情シス部門でDXが難しい5つの理由｜進まない原因と段階的に克服する方法

「うちの会社はなかなかDXが進まない」「情シス部門でDX推進を任されているが、何から手をつけていいかわからない」このような悩みを抱える情シス担当者は少なくありません。

DXの重要性は理解していても、日々の運用・保守業務に追われ、限られた人員と予算の中で新しい取り組みを始めるのは確かに困難です。さらに、経営層の理解不足や社内の抵抗、レガシーシステムの制約など、情シス部門特有の課題が立ちはだかります。

本記事では、情シス部門でDXが難しい具体的な理由を明確にし、現実的な解決策と段階的な推進方法を解説します。

多くの企業が直面する課題を踏まえた実践的なアプローチで、DX推進の第一歩を踏み出しましょう。

情シス部門でDXが難しい5つの理由

多くの企業で情シス部門のDXが進まない背景には、人員・予算・技術面での構造的な課題があります。これらの根本原因を理解することが、効果的な解決策を見つける第一歩となるでしょう。

💡関連記事
👉情報システム部門（情シス）のDX推進戦略｜課題克服と体制構築の具体的ステップ

慢性的な人手不足で守り業務に追われているから

情シス部門の最大の課題は、限られた人員で膨大な業務をこなさなければならない現実です。

日々のシステム運用・保守、ヘルプデスク対応、セキュリティ対策などの「守り」の業務だけで手いっぱいになり、DXのような「攻め」の取り組みに時間を割くことができません。

特に中小企業では「ひとり情シス」の状態が続いており、新しいプロジェクトを始める余裕がないのが実情です。人員を増やしたくても、IT人材の採用は困難で、結果的に現状維持に留まってしまいます。

経営層のDX理解が不足していて予算がつかないから

経営層がDXの重要性や投資対効果を十分に理解していないため、必要な予算や権限が得られないケースが多発しています。

情シス部門がDXの提案をしても「費用がかかるだけ」「今のシステムで十分」といった反応を受けることがあります。DXは短期的な効果が見えにくく、経営層に説明する際の難しさも課題となります。

さらに、情シス部門は直接的な売上貢献が見えにくい部門のため、投資の優先順位が下がりがちです。経営層との認識のギャップが、DX推進の大きな障壁となっています。

レガシーシステムに依存していて変更リスクが高いから

長年使い続けているレガシーシステムからの脱却は、技術的・運用的なリスクが高く、慎重にならざるを得ません。

既存システムは業務に深く根ざしており、変更や移行には大きなリスクが伴います。システム停止による業務への影響を考えると、現状維持が最も安全な選択肢に見えてしまいます。

また、レガシーシステムの仕様や運用方法を熟知している担当者が限られているため、変更を進めるための知識やスキルが不足している場合もあります。新しいシステムへの移行には時間とコストがかかり、その間の運用リスクも考慮する必要があります。

社内のITスキル格差が大きく現場の抵抗があるから

社内のITリテラシーにばらつきがあり、新しいツールやシステムの導入に対する現場の抵抗が強いことがDX推進を阻害します。

デジタルネイティブ世代とそうでない世代の間には、ITスキルに大きな差があります。新しいシステムを導入しても、使いこなせない社員がいると、結果的に古い方法と併用することになり、効率化が実現できません。

現場からは「今のやり方で問題ない」「覚えるのが大変」といった声が上がり、変化への抵抗感が生まれます。このような状況では、DXの効果を十分に発揮することができません。

明確なDX戦略とロードマップがないから

多くの情シス部門では、DXを進めたい意思はあっても、具体的な戦略や段階的な計画が策定されていません。

「DXをやらなければ」という漠然とした危機感はあっても、何から始めて、どの順番で進めるべきかが明確でないため、行動に移せずにいます。目標設定や成果指標も曖昧で、進捗を測ることができません。

また、他部門との連携や役割分担も不明確なため、情シス部門だけで抱え込んでしまう傾向があります。全社的な取り組みとして位置づけられていないことが、DX推進を困難にしています。

情シス主導のDXが進まない3つの失敗パターン

情シス部門がDXに取り組む際、よく陥りがちな失敗パターンがあります。これらを事前に把握しておくことで、同じ過ちを繰り返すことなく、効果的なDX推進が可能になります。

ツール導入だけで満足してしまうパターン

DXをツールやシステムの導入と捉えて、「導入=成功」と勘違いしてしまう最も多い失敗例です。

新しいクラウドサービスやAIツールを導入することで、DXを実現したと考えてしまうケースがあります。しかし、ツールを導入しただけでは業務プロセスは変わりません。

重要なのは、ツールを活用して業務をどう変革するかという視点です。導入後の運用方法や効果測定を軽視すると、結果的に「使われないシステム」が増えるだけで、投資が無駄になってしまいます。

現場の声を聞かずに進めてしまうパターン

情シス部門だけで判断し、実際にシステムを使う現場の意見を十分に聞かずに進めてしまう失敗パターンです。

技術的に優れたソリューションでも、現場の業務フローに合わなければ活用されません。使いにくいシステムは現場から敬遠され、結果的に従来の方法に戻ってしまいます。

現場の声を聞かずに進めると、導入後に「使いにくい」「前の方が良かった」といった不満が噴出し、DXへの印象が悪化します。一度失敗すると、次のDXプロジェクトへの協力を得ることが困難になってしまいます。

スキル研修を軽視して定着しないパターン

新しいシステムやツールを導入する際に、社員への研修や教育を軽視してしまうパターンです。

システムを導入しても、使い方がわからなければ効果は発揮されません。特に、ITスキルに不安のある社員にとって、十分な研修なしに新しいツールを使いこなすのは困難です。

研修を軽視すると、システムの活用率が低下し、期待した効果が得られません。また、わからないことがあっても質問しにくい環境では、結果的に古い方法に戻ってしまい、DXの意味がなくなってしまいます。

情シスDXを成功させる組織づくりの方法

情シス部門のDXを成功させるには、技術面だけでなく組織全体の意識改革と体制づくりが不可欠です。段階的なアプローチで着実に変革を進めていきましょう。

守り業務から攻めの業務に段階的に転換する

情シス部門の役割を「守り」中心から「攻め」へと段階的にシフトすることで、DX推進の基盤を作ります。

まずは現在の業務を整理し、定型的な作業を自動化やアウトソーシングで効率化しましょう。ヘルプデスク業務をFAQやチャットボットで削減し、システム監視を自動化することで、戦略的な業務に時間を割けるようになります。

空いた時間を活用して、業務改善やIT戦略の立案に取り組みます。小さな成功体験を積み重ねることで、「攻め」の業務への転換を社内にアピールし、経営層の理解も得やすくなるでしょう。

経営層にDXの必要性を効果的に伝える

経営層にDXの価値を理解してもらうために、ビジネス視点での具体的な提案と説明が重要です。

技術的な話ではなく、売上向上やコスト削減、競合優位性といった経営に直結するメリットを明確に示しましょう。他社の成功事例や業界動向を交えながら、DXを進めないリスクも併せて説明します。

投資対効果を具体的に示し、段階的な実施計画を提示することで、経営層の不安を軽減できます。まずは小規模なパイロットプロジェクトから始めて、成果を示しながら徐々に規模を拡大していく戦略が効果的です。

全社員のデジタルスキルを底上げする

DXの成功には、情シス部門だけでなく全社員のデジタルリテラシー向上が欠かせません。

社内研修やeラーニングを活用して、基本的なITスキルから新しいツールの使い方まで、段階的に教育を実施します。世代や部署によってスキルレベルが異なるため、対象者に応じた研修プログラムを用意しましょう。

デジタルツールの活用に積極的な社員を「デジタルリーダー」として育成し、各部署での普及促進役を担ってもらいます。現場に近い立場の人が教えることで、より実践的で効果的なスキル向上が期待できます。

情シス部門が実践すべきDX推進5ステップ

情シス部門がDXを確実に成功させるための具体的なステップを解説します。段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えながら着実な成果を上げることができるでしょう。

Step.1｜現状の課題を洗い出して優先順位をつける

まずは自社の現状を正確に把握し、解決すべき課題を明確にすることから始めます。

業務フローの可視化、システムの棚卸し、社員へのヒアリングを通じて、具体的な課題を洗い出しましょう。時間がかかっている作業、ミスが多発している箇所、システム間の連携不備などを特定します。

課題に対して「緊急度」と「重要度」で優先順位をつけ、最も効果が期待できる領域から着手します。小さくても確実に成果が出せる課題を選ぶことで、初期の成功体験を作ることが重要です。

Step.2｜経営層との合意形成を図る

DX推進には経営層の理解と支援が不可欠なため、しっかりとした合意形成を行います。

Step.1で明確になった課題を基に、具体的な改善計画と期待効果を経営層に提示しましょう。投資金額、実施期間、リスク要因も含めて説明し、透明性の高い提案を心がけます。

経営層からの質問や懸念に対して事前に準備をしておき、建設的な議論ができる環境を整えます。段階的な実施計画を示すことで、リスクを抑えながら確実な成果を約束できるでしょう。

Step.3｜小さな成功体験を積み重ねて実績を作る

大規模なプロジェクトではなく、短期間で成果が見える小さな取り組みから始めて実績を作ります。

選定した優先課題に対して、3～6ヶ月程度で完了できるプロジェクトを実施しましょう。RPAによる定型業務の自動化、クラウドサービスの部分導入、ペーパーレス化など、効果が分かりやすい取り組みが適しています。

成果を数値化して社内に共有し、DXの価値を実感してもらいます。成功体験が積み重なることで、社内の協力体制が強化され、より大きなプロジェクトへの理解も得やすくなります。

Step.4｜社内のスキル向上と体制を整備する

DXを持続的に推進するために、社内のスキル向上と推進体制の整備を並行して進めます。

情シス部門のメンバーには、プロジェクトマネジメントやデータ分析、新技術の知識習得などの研修を実施します。同時に、各部署から「DX推進メンバー」を選出し、横断的なプロジェクトチームを組織しましょう。

外部の研修プログラムや専門家のサポートも活用して、効率的なスキル向上を図ります。社内だけでは難しい専門知識については、外部リソースを積極的に活用することが重要です。

Step.5｜成果を可視化して全社展開につなげる

これまでの取り組みで得られた成果を可視化し、全社的なDX展開への基盤を築きます。

プロジェクトごとの効果測定を行い、コスト削減額、業務時間短縮、品質向上などを数値で示しましょう。成功事例をまとめたレポートを作成し、社内での共有と外部への発信も検討します。

実績を基に、より大規模なDXプロジェクトの提案を行います。部門を跨いだデジタル化、新しいビジネスモデルの検討など、企業全体の競争力向上につながる取り組みへと発展させていきます。

まとめ｜情シスDXの難しさは段階的アプローチで必ず克服できる

情シス部門でDXが難しい理由は、人手不足や予算制約、レガシーシステムへの依存など構造的な課題にあります。しかし、これらの課題は一度にすべてを解決しようとするのではなく、段階的なアプローチで着実に取り組むことで必ず克服できます。

重要なのは、小さな成功体験を積み重ねながら社内の理解と協力を得ることです。ツール導入だけでなく、人材育成と組織づくりに投資することで、持続可能なDX推進体制を構築できるでしょう。

情シス部門のDXは決して簡単ではありませんが、正しい知識と実践的なスキルがあれば必ず実現できます。まずは現状の課題を整理し、できることから始めてみてください。

より具体的なDX推進方法を学びたい方は、専門的な研修プログラムの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

情シスDXの難しさに関するよくある質問