「最近の新人はデジタルに強いから、AIも自然に使いこなせるはず」――そんな期待、抱いていませんか?
確かに、今の若手社員は学生時代からスマホやネットに慣れ親しみ、ChatGPTのような生成AIにも日常的に触れている世代です。
しかし、“慣れている”ことと“業務に活かせる”ことはまったくの別物。現場での活用となると、「どう使えばいいか分からない」「出力結果をそのままコピペしてしまう」といった課題も多く見られます。
2022年の調査では、すでに約73%の企業がAIやデータリテラシー教育の必要性を感じているという結果が出ていました。
出典:株式会社SIGNATE/PR TIMES SIGNATE、「内定者・新入社員へのデータリテラシー教育」の実態を調査し、新人向け教育プログラムをリリース。
この発表から約3年が経過した今、もはや「必要性」ではなく「実装フェーズ」に移行しつつあるのが実態です。
こうした状況の中で、新人育成における「AIリテラシー教育」は単なる“トレンド”ではなく、未来の戦力を育てるうえでの必須条件となりつつあります。
そこで本記事では、
- 新人教育にAIリテラシーを取り入れるべき理由
- 新人が身につけるべき具体的なリテラシーの中身
- 実践的な研修設計のポイント
- 成果につながる他社事例や研修手法の選び方
を、実務視点でわかりやすく解説していきます。
Z世代でも“使えない”?新人にAIリテラシーが必要な理由
「AIの活用は一部の専門職だけのもの」——そう考えていたのは、もはや過去の話です。
今や営業、企画、バックオフィスなど、あらゆる部門でAI活用が前提となる時代が訪れています。
●業務の“土台”にAIが入り込む時代背景
生成AIの台頭により、定型業務の多くがAIで代替可能になりつつあります。
たとえば、
- 営業日報や議事録の作成をChatGPTが自動生成
- 新人が行っていたリサーチや情報整理が、AIにより時短可能
- PowerPoint資料のたたき台をCopilotが即時作成
こうした動きは、新人の業務から「反復的な作業」をどんどん奪っていくことでもあります。
つまり、今後の新人に求められるのは、「効率よくこなす力」ではなく「AIを使って成果を出す力」です。
●“デジタルネイティブ”でもビジネスにAIを使えるとは限らない
よく「Z世代はAIにも強い」と思われがちですが、実際には次のようなギャップも見られます。
- ChatGPTの存在は知っているが、業務での使いどころがわからない
- 出力結果をそのままコピーしてしまい、誤情報のリスクに気づけない
- AIに聞けば何でも分かると思い、思考停止に陥る
つまり、「触ったことがある」=「使いこなせる」ではないのです。もっといえば、若い世代だからといって、PCスキルが乏しい、ということも耳にします。読者の皆さんの職場ではいかがですか?
●新人の段階から“AIと共に働く力”を育てる意義
新人教育の段階でAIリテラシーを育成することで、次のようなメリットが期待できます。
- 業務へのキャッチアップが圧倒的に早くなる
- 上司・先輩の「教える工数」が減る
- “自走力のある人材”として早期に戦力化できる
このように、AIリテラシーは「将来のためのスキル」ではなく、“今この瞬間の現場で成果を出すための基盤”として不可欠なものです。
AIリテラシーの必要性や企業全体として求められる理由については、次の記事で詳しく解説しています。
▶︎ AIリテラシーとは|企業で“使いこなせる人材”を育てる5ステップ
新人が身につけるべきAIリテラシー3選|技術より大切な“使い方”とは?
「AIリテラシー」と聞くと、難解な理論や高度なプログラミングスキルを思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、新人にまず求められるのは、“技術者としての理解”ではなく、“ビジネスパーソンとしての理解”です。
ここでは、新人が身につけるべきAIリテラシーを、新人が業務で使いこなすために、AIリテラシーを3つの視点で紐解きます。
① AIの仕組みと限界を理解する力|“過信しない”ことが出発点
生成AIは万能ではありません。出力結果には誤情報が含まれる可能性もあり、必ずしも“正解”を返してくれるわけではないのです。
そのためには、
- AIがどうやって答えを出しているのか(言語予測モデルの仕組み)
- ファクトチェックがなぜ必要なのか
- どんな業務に向いていて、どこで使うべきではないのか
といった基本的な構造と限界を知る力が必要になります。
これは、AIに依存せず“主体的に活用する姿勢”の基盤になります。
② 適切に問いを立て、プロンプトを操る力|AIとの対話力=ビジネス力
生成AIは、「聞き方次第」でアウトプットの質が大きく変わります。
だからこそ、新人には“指示力”や“構造化思考”をベースにしたプロンプト設計スキルが求められます。
- 情報をどう整理し、何を聞くか?
- 条件や前提をどう明確に伝えるか?
- 出てきた結果にどうフィードバックするか?
これらは、AIだけでなく、人間とのコミュニケーションや資料作成、問題解決にも通じる力。
プロンプト力を鍛えることは、そのままビジネス基礎力を育てることにつながります。
③ リスク・倫理・情報管理の知識|“便利さの裏側”を知る責任感
便利なツールほど、リスクも大きくなります。
とくに新人は、以下のような誤使用リスクを防ぐための知識を持つ必要があります。
- 業務情報や顧客データをAIに入力する危険性
- 著作権や引用のルールを知らずに資料を生成するリスク
- AIの出力内容を“自分の言葉”として扱ってしまうことの倫理的問題
単に「使い方」を教えるのではなく、“使っていい場面・いけない場面”を判断できる力を持つことが、社会人としての信頼にも直結します。
🔍まとめ:AIリテラシーは「ツールの操作」ではなく「考える力」そのもの
AIリテラシーを「技術的スキル」のように捉えると、導入のハードルが高くなってしまいます。
しかし本質は、「正しく理解し、適切に使い、責任を持つ」という仕事の基本動作そのもの。
新人の段階からこうした意識を育てておくことが、将来の“生成AIネイティブ人材”への第一歩になるのです。
新人研修に生成AIを導入した企業事例3選|ChatGPTやCopilot活用の実態とは?
AIリテラシーの重要性は理解したものの、
「具体的にどうやって研修に組み込めばいいのか?」
「他社はもう導入しているのか?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際に新人研修やOJTの中で生成AIを取り入れている企業の事例を3つ紹介します。
共通するのは、「操作説明」ではなく、“実務に直結する使い方”を経験させている点です。
●事例①|営業日報を生成AIで下書き → フィードバック文化の定着(製造業・500名規模)
この企業では、新人営業に対して「ChatGPTを使って日報のたたき台を作成」させる研修を導入。
その後、上司がフィードバックを加えながら文章の改善点を指摘するという流れを繰り返すことで、
- 報告スキル(論理性・要点整理)
- プロンプト力(問いの精度)
- 文章生成への客観的評価力
が自然と身につくように設計されています。
結果的に、日報が“惰性で書かれるもの”から“成長の場”に変化し、上司と部下の対話量も増加したとのことです。
●事例②|資料作成支援にCopilot活用 → “考える”前提のアウトライン思考が育つ(IT企業・1,000名規模)
この企業では、Office Copilotを新人に開放し、社内向けプレゼン資料作成の過程で「まずAIにたたき台を作らせる」体験をさせています。
ただし、出力された資料をそのまま使うことは禁止。
新人はAIが作った内容に対して、
- 「なぜこの構成になったのか」
- 「どこを直したいか、なぜそう思うのか」
を必ずチーム内で発表するフローが組まれており、“AIを使っても思考停止しない”習慣が育っているのが特徴です。
●事例③|評価補助にAIを活用 → 主体性を引き出すきっかけに(人材系スタートアップ)
ある企業では、上司による評価に加え、AIによる業務ログやレポート分析結果を“補助情報”として提供しています。
新人は、自分のアウトプットがAIにも評価されると知ることで、
- 発信力の強化(Slack投稿やレポート提出への意識向上)
- ロジックの明確化(AIが読み取れる構造で書く意識)
- “誰かに評価される”から“どう見られるかを考える”へのマインド転換
が起こり、自律的な成長が促進されたとの声も。
🔍共通点まとめ:「AIを“触らせる”のではなく“考えさせる”」設計が鍵
これらの事例に共通するのは、単なるツールの説明ではなく、「どう使うかを考える機会を意図的に設けている」こと。
特に新人期にこうした経験を積むことで、“AIを使いこなすマインド”と“現場での活用感覚”が自然と育つのです。
AIリテラシーを新人研修に組み込む方法|設計のコツ4つを実務視点で解説
実際にAIリテラシーを新人研修に組み込もうとしたとき、次のような悩みに直面する企業は少なくありません。
- 「どの程度まで教えるべきか分からない」
- 「AIに詳しい人が社内にいない」
- 「研修しても定着しないのでは?」
こうした課題を解決するには、“リテラシーを育てる設計”と“活用を定着させる工夫”の両立が鍵となります。
以下に、そのポイントを4つに整理して紹介します。
●ポイント①:座学だけではリテラシーは育たない
AIツールの使い方や注意点を座学でインプットするだけでは、「知っている」状態で止まり、実際の業務では活かせません。
新人研修では、実際にAIを“触って使って考える”プロセスを設計に組み込むことが重要です。
たとえば、
- ChatGPTで日報の下書きを作成→自分でリライト
- Copilotでプレゼン資料の草案を作成→構成を自ら調整
- AIが出力した情報の事実確認と要約整理を体験
など、実務を想定した演習が、リテラシー定着に直結します。
●ポイント②:「実務体験型」×「対話型」で学びを深める
AIを活用する力は、“個人の試行錯誤”と“他者からのフィードバック”の掛け算で育ちます。
そのため、研修設計には以下を盛り込むのがおすすめです。
- グループワーク形式でのプロンプト改善ディスカッション
- 他人のアウトプットにフィードバックをする演習
- 上司・メンターによる“プロンプトの添削”タイム
AIとの対話だけでなく、人との対話も加えることで“思考力のある活用”が育ちます。
●ポイント③:業務フローと接続させることで“やりっぱなし”を防ぐ
AIリテラシー研修を一度きりで終わらせると、学んだ知識はすぐに忘れられてしまいます。
そこで、以下のように研修と実務を接続させる工夫が必要です。
- 研修で使用したAIツールを、実際の業務でそのまま使えるように設計
- 新人に「AI活用報告シート」や「月次の振り返り」を定着させる
- 現場リーダーに“AI活用の壁打ち役”を担ってもらう
「学んで終わり」ではなく「使いながら育てる」設計が、成果に直結します。
●ポイント④:成長を可視化する評価軸を設ける
AIリテラシーは“目に見えにくいスキル”です。
だからこそ、研修に明確な評価指標やチェックリストを取り入れることで、新人・育成側双方にとって効果が感じられるようになります。
例:
- 「プロンプト設計の構造」や「出力に対する判断の質」を評価
- AI活用による業務改善の提案数や成果を数値で記録
- 自己評価+上司フィードバックのダブルチェック方式
こうした設計により、“できるようになってきた実感”が本人の自信と定着につながります。
\ 新人の「AIリテラシー実践力」を育てるには、どんな研修が必要? /
“研修したのに使えない”を防ぐために|AIリテラシー教育でよくある失敗と対策
どれだけよく設計された研修でも、思わぬところでつまずく落とし穴があります。
とくに、生成AIやAIリテラシーはまだ企業によって捉え方がまちまちである分、誤解や見落としが起こりやすい領域でもあります。
ここでは、AIリテラシー研修の設計・導入時に多くの企業が陥りがちな注意点を紹介します。
●注意点①:Z世代=AIに強い、という思い込み
「最近の新人はデジタルネイティブだからAIもすぐ使えるでしょ」
そうした期待は、実際の現場では裏切られるケースが多くあります。
- SNSやスマホには強いが、業務利用とのギャップが大きい
- ChatGPTなどを「遊び感覚で使ったことはある」レベルにとどまっている
- 指示文(プロンプト)を構造的に考える力が育っていない
重要なのは、“使える前提”ではなく“学びながら使えるように育てる”前提で設計することです。
●注意点②:「操作方法の説明」で終わってしまう
研修の中でAIツールの画面を見せて終わり、というケースも少なくありません。
しかし、それだけでは「触ったことがある人」を量産するだけになってしまいます。
必要なのは、操作の先にある
- 「どう使えば、仕事がより良くなるか」まで考えさせる構成
- AIを活用する判断力や、リスク対応の視点も含めたトレーニング
です。
●注意点③:情報管理や倫理の教育が抜け落ちている
生成AIを使う際に避けて通れないのが、情報セキュリティや倫理の観点です。
- 社外秘や顧客情報をうっかり入力してしまうリスク
- 著作権侵害につながるコンテンツ生成
- “AIが言っていたから”という無責任な判断の発生
こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、「便利さの裏にあるリスク」までしっかり伝える必要があります。
とくに新人は責任感の醸成が重要。“情報を扱うプロとしての自覚”を育てる一環としてAIリテラシーを捉えることが有効です。
🔍まとめ:技術スキルではなく「姿勢・思考」を育てる研修へ
AIリテラシーを教えるというと、「どんなツールを使わせるか」「何時間やらせるか」といった形式面の話に終始しがちです。
しかし本質は、“どう使えば、価値を生み出せるのか?”を考える習慣を育てること。
この視点を持つことで、新人研修そのものが「未来をつくる投資」になるのです。
AIリテラシー研修は自社設計すべき?外部委託との比較と判断ポイント
AIリテラシー研修の導入を検討する際、必ずと言っていいほど議論になるのが、「自社で設計するか?外部の研修を活用するか?」という選択肢です。
どちらにも一長一短がありますが、重要なのは自社の目的や社内リソースに合った方法を選ぶことです。
以下では、よくある検討項目を比較表で整理しました。
🔽 研修手法の比較表
項目 | 自社設計 | 外部研修(例:SHIFT AI for Biz) |
初期コスト | 社内リソース次第で低く抑えられる | 外注費用が発生する |
設計自由度 | 自社の業務内容や文化に最適化可能 | パッケージ型が多いが、カスタマイズ可能 ※SHIFT AI for Bizはカスタム可能 |
内容の網羅性 | 担当者の知識に依存 | AIリテラシー+最新事例やプロンプト演習も含まれる |
定着度 | 指導者の力量と継続性に左右される | 実務直結・演習型で“現場で使える”状態まで導ける |
継続性・属人性 | 担当者の異動・退職で途切れるリスクあり | 継続提供が可能な仕組み設計あり |
評価指標の設計 | 難易度が高く、曖昧になりがち | 研修効果を測る評価フレームが用意されている |
💬 現場の声:「社内に詳しい人がいない」「教える側が不安」
実際に、自社設計を試みた企業からは以下のような声もよく聞かれます。
- 「AIには詳しいが“教え方”が分からない」
- 「部署をまたぐ横断的な設計が難しい」
- 「“本当に定着しているか?”の判断ができない」
こうした課題は、外部の専門プログラムを活用することで、最初から“育成に最適化された仕組み”を導入できるというメリットがあります。
\ 社内リソースが限られていても、AI人材は育てられる。 /
まとめ|“生成AIネイティブ”を育てる新人研修の始め方と選び方
AIが特別なものではなく、「前提インフラ」になりつつある今、新入社員の教育にAIリテラシーを組み込むことは、“選択肢”ではなく“必要条件”となりつつあります。
本記事では、新人にAIリテラシーが求められる背景から、必要なスキル要素、研修設計のポイント、他社事例、導入方法の比較までを紹介してきました。
改めて要点を振り返ると、
- 生成AIは使い方次第で新人の戦力化を加速できる
- 操作よりも“考える力”をどう育てるかが重要
- 研修は座学ではなく、“実務直結型+評価設計”がカギ
- 自社だけでの設計に不安があれば、外部の力を借りるのも有効
ということが分かります。
新人は、最も柔軟に吸収し、最も早く変化できる存在です。だからこそ、この段階でAIリテラシーの土台を育てておくことが、未来の競争力に直結します。
🧲 AIリテラシー研修を、戦略的に始めるなら
SHIFT AIでは、法人向けの生成AI研修プログラム「SHIFT AI for Biz」を提供しています。

新人向けにも特化した内容設計が可能で、たとえば以下のような構成で進行します。
- ✅ ChatGPTやCopilotを使ったプロンプト演習
- ✅ 業務フローをもとにした実務シミュレーション
- ✅ リスク教育・リテラシーテストの実施
- ✅ 成果が“見える”評価設計と定着支援
\ 導入検討時のヒントが詰まった1冊、あります! /
FAQ(よくある質問)
- QZ世代の新入社員は本当にAIに強いの?
- A
一般的にデジタルには慣れていますが、業務活用は別物です。遊び感覚での使用経験はあっても、プロンプト設計やリスク判断にはギャップが見られるケースもあります。
- QどんなAIリテラシー研修が効果的?
- A
座学+演習+フィードバックの3層構造が効果的です。特に、実務とつなげたプロンプト設計演習が定着に寄与します。