紙の資料やスキャンしたPDFを、検索や編集ができないまま保管している企業は少なくありません。そこで気になるのが、「CopilotでOCRは使えるのか?」「画像やPDFを、そのままテキスト化できるのか?」という点ではないでしょうか。
結論から言うと、CopilotはOCR専用ツールではありません。
一方で、OCRによって文字化された情報を、業務で使える形に整理・要約・再利用する役割では、大きな力を発揮します。
重要なのは、「CopilotでOCRができるか」ではなく、「OCRされた情報を、Copilotでどう業務に活かせるか」という視点です。
本記事では、CopilotとOCRの関係を正しく整理したうえで、Copilotで画像・PDFを扱う仕組み
- 読み取り精度の現実と注意点
- 業務で使える範囲と、導入前の判断軸
を解説します。
まずは、CopilotにOCR機能はあるのか。よくある誤解から整理していきましょう。
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CopilotにOCR機能はあるのか?|まず誤解を正しく整理する
Copilotに「OCR専用機能」はありません。
この点を最初に押さえておかないと、Copilotの評価を誤ります。
「Copilotで画像やPDFを読み取れた」「文字起こしできた」という情報を目にすると、Copilot自体がOCRツールのように見えるかもしれません。しかし実際には、Copilotは文字を“読み取るエンジン”ではなく、読み取られた情報を理解・整理・加工する役割を担っています。
ここで整理すべきなのは、次の役割分担です。
- OCR:画像やPDFから文字情報を抽出する工程
- Copilot:抽出された文字情報をもとに、要約・分類・再構成・指示実行を行う工程
つまり、CopilotはOCR処理の「入口」ではなく、OCR後の活用フェーズを担う存在です。
ではなぜ「CopilotでOCRができる」と感じられるのでしょうか。
それは、Microsoftの環境ではすでに、WindowsやEdge、OneDrive、SharePointといった基盤側にOCR機能が組み込まれており、Copilotがそれらの結果を自然に扱えてしまうからです。
たとえば、画像付きPDFをCopilotに渡したとき、ユーザーの操作感としては「Copilotが文字を読んだ」ように見えます。しかし裏側では、
- OSやアプリ側でOCR処理が行われ
- テキスト化された情報が
- Copilotに入力として渡されている
という流れが成立しています。
この構造を理解せずに導入を進めると、「思ったより精度が出ない」「CopilotにOCRを任せきれない」といったギャップが生まれやすくなります。
重要なのは、CopilotにOCRを“期待しすぎない”ことです。一方で、OCRされた情報を業務で再利用する段階では、Copilotは非常に強力な選択肢になります。
Copilotで画像・PDFをテキスト化する仕組み|内部で何が起きているのか
Copilotが画像やPDFを扱える理由を理解するには、「Copilotが直接OCRしている」という発想を一度手放す必要があります。
Microsoft環境では、OCR処理はすでに複数のレイヤーに分散して組み込まれています。Copilotは、それらの結果を自然に受け取り、理解・加工する役割を担っています。
まず全体像を整理すると、次のような流れになります。
- OCR処理を担う層
WindowsのOCR機能、EdgeやMicrosoft 365上のPDF解析機能などが、
画像・PDFから文字情報を抽出します。 - Copilotの役割
抽出されたテキストをもとに、
要約・分類・指示理解・再構成といった「業務で使うための処理」を行います。
この分業構造があるため、ユーザーから見ると「Copilotが画像を読み取った」「PDFを文字起こしした」ように見えるのです。
たとえば、画像付きPDFをCopilotに渡した場合でも、Copilotは画像そのものをOCRしているわけではありません。
すでにテキスト化された情報、あるいは内部的に取得された文字情報を前提に応答しています。
この点を理解していないと、「手書き文字も完璧に読めるはず」「表やレイアウトもそのまま構造化できるはず」といった過剰な期待につながります。
実際には、OCRの精度や得意・不得意は、Copilotではなく前段のOCR処理の品質に大きく左右されます。
Copilotは、その結果をどう解釈し、どう使うかに強みを持つAIです。
ここが、従来のOCRソフトとCopilotの決定的な違いでもあります。
OCRソフトは「正確に文字を抜き出すこと」がゴールですが、Copilotは「抜き出された文字を、業務で使える形に変えること」をゴールにしています。
だからこそ、Copilot×OCRは“文字起こし作業の代替”ではなく、“業務処理の補助”として考える必要があるのです。
CopilotでOCRを使う代表的な方法(利用環境別)
CopilotとOCRの組み合わせ方は、利用している環境によって大きく異なります。
検索上位の記事では個別の事例紹介に留まっているケースが多いものの、業務で使うためには「どの環境で、何ができて、何ができないか」を整理して把握することが重要です。
ここでは、実際によく使われている代表的なパターンを環境別に整理します。
Edge CopilotでPDF・画像を読み取るケース
Microsoft EdgeのCopilotは、PDFファイルやWebページ上の画像を扱う場面でよく使われています。
PDFを開いた状態でCopilotを起動すると、ページ内のテキスト情報を前提に、要約や質問への回答が可能です。
テキスト情報が埋め込まれているPDFであれば、比較的スムーズに処理されます。
一方、スキャン画像のみのPDFの場合は、内部でOCR処理が行われた結果をもとにCopilotが応答します。
この場合、文字のにじみや解像度によって精度にばらつきが出る点には注意が必要です。
Edge Copilotは操作が簡単な反面、精度や処理内容を細かく制御する用途には向きません。
「ざっくり内容を把握する」「要点を確認する」といった使い方に適しています。
WindowsのOCR機能+Copilotを組み合わせるケース
Windowsには、画像から文字を抽出するOCR機能が標準で備わっています。
この機能で抽出したテキストをCopilotに渡すことで、整理・要約・再構成といった処理を行うケースも増えています。
この方法の特徴は、OCR処理とAI処理を明確に分けられる点です。
- OCR:Windows機能で実行
- 加工・活用:Copilotで実行
という役割分担になるため、「どこで誤認識が起きたのか」を切り分けやすくなります。
業務で使う場合は、このように工程を分けたほうが、後工程の確認や修正がしやすくなります。
スマホ画像をCopilotで扱うケース
スマートフォンで撮影した画像をCopilotに渡し、文字起こしや要約を行う使い方も紹介されています。
この場合、
- スマホ側で画像を撮影
- 画像をCopilot対応環境に共有
- Copilotで内容整理
という流れになります。
手軽ではあるものの、撮影条件(明るさ・角度・解像度)によって精度が大きく左右される点は避けられません。
業務用途として使う場合は、補助的な位置づけに留めるのが現実的です。
このように、Copilot×OCRの使い方は一通りではありません。
「できるかどうか」ではなく、「どの環境で、どのレベルの精度が期待できるか」を理解したうえで使い分けることが重要です。
Copilot×OCRの読み取り精度はどこまで実用的か?
Copilotで画像やPDFを扱えると聞くと、「どこまで正確に読めるのか」「人の確認は本当に必要なのか」という点が気になるはずです。
結論から言えば、Copilot×OCRの読み取り精度は実用レベルに達しているケースも多い一方、業務で使うには必ず前提条件があります。
まず、比較的安定して読み取れるケースから整理します。
印刷された日本語の文章や、解像度の高いPDFであれば、OCR結果は大きく崩れることは少なく、Copilotによる要約や分類もスムーズに行えます。
会議資料やマニュアル、社内向けの説明資料などでは、「全文を正確に再現する」よりも「要点を把握する」用途であれば、十分に実用的です。
一方で、注意が必要なケースも明確です。
表形式の資料や複雑なレイアウトを含むPDFでは、OCR自体は文字を抽出できていても、項目の対応関係や行・列の構造が崩れやすくなります。
Copilotは抽出された文字情報を理解しようとしますが、元の構造が曖昧な場合、誤った解釈につながることがあります。
また、手書き文字や、撮影条件が不安定な画像については、OCR精度にばらつきが出やすくなります。
Copilotが誤った文字列を前提に処理を進めてしまうと、一見それらしい要約や回答が返ってくるため、誤認識に気づきにくい点には注意が必要です。
ここで重要なのは、OCR精度が高いことと、業務を自動化できることは別だという点です。
Copilotは、抽出された情報をもとに文章を整えたり、要点をまとめたりする能力に長けています。
そのため、多少の誤認識が含まれていても、「それらしく整ったアウトプット」が出てきます。
しかし、それは必ずしも元の情報が正確に反映されていることを意味しません。
業務で使う場合は、
- どのレベルまで正確であれば許容できるのか
- 最終的な確認は誰が行うのか
といった運用前提を決めておくことが欠かせません。
OCRしたテキストをCopilotでどう業務に使うか
Copilot×OCRの価値は、文字をテキスト化できること自体ではありません。
本当に効いてくるのは、OCRされた情報を業務で再利用できる形に変換する工程です。
単純な文字起こしだけであれば、従来のOCRソフトでも対応できます。
Copilotが評価されるのは、その先の「解釈」「整理」「再構成」です。
たとえば、スキャンした会議資料をCopilotに渡すと、全文を読む代わりに、要点だけを抽出して整理できます。
「結論」「決定事項」「次のアクション」といった形でまとめさせることで、資料を“読む作業”そのものを短縮できます。
請求書や帳票類でも同様です。
OCRで文字情報を取り出したあと、Copilotに「取引先名」「金額」「日付」といった項目ごとに整理させれば、確認作業や転記作業の負担を減らせます。
また、報告書や申請書の下書き作成にも使えます。
紙の資料をOCRでテキスト化し、その内容をもとにCopilotで文章構成を整えれば、
ゼロから書き直す必要がなくなります。
ここで重要なのは、Copilotに“正確な原文再現”を期待しないことです。
Copilotは、抽出された情報を材料として扱い、人が判断しやすい形に整える役割を担います。
そのため、
- 事実確認が必要な箇所
- 数値や固有名詞
については、人の目でのチェックが前提になります。
言い換えれば、Copilot×OCRは「作業を完全に任せる仕組み」ではなく、人の判断を前提に、作業量を減らすための仕組みです。
Copilot×OCRが向いている業務・向いていない業務
Copilot×OCRは、すべての業務を自動化できる万能な仕組みではありません。
向いている業務と、慎重に扱うべき業務を見極めないまま導入すると、「便利そうだったが使われなくなった」という結果になりがちです。
ここでは、実務視点で見たときの相性を整理します。
Copilot×OCRが向いている業務
Copilot×OCRが力を発揮しやすいのは、「正確な原文再現」よりも「全体把握や整理」が求められる業務です。
たとえば、会議資料や報告書、マニュアルなど、量が多く、内容の要点を素早く把握したい文書は相性が良い領域です。全文を細かく読む代わりに、要点や結論、次のアクションを整理させることで、
確認作業の負担を減らせます。
また、請求書や申請書など、項目を抜き出して確認する業務にも向いています。OCRで文字情報を取得し、Copilotで項目ごとに整理すれば、人が一から目視で確認する作業を短縮できます。このように、「判断材料を整える」「読む・探す作業を減らす」といった用途では、Copilot×OCRは有効に機能します。
Copilot×OCRが向いていない業務
一方で、注意が必要なのは、一文字の誤りがそのままリスクになる業務です。契約書や法的文書、対外的に提出する正式資料などでは、OCRの誤認識やCopilotの解釈のずれが問題になる可能性があります。
Copilotは、誤った情報が含まれていても、文章として自然に整えてしまうため、誤りに気づきにくい点にも注意が必要です。
また、最終判断や責任の所在が曖昧な業務にそのまま使うと、「誰が確認するのか分からない」「ミスが起きても指摘しづらい」といった状態を招きます。
こうした業務では、Copilot×OCRを補助的な位置づけに留め、最終的な判断と確認は必ず人が行う前提が必要です。
向き・不向きが分かれるからこそ「設計」が必要になる
ここまで見てきたように、Copilot×OCRには明確な向き・不向きがあります。重要なのは、「使えるかどうか」ではなく、「どの業務で、どこまで任せるのか」を先に決めることです。
この整理ができていないまま導入すると、便利そうな業務では使われず、本来使うべき業務でも止まってしまいます。
| 観点 | Copilot×OCRが向いている業務 | Copilot×OCRが向いていない業務 |
|---|---|---|
| 業務の目的 | 内容把握・要点整理・情報抽出 | 正確な原文再現・確定判断 |
| 扱う文書 | 会議資料、報告書、マニュアル | 契約書、法的文書、正式提出資料 |
| 精度の考え方 | 多少の誤認識は許容できる | 一文字の誤りがそのままリスク |
| Copilotの役割 | 整理・要約・分類・下書き | 判断・確定・責任判断 |
| 運用の前提 | 人が最終確認を行う | 人が全文を精査する |
企業でCopilot×OCRを導入する前に整理すべき3つの判断軸
Copilot×OCRは、ツールの設定さえ終えれば自動で業務が回る仕組みではありません。
導入後に「結局使われなかった」「現場が判断に迷うようになった」という企業には、共通して事前に整理されていない判断軸があります。
ここでは、Copilot×OCRを業務で使う前に、最低限そろえておくべき3つの視点を整理します。
誰が最終確認を行うのかを決めているか
OCRによる誤認識や、Copilotによる解釈のずれは、どれだけ環境を整えても完全には避けられません。
問題になるのは、それが起きたときに誰が責任を持って確認・修正するのかが決まっていないケースです。
Copilotは、誤った文字情報を含んでいても、それらしく整った文章を出力します。
そのため、「AIがまとめたから大丈夫」と受け取られやすく、誤りが見過ごされやすくなります。
最終確認の担当者や工程が曖昧なままでは、
・確認作業が属人化する
・ミスを誰も指摘できない
・結果として使われなくなる
といった状態に陥りがちです。
Copilot×OCRを使う前に、どの工程で人が必ず目を通すのかを明確にしておく必要があります。
どこまでの精度を許容するのか線引きできているか
Copilot×OCRは、「完璧な原文再現」を目的とした仕組みではありません。
それにもかかわらず、導入時に精度の期待値が整理されていないと、現場で混乱が起きます。
たとえば、
・会議資料の要点整理
・大量文書の内容把握
といった用途であれば、多少の誤認識があっても実用に耐えます。
一方で、
・数値
・固有名詞
・対外的に使う正式文書
については、誤りがそのままリスクになります。
重要なのは、「どの業務で、どこまでの精度を求めるのか」を先に決めておくことです。
この線引きがないままでは、「精度が不安で使われない」「逆に過信してトラブルになる」どちらにも転びやすくなります。
どの情報をCopilotに渡してよいか整理されているか
OCRの対象になる紙資料やPDFには、社外秘情報や個人情報が含まれているケースも少なくありません。
この点を整理せずに現場任せにすると、「どこまでAIに渡していいのか分からない」「念のため使わない」
という判断が増え、活用が止まってしまいます。
Copilot×OCRを業務で使うなら、
・渡してよい情報
・扱いに注意が必要な情報
・AIに渡さない情報
をあらかじめ分類しておく必要があります。
これはセキュリティ対策というより、現場が迷わず使うための前提整理です。この整理がない状態では、Copilot×OCRは定着しません。ここで整理した3つの判断軸は、どれもツールの操作方法ではなく、業務と責任の設計に関わるものです。
多くの企業が、「Copilotで何ができるか」は理解しても、自社の業務でどう使うかを言語化できないまま導入し、活用が止まっています。
まとめ|Copilot×OCRは「文字起こし」ではなく「業務設計」の話
CopilotでOCRが使えるのか。
この疑問の答えは、単純な「できる・できない」では片づけられません。
Copilot自体はOCR専用ツールではありません。
一方で、WindowsやMicrosoft 365環境に組み込まれたOCR機能と組み合わせることで、紙資料や画像、PDFに含まれる情報を、業務で使える形に変換する中核にはなります。
重要なのは、OCRの精度そのものよりも、その情報を誰が、どの工程で、どう判断するかをあらかじめ決めておくことです。
精度には限界があります。
Copilotは誤認識を含んだ情報でも、それらしく整理してしまいます。
だからこそ、
「どこまで任せてよいか」
「どこから人が確認するか」
という線引きが欠かせません。
Copilot×OCRは、作業を丸ごと置き換える仕組みではなく、人の判断を前提に、業務の負担を減らすための仕組みです。この前提を共有できれば、紙資料や画像が残る業務でも、無理なくデジタル活用を進められます。
次に考えるべきは、ツールを増やすことではなく、社内で迷わず使える「使い方」をどう整えるかです。Copilotや生成AIを業務で活かすための第一歩として、一度、全体像を整理してみてはいかがでしょうか。

FAQ|Copilot×OCRに関するよくある質問
- Q企業でCopilot×OCRを導入する際に最も重要なポイントは何ですか?
- A
ツールの性能よりも、使い方のルールを先に決めることです。
誰が最終確認を行うのか、誤認識が起きた場合の対応はどうするのか、どの情報をCopilotに渡してよいのか。これらを整理せずに導入すると、活用が定着しません。
- QCopilotだけで画像やPDFをOCRできますか?
- A
Copilot単体にOCR専用機能はありません。
実際には、WindowsやEdge、Microsoft 365環境に組み込まれたOCR機能で文字情報が抽出され、その結果をCopilotが理解・整理しています。
そのため「CopilotでOCRしているように見える」挙動になりますが、OCR処理そのものは別レイヤーで行われています。
- QCopilotで読み取ったテキストは、そのまま業務で使えますか?
- A
用途によります。
会議資料の要点整理や、内容把握といった目的であれば十分に実用的です。
一方、契約書や請求金額など、正確性が求められる情報については、必ず人の確認を前提にしてください。
Copilotは誤認識を含んだ情報でも自然な文章に整えてしまうため、最終判断は人が行う必要があります。
- Q手書き文字や写真でもCopilotでOCRできますか?
- A
可能なケースもありますが、精度は安定しません。
手書き文字やスマホ撮影画像は、解像度や文字の癖、撮影角度の影響を受けやすく、誤認識が起きやすくなります。
業務用途では補助的な利用に留め、重要な情報の自動処理には使わないほうが安全です。
- QCopilot×OCRと専用OCRツールはどう使い分けるべきですか?
- A
専用OCRツールは「正確に文字を抜き出すこと」に強みがあります。
一方、Copilotは「抜き出された情報を整理・要約・再利用すること」に強みがあります。
精度重視の工程は専用OCRツール、情報整理や文書作成の工程はCopilot、という役割分担で使い分けると効果的です。
