SaaSを導入したものの、「気づけばまたExcelに戻っていた」「社内で一部の人しか使っていない」といった経験はありませんか?

この“使われないSaaS”問題は、いま多くの企業が直面している深刻な課題です。便利なはずのツールが現場に浸透せず、最終的には「導入失敗」となってしまうケースも少なくありません。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

実はその背景には、「機能」や「UI」といったツールの性能だけでは解決できない、組織や人の使い方に関する共通の落とし穴があります。

本記事では、SaaSが現場で定着しない原因を3つに整理し、ツールを“使われる状態”に変えるためのヒントを解説します。現場の声を拾いきれず、導入直後に「使いづらい」「結局、慣れたやり方に戻ってしまう」といった反応が出るのはよくあることです。だからこそ、業務フローに寄り添った実践的な運用設計が欠かせません。

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理由① 業務フローに組み込まれていない

SaaSが現場で使われなくなる最大の理由のひとつが、業務フローとの接続ができていないことです。

言い換えれば、「誰が、いつ、何のために、どのように使うのか」が明確でないまま導入されているのです。

たとえば、申請フローを効率化するためのツールを導入したにもかかわらず、

「承認者の負担が増えた」

「使い方が変わりすぎて混乱している」

といった声が上がることはよくあります。

これは、ツールの機能が優れていても、それが現場の業務設計に合っていないために起こる問題です。

導入担当者が全社最適を目指して導入しても、実際の業務フローに沿っていなければ、現場は“手間が増えた”と感じてしまいます。

本来であれば、SaaSは業務フローの中に自然と溶け込むように設計されるべきもの。

逆にその“導線設計”が欠けていると、「新しいツール=ややこしいもの」として敬遠されるリスクが高まります。

ツールを定着させるには、単にシステムを導入するのではなく、

現場のオペレーションと一体でツールを設計・運用する視点が欠かせません。

理由② 「使うメリット」が可視化されていない

「使うメリット」が可視化されていない

ツールが定着しない理由のひとつに、「使うメリットがわからない」という声があります。

導入側は「業務効率が上がる」「ミスが減る」などの期待を持っていても、現場ではその成果が見えにくいのが実情です。

たとえば、営業チームにSFA(営業支援ツール)を導入した場合。

入力項目が多すぎて、現場は「面倒になった」と感じ、

管理職は「数字が見える化された」と思っていても、

現場には“何が良くなったのか”が伝わらない──このギャップが利用率を下げていきます。

SaaSは“使えば使うほど効果が見える”のが理想ですが、初期段階では

効果が可視化されにくく、現場にとっては負荷だけが感じられる状態になりがちです。

この状態を打開するには、「使うと何が変わるのか?」を可視化し、

使わなければ困る、使えば得をする状態を意図的に設計する必要があります。

具体的には次のような工夫が有効です。

  • ツールの活用状況を可視化するダッシュボードの設置
  • 成果事例を共有し「使えばラクになる」を体験してもらう
  • 小さな改善が数字に表れる仕掛け(通知、レポート配信など)

SaaSに限らず、生成AIなどの最新ツールでも、現場が“使う意味”を感じられなければ、定着は難しいという点は共通しています。裏を返せば、使うメリット、使用することで得られる成果が明確になれば、急速に使用率は向上します。

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理由③ “使いこなす力”を育てていない

SaaSが定着しないもうひとつの大きな理由は、利用者側の「使いこなす力」が育っていないことです。

どれほど高機能なツールでも、使い方がわからなければ意味がありません。実際に多くの企業では、導入時にマニュアルや説明会を実施して終わりというケースが目立ちます。

しかしそれでは、一部の“詳しい人”に依存する属人化が生まれ、

「○○さんがいないと使えない」
「結局、前のやり方に戻ってしまった」

という状態になってしまいます。

また、組織内でのリテラシーの差も定着を阻む原因になります。

特にデジタルツールに苦手意識のある層にとっては、「ツールを使いこなすこと」そのものが心理的ハードルになりがちです。

ツールを「組織全体で使いこなす」状態を目指すには、以下のような取り組みが重要です。

  • 業務に即したハンズオン型の研修やワークショップの実施
  • 定期的なフォローアップとアップデートの共有
  • 社内の“使える人”を増やす育成プログラムの整備

ここまで読んで「これ、SaaSだけの話ではないのでは?」と思った方もいるかもしれません。そのとおりです。

生成AIのような高度なツールでも、活用できる人材を育てなければ定着しません。このあとのセクションでは、SaaSの定着課題と共通する生成AI導入の落とし穴について触れつつ、“ツールが使われる組織”をどうつくるかを考えていきます。

SaaSも生成AIも、使われなければ“無価値”になる

メリットが見えない

ここまで見てきたように、SaaSが定着しない背景には「業務設計に合っていない」「メリットが見えない」「使いこなす力がない」という共通の課題があります。

そしてこれは、いま多くの企業が取り組みを始めている生成AIの導入でも、まったく同じ構造で起きています。

  • 「ChatGPTを使え」と言われたけれど、実際の業務でどう活用すればいいかわからない
  • 活用が進まず、“一部の詳しい人だけが使っている”状態
  • 効果も見えづらく、現場に浸透していない

つまり、どんなに高度なツールであっても、“活用できる人材”が育っていなければ意味がないのです。ツールそのものよりも大切なのは、組織としてそれを使いこなす仕組みや文化をつくれるかどうか。

SaaSも、生成AIも導入しただけで終わらせないためには、“実践力”を組織全体で育てていくことが不可欠です。

組織の“実践力”を高めるには?

生成AIを現場に定着させるには、ただの座学やツール紹介では不十分です。

必要なのは、業務に即した形で“実践的に使える人材”を増やすこと。

そのためには、以下のような要素を兼ね備えた支援が必要です。

  • 部門ごとの業務に沿った活用方法の提示
  • ワークショップ形式で手を動かす実践
  • 活用事例の共有と現場支援の仕組み化
  • リテラシーの平準化と属人化の解消

これらを網羅的に提供する法人向け研修プログラムが、SHIFT AI for Bizです。

生成AIの“分かったつもり”を脱し、組織として成果を出せるレベルへ引き上げるためのプログラムとして、多くの企業に導入されています。

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SaaSを“使われるツール”に変えるために必要な3つの視点

必要な3つの視点

「定着しないツール」の反対は、「自然と使われているツール」です。

では、SaaSをそのような状態に変えていくには、どのような視点が必要なのでしょうか?

ここでは、現場に浸透するツール運用のための3つの視点を紹介します。

①「導入設計」ではなく「活用設計」に重点を置く

多くの企業では、ツールの選定や導入プロセスにリソースを集中しがちです。

しかし実際に重要なのは、「導入後、どう使われるか」を見据えた活用設計です。

  • 業務フローの中でどこに組み込むか
  • 誰が主導し、どう定着を促すか
  • 効果をどう可視化し、共有するか

こうした観点が初期段階から織り込まれていないと、「導入して終わり」になってしまいます。

② “初期研修”だけで終わらせない

定着しないツールの多くは、初期導入時に説明会を行ったあと、そのまま放置されてしまっています。一方で、定着しているSaaS企業は、定期的なオンボーディング、フォローアップ、活用勉強会などを仕組み化しています。

“使えるようになるまで”ではなく、“自然に使い続けられるようになるまで”を支援し続ける設計が重要です。

③ 小さな成功体験を仕掛ける

SaaSは「使えば便利」なツールであっても、最初の一歩が重いことが多いです。だからこそ、現場で「これ便利!」と思えるような小さな成功体験を意図的に作ることが大切です。

  • 操作したらすぐ結果が見える
  • 時間短縮を体感できる場面を設計する
  • 他チームの成功事例をシェアする

こうした“手応え”が生まれれば、現場の利用モチベーションは自然と上がっていきます。SaaSの定着に成功している企業は、この3つの視点をあたりまえのように組み込んでいます。

そして、これは生成AIのような最新ツールにもそのまま当てはまるものです。

結論:ツールは「導入しただけ」では意味がない

SaaSにせよ、生成AIにせよ。いくら高機能で魅力的なツールであっても、現場で“使われなければ”成果は生まれません。

本記事では、SaaSが定着しない現場の課題として次の3つを紹介してきました。

  1. 業務フローに組み込まれていない
  2. メリットが可視化されていない
  3. 使いこなす力が育っていない

これらはいずれも、ツールそのものの問題ではなく、“人と組織側”の設計や運用に起因する課題です。そして、それは生成AIのような先進的なツールであっても同じです。

ツールは「導入すること」ではなく、「使われて、価値を発揮すること」にこそ意味があります。そのためには、機能の良し悪しよりも、“活用する人材をどう育てるか”に目を向けることが重要です。

生成AIをはじめとしたツールを、組織全体で使いこなせる状態へ。その第一歩として、現場に根ざした実践的な教育・研修の設計が求められています。

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