「AIカメラ」と聞くと、防犯や監視のイメージが強いかもしれません。 しかし今や、AIカメラはあらゆる業界で業務改善のツールとして活用が進んでいます。
混雑状況の可視化、作業工程の分析、万引き防止、顧客行動の把握など、AIカメラの使い方はさまざまです。
本記事では、製造・医療・小売・物流・建設・観光など12業種の活用事例を通して、AIカメラで「何ができるのか」「どんなメリットがあるのか」をわかりやすく解説します。
AIカメラの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
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AIカメラとは?

ここでは、AIカメラの基本的な仕組みや特徴、一般的な監視カメラとの違いについて、わかりやすく解説していきます。
AIカメラの基本機能
AIカメラの基本機能は、大きく「検知」「認識」「分析」「通知」の4つに分けられます。
まず、検知とは人や物体の動きを捉える機能です。特定のエリアに人が入った瞬間を検出することができます。
次に、認識機能では人物の顔、車のナンバープレート、商品の種類などをAIが識別します。これにより「誰が」「何をしているか」といった情報をリアルタイムで把握することが可能です。
分析機能は、蓄積されたデータをもとに混雑状況や映っている人の年齢などの情報を解析します。顧客データの収集につながり、店舗の運営やレイアウト改善に役立てられるでしょう。
最後に、通知は異常を検知した際にメールやアラートを出す機能です。こちらが指定した担当者にすぐ連絡を飛ばせるので、迅速な対応が可能になります。
従来の監視カメラとの違い
従来の監視カメラとAIカメラの最大の違いは、「人が見るか、AIが判断するか」という点にあります。
従来のカメラは、録画された映像をあとから人が確認するものであり、リアルタイムの監視や分析は基本的に人力に依存していました。一方、AIカメラはAIがリアルタイムで映像解析し、異常や特定の動きをすぐに検知します。
また、AIカメラは映像をデータとして蓄積・分析し、行動パターンの可視化やレポート出力など、業務改善にも役立つ機能を持っています。店舗での来客数分析や、施設の混雑度の把握なども可能です。
AIカメラの種類
AIカメラには用途や設置環境に応じてさまざまな種類があります。
まずは物理的な形状による分類を見ていきましょう。AIカメラには、筒の形をしたバレット型、丸い形状をしたドーム型、四角い箱のような形状のボックス型があります。
機能面では、顔認証に特化したもの、人流解析が得意なもの、工場などで異常検知を行うものなどがあり、搭載されているAIモデルによって得意分野が異なります。
また、処理方式によっても「クラウド型」と「エッジ型」に分かれます。クラウド型はインターネットに接続でき、大規模なデータ解析に強いです。一方、エッジ型はカメラそのものにAIが搭載されており、遅延のない映像解析やオフライン対応に優れています。
導入の際は、利用目的に応じて「どの種類のAIカメラが最適か」を見極めることが、効果的な活用の第一歩です。
AIカメラ導入のメリット

ここでは、AIカメラがもたらす主な3つのメリットについて、それぞれ詳しくみていきましょう。
導入を検討している方にとって、何が得られるのかを具体的にイメージできる内容になっています。
業務効率化と人手不足の解消
AIカメラを導入する最大のメリットの1つは、業務の自動化による省力化です。
来店者数のカウントや入退室管理、作業中の異常検知など、人が目視で行っていた業務をAIがリアルタイムで担うことで、スタッフの手間が大きく削減されます。限られた人員でも現場を回せる体制が整い、人手不足の課題も解決してくれます。
さらに、取得した映像データをもとに業務のムダを見直すことで、働き方の改善や生産性向上にもつながります。
防犯・安全性の向上
次に、AIカメラの導入は、施設全体の「安心・安全」を強化するうえで大きなメリットがあります。
人物の動きや不審な挙動を自動で検知し、異常があれば即座にアラートを発信。トラブルの早期発見と迅速な対応が可能になり、目視監視に比べて対応のスピードと精度が飛躍的に向上します。
さらに、記録された映像はトラブル時の証拠として活用できるだけでなく、再発防止の検証にも役立ちます。学校・病院・商業施設など、安心・安全が求められる現場で、導入が進んでいます。
マーケティングや売上アップへの貢献
AIカメラは、マーケティングにも優れたツールです。AIカメラはお客様の年齢層や性別、どのルートを通り、どこにどれだけ滞在したのかといった行動をリアルタイムで「見える化」できます。
これにより、売り場のどこに関心が集まり、どんな動きがあるのかが把握できるようになります。その情報をもとに、商品棚の配置やPOP(店頭掲示物)の位置を見直すことで、買いやすい売り場を設計でき、購買意欲の向上にもつながるでしょう。
さらに、「いつ・どの商品が・いくらで売れたか」を記録した売上データ(POSデータ:商品を販売した時にレジで記録される販売時点情報管理のデータ)と組み合わせることで、来店行動と売上の関係を分析でき、経営戦略にも役立つのです。
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業種別|AIカメラの活用事例11選

ここでは、製造・小売・医療・建設・農業・観光など多様な業界で実際に導入されているAIカメラの活用事例を紹介します。
- 【製造業】川崎重工業株式会社と株式会社フツパー|バイク組み立て作業の時間計測
- 【交通】NEXCO西日本|高速道路構造物点検にAIを導入しひび割れを自動で検出
- 【小売業】NTT東日本|「AIガードマン」を導入
- 【小売業】株式会社三城|クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を導入
- 【飲食業】くら寿司|「新AIカメラシステム」を全国店舗に導入
- 【飲食業】株式会社B&V|AI顔認証システムが導入し無人運営を実現
- 【医療】山下診療所|AIカメラで時間帯ごとの混雑度合いを把握
- 【医療】HITO病院|AIカメラで患者の転倒を未然防止
- 【物流】富士通株式会社・サントリーロジスティクス株式会社|フォークリフト操作のAI判定システムにより安全運転へ
- 【建設業】大成建設株式会社|360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」
- 【農業】キヤノンMJグループ・アクトいちごファーム|ネットワークAIカメラでイチゴの収量の自動予測を可能に
製造業の事例1選
まずは製造業の事例を見ていきます。
川崎重工業株式会社と株式会社フツパー|バイク組み立て作業の時間計測
川崎重工業と株式会社フツパーは、AIカメラによる映像解析と動作分析システムの実証実験を行い、バイクの組み立て時の作業効率化を実現しました。
従来の製造現場では、作業の内容や進み具合を把握するには、人の勘や経験に頼る部分が大きく、工程ごとの所要時間を計測するには手作業が必要でした。特に、工具やパーツに囲まれた環境では、カメラ映像だけでは作業の様子を正確に読み取るのが難しいという課題がありました。
そこで両社は、「人とバイク」「人と工具」の関係性に注目した独自のAIモデルを開発し工場のカメラに搭載。どの作業が何秒行われたかをAIが自動で識別し、リアルタイムで可視化できる仕組みを整えました。作業の遅れを早期に把握し、人員配置をデータに基づいて調整できるようになったことで、現場の改善スピードも向上しています。
現在は一部の現場で運用を開始しており、今後は機能を強化したうえで、他の拠点への展開も検討されています。
出典:【AI×製造業の最前線】川崎重工業株式会社と株式会社フツパーバイク組み立てラインでAIを活用した作業分析の実験を開始
交通の事例1選
続いて、交通業界での事例も見ていきましょう。
NEXCO西日本|高速道路構造物点検にAIを導入しひび割れを自動で検出
NEXCO西日本は、高速道路インフラの維持管理を効率化するため、AIカメラによる構造物点検の自動化を実現しました。
同社は、橋梁などの構造物において、ひび割れや鉄筋露出といった劣化の兆候をいかに正確に見つけるかを課題に感じていました。
そこで、グループ会社のNEXCO西日本イノベーションズと共同で、約4万枚の構造物画像を活用したAIによる異常検知技術と映像解析を開発。自社保有の高解像度カメラで撮影された点検画像を、AIがリアルタイムで分析するシステムを導入しました。
その結果、構造物の劣化を検出率・的中率95%で判定可能になりました。従来は熟練技術者の目視に頼っていた点検作業を、現場近くで処理できるエッジ処理により効率化し、人手不足や作業負担の軽減にもつながっています。
出典:高速道路構造物点検にAIを導入,ひび割れを自動で検出します! | NEXCO 西日本 企業情報
小売業の事例2選
小売業での事例も紹介します。
NTT東日本|AIカメラで万引き抑止と接客品質を両立する「AIガードマン」
NTT東日本は、小売店における万引き防止と接客品質の両立を目指し、AI警備支援システム「AIガードマン」を開発・提供しています。
この仕組みでは、AIカメラが店内を常時監視し、映像解析と異常検知を通じて不審な行動をリアルタイムで把握。検知された情報は即座に店員のスマートフォンに通知され、スタッフがその場に向かって声がけを行うという流れです。
不審行動への素早い対応が可能になることで、万引きの未然防止に直結。実際に、店舗によっては商品ロスが半減した事例も報告されています。
さらに、この「声がけ」は防犯にとどまらず、商品の場所が分からない顧客への案内や購入の後押しとしても活用されており、サービス品質の向上と売上アップにも貢献しています。
なお、「AIガードマン」はエッジ処理により高い処理速度を保ちながら、映像データを店外に出さずに分析できるため、プライバシーにも配慮されています。
出典:【小売業特別レポート】NTT東日本「AIガードマン」買物客の行動をAIで検知し声がけにつなげる~店舗の「万引き防止」や「接客向上」に効果
株式会社三城|クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を導入
メガネチェーン「パリミキ」を展開する株式会社三城は、AIカメラを活用した来店分析によって、接客の質と業務効率の向上を実現しました。
3箇所の出入口に設置されたカメラが来店者数を自動カウントし、売上データと組み合わせて購入率を可視化する仕組みを構築。映像解析によって取得されたデータはエッジ処理を活用してリアルタイムに分析されるため、「あと何人が購入すれば目標達成か」といった具体的な指標をもとに接客改善が進み、スタッフの行動にも良い変化が生まれています。
また、来店客数の手動計測の負担がなくなり、遠隔でも店舗状況を把握できるようになったことで、巡回業務の負担も軽減されました。
出典:カメラで来店者数をカウントし、「入店数×購入数」から購入率を見える化。 パリミキによる購入率の改善とは
飲食業の事例2選
次に、飲食業の事例も詳しく解説します。
くら寿司|「新AIカメラシステム」を全国店舗に導入
くら寿司は、「新AIカメラシステム」を全国店舗に導入し、料理の品質向上や回転レーン上での迷惑行為対策に取り組んでいます。
新AIカメラシステムは、皿に設置された寿司用のカバーの不審な開閉をAIが自動で検知します。リアルタイムで映像解析を行い、異常検知と同時に本部へアラートを発信し、担当者が即座に店舗責任者へ連絡する仕組みです。
システム導入後は、該当の寿司皿を迅速に撤去することが可能になり、より安全で衛生的な食品を提供することにつながりました。
また同時に、迷惑行為による顧客の不安を軽減し、信頼維持にも貢献しています。
株式会社B&V|AI顔認証システムが導入し無人運営を実現
株式会社B&Vは、無人店舗形式の「タイム珈琲店」にAI顔認証システムを導入し、人件費削減とセキュリティの両立を実現しています。
事業の立ち上げ当初、同社は、深夜帯における未成年者の店舗への入店をどう防止するか悩んでいました。無人店舗では誰が入ってきたかを正確に把握するのが難しいためです。
そこで、クリューシステムズ社の年齢認証システムを搭載したAIカメラを導入。このカメラは、入店時に顔を撮影し、AIがリアルタイムで年齢を判定します。未成年と判定された場合には、担当者にアラートが送信される仕組みです。
従来のようにスタッフが身分証を確認する手間が不要となり、店舗の無人化が実現しました。また、監視カメラ機能によって施設全体の安全性向上にもつながっています。
出典:POLICENET「AI年齢認証システムが支える新しいビジネスモデル|株式会社B&V」
医療の事例2選
医療業界の事例も解説していきます。
山下診療所|AIカメラで時間帯ごとの混雑度合いを把握
医療法人社団法山会・山下診療所(大塚)では、AIカメラ「ミツシル」を導入し、医療現場における混雑対策と患者満足度向上に成功しました。
同病院では、待合室に設置されたAIカメラが混雑状況をリアルタイムで可視化し、スマートフォンで簡単に確認できる仕組みを構築。患者は来院前に混雑度を把握できるようになり、密回避への意識向上と安心感の提供につながっています。
また、AIが取得した人数データは時系列で蓄積され、管理者はCSV形式でダウンロードが可能です。これにより、曜日・時間帯別の混雑傾向を定量的に把握でき、受付体制や予約枠の最適化にも活用されています。映像は録画されず、プライバシーにも配慮した設計となっています。
HITO病院|AIカメラで患者の転倒を未然防止
HITO病院(愛媛県四国中央市)では、AIカメラを活用した映像解析とバイタルデータの組み合わせにより、転倒リスクの高い患者をリアルタイムで検出する取り組みを導入しています。
映像と生体情報をAIが解析することで、異常行動や転倒の兆候を早期に察知し、看護師へ即時に通知される仕組みです。通知を受けた看護師は迅速な対応が可能となり、事故の未然防止に大きく貢献しています。
また、このAIシステムはエッジ処理にも対応しており、院内での高速な判断とプライバシー保護を両立します。人手不足が課題となる医療現場において、スタッフの見守り負担を軽減しながら、患者の安全性向上を実現している事例です。
物流の事例1選
物流の事例も紹介していきます。
富士通株式会社・サントリーロジスティクス株式会社|フォークリフト操作のAI判定システムにより安全運転へ
サントリーロジスティクスは、富士通と共同でAIカメラによるリアルタイム映像解析を開発し、フォークリフトに導入しています。その結果、危険運転の異常検知と評価業務の効率化を実現しました。
同社はフォークリフトにAIカメラを搭載し、ドラレコ映像をリアルタイムで解析。「ながら操作」「静止確認不足」などの危険運転を自動で検出します。おかげで、映像を目視確認して安全性を評価する業務時間が、約50%短縮されました。
さらに、AIによる判定で評価のばらつきを抑えた公平なフィードバックも可能になり、従業員の不公平感の軽減にもつながっています。
出典:富士通「サントリーロジスティクス様において、フォークリフト操作のAI判定システムにより安全運転評価業務を効率化」
建設業の事例1選
大成建設株式会社|360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」
大成建設株式会社は、360度カメラとAIを組み合わせたリアルタイム映像解析による「工事進捗確認システム」を本格導入し、建設現場の進捗管理を効率化しました。
現場の柱や壁に設置されたQRコードと、カメラで取得した映像を組み合わせることで、作業位置を自動で把握。AIが、内装・設備など16種類の工種や24種の資機材を自動認識し、図面に反映する仕組みです。
すでに30件以上の現場で試行導入されており、1日あたり1人の作業時間を1時間以上削減できる効果が確認されています。遠隔地でも状況を共有できることから、書類作成の手間や関係者間の意思決定もスムーズになったと評価されています。
出典:360度カメラ画像とAIを用いた「工事進捗確認システム」の本格運用開始 | 大成建設株式会社
農業の事例1選
最後に農業でのAIカメラの活用事例を見ていきましょう。
キヤノンMJグループ・アクトいちごファーム|ネットワークAIカメラでイチゴの収量の自動予測を可能に
キヤノンMJグループは、九州大学およびアクトいちごファームと連携し、ネットワークカメラとAIによる映像解析を活用したスマート農業の実証を進めています。
ビニールハウスに設置されたAIカメラが花や実、葉の状態をリアルタイムで撮影・解析し、生育の進捗や遅れを数値として可視化します。温湿度などの環境データと組み合わせて解析することで、生育の異常を早期に検知できる仕組みが構築されました。
これにより、施肥や収穫のタイミング判断が的確になり、収量や収穫時期の予測精度も向上しました。農家は先を見越した販売計画を立てやすくなり、農業経営の安定化とブランド力の向上が期待されています。
従来の経験頼りだった技術を誰でも活用できる形に変換し、人手不足や技術継承の課題にも対応しています。
出典:ネットワークカメラ×AIが、イチゴの収量の自動予測を可能に|「くらし・しごと・社会」を支える
AIカメラの価格帯と導入費用の目安

続いて、AIカメラの費用目安を見ていきましょう。まず、AIカメラ本体の価格帯と搭載機能を比較して解説します。あくまで目安の費用になりますので、参考程度にとどめておいてください。
価格帯 | 主な機能内容 | 想定される活用シーン |
1万~2万円台 | 検温、顔認識・識別などの基本機能を搭載 | 店舗入り口の検温チェック、簡易認証など |
2万~4万円台 | 高画質映像記録、AI機能の拡張対応 | 小売や倉庫での人流解析・業務改善など |
5万~60万円台以上 | 高精度な顔認証や人物追跡、異常検知など高度なAI解析機能を搭載 | 大規模施設のセキュリティ監視・製造現場の安全管理など |
カメラ本体は基本的には1台数万円程度に収まることが多いです。ただし、高機能になるほど価格が上昇していきます。
次に、AIカメラの導入にかかる費用の目安を紹介します。
項目 | 費用の目安 | 補足情報 |
設置・工事費 | 数万円〜 | 配線・高所・特殊環境によって追加費用あり。 |
システム設定費 | 数万円〜 | 初期設定、ネットワーク構築、AI解析設定などを含む。 |
保守・サポート費 | プランにより異なる | ソフトウェア更新や障害対応、長期保守契約が必要な場合もある。 |
追加ストレージ/ネットワーク | 必要に応じて変動 | 高精細映像の保存・解析には、容量や通信帯域の増強が必要なケースもある。 |
AIカメラの導入費用には、設置費やシステム設定費、保守・サポート費などがかかります。導入する環境や設置台数にもよりますが、最低で十数万円の費用がかかるでしょう。高所に設置するなど工事に手間がかかる場合や、設置台数が増えるケースでは費用が増える傾向にあります。
AIカメラを導入する際の注意点

最後に、AIカメラを導入する際の注意点を紹介します。ポイントを抑えておくことで、スムーズな導入が可能になります。ぜひ参考にしてみてください。
1. AIカメラによるプライバシーへ配慮する
AIカメラは常時映像を取得し、そのデータを解析することで異常行動を検知します。便利な一方で、顧客のプライバシーに関する懸念も避けて通れません。特に病院や介護施設では、要配慮個人情報を取り扱う場面が多く、個人情報保護法や医療機関向けのガイドラインに沿った運用が求められます。また、一般企業でも、顧客の顔や年齢などの個人情報を集めることもあるでしょう。
導入前には「どの範囲まで撮影するのか」「映像データはどこに、どのように保存されるのか」「誰がその情報にアクセスできるのか」といった点を明確にし、顧客への説明・同意のプロセスを整備しておくことが必要です。
また、プライバシー保護の観点から、モザイク処理や音声記録の制限などの技術的対策もあわせて検討するべきでしょう。
2. 従業員がAIカメラを活用できる体制を整える
AIカメラの導入は、単なる「機器の設置」ではなく、業務プロセスそのものに関わる変化をもたらします。通知が来たときにどう行動するか、誤検知があった際にどう対処するかなど、現場での対応マニュアルが必要不可欠です。
さらに、AIカメラの挙動や機能を従業員が理解していないと、どう業務に活かせばいいかが曖昧になり、逆に業務の混乱を招くこともあります。導入初期には職員への研修やOJTをしっかりと行い、AIカメラを「味方」として活用できるような意識づけと体制作りが重要でしょう。
3. AIカメラの誤検知・過信によるリスクと向き合う覚悟も必要
AIカメラは高精度な映像解析が可能とはいえ、100%正確というわけではありません。例えば、寝返りや軽い動作を「転倒の予兆」と誤認識するケースや、逆に実際の転倒を検知しきれないケースもゼロではありません。
そのため、AIによる判断やデータはあくまで補助的な判断材料として活用する姿勢が求められます。普段はAIカメラに監視しを任せつつ定期的に従業員が巡回する、集めた顧客データは映像と照らし合わせてチェックするなど、人が確認する体制を整えておくことが重要です。そうすることで、AIの弱点を補いながら最大限の効果を発揮させることができるでしょう。
AIカメラのよくある質問(FAQ)

最後によくある質問を紹介していきます。
Q1. AIカメラはどこに設置すれば効果的ですか?
人の出入りが多い出入口や、作業状況を把握したいエリア、セキュリティ強化が必要な場所など、目的に応じて設置場所を選ぶことが重要です。例えば、駐車場や倉庫、出入口などは特に効果的な監視エリアとされています。
Q2. ネット環境がなくても使えますか?
エッジ処理型AIカメラであれば、クラウドを介さずに現場で映像解析を行うため、ネット環境が不安定な場所やインターネットがない場所でも運用が可能です。ただし、スマートフォンなどで遠隔から映像を確認したい場合は、インターネット環境や専用SIMが必要となります。
Q3. プライバシーや法的リスクはありませんか?
AIカメラの運用には、個人情報の取り扱いや撮影範囲への配慮が求められます。特に顔認証や行動解析機能を持つ場合、日本の個人情報保護法などの関連法規を遵守し、データの利用目的を明確にし、収集したデータは適切に管理・保護する必要があります。
また、カメラ設置場所には告知看板を設置し、監視の目的を明示することが推奨されます。
まとめ:AIカメラを活用して、業務課題を解決しよう
AIカメラは、業務効率化や安全性の向上、マーケティング支援など、さまざまな業務課題の解決に貢献する有力なツールです。従来の「録画するだけ」の監視カメラとは異なり、リアルタイムでの検知・分析、他システムとの連携を通じて、現場の判断や対応を高度化できます。
ただし、AIカメラの導入効果を最大化するには、目的の明確化や設置環境への最適化、運用体制の整備、プライバシー配慮までを含めた総合的な準備が不可欠です。
今後さらに進化が期待されるAIカメラを、自社の成長戦略にどう取り入れるかが、競争力を左右するポイントとなるでしょう。
SHIFT AIではAIの導入を支援しています。AIカメラを含むAIの使い方や機能をわかりやすくレクチャーするeラーニングコンテンツを提供しています。また、ワークショップも実施しており、お困りごとについて質疑応答することも可能です。無料で相談を実施していますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。