Microsoft Copilotを企業で安全に活用するためには、適切なセキュリティ設定が不可欠です。しかし、「管理センターのどこで設定すればいいのか分からない」「セキュリティポリシーの具体的な設定手順が知りたい」といった声を多く耳にします。
本記事では、企業の情報システム担当者や管理者向けに、Microsoft Copilotのセキュリティ設定を段階的に解説します。基本的なテナント設定から、ユーザーアクセス制御、DLPポリシーの構築まで、実際の管理画面に基づいた具体的な手順をご紹介。
この記事を読むことで、Copilotを安全に導入し、企業の機密情報を保護しながら業務効率化を実現できるセキュリティ環境を構築できるようになります。
Microsoft Copilotでセキュリティ設定が必要な理由
Microsoft Copilotの導入時にセキュリティ設定を怠ると、企業の機密情報漏洩や法的リスクを招く可能性があります。
適切な設定により、安全な環境でAIの恩恵を最大限活用できるでしょう。
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企業の機密情報が漏洩するリスクがあるから
Copilotに入力されたデータは、適切な設定なしには外部に流出する危険性があります。
企業の財務情報、顧客データ、開発中のプロジェクト情報など、機密性の高い情報がCopilotの学習データとして使用される可能性があります。無料版や個人向けプランでは、入力したデータがAIモデルの学習に利用され、他のユーザーへの回答に含まれるリスクが存在するためです。
適切なセキュリティ設定を行うことで、このような情報漏洩を防げます。
法的コンプライアンス違反を招く可能性があるから
セキュリティ設定の不備は、個人情報保護法やGDPRなどの法規制違反につながる恐れがあります。
企業が取り扱う個人情報や機密データには、厳格な管理義務が課せられています。Copilotを通じてこれらの情報が不適切に処理されると、法的責任を問われる可能性があるでしょう。
特に、データの処理場所やアクセス権限、保存期間などを明確に管理できる設定が重要です。
適切な設定で安全な業務効率化を実現できるから
正しいセキュリティ設定により、リスクを最小限に抑えながらCopilotの生産性向上効果を享受できます。
Microsoft 365の組織向けプランでは、企業レベルのセキュリティ機能が標準装備されています。これらの機能を適切に設定することで、安心してAIツールを業務に活用できる環境を構築可能です。
結果として、従業員の作業効率向上と企業のセキュリティ確保を両立できるでしょう。
Copilot管理センターの基本セキュリティ設定手順
Microsoft 365管理センターでの基本設定は、Copilotセキュリティの土台となる重要なステップです。ここで紹介する手順に従って設定を進めましょう。
Microsoft 365管理センターにアクセスする
管理者権限でMicrosoft 365管理センターにログインし、Copilot設定画面に移動します。
まず、全体管理者または認定された管理者アカウントでMicrosoft 365管理センター(admin.microsoft.com)にアクセスしてください。左側のナビゲーションメニューから「設定」を選択し、「統合アプリ」または「Copilot」の項目を探します。
Copilot関連の設定は、「Microsoft 365 Copilot」のセクションに集約されています。 初回アクセス時は、利用規約への同意が求められる場合があります。
テナント全体のCopilot利用ポリシーを設定する
組織全体でのCopilot利用範囲と制限事項を明確に定義します。
「Copilot設定」画面で、利用を許可するユーザーグループを指定できます。全社員への一律展開ではなく、段階的な導入を推奨します。まずはIT部門やパイロットグループから開始し、運用に慣れてから対象を拡大しましょう。
また、利用可能なアプリケーション(Word、Excel、PowerPoint、Teams等)も個別に制御可能です。 業務に必要なアプリケーションのみを有効化することで、リスクを最小限に抑えられます。
データ保護とプライバシー設定を有効化する
企業データの保護とプライバシー遵守のための基本設定を有効にします。
「プライバシーとデータ管理」セクションで、以下の設定を確認・有効化してください。データの地理的な保存場所を指定し、可能な限り自国または信頼できる地域を選択します。また、データの自動削除ポリシーを設定し、不要なデータの蓄積を防ぎましょう。
ログ記録とモニタリング機能も同時に有効化することで、利用状況の把握と異常検知が可能になります。
Copilotのユーザーアクセス権限とセキュリティ制御
ユーザーごとのアクセス権限設定は、情報漏洩防止の要となります。部署や役職に応じた適切な権限管理により、必要最小限のデータアクセスを実現しましょう。
部署別・役職別のアクセス権限を設定する
Azure ADグループを活用して、部署や役職に応じたCopilotアクセス権限を細かく制御します。
Microsoft 365管理センターの「ユーザー」→「アクティブなユーザー」から、Copilotライセンスの割り当てを管理できます。経営陣には全機能へのアクセスを、一般社員には基本機能のみのアクセスを付与するなど、段階的な権限設定が重要です。
特に人事部門や財務部門など、機密性の高い情報を扱う部署には、追加のセキュリティ制御を適用することを推奨します。 定期的な権限の見直しも忘れずに実施しましょう。
SharePointとOneDriveの連携セキュリティを強化する
Copilotがアクセス可能なSharePointサイトとOneDriveフォルダーの範囲を制限します。
SharePoint管理センターで、サイトコレクションごとのアクセス権限を確認してください。Copilotは、ユーザーがアクセス権を持つファイルのみを参照しますが、共有設定の見直しが必要な場合があります。
OneDriveについては、「共有」設定を「組織内のユーザーのみ」に制限することを推奨します。 外部共有が有効になっているファイルは、Copilotの学習対象から除外する設定も検討しましょう。
段階的なアクセス制御ポリシーを適用する
条件付きアクセスポリシーを使用して、デバイスや場所に基づくアクセス制御を実装します。
Azure ADの条件付きアクセス機能により、信頼できるデバイスや社内ネットワークからのアクセスのみを許可できます。多要素認証の必須化や、未管理デバイスからのアクセス制限も有効な対策です。
また、アクセス時間の制限(営業時間内のみ)や、特定の地理的場所からのアクセス制御も設定可能です。 これらの設定により、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できるでしょう。
CopilotのDLPポリシーとコンプライアンス設定
データ損失防止(DLP)ポリシーの設定は、機密情報の外部流出を防ぐ最後の砦となります。Microsoft Purviewを活用した包括的な保護策を構築していきます。
Microsoft PurviewでDLPポリシーを構築する
Microsoft PurviewコンプライアンスセンターでCopilot専用のDLPポリシーを作成します。
compliance.microsoft.comにアクセスし、「データ損失防止」→「ポリシー」から新しいポリシーを作成してください。Copilot関連のサービス(Microsoft 365 Apps、Teams、Exchange等)を対象として選択します。
機密情報の種類(クレジットカード番号、社会保障番号、財務データ等)を定義し、検出時のアクションを設定しましょう。 警告表示、管理者への通知、アクセスブロックなど、段階的な対応策を準備することが重要です。
機密情報の分類ラベルを作成・適用する
情報保護ラベルを作成し、ドキュメントの機密度に応じた自動分類を実現します。
Microsoft Purview Information Protectionで、「機密」「極秘」「社外秘」などのラベルを定義できます。各ラベルには、暗号化、透かし、アクセス制限などの保護アクションを関連付けられます。
Copilotが参照するファイルには、適切な分類ラベルが自動的に適用されるよう設定しましょう。 これにより、機密度の高い情報がCopilotの回答に含まれることを防げます。
監査ログとアラート通知を設定する
Copilotの利用状況を監視し、異常な活動を即座に検知するアラートシステムを構築します。
Microsoft 365セキュリティセンターの「監査」機能で、Copilot関連のすべての活動をログとして記録できます。ログの保存期間を適切に設定し、定期的なレビュープロセスを確立してください。
重要なイベント(大量データのアクセス、機密ファイルの参照等)に対するアラートルールも設定しましょう。 管理者への即座の通知により、迅速な対応が可能になります。
Copilotセキュリティの監視と継続運用
セキュリティ設定は一度行えば終わりではありません。継続的な監視と定期的な見直しにより、変化する脅威に対応していく必要があります。
利用状況監視ダッシュボードを構築する
Microsoft 365レポート機能を活用して、Copilot利用状況の可視化ダッシュボードを作成します。
Microsoft 365管理センターの「レポート」→「利用状況」から、Copilotの利用統計を確認できます。ユーザー別の利用頻度、アクセスしたデータの種類、生成されたコンテンツの量など、詳細な分析が可能です。
Power BIとの連携により、より高度な分析ダッシュボードの構築も検討しましょう。 異常なパターンや傾向を早期に発見することで、セキュリティインシデントの予防につながります。
異常検知アラートとインシデント対応を設定する
Microsoft 365 Defenderを使用して、Copilot関連の異常活動を自動検知するシステムを構築します。
通常の利用パターンから逸脱した活動(深夜の大量アクセス、異常な地理的場所からのログイン等)を検知するアラートルールを設定してください。検知時の対応フローも事前に定義し、担当者への自動通知機能を有効化します。
インシデント発生時には、影響範囲の特定、原因調査、再発防止策の検討を迅速に行える体制を整備しましょう。 定期的な模擬訓練により、対応能力の向上も図れます。
定期的なセキュリティ見直しを実施する
月次または四半期ごとのセキュリティ設定レビューにより、継続的な改善を実現します。
アクセス権限の棚卸し、DLPポリシーの有効性確認、新たな脅威への対応状況など、包括的な点検を実施してください。利用者からのフィードバックも収集し、使いやすさとセキュリティのバランスを調整します。
技術の進歩や法規制の変更に合わせて、設定の更新も必要になるでしょう。 継続的な学習と改善により、最適なセキュリティ環境を維持できます。
まとめ|Copilotセキュリティ設定で安全なAI活用環境を実現
Microsoft Copilotの安全な導入には、基本設定からアクセス制御、DLPポリシー、継続監視まで、段階的かつ包括的なセキュリティ対策が不可欠です。特に管理センターでの適切な初期設定と、組織に応じたユーザー権限管理が成功の鍵となります。
これらの設定は一度行えば終わりではなく、組織の変化や新たな脅威に応じて継続的に見直し・改善していく必要があります。定期的な監査と従業員教育により、技術的対策と人的対策の両面からセキュリティレベルを向上させることが重要です。
適切なセキュリティ設定により、企業はリスクを最小限に抑えながらAIの恩恵を最大限活用できます。
より実践的なセキュリティ対策や運用ノウハウについて詳しく知りたい方は、専門的な研修の受講もご検討ください。

Microsoft Copilotのセキュリティ設定に関するよくある質問
- QMicrosoft Copilotのセキュリティ設定はどこで行いますか?
- A
Microsoft 365管理センター(admin.microsoft.com)の「設定」→「統合アプリ」または「Copilot」セクションで基本的なセキュリティ設定を行えます。全体管理者権限が必要なため、適切な権限を持つアカウントでアクセスしてください。詳細なDLP設定やアクセス制御については、Microsoft PurviewやEntra IDでの追加設定も必要になります。
- Q無料版Copilotと有料版でセキュリティに違いはありますか?
- A
大きな違いがあります。無料版では入力データがAIの学習に使用される可能性がありますが、Copilot for Microsoft 365では企業向けのデータ保護機能が標準装備されています。組織での利用には必ず有料の企業向けプランを選択し、機密情報の漏洩リスクを避けることが重要です。
- QCopilotで機密情報が漏洩した場合の対処法は?
- A
即座にアカウントを無効化し、影響範囲の特定を行ってください。Microsoft Purviewの監査ログで詳細な利用履歴を確認し、漏洩した可能性のある情報を特定します。必要に応じて関係者への連絡、法的対応、セキュリティポリシーの見直しを実施し、再発防止策を講じることが重要です。
- QDLPポリシーの設定が複雑で分からない場合はどうすればいいですか?
- A
Microsoft Purviewには事前定義されたテンプレートが多数用意されているため、まずはこれらを活用してください。日本の個人情報保護法やクレジットカード情報保護などの一般的なポリシーテンプレートから始めて、組織の要件に応じてカスタマイズしていく方法が効率的です。段階的な導入をおすすめします。
- QCopilotのアクセス権限を部署別に設定する方法は?
- A
Entra IDでセキュリティグループを作成し、部署ごとのグループに異なるCopilotライセンスを割り当てます。Microsoft 365管理センターで各グループに対するCopilot機能の有効・無効を個別設定できます。SharePointやOneDriveのアクセス権限と連携させることで、より細かな制御も可能になります。
