「そのExcelファイル、〇〇さんしか触れないんですよね」そんな声が社内から聞こえてきたら、“属人化”のサインかもしれません。

多くの企業で、Excelは今なお業務の中核ツールとして使われています。ですがその便利さの裏で、「あの人にしか分からない」「引き継ぎができない」といった課題が静かに進行しているのです。

これがいわゆる “Excel属人化”──業務が人に紐づき、組織全体の生産性と柔軟性を損なう状態です。

属人化された業務は、一見回っているようで、改善も自動化もAI活用も進められない“止まった組織”をつくります。

この構造を変えない限り、どれだけ優れたツールを導入しても成果は出ません。

本記事では、Excel業務がなぜ属人化するのか、放置すると何が起きるのか、そしてAI時代に求められる“現場からの業務改善力”をどう育てるかまでを、わかりやすく解説していきます。

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目次

なぜExcel業務は属人化するのか?

Excelは手軽で自由度が高く、誰でも使える便利なツールです。

しかし、その“使いやすさ”こそが属人化を引き起こす大きな要因でもあります。

● 個人最適で始まる“とりあえず設計”

多くのExcel業務は「目の前の課題をなんとか処理するため」に個人が作り始めたものです。

マクロや複雑な関数が積み重なり、気づけば担当者本人しか理解できない構造になっていることも珍しくありません。

共有フォルダに置かれていても、誰も中身を把握しておらず、「なんとなく触らない方がよさそう」という空気が属人化をさらに深めていきます。

● 引き継ぎを前提としない運用体質

業務フローの文書化や手順マニュアルの整備が後回しになり、「前任者から口頭で教えてもらった通りやってます」といった状態が放置されがちです。

つまり、設計も運用も“属人前提”で動いているのです。

これは、組織が改善・再設計の余地を放棄しているのと同じ状態。

結果として、個人の知識とスキルに依存したブラックボックス業務が生まれてしまうのです。

属人化されたExcelが招く“4つのリスク”

Excel業務の属人化は、一見すると「担当者が回してくれているから問題ない」と見過ごされがちです。

しかしその裏では、組織全体の生産性・持続可能性を大きく損なうリスクが潜んでいます。

1. 担当者の退職・異動による“業務停止リスク”

「そのファイル、〇〇さんにしか分からない」

その状態で〇〇さんが突然退職したら……業務が止まるのは明らかです。

属人化は、企業の“見えない脆弱性”を生みます。

2. チェックできないために“ミスが放置”される

複雑化したExcelは、第三者によるレビューが困難です。

「正しいはず」と思い込んだ数式が、実は数か月間ミスを含んでいた──そんな事例も珍しくありません。

3. 改善提案が出ず、“非効率”が固定化される

担当者しか分からないExcelでは、他のメンバーからの改善提案も出にくくなります。

属人化は業務のブラックボックス化を招き、組織の進化を止めてしまうのです。

4. DX・AI導入が進まない“思考停止組織”になる

属人化された業務は、そのままでは仕組み化も自動化もできません

「データが揃っていない」「業務フローが不透明」な状態では、生成AIやCopilotのようなツールを導入しても、効果を発揮できないのです。

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ありがちな属人化パターン──あなたの会社にも?

属人化対策、なぜうまくいかない?“解消できない現場”に共通する3つの落とし穴とは

属人化といってもピンと来ないかもしれません。

しかし、多くの企業に共通する「あるあるパターン」を知ることで、自社の課題にも気づきやすくなります。

以下のような状態、あなたの職場にも思い当たる節はありませんか?

● “マクロの主”が社内に存在している

誰にも中身を説明せず、アップデートも本人しかできない“マクロ使い”が現場にいませんか?

エラーが出ても本人しか対処できず、その人が不在の時は業務が止まる──まさに典型的な属人化です。

● 毎月、手作業で数字をコピペしている

「この表は手で貼り付けてるんです」と言いながら、取引先ごと・フォーマットごとにExcelを加工している。

属人化の怖さは、その作業が“普通のこと”として定着している点にあります。

● 「触ると壊れそう」と言われるExcelファイルがある

式やシートが複雑に絡み合い、「ちょっと編集するだけでも怖い」と誰も手を出さない。

それはもはや業務ツールではなく、“爆弾”になっているのかもしれません。

● 業務の全体像を説明できる人がいない

ファイルは存在するのに、なぜ・何のために・どのように使っているのかが曖昧。

ヒアリングしても「前任から引き継いだままです」──この状態では、改善のしようがありません。

属人化を“あって当たり前の現象”として見過ごしていると、気づかぬうちに組織の足を引っ張り続けます。

では、この状態から脱するにはどうすればよいのか?次はその具体策に入ります。

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対策① Excel属人化を可視化するには?業務棚卸しのすすめ

属人化の最初の対策は、「気づくこと」です。

どの業務が、誰に、どれだけ依存しているのか──それを明らかにしなければ、改善も仕組み化も始まりません。

● なぜ“棚卸し”が必要なのか?

属人化の怖さは、その存在が可視化されていないことにあります。

問題が見えなければ、優先順位もつけられず、改善アクションも打てません。

だからこそ、まずは「現状把握=棚卸し」から始める必要があります。

● 棚卸しで確認すべき3つの視点

  1. 業務の内容と目的

     → 何のための作業か?どの部門・顧客に関わるのか?
  2. 使用しているファイル・ツールの実態

     → どのExcelを使っているか?保存場所は?更新頻度は?
  3. 担当者・依存度の高さ

     → 誰が作業しているか?代替できる人はいるか?

● “Excel依存の業務一覧”を作るだけでも効果的

たとえば以下のような簡単な表を作るだけで、属人化の全体像が見えてきます。

業務名使用ファイル担当者代替可能性リスクレベル
月次売上集計sales_report.xlsxAさんなし
顧客別請求管理billing.xlsmBさんあり(Cさん)

このように、定量的に見える化することで、危険な業務が浮き彫りになります。

対策② 再現性を生む仕組み化とマニュアル整備

マニュアルが機能しない5つの理由と改善策|定着させる3つの視点も解説

業務棚卸しで属人化のポイントが見えてきたら、次にやるべきは再現性のある仕組みづくりです。

「誰がやっても同じようにできる」状態を目指すことで、業務は初めて“組織の資産”になります。

● まずは“作業の流れ”を明文化する

「前任者に口頭で教わったまま」では、担当者が変わるたびにゼロから再教育が必要になります。

まずは、日々のExcel業務を以下のような形で手順として記録しましょう。

  • ファイルを開く
  • 入力する項目はどこか
  • 数値はどこから転記するのか
  • 更新したらどこに保存するか

こうした記録は、PowerPointやNotion、動画キャプチャなどでも十分です。

重要なのは、「他の人が見ても理解できる」ことです。

● フォーマット・命名ルールの統一も属人化を防ぐ

Excelファイルの命名が「売上集計」「売上データ」「sales_最新」などバラバラでは、

どれが正しい最新版なのか誰にもわかりません。

  • ファイル命名:「YYYYMM_業務名_担当者」形式など
  • シート構成・入力欄の配置を統一
  • カラールール(編集OKな箇所は黄色、など)

こうしたルールの“見える化”こそが仕組み化の第一歩です。

● マニュアル整備は“完全性”より“実用性”を優先

完璧なマニュアルを作ろうとすると、着手すら難しくなってしまいます。

まずは“最低限引き継げる”レベルのマニュアルを目指すことで、属人性を大幅に削ぐことが可能です。

ここまでの取り組みで、Excel業務の“属人依存”はかなり解消されます。

しかし、それでもなお「繰り返し作業」や「判断不要な処理」が残っていませんか?

そこで次に必要なのが、AIや自動化ツールの活用による“そもそも人がやらない”設計です。

対策③ 属人化しない“業務設計”דAI活用”のすすめ


属人化は、一度解消しても再発しやすい構造的な課題です。

だからこそ、業務そのものを“属人化しにくい設計”に変えていくことが、根本的な解決になります。

そしてその鍵となるのが、AIの活用です。

● Excelで完結させない「業務分解」と「自動化視点」

属人化しやすいExcel業務は、実は「分解可能」なことが多くあります。

たとえば──

  • 入力・集計:Googleフォーム+スプレッドシート連携で自動取得
  • 繰り返し作業:Power AutomateやZapierで自動実行
  • 単純計算や日報作成:ChatGPTやCopilotで下書き支援

こうした仕組みを使えば、“人がやらなくていい業務”を減らせるのです。

● CopilotやChatGPTで“誰でもできる状態”をつくる

「この処理はAさんしかわからない」状態は、ツール導入後も残りがちです。

しかし、CopilotやChatGPTを活用すれば、マクロや複雑な関数の内容を読み解く手助けや、入力自動化を簡単に行えます。

重要なのは、こうしたツールを「業務の一部として当たり前に使える」現場力を育てることです。

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● 属人化しない業務の未来:AIと人の“共創体制”へ

最終的に目指すのは、「担当者×AI」で運用される業務モデルです。

  • 人:判断・設計・改善の役割に集中
  • AI:反復処理・データ整理・ドキュメント作成を支援

この体制が整えば、属人化は防げるだけでなく、現場の生産性と柔軟性も大きく向上します。

Excel属人化から脱却した組織の“理想像”とは?

属人化を解消する取り組みは、単に「効率化」や「引き継ぎのしやすさ」だけを目的としたものではありません。

本質的には、組織の生産性と柔軟性を高める“体質改善”なのです。

では、属人化から脱却した組織は、どのような状態を実現できているのでしょうか?

● “誰がやっても同じ成果が出る”業務設計

手順が明確で、ツールの使い方も共有されている。

「ベテランの勘」や「前任者のノウハウ」に頼らず、再現性あるオペレーションが構築されています。

この状態なら、新人でも早期に戦力化でき、異動・退職の影響も最小限です。

● AIが“現場の当たり前”になっている

CopilotやChatGPTなどの生成AIを自然に活用し、人がやるべき仕事とAIが補助する業務の役割分担ができている組織

業務の属人性が下がるだけでなく、イノベーションのスピードも加速します。

● 担当者が“作業者”ではなく“改善者”へと進化する

属人化された環境では、「目の前の作業をこなす」ことに精一杯になります。

一方、仕組み化とAI支援が進んだ組織では、担当者が改善提案や設計に時間を割けるようになります。

“回す”のではなく“変える”役割へ。

これが、脱・属人化の本質的な価値です。

“Excelの限界”に気づいた組織から変わっていく

システム導入を成功させるために必要な準備とは?

Excelは、現場で広く使われてきた非常に優れたツールです。

しかしその反面、「個人依存しやすい」「改善されにくい」「再設計が難しい」という課題も抱えています。

属人化されたExcel業務を放置している限り、ミスの温床にもなり、成長のボトルネックにもなり、AI活用の足かせにもなってしまいます。

逆に言えば、「これは限界だ」と気づいたタイミングこそが、組織が変わるチャンスです。

  • 棚卸しで現状を把握し
  • 再現性ある業務フローへと転換し
  • 生成AIを活用して“人×仕組み”の共創体制を築く

このステップを踏むことで、業務は誰かのものから、チーム全体の資産へと進化します。

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「属人化はうちには関係ない」と思っていたその瞬間が、一番のリスクかもしれません。

今日から、まずひとつの業務だけでも棚卸ししてみませんか?

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