フリーランス業界最大級プラットフォーム(登録ワーカー含む登録ユーザー数700万人・登録企業100万社)を基盤に、IT人材&DXコンサルティングサービスを提供する株式会社クラウドワークスは、全社の生産性と企業価値を飛躍的に向上させるため、経営戦略の中核にAIを組み込んでいます。

同社がAIを使う目的は、この先のAI時代を生き残るための「AI前提の業務プロセス」を確立することです。そのために、経営層直結の「AX(AIトランスフォーメーション)戦略室」を設立し、社員一人ひとりの自律的な活用を促すボトムアップの仕組みを構築しました。

今回は、同社AX担当の安藤氏に、AI活用を全社に浸透させるための戦略や、営業部門で6,000時間超の工数削減を実現した具体的な事例、そしてAI時代における人間の役割について伺いました。

安藤賢司
安藤賢司氏

株式会社クラウドワークス
執行役員 / AX担当

IT業界にて20年にわたり、モバイルアプリから大規模Webサービスまで幅広いプロダクト開発をリード。フェンリル株式会社では受託開発のプロジェクトマネージャーとしてメガバンクのポータルアプリ開発や健康器具メーカーの公式アプリ群開発を統括し、事業責任者として組織及び事業拡大を推進。株式会社カカクコムではシステム本部本部長として価格.comを中心としたシステム開発を主導し、レガシーシステムのリプレイス、開発者体験・生産性の向上、戦略立案から組織設計、DevOps体制構築まで一貫してドライブ。2024年9月に株式会社クラウドワークスへ参画。2025年1月にプロダクト本部の本部長に、同年5月に執行役員に就任。

※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介する企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。

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少数精鋭、6名でスタートしたAX戦略室

クラウドワークスは「人とテクノロジーが調和する未来を創り 個の幸せと社会の発展に貢献する」というビジョンのもと、全社的なAI活用を加速させるため、2025年6月に「AX戦略室」を設立しました。

AIの登場は、従来のシステムでは難しかった人間的・定性的な判断を大量に行えるという新たな可能性を企業にもたらしています。

AX戦略室のミッションは、AI利活用に伴うセキュリティのガードレール作りと、AIがない時代に構築された既存の業務プロセスを、AIがある前提で再設計することです。

全社員約400人のAI活用を少人数で推進するため、同社は効率的な推進体制を構築しています。AX戦略室は、MLエンジニア、データサイエンティスト、BPR経験を持つビジネスサイドのメンバーからなる少数精鋭の6人体制でスタートしました。

さらに、各部署の組織長をAI推進の責任者に任命し、現場で実行役となる”AIアンバサダー”を各部署で選任してもらうことで少人数でも運用できる体制を実現しています。

現場のAI活用アイデアを採用したBPR事例

クラウドワークスは全社にAIを浸透させるため、トップダウンとボトムアップの両輪で推進を図っています。

AX戦略室は全体方針を経営層と合意する一方、現場の主体的な活用を促すため「AIでこういうことがやりたい」という要望を現場から募り、優先順位の高い順に実行しています。

現場から募集したアイデアの優先順位付けで重視されるのは、以下の4つです。

  1. ROI(投資対効果)の高さ
  2. AI活用の必然性
  3. 影響力の大きさ
  4. 実現性の高さ

特に「AI活用の必然性」、つまり“本当にAIでやるべきことかどうか”の観点は重要で、AIを使うことだけが目的とならないよう、既存のシステム開発で代替できないかという観点もチェックしながら進めています。

安藤氏

「実際に現場から上がってきた要望で、現在取り組んでいるのは『人材紹介事業のプロセス改革』です。従来すべて人が担っていた求職者との面談プロセスに、AIの面談ツールを導入し、双方の擦り合わせや日程調整といった工数を大きく削減することを目指しています」

安藤氏写真1

活用率90%超、6,000時間以上の工数削減を達成

クラウドワークスでは、AI活用はすでに日常業務に深く浸透しており、推奨ツールであるGeminiのアクティブ率は90%を超えています

中でも注目すべきは、AIツールへのアクセスがもっとも多いのは内定者のインターン生であるという点です。若い世代ほどAIを当たり前のツールとして活用している実態が示されています。

活用成果も定量的に現れており、最もAIを活用している組織の一つである営業グループでは、商談準備や顧客情報の調査、メール作成といった事務的業務の削減工数が、年換算で約6,000時間を削減できると試算しています。

安藤氏

「AI活用はまさに『木こりのジレンマ』に例えられると思います。ボロボロの斧で木を切っててもなかなか切れないけれど、じゃあ斧を研げばと言うと『忙しくてそんなことしてる暇がない』みたいな話です。今、時間や労力をかけてAIを取り入れれば、今までやりたくてもできなかったことや創造的な仕事により多くの時間を割けるというメッセージを全社に伝え、利用を推奨しています

同社は2019年から、自社で生み出した利益を原資に事業や社員の給与へ再投資するための「生産性向上」を重視しています。こうした文化が根付いているため、AI導入に対する社員の抵抗は少なく、ほとんどの社員がその重要性を受け止め、前向きに推進しています。相対的にAIの利用率が低い部署に対しては、AX戦略室が個別にヒアリングとレクチャー会を実施し、部署の特性に応じた活用法を指南するなど、地道なフォローアップも高い活用率につながっています。

“AIはEQが高い”その特性を活かした活用方法

AI活用は現場の効率化に留まらず、マネジメント層の思考整理にも応用されています。

安藤氏はAIの持つEQ(Emotional Intelligence Quotient=心の知能指数)の高さに着目しています。社内で各社員の意見の衝突が生じた際は、AIに状況と意図を説明したうえで「彼らはどう思っているか」を尋ねることで、バイアスのかかっていない「第三者視点の意見」を得るために利用しているといいます。

安藤氏

「コンフリクトが生じたときは、AIに『なんでこんなことが起こったんだろう?』と聞くことがあります。『彼らはこう思っているでしょう』といったAIの返答を見て、的外れだと思うことがある一方で、確かにそうだな、そういう視点はなかったと気づきを得られることもあります」

一方で、マネジメント層には“AIの特性を理解して活用することが大事である”という共通認識があります。一つは「文化的な側面」です。例えば、顧客からの問い合わせにAIが対応するケースと、企業から顧客にアプローチの電話をかける際にAIを使うケースとでは、ユーザーの受ける印象が大きく異なります。後者のように企業がAIを使って一方的に接触することは、社会的な信用を損なうレピュテーションリスクを伴うため、慎重な判断が必要です。

もう一つはAIの「非決定性」です。AIは1つの質問に対して毎回同じ回答を出すとは限らない(揺らぎが生じることがある)ため、ミスが許されない重要な仕事を完全に任せるのは難しいです。この課題を克服するため、「Human in the Loop(人間による介入)」を前提とし、人間が必ず最終的なアウトプットを確認し、責任をもって成果を出すことで対応できると考えています。

人間は意思決定と成果にコミットする、AI前提の働き方へ

クラウドワークスがAX戦略室を通じて目指すのは、AI時代の新しい働き方のデザインです。安藤氏は、AIが出てきて変わるのは業務プロセスであり、同社がユーザーに提供すべき価値は変わらないと強調します。

安藤氏

「究極的な目標は、人間は意思決定をして最終確認をするだけでいいという状態を作ることです。AIを前提とした業務の中で、人間は重要な目的と方向性を考えて、最終アウトプットを確認し、成果にコミットする。そういった形の働き方を目指しています」

同社AX戦略室では、この目標を実現していくため、キャッチアップの早さと業務プロセスを地道に見直せる真面目さを兼ね備えた仲間を現在も探しているといいます。

AIを真のパートナーとして組織全体で使いこなす未来こそが、AX戦略室が目指す理想像のひとつです。AIを核とした新しい働き方や持続的な成長につながる基盤づくりを、同社は着々と進めています。

安藤氏写真2

クラウドワークスから学ぶ「真似するべき」5つのポイント

クラウドワークスのAI活用の本質は「AIを前提とした新しい働き方をデザインすること」にあります。多くの企業に通じる再現性の高い実践を、5つのポイントに整理しました。

1. 「木こりのジレンマ」解消を目的に推進する
AI推進の動機は「やらないと取り残される」という危機感と「今までやりたくてもできなかったことや創造的な仕事に、より多くの時間を割ける」という納得感です。クラウドワークスでは、AI前提の業務に移行することで将来的に生まれる「余力」を強調することで、現場のモチベーションを担保しました。

2. 現場から「AIでやりたいこと」のアイデアを募集
同社は現場から「AIでこういうことやりたい」という要望を募集し、ROIやAI活用の必然性といった評価基準に基づいて、優先度の高いものから実行しました。これにより、社員は「会社にやらされている」という感覚ではなく「自分の業務を改善するためにAIを使っている」という主体性を持って取り組むことができています。

3. AIのEQ(心の知能指数)の高さを武器にする
AIのEQの高さに着目し、組織内で発生したコンフリクトの原因や、現場のメンバーの視点を客観的に分析させています。人間の経験値や感情に依存しがちな意思決定プロセスに、AIの客観的な分析を組み合わせることで、より精度の高い組織マネジメントを行うことが可能になります。

4. AIを前提とした業務プロセスへの転換を図る
同社は、人間が意思決定と最終確認を行い、それ以外のタスクは極力AIに任せることで成果にコミットできる状態を目指しています。これは、既存の業務プロセスを洗い出し、AIによってどこまで人間が関与しなくて済むかを追求する姿勢がなければ実現しません。

5. 組織や社員のリテラシーに応じた「ガードレール」を設計する
セキュリティリスクを恐れて利用を一律に制限するのではなく、利用者のリテラシーや熟練度に応じた「ガードレール」を設計することが、安全かつ積極的な活用につながります。

もちろん、ここで紹介した取り組みは、クラウドワークスの企業文化や事業特性があってこそ実現できたものでもあります。

重要なのは「仕組みそのものを真似ること」ではなく、自社の目的や文化に合った形でAIの活用を設計することです。AIを導入すること自体がゴールではなく、社員一人ひとりが自然に使いこなせる環境を整えることが本当の成果につながります。

しかし、実際に自社でこれを実践しようとすると、

「うちの組織に合ったAIの活用方法は?」
「社内に広げるには、どんな人材が必要?」
「成果をどうやって可視化すればいい?」

といった壁に直面する企業も少なくありません。多くの組織が同じ悩みを抱えています。

私たちSHIFT AIは、こうした「導入したが定着しない」という課題解決を得意としています。

貴社の文化や業務内容に合わせた浸透施策の設計から、社員のスキルを底上げする伴走型研修、活用成果を“見える化”する仕組みづくりまで、AI活用の定着に必要なプロセスを一気通貫で支援します。

「AIを導入したのに現場で使われていない」「成果をどう評価すればよいかわからない」そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちの支援内容をご覧ください。

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