ROICを指標として掲げる企業は増えていますが、「実際にどう進めればいいのか」で手が止まってしまうケースは少なくありません。計算式は理解できても、どのデータを整え、どこから改善に着手し、どうやって現場に浸透させるのか──ここが最も難しいポイントです。
ROIC経営は、財務指標の管理ではなく “資本をどれだけ効率よく利益に変えていくか”という経営そのものの仕組みづくり です。適切なステップで導入すれば、利益率の改善や在庫・設備投資の最適化が進み、事業の意思決定が大きく変わります。しかし、進め方を誤ると、部門ごとに数字の解釈がずれたり、改善活動が続かないなど、根本的な課題を抱えたまま定着しません。
この記事では、ROIC経営を初めて本格的に導入したい企業に向けて、
「何から始めるか」「どう分析するか」「どう現場に落とし込むか」 をステップ式でわかりやすく整理します。
また、近年注目が高まる AIを活用した分析・改善方法 にも触れ、少人数でも再現性の高いROIC経営を実現するヒントをまとめました。
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ROIC経営を進める前に整えるべき“3つの土台”|データ・定義・社内体制
ROIC経営がうまくいかない企業の多くは、導入の“前段階”でつまずいています。
計算式や改善ポイントよりも前に、まず整えるべき3つの土台があるからです。
それが、
①データの整備
②定義の統一
③社内体制の準備
の3つです。この段階を飛ばすと、導入後に必ず混乱が起こります。
① ROIC算定に必要なデータの整理|利益・運転資本・固定資産の棚卸し
ROIC導入の最初の壁は、「必要なデータがそろっていない」ことです。
最低限そろえるべきデータは次の3つに集約できます。
- 利益(NOPAT):営業利益+税効果。単月/四半期/年度のどの粒度で見るかを決める。
- 運転資本:売掛金・棚卸資産・買掛金。特に売掛と在庫は数値がブレやすい。
- 固定資産:設備・建物・無形資産などの残高と稼働状況。
運転資本は部門の管理方法によって数値が変動しやすいため、財務・管理部門と事業部で“どの数字を使うか”を一度揃えることが重要です。
② 投下資本と利益の“定義”をそろえる|ここがズレると分析ができない
ROICの導入で最も起こりがちな問題が、「部門によって数字の意味が違う」という状態です。
- どこまでを投下資本とするか?
- 遊休資産は含めるか?
- 業務委託費や減価償却は利益率にどう反映するか?
こうした定義のズレは、後々「どの部門が改善できているのか」を判断できなくなる原因になります。
ROICは比較することで改善が見える指標なので、定義を揃えることが最優先です。
特に中期計画・事業戦略で用いている指標と整合性がとれているかも確認しておくと、導入後の混乱を防げます。
③ 導入前に決めておくべき社内体制|“財務だけの取り組み”にしないために
ROIC経営は財務だけが頑張っても成果が出ません。
改善の大部分は営業・製造・物流・管理など、現場の行動変化で生まれるからです。
導入前に決めておくべきことは次の3つです。
- 誰がROICを管理するのか(旗振り役)
- 事業部と財務の役割分担
- 月次レビューの場をどこに組み込むか
特に「ROICは財務指標ではなく事業指標である」というメッセージを事前に伝えることが重要です。
ここが曖昧だと、現場は“また数字管理が増えた”としか感じず、浸透しません。
導入初期は、小規模でもよいので“ROICをテーマにした定例会議”を作るとスムーズに進みます。
ROIC経営の進め方ステップ①|現状ROICを算定し、課題の構造を可視化する
ROIC経営の最初のステップは、現状のROICを正しく算定し、どこに課題があるのか“構造で理解する”ことです。
ROICは単なる数値ではなく、事業の改善ポイントを示す“地図”のようなもの。
正しく算定できれば、利益率改善・資本効率改善・運転資本改善のどれを優先すべきかが明確になります。
① ROICを算出する粒度を決める|単月・四半期・年度のどれで見るべきか
企業によって、ROICの算定は次のように分かれます。
- 単月 ROIC:変動要因の把握に向いている
- 四半期 ROIC:経営判断に使いやすい
- 年度 ROIC:投資判断や事業戦略に使う
重要なのは、粒度を揃えたうえで“比較できる状態”を作ることです。
複数のタイミングで評価できるように、まずは年度ベース → 四半期 → 単月の順で整備するとスムーズです。
② ROICの分母・分子を分解し、どこに課題があるかを構造で把握する
ROIC = NOPAT(税引前営業利益) ÷ 投下資本
この式をそのまま見ても改善ポイントは分かりません。
重要なのは、利益と資本を“分解して見る”ことです。
NOPAT(利益)の分解例
- 売上
- 粗利率
- 営業費用(販管費・人件費)
投下資本の分解例
- 在庫
- 売掛金
- 固定資産(設備)
この分解を行うことで、次のような構造が見えてきます。
- 利益率は悪くないが、在庫が重い
- 営業利益は伸びているのに、売掛金が増えて資金が拘束されている
- 固定資産が過大で資本効率が落ちている
つまり、ROICは“何となく改善する”ものではなく、どこにボトルネックがあるのか構造で特定する指標なのです。
③ 部門別ROICを算出し、改善の焦点を絞る
企業全体のROICだけでは、改善ポイントが見えにくくなります。
そこで、実務で効果的なのが “部門別ROIC” の算出です。
例
- 営業部のROIC
- 製造部のROIC
- プロダクトライン別ROIC
部門別に見ることで、次のような洞察が得られます。
- 在庫の滞留は製造より販売計画の問題
- 営業部は高利益だが回収が遅い
- ある製品ラインが固定資産を圧迫している
“どこを改善すれば最も効果が大きいか”が明確になり、次のステップ(改善レバーの特定)につながります。
④ 数字が毎回ブレる原因を特定し、管理会計を安定させる
ROICの導入段階で非常に多い問題が、“数字が毎回違う”という状況です。
その原因は次の3つ。
- データ更新のタイミングがバラバラ
- 売掛・在庫の管理方法が部門で異なる
- 固定資産の評価方法が統一されていない
この“数字のブレ”を放置すると、ROICの議論が進みません。
改善策は次のとおり。
- 更新タイミングの統一
- 売掛・在庫の定義統一
- 固定資産台帳の整理
これだけでROIC算定の精度が大きく変わり、改善レバーの特定がしやすくなります。
ROIC経営の進め方ステップ②|改善レバーを定量的に特定する方法(表で可視化)
現状ROICを算定したら、次に行うのが 「どこを改善すれば最もインパクトが出るか」 を特定するプロセスです。
ROICには “利益率・投下資本・運転資本” の3つのレバーがあり、どれに触るかで改善速度も成果も大きく変わります。
多くの企業が失敗する理由は、優先順位の判断を“感覚”で決めてしまうこと。
ここでは、改善余地を“定量的に”見つける方法を解説します。
ROIC改善レバーの全体像
| レバー | 意味 | 主な改善アプローチ | 改善インパクト |
| 利益率(Profit Margin) | 利益 ÷ 売上 | 粗利改善・単価調整・業務効率化・販管費最適化 | 中〜高 |
| 投下資本(Invested Capital) | 事業に固定されている資本 | 遊休資産の整理・設備投資の適正化・在庫回転の向上 | 高 |
| 運転資本(Working Capital) | 売掛金+在庫−買掛金 | 在庫圧縮・回収サイト短縮・支払条件最適化 | 即効性が高い |
この表だけでも、「自社はどこが重たいか」が直感的に分かります。
① 利益率レバーの特定方法|“売上より粗利”が改善の出発点
利益率を動かすには、まず粗利率を正しく把握することが重要です。
利益率レバーの確認ポイント
- 売上の伸びに対し利益率が低下していないか
- 原価の構造を分解できているか
- 業務効率化で削減できる販管費があるか
- 高粗利商材へのシフトが可能か
特に、ROICの改善では 「売上を増やすより、粗利改善のほうが効果が出やすい」 ケースが多いのが特徴です。
② 投下資本レバーの特定方法|“重たい資産”にメスを入れる
投下資本はROICの分母なので、改善効果が大きく出ます。
しかしここには誤りが多い領域でもあります。
投下資本の見直しポイント
- 稼働していない設備や不要な投資が残っていないか
- 過去投資の回収ができているか
- 事業ごとの資本配分が適切か
- 資本が“利益を生み出せているか”を評価しているか
特に大企業で多いのが、「昔の投資がそのまま残り、ROICを押し下げる」 ケース。
この棚卸しが改善レバーの中でも最も効果が大きくなります。
③ 運転資本レバーの特定方法|最も“即効性のある改善”
運転資本は、企業の資金繰りに直結する領域です。
▼ 運転資本のチェック項目
- 在庫の回転率は適切か(滞留・死蔵在庫の有無)
- 売掛金の回収遅延はないか
- 支払い条件は最適化されているか
特に在庫は企業によって大きく差が出るため、“在庫の最適化だけでROICが劇的に改善する” ケースも少なくありません。
④ 改善レバーの優先順位を決める方法|再現性のある判断フロー
改善レバーは、次の順番で判断すると迷いがなくなります。
- 資本の重さを確認(投下資本が重いならここを最優先)
- 運転資本の異常値をチェック(即効性)
- 利益率改善の余地を確認(戦略と紐づく)
- 事業の“勝ち筋”と整合するかを確認
このプロセスを踏むだけで、改善の方向性が明確になり、次のステップ(KPIへの落とし込み)がスムーズに進みます。
⑤ AIを使った改善レバー特定の精度向上
- 運転資本の異常値を自動検出
- 在庫回転率の変動要因をAIが要約
- 過去データから改善効果の高いレバーを予測
- 設備投資のROIをAIが複数パターンで試算
“どこを改善すべきか”を人の経験に依存せず、再現性のある分析ができるようになります。
ROIC経営の進め方ステップ③|ROICを部門KPIに落とし込み、現場を動かす仕組みづくり
ROIC経営が失敗する最大の理由は、財務指標を現場の行動に翻訳できていないことです。
数字の共有だけでは人は動かず、現場は自分ごと化できません。
ここでは、ROICを“現場が動けるKPI”に変換し、行動変容につなげる方法をまとめます。
① ROICを“利益・資本・運転資本”に分解し、部門ごとのKPIに翻訳する
ROICツリー(分解構造)をそのまま現場に渡しても、理解してもらうことは難しい。
必要なのは、部門別に“自分たちが改善できる要素だけ”を抽出することです。
営業部門に落とし込むKPI例
- 回収日数(DSO)
- 受注単価・粗利率
- 不良在庫につながる過剰受注の抑制
- 顧客別の収益性改善
➡ 営業が関与できるのは「利益率」「運転資本(売掛)」が中心。
製造・物流部門に落とし込むKPI例
- 在庫回転率
- 設備稼働率
- リードタイム短縮
- 廃棄ロスの削減
➡ 製造は「投下資本(設備・在庫)」「運転資本」が主要レバー。
管理部門に落とし込むKPI例
- 間接費の最適化
- 業務プロセス効率化(工数削減)
- 投資判断プロセスの透明性向上
➡ 管理部門は「利益率」「固定費」「投資判断」に最も貢献できる。
部門ごとの“影響できる領域だけ”に絞ることが、浸透の第一歩。
② 抽象的な財務指標を、現場の“行動KPI”に変換する
ここが企業が最も苦しむ部分です。多くの企業は「ROICを上げよう!」と言ってしまい、現場は“どう動けばいいか分からない”状態に陥ります。
そこで必要なのが、抽象 → 具体 → 行動 の翻訳作業です。
(悪い例)
「在庫を減らしてROICを改善しよう」
現場:「どの在庫?どうやって?どこから?」となる。
(良い例)
- 在庫回転率 〇以上/死蔵在庫 △点以下
- 週次で“滞留在庫リスト”を営業と共有
- 製造と営業で“需要予測の差異原因”を毎週見直す
ここまで行動レベルに変換すると、ROIC向上は“目に見える改善活動”になる。
③ モニタリングを“月次から週次”へ落とす|小さな成功体験が現場を動かす
ROICは月次で見る企業が多いですが、浸透フェーズの初期は週次レビューが圧倒的に効果的です。
理由
- 現場が自分の行動と数字の関係を理解しやすい
- 改善活動の“反応速度”が分かる
- 成果が見えることでモチベーションが上がる
週次レビューの型(テンプレート化可能)
- 先週の主要KPI
- 異常値(在庫・売掛・粗利など)
- 課題と原因仮説
- 今週の改善行動と担当者
- ログ(改善内容を蓄積 → AI活用につながる)
この形を作ると、ROIC改善が“現場の習慣”として根づく。
④ “財務主導”にならないための運営ルール|事業部との共創設計
ROICが浸透しない企業は、財務部のイニシアティブだけで進んでいる場合が多い。
必要なのは、
- 財務は分析と構造整理
- 事業部は改善活動の推進
という役割を明確にすること。
さらに、次のような“共創の場”を作るのが効果的です。
- 事業部 × 財務の月次“ROIC会議”
- 部門横断での“改善レバー検討会”
- 投資や在庫計画の“事前レビュー”
これにより、数字の背景にある“現場の動き”を把握でき、改善活動が一方向にならない。
⑤ 現場浸透を阻む“心理的ハードル”を下げる方法
数字に苦手意識のある現場ほどROIC浸透が遅い傾向があります。
心理的障壁を下げるポイントは次の3つ。
- 「ROIC=コスト削減」ではないと最初に伝える
- 自分の改善行動がROICにどうつながるかを“最初に1度体験”させる
- データを可視化し、成功体験を共有する
企業がROIC浸透に成功するのは、“最初の1勝(小さな改善)”を作れた組織です。
ROIC経営が浸透しない7つの壁|部門間のギャップを埋めるアプローチ
ROIC経営は理論だけ見るとシンプルですが、現実の現場では驚くほど浸透しません。
その理由は「数字が難しいから」ではなく、組織の構造やコミュニケーションの断絶に原因があるケースがほとんどです。
ここでは、企業が必ずぶつかる“7つの壁”を整理し、それぞれに対して実務で使える改善策をまとめます。
競合記事では触れられていない“現場のリアル”まで踏み込んだ内容です。
ROIC経営を阻む7つの壁(一覧表)
| 壁 | 内容 | 何が起きるか | 解決の方向性 |
| ① 定義のズレ | 投下資本・利益の定義が部門で違う | 部門間で数字が一致しない | 定義の統一・算定ルールの明文化 |
| ② データの不整備 | 在庫・売掛金の更新タイミングがバラバラ | ROICが毎回変わる | データの更新ルール・管理台帳の整備 |
| ③ 財務だけが推進役 | 現場が“自分ごと化”しない | 形骸化する | 現場が改善できるKPIへの翻訳 |
| ④ 改善レバーの誤認 | どこを改善すべきか曖昧 | 施策が分散・迷走する | レバーの定量評価・優先順位付け |
| ⑤ 評価制度との不一致 | ROIC改善が評価に反映されない | 継続しない | 人事制度・役割(権限)との紐づけ |
| ⑥ 会議体の不在 | 数字をレビューする場がない | 行動につながらない | 月次/週次ROIC定例会の設置 |
| ⑦ 数字への心理抵抗 | 財務指標に苦手意識を持つ現場 | 動かない・避ける | 小さな成功体験の共有・可視化 |
表にすると、「ROICが浸透しない理由」は財務知識よりも組織運営の問題だとはっきり分かるはず。
① 定義のズレ|“この数字は何を含むのか”の認識が部門で違う
最も多いのがこの壁。
投下資本、利益、運転資本のどれを見ても、
“どこまで含めるか”が部門ごとに異なることで議論がかみ合わなくなる。
解決策
- 投下資本・利益の定義を文書で統一
- 例外ルール(遊休資産など)を事前に明示
- 部門横断で共有会を開く
定義統一は地味だが、ROIC成功企業は必ずここを徹底している。
② データの不整備|数字が毎回違うと議論ができない
ROICは“動く指標”なので、基礎データがズレていると評価できない。
典型的な問題
- 在庫台帳が実態と合わない
- 売掛金の回収状況が更新されていない
- 固定資産台帳が最新になっていない
解決策
- 更新タイミングの統一
- 基礎データ管理責任者を部門ごとに設定
- AIを使った台帳のチェック(後半で紹介)
③ 財務だけが頑張ってしまう|“現場に響かない”という最大の壁
財務主導で進めると、現場は「また管理項目が増えた」としか感じない。
解決策
- 現場の行動に直結するKPI翻訳
- 物語で伝える(利益率が上がると現場が楽になる → など)
- 部門別の成功体験を共有し“小さな勝ち”を積む
現場が動くかどうかは、伝え方で大きく変わる。
④ 改善レバーの誤認|闇雲に施策を打つと、ROICは上がらない
よくあるのが、「まず利益率改善だ!」と決めつけてしまうパターン。
実際は投下資本や在庫が重たく、利益率を変えてもROICが動かないケースが多い。
解決策
- レバーを分解し、インパクトを比較
- 在庫・固定資産の重さを最初に確認
- 定量分析で優先順位をつける
⑤ 評価制度との不一致|“がんばっても評価されない”と続かない
ROIC活動が継続しない企業の典型例は、
人事評価と改善活動がつながっていないこと。
解決策
- ROIC関連KPIを評価制度に組み込む
- 貢献度を可視化(改善ログ → 可視化)
- 権限移譲(設備投資判断の一部を現場に委任)
制度と紐づけるとROICは長期で根づく。
⑥ 会議体の不在|議論の場がないと行動が生まれない
会議体がなければ、改善が“たまたまの取り組み”で終わってしまう。
解決策
- 月次ROIC会議を設置
- 週次でのKPIレビュー(定着フェーズ)
- 課題・改善ログの蓄積(AI分析と相性が良い)
場ができると、改善が組織の習慣になる。
⑦ 数字への心理的抵抗|“難しそう”を先に消すことが浸透のカギ
ROICに限らず、数字の話になると現場は一気に距離を置く。
解決策
- 初回は“1つの改善事例”だけを共有
- 数字より“意味”から伝える
- ダッシュボードで視覚的に理解させる
数字が苦手な現場ほど、小さな成功体験が浸透スピードを上げる。
価値向上の強力な武器になる。
まとめ|ROICは“数字の管理”ではなく、会社を前へ進めるための共通言語になる
ROIC経営は、財務部門だけの取り組みではありません。
利益のつくり方、資本の使い方、現場の動き方、そのすべてを結びつける“会社全体の羅針盤”です。
最初は慣れないかもしれませんが、ROICを軸にデータを整え、改善レバーを見極め、部門ごとに「何をすれば数字が動くのか」がつながった瞬間、意思決定のスピードが大きく変わります。
小さな改善が積み重なるほど、事業の強さは確実に育っていきます。
今まで曖昧だった課題がくっきり見え、改善に向かう動きが“自走し始める”感覚が生まれるはずです。
もし、「どこから手をつければいいのか」「社内をどう巻き込めばいいのか」という不安があるなら、私たちが伴走できます。

FAQ|ROIC経営の進め方に関するよくある質問
- QROIC導入は、どの部門から取り組むのが適切ですか?
- A
最初に取り組むべきは 財務(管理会計)+事業部 の2部門です。
財務だけで進めると定義が揃わず、事業部だけで進めると改善レバーが誤ります。
最低限、データ整備・定義統一・改善レバーの分析は両部門で協働するのがスムーズです。
- QROICが低い場合、まず何を改善すればよいですか?
- A
最初に見るべきは 投下資本(固定資産・在庫) の重さです。
この部分はROICへの影響が大きく、改善の手応えも早く出ます。
次に、運転資本(売掛・在庫回転)を確認し、即効性のある改善を着手すると効果が出やすいです。
- QROICを現場に説明しても理解されにくいのですが、どう伝えれば浸透しますか?
- A
抽象的な指標の説明ではなく、「あなたの行動がこう数字に影響する」 という“行動レベルの翻訳”が必要です。
例えば「在庫が減ると資本が軽くなる → ROICが上がる → 事業の投資余力が生まれる」というストーリーで説明すると定着しやすくなります。
- Q中小企業でもROIC経営は有効ですか?
- A
有効です。
むしろ、資本制約が大きい中小企業ほど“どこに資源を集中すべきか” を見極める必要があり、ROICとの相性が良いです。少人数でも運用できるため、初期からAIを活用して負荷を軽減する企業も増えています。
- QROICをKPIに設定する際、目標値はどう決めればいいですか?
- A
同業他社との比較や、過去3〜5年のROIC推移をベースに決めます。
ただし、いきなり高い数値を設定すると現場が萎縮するため、最初は 「改善レバーに基づく現実的なレンジ」 を設定し、改善のサイクルが回り始めてから引き上げる方が成功しやすいです。
