「業務の見える化・テンプレート化・共有の仕組み化」に非常におすすめです。
<できること>
- よくある対応パターンのテンプレ保存
- 対応履歴の蓄積と検索
- 誰でも使える“業務の道しるべ”の構築
<ポイント>
ツール自体よりも、「ここにいけば何でもある」という共通の入り口を作ることが大切です。
③ RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)|準定型業務の自動化
完全な非定型業務には向かないものの、業務の一部が準定型になっていればRPAは有効です。
たとえば
- 顧客対応ログをシステムに転記する
- Excelに記入された情報をフォーマット化して送信
- 定期的な進捗集計を自動生成する
<注意点>
業務の型ができていない状態ではRPAはうまく機能しません。ステップ③(テンプレート整備)を先に行うことが前提です。
④ Slackボット・FAQツール|一次対応の自動化で人の負担を減らす
「この質問、何度答えただろう…」という業務、ありませんか?
生成AIとFAQツールを組み合わせれば、人が答えるまでもない共通質問に自動応対する仕組みがつくれます。
<例>
- Slackでの社内問合せにボットで自動返答
- よくあるQ&Aをまとめたページを生成AIでサジェスト
- 調べれば分かる質問に、先回りしてナレッジを提示
このように、運用に根づかせる設計ができるかどうかで、成果は大きく変わります。
実践事例|非定型業務の仕組み化で成果を出した企業の取り組み
非定型業務の効率化は、一見すると難しく感じられるかもしれません。ですが実際には、多くの企業が「型をつくる」「仕組みにする」「AIを取り入れる」ことで、改善の成果を上げています。
ここでは、非定型業務の属人化を解消した2つの事例をご紹介します。
事例①営業事務の人任せ対応をテンプレート化で標準化(製造業・BtoB)
全国に拠点を持つある製造系企業では、営業事務が抱える業務が属人化しており、
- 顧客対応の文面や資料が、担当者によってバラバラ
- 一部のベテラン社員に業務が集中
- 担当変更や退職時に引き継ぎが難しい
という課題を抱えていました。
そこで取り組んだのが、過去の対応履歴をもとにしたテンプレートの整備と、ChatGPTの導入です。
最初は「AIなんて使えるの?」と不安視する声もありましたが、ChatGPTでたたき台を作成 → 担当者が整えるという流れに切り替えたことで、作業時間が約40%削減。
新人でも一定レベルの対応が可能になり、業務の属人化が大きく解消されました。
事例②問い合わせ対応をナレッジ化×ボット対応に移行(ITサービス業)
IT業界のある中堅企業では、社内の問い合わせ対応が情報システム部門に集中し、「この質問、またか…」「業務の半分が説明で終わる」といった状況が続いていました。
そこでまず行ったのが、よくある質問と回答の一覧化。次に、その内容をもとに社内SlackのボットにChatGPT APIを連携し、一次回答を自動化しました。
結果、情シス部門の対応件数は月間200件以上→80件に削減。空いたリソースを、セキュリティ整備や業務改善に回せるようになりました。
また、FAQが「探せば分かる」状態になったことで、現場の自走力も向上したとの声が上がっています。
どちらの企業にも共通していた“3つの視点”
これらの企業が成功した背景には、共通する考え方があります。
- まず「業務の見える化」から始めた
- AIやツールを“導入する”だけでなく、“組み込む”設計にした
- 業務の再現性を高めることで、担当者が変わっても品質を保てる仕組みにした
実は、どちらの企業も最初は「うちは特殊だから効率化は難しい」と考えていたそうです。でも、非定型業務の中にも“繰り返しのパターン”や“標準化できる部分”は必ずあります。
そして、その気づきこそが効率化への第一歩です。
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /
非定型業務の効率化でよくある失敗とその対策
「非定型業務、効率化しよう!」……と意気込んでも、実際にはうまくいかないケースも少なくありません。
なぜか?その理由は、“本質を見誤ったまま”効率化を進めてしまっているからです。ここでは、ありがちな失敗パターンと、その対策を紹介します。
失敗①ツールだけ入れて、運用がついてこない
業務の属人化を解消しようと、RPAやAIツールを導入する企業は増えています。しかし、「ツールを入れただけ」で改善が止まってしまうケースが非常に多いのが現実です。
- 現場では使い方が分からず放置される
- 結局、いつものやり方に戻ってしまう
- 「導入=改善したつもり」で、形骸化する
対策は?
ツール導入の前に、業務の棚卸し・判断基準の明確化・仕組み設計を済ませておくことです。そして、ツールは仕組みの一部として位置づけましょう。
失敗②「効率化」だけに偏り、現場の納得を得られない
生産性を上げたい、無駄を減らしたい。その思いは間違っていなくても、現場の理解が追いついていないまま進めると、かえって反発を生むことがあります。
- 「効率化って、私たちの仕事を減らすってこと?」
- 「何の説明もなくツールだけ使えって…」
- 「相談しにくくなった」と、心理的距離が生まれる
対策は?
「効率化=人を楽にすること」ではなく、“成果を出すために組織全体で取り組む改善”という前提共有が必要です。現場の声を拾いながら、「何を減らし、何を残すか」を共に考えるプロセスが大切です。
関連記事
👉 生産性向上のデメリットとは?現場の反発や導入失敗を防ぐ対策を徹底解説
失敗③ルールがあっても、定着せず元に戻る
マニュアル、ガイドライン、テンプレート——。頑張って仕組みを整えても、結局、活用されずに終わってしまうこともよくあります。
- 誰も見ないマニュアル
- 放置されたNotionページ
- 形式だけのテンプレート運用
対策は?
形式ではなく、「なぜそれを使うのか?」という目的を共有し、チーム全体で運用を“習慣化”させる仕組みが必要です。
- 研修でルールを浸透させる
- フィードバックを元に改善するサイクルを回す
- 「業務=仕組みの中で動くもの」という共通認識を育てる
ここにこそ、教育やトレーニングの重要性があるのです。
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /
結局、非定型業務の効率化ってどうすれば成功するのか?
「結局、非定型業務の効率化って、どうすれば成功するんだろう?」この問いに対する答えは、とてもシンプルです。
全部を自動化しようとしないこと、そして型をつくることです。
非定型業務は、ルールがなく、担当者によってやり方が違い、正解が一つではありません。だからこそ、最初から「完全自動化」や「属人化ゼロ」を目指すと、現場は疲弊し、改善はうまくいかないのです。
では、何から始めるべきか?それは、業務の“再現性”を高める工夫です。
- メールの対応にテンプレートを用意する
- 社内資料に「まず書く型」を持たせる
- 判断の分岐を簡単なフローにして共有する
- ChatGPTで“最初の一文”だけ作ってもらう
それだけでも、業務は少しずつ「個人の勘」から「チームで回る仕組み」へと変わっていきます。
さらに、そうした仕組みを定着させるには、現場の納得・教育・継続的な改善が不可欠です。ここまで視野に入れて初めて、非定型業務の効率化は「成功」と呼べる形になります。
まとめ|非定型業務の効率化は「仕組み化」から始まる
非定型業務という言葉には、「どうせ効率化は難しい」「人によってやり方が違うから仕方ない」という諦めが込められがちです。けれど、実際はそうではありません。
メールの対応、資料の作成、報告の文面──そのすべてをゼロから考え直す必要はないのです。
「こういう時はこうする」「ここまではこのツールで済ませる」「この型を使えばまず書ける」そんな“最低限の仕組み”があれば、非定型業務は誰にとってもぐっとやりやすくなります。
効率化とは、業務を人から引きはがすことではありません。人が力を発揮すべき領域に集中できるよう、仕組みで余白をつくることです。
定型業務との切り分けから始まり、判断の基準づくり、ナレッジの共有、AIやツールの活用、現場の共感と定着への工夫。すべてを積み重ねていくことで、非定型業務は“再現可能な仕事”へと変わっていきます。
SHIFT AIでは、そうした企業の現場課題に向き合い、生成AI×業務構造の再設計を組み合わせた研修プログラムを提供しています。
ツールやマニュアルだけで終わらない、「組織に定着する仕組み化」を、一緒に作っていく支援です。
まずは、どんな企業がどんなアプローチで成果を出しているのか、そして、自社では何ができるのかを知るところから始めてみませんか?
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /
非定型業務の効率化に関するよくある質問(FAQ)
- Q非定型業務は本当に効率化できるんですか?
- A
はい、可能です。ただし「すべてを自動化する」という考え方ではなく、“再現性を高める”ことが成功のカギになります。
テンプレートやフロー、ナレッジの蓄積などにより、人によってブレていた対応も安定し、結果として効率化につながります。
- QChatGPTなどのAIツールは、非定型業務にも使えますか?
- A
はい。むしろ、考える初動や資料のたたき台作成など、“ゼロから始める負担”を軽減するのに最適です。完全な自動化は難しくても、「まず形をつくる」フェーズで使うと、業務のスピードと質が大きく改善します。
- QRPAは非定型業務にも活用できますか?
- A
非定型業務そのものには難しいですが、その中に含まれる“準定型”の部分だけを切り出してRPAに任せることで効果が出ます。たとえば、顧客対応のあとのデータ入力や、日報の自動転記などが該当します。
- Qツールを入れても現場が使わないのですが、どうすればいい?
- A
この問題は非常に多いです。解決のポイントは、「なぜ使うのか」を現場に腹落ちさせること。単なる業務命令ではなく、「負担軽減」や「ミス防止」といった導入の意義とベネフィットを共有する設計が重要です。
- Qそもそも、うちの業務が非定型かどうか分からない…
- A
まずは「誰がやっても同じ結果になるか?」「手順が明文化されているか?」を確認してみてください。この2つが曖昧な業務は、非定型の可能性が高いです。業務リストを棚卸しして分類するところから始めると、改善の道筋が見えてきます。
\ 組織に定着する生成AI導入の進め方を資料で見る /