SHIFT AIでは「生成AI」をこんな形で使っています!

今回登場するのは「NotebookLM」。
SHIFT AIでは「AIを学ぶ大学」として、初心者から上級者まで、あらゆるレベルの方に対応した体系的な学習プログラムとコミュニティを提供しています。

このコミュニティには日々さまざまな「問い合わせ」が寄せられます。この問い合わせ対応について、NotebookLMを活用した一連の取り組みを紹介します。

問い合わせ対応の効率化は、どの企業にとっても避けて通れないテーマです。属人化や対応の遅れは、顧客満足度の低下だけでなく、社内の工数増大にも直結します。SHIFT AIのコミュニティチームも、まさにその課題を抱えていました。

問い合わせ内容の整理や履歴の検索、テンプレートの選定──。対応フローの多くが人の手に委ねられ、日々の負担は大きくなる一方でした。

そんな状況を変えたのが、業務改善チームの近藤さんが中心となって開発した「問い合わせ対応Bot」です。特筆すべきは、近藤さんがエンジニアではないという点です。「現場でできる範囲で効率化したい」という思いから、わずか10日間で仕組みを構築。結果として、月195時間の工数削減を実現しました。

NotebookLMとGoogleスプレッドシートを連携させ、既存ナレッジを活かしたこのBotは、「AIを特別なツールではなく、日常業務の一部にする」SHIFT AIの文化を象徴する取り組みでもあります。

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業務改善チームのミッション──「現場の困りごと」を仕組みで解く

SHIFT AIのコミュニティチームは、会員ユーザーとの接点を担う部署です。コミュニティにおける各種業務はもちろん、日々の問い合わせ対応からイベント運営、情報発信まで幅広い領域を担っており、社内でも最も多くの“顧客の声”が集まる現場でもあります。

その中で、課題解決の中心となっているのが業務改善チームです。

業務改善チームは、複数のチームを横断しながら、「現場の困りごとを見つけ、仕組みで解く」ことをミッションに掲げています。近藤さんはその業務改善チームのリーダーとして、組織全体の業務設計やツール利用を主導しています。

「私たちのチームは、“課題を見つけたら即アクション”が基本方針です。誰かが困っていたら、その場で原因を探して、ツールや仕組みで解決する。依頼があればどの部署でも行く“出張型改善チーム”のような位置づけですね」

チームが拡大したのは2025年10月。当初1人で始まった活動が組織内で評価され、いまでは23名体制に成長しました。各チームに業務改善担当者を配置し、現場で見つけた課題を吸い上げ、改善を連鎖的に生み出す仕組みができています。

近藤さんの原点には、前職での経験があります。

「以前は小売業における店舗運営や人事システムの刷新を担当していました。店舗では1つのフローが遅れるだけで全国200店舗に影響する。だからこそ、“仕組みを整えることが最大の効率化”だと実感しました」

その経験がSHIFT AIでの業務改善にも生かされています。属人化しがちな業務を標準化し、誰でも同じ成果を出せる環境を整える。「業務改善とは、便利なツールを導入することではなく、“現場が安心して動ける仕組み”をつくることだと思っています」と近藤さんは語ります。

その姿勢が、問い合わせ対応のBotプロジェクトにもつながっていきました。日々寄せられる膨大な問い合わせをどう効率化するか。“人の努力”ではなく“仕組み”で解決する挑戦が、ここから始まったのです。

問い合わせ対応の限界──人力検索と属人化の壁

コミュニティチームに寄せられる問い合わせは、サービス内容の確認から技術的な質問まで多岐にわたります。チーム全体で対応していたものの、件数の増加にともない、作業の負担は大きくなっていきました。

「問い合わせが来るたびに、スプレッドシートを開いて、過去の履歴を検索していました。似たようなケースを見つけて、そこからテンプレートを選んで書き換えるのですが、微妙に違う内容も多くて、どうしても時間がかかってしまうんです」と近藤さんは振り返ります。

テンプレートは100種類以上にのぼり、どのケースにどれを使えばよいのかを判断するのも一苦労。FAQを整備しても、質問のバリエーションが増えるにつれ、「誰かが以前対応したケースを知っているかどうか」が対応スピードを左右するようになっていました。

「問い合わせ内容が似ていても、少し条件が違うだけでテンプレートが使えない。結果として、対応経験があるメンバーに頼る形になり、属人化が進んでしまっていました

この状況は、チームメンバーの心理的負担にもつながっていました。また、問い合わせ対応が遅れれば、その分だけユーザーの満足度にも影響します。

「“待たせてしまっている”という意識が常にありました。人の手で一つひとつ検索して、確認して、返信して……。いつの間にか“調べる作業”が業務時間の大半を占めるようになっていたんです」

近藤さんはこの課題を、「改善の起点にすべきテーマ」と捉えました。問い合わせ対応を効率化できれば、他の業務にも波及効果が期待できるのではと。

「誰かの経験や勘に頼らずに、仕組みで再現できる状態をつくりたい。それができれば、業務改善の第一歩になると思いました」

目指したのは“業務改善の現場で完結できるAI活用”

属人化の壁を前に、「AIで仕組み化できないか」と考え始めた近藤さん。しかし、当初はAIツールに詳しかったわけではありません。「正直、最初は“AIで何ができるのか”すらわからない状態でした。ただ、業務改善チームとして“まずは自分で試す”という文化があったので、ChatGPTやClaudeなどを触りながら、どんな活用ができるかを調べていきました」と話します。

複数のツールを試す中で、近藤さんが注目したのがGoogleのNotebookLMでした。

「AIに社内データを学ばせて使うなら、どの範囲まで安全に活用できるかが重要です。NotebookLMは“アップロードした資料の中で答える”という仕組みだったので、情報漏えいの心配が少なく、社内利用に向いていると感じました

また、SHIFT AIではすでにGoogle Workspaceを全社で活用しており、環境との親和性も高かったといいます。

「新しいツールを導入すると、管理や教育の負担が出てきます。でもNotebookLMなら、Googleアカウントで完結する。しかもスプレッドシートやドキュメントなど、現場がすでに使い慣れた環境とつながっているのが大きな強みでした」

AIを導入する上で近藤さんが重視したのは、「誰でも使えること」と「すぐに試せること」。専門的な知識がなくても構築できる環境でなければ、現場の改善は進まないと考えていました。

「エンジニアに頼らなくても、自分たちの手で動かせる仕組みがほしかったんです。“業務改善の現場で完結できるAI活用”を目指して、NotebookLMで試作を始めました」

こうして、非エンジニアである近藤さんが中心となり、「現場の知見をAIに引き継ぐBot」の開発プロジェクトが動き出しました。

非エンジニアが10日で構築──GAS×NotebookLMの連携設計

NotebookLMの導入を決めた近藤さんは、わずか10日間で問い合わせBotの仕組みを完成させました。「構想に4日、実装に6日。トライ&エラーでとにかく動かしてみるというスタイルでした」と振り返ります。

近藤さんはエンジニアではありません。しかし、前職でGoogleスプレッドシートやApps Script(GAS)を活用して業務効率化を進めた経験があり、その知見を今回の構築にも応用しました。

「開発というより、“手作業を自動化する”感覚でつくりました。GASが書ければ、意外と簡単に動くんです」

構築は当時、次の3ステップで進められました。
※当時のNotebookLMはスプレッドシートを直接参照できませんでしたが、現在は参照できるようになりました。

  1. 要件整理:どんな問い合わせに対応すべきか、現場メンバーと確認しながら範囲を定義。
  2. データ準備:スプレッドシートに蓄積された問い合わせ履歴をNotebookLMが読み取れる形式に変換。
  3. 自動化設計:GASで、毎晩スプレッドシートの最新データをGoogleドキュメントに自動書き出し。

近藤さんが取り掛かった当時、NotebookLMはスプレッドシートを直接参照できなかっため、“ドキュメントを介して学習させる”設計が必要でした。

「夜に自動更新するようにしておけば、朝には常に最新の問い合わせ情報がNotebookLMに入っている状態になります。担当者は更新ボタンを押すだけ。これで運用がすごく楽になりました

さらに、個人情報保護にも配慮しました。

お客様の名前や電話番号などの情報は、GASで自動的にアスタリスクに置き換えるようにしました。誰でも安全にBotを使えるようにすることを最優先にしました」

▲ユーザー様から寄せられた問い合わせをドキュメントに個人情報をマスキングさせて出力させることが苦労したポイントだった

Botの仕組みは、スプレッドシートのサイドバーから簡単に呼び出せるようになっています。問い合わせ内容を貼り付けると、最も近いテンプレートや過去の対応事例を提案。それでも該当するものが見つからない場合は、NotebookLMが自動的にFAQや過去回答から生成した案を返してくれます。

▲スプレッドシートではサイドバーからNotebookLMを即座に開けるようにしている

「特別なプログラムを組まなくても、Google環境の中で完結できたのが大きいです。“非エンジニアでもここまでできる”ということを証明したくてやってみたら、本当にできたんです」

このシンプルな設計思想こそ、今回の成功のポイントでした。

100点の自動化ではなく、80点でも“すぐ使える仕組み”を優先しました。小さく始めて、運用しながら改善していく。それが業務改善の本質だと思います。

また、問い合わせ対応のAIによる仕組みを考えた当初は、『すべてを自動化するのが一番良いのでは』と思っていました。ただ、すべてをAIに委ねると万が一ウソを伝えてしまった場合、ユーザー様の信頼を損なう懸念があります。だからこそ、AIはあくまでもCS担当者の業務を効率化することに特化させ、人が最終的には判断できるようにしました

このシンプルな方向を明確にできたのも、短期間で構築できた要因だったのかもしれません」

月195時間の工数削減を実現 チーム全体でも驚きの声

Bot導入の効果は、導入直後から明確に現れました。問い合わせ履歴を自動で整理し、過去事例を瞬時に引き出せるようになったことで、対応スピードが格段に上がったのです。

「1件ずつ検索していた時間がなくなりました。1人あたりの対応が早くなり、結果的に月195時間分の工数を削減できました。数字で見ると想像以上で、チーム全体が“これはすごい”と驚いたんです」と近藤さんは振り返ります。

効率化の効果は数字だけにとどまりません。

「AIが過去に類似した問い合わせがないかを教えてくれるので、“まずBotに聞いてみよう”という動きが自然に生まれました。それまで“誰に聞くか”で迷っていた時間が減り、メンバーが安心して動けるようになったんです」

Botの存在によって、問い合わせ対応のストレスも軽減されました。

「AIに聞けば何かしらのヒントが返ってくるので、“考える余白”ができる。その結果、対応の質も上がり、ユーザー様からも“返答が早くなった”という声を多くいただくようになりました

さらに、この仕組みは他チームにも波及しています。NotebookLMとスプレッドシートを連携させるモデルは、社内の人事や教材チームからも注目され、同様の自動化の相談が寄せられているといいます。

「ノウハウを社内で共有しているので、各チームでもすぐ活用できます。“AIを自分たちで使いこなす文化”が少しずつ広がっているのを感じます」

近藤さんは、このプロジェクトを通じて得た学びを次のように語ります。

「AIは“導入して終わり”ではなく、“使いながら育てる”ものです。使えば使うほど現場の理解が深まり、AIの精度も上がっていく。今回のBotも、日々改善を重ねながら進化しています」

SHIFT AIが目指すのは、AIを特別な存在にすることではなく、“現場の延長線上にある自然な仕組み”にすること。Bot導入をきっかけに、チーム全体が“AIを育てる側”へと変化しつつあります。

▲問い合わせ対応でNotebookLMを活用することで、上司に判断を委ねるエスカレーションの回数も格段に減った

AIを利活用するうえで最も大切なのは「完璧を目指さないこと」

問い合わせBotの成功は、SHIFT AI社内だけにとどまりませんでした。

近藤さんがこの取り組みを自身のX(旧Twitter)で紹介したところ、18万件を超えるインプレッションを獲得。多くの企業担当者から「非エンジニアでもここまでできるとは」「自社でも試してみたい」という反響が寄せられました。

「思っていた以上に反応が大きくて驚きました。“現場でもできるAI活用”というのは、多くの企業で共通の課題なんだと改めて感じました」

この反響を通じて、「現場起点のAI活用」という姿勢が社外にも広がりました。

「AIを使う目的は“人を置き換える”ことではありません。“人がより良い時間を使えるようにする”ためのパートナーとして存在してほしい。その考え方は、問い合わせBotでも、他の業務改善でも変わりません」

近藤さんは、繰り返すように、AIを利活用するうえで最も大切なのは「完璧を目指さないこと」だといいます。

「最初から100点を目指すより、まずは現場が使える状態にすること。AI活用は試しながら改善するプロセスそのものが価値なんです。やってみることで、“どうすればより良くなるか”を自分たちで考えられるようになります」

この「小さく始め、使いながら育てる」という姿勢は、SHIFT AIが企業等のAI活用を支援するうえでも重要視しているポイントです。

「AIを活用することで、人がより“人らしい仕事”に集中できるようになる。その環境を整えるのが、私たち業務改善チームの役割だと思っています。

そのうえで、『調べてできることは、最初から“できる”ことと同じ』だと思っています。何事も前向きにチャレンジしてみることがAIというテクノロジーを使ううえで重要だと感じます」

SHIFT AIでは、日本をAI先進国にすることを目指し、コミュニティのほかに各種メディア事業、法人向け研修事業を推進しています。AIに関する情報発信、教育、そして活用支援の3つの軸を通じて、日本におけるAI推進を加速するためのインフラを構築しています。

今回紹介した「問い合わせ対応」は、多くの企業でも課題や悩みを抱えられている領域です。生成AIを活用することで、対応する従業員の負担軽減はもちろん、効率化によって「問い合わせをするユーザー」にも恩恵をもたらします。

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