「Copilotを業務で使いたいが、社内データを入力して情報漏洩しないか」と不安を抱える担当者は少なくありません。Microsoftは法人向けのMicrosoft 365 Copilotについて「入力データは基盤モデルの再学習に使わない」と公式に明言しており、仕組み・運用・教育を整えれば情報漏洩リスクは大きく下げられます。

本記事では、Copilotのデータ処理の仕組み、2025年に判明した脆弱性EchoLeak、実際の漏洩事例、プラン別のセキュリティ差、そして技術・法務・運用の3観点での対策を、AI経営総合研究所が​独自に取材した先行企業の活用実態​を交えて整理します。

弊社では、Copilotを安全に運用するのに役立つ資料を配布しています。リスク管理方法やコンプライアンス対策、ルール設計のポイントなどが分かる内容です。情報漏洩を防ぐ体制を整えるヒントになりますので、ぜひご活用ください。

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目次
  1. Copilotの情報取り扱いの仕組みを理解する
    1. Copilotは入力データを学習に使うのか?(Microsoft公式の見解)
    2. Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotの違い
    3. テナント分離とデータ保護の仕組み
    4. クラウド環境でのデータ保護と暗号化
  2. Copilotのプラン別セキュリティ比較
  3. Copilotで懸念される情報漏洩のシナリオ
    1. 社外秘データをプロンプトに入力してしまうケース
    2. アクセス権限が不適切なまま利用されるケース
    3. 誤用によるリスク(社員が知らずに危険な利用をする)
  4. 2025年以降に判明したCopilotの既知脆弱性と対策状況
    1. EchoLeak(CVE-2025-32711)のゼロクリック情報窃取の仕組み
    2. 自社が影響を受けるかの確認手順とパッチ適用状況
  5. 実際に起きた生成AI・Copilot関連の情報漏洩事例
    1. サムスン電子のソースコード流出
    2. 安全運用に転じた企業との対比
  6. 起こり得る事例と脆弱性から学ぶ
    1. 指摘されている脆弱性・リスクのタイプ
    2. 起こり得る事例と脆弱性から得られる教訓
  7. 企業が直面するリスクの種類
    1. 法務・コンプライアンス上のリスク
    2. 知的財産権の侵害リスク
    3. ブランド毀損・信用低下のリスク
  8. 導入可否を判断するチェックリスト
    1. 技術的観点:セキュリティ機能とインフラ整備
    2. 法務的観点:契約・規制遵守の確実性
    3. 運用的観点:ガイドラインと教育体制
  9. 業界別に見るCopilot導入リスク
  10. 安全に導入するためのステップ
    1. 具体的なセキュリティ機能による多層防御
  11. Copilotを安全に活用するために必要なこと
  12. 他社の取り組み|九州旅客鉄道・朝日新聞社に学ぶ安全な生成AI運用
    1. 九州旅客鉄道|公式ガイドラインを土台に自社ルールを整備しCopilotを安全活用
    2. 朝日新聞社|AI委員会とセーフリストでシャドーAIを防ぐ統制
  13. まとめ:Copilotを”安全に使える武器”にするために
  14. Copilotのよくある質問(FAQ)
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Copilotの情報取り扱いの仕組みを理解する

Copilotの情報漏洩を正しく評価する起点は、入力データがどこで処理され、誰がアクセスでき、学習に使われるのかを把握することにあります。Microsoft 365 Copilotは企業のテナント内でデータを処理し、暗号化とアクセス権限管理を前提に設計されています。仕組みを理解したうえで運用ルールを設計すれば、過剰な不安も油断も避けられます。

Copilotは入力データを学習に使うのか?(Microsoft公式の見解)

Microsoft公式は、Microsoft 365 Copilotに入力したプロンプトや応答、Microsoft Graph経由で参照した社内データを、基盤となる大規模言語モデルの再学習には利用しないと明言しています。一方で、入力内容はクラウド上で処理されるため、社外秘データを不用意に入力すれば、ログや処理履歴を経由したリスクがゼロにはなりません。「学習に使われない」ことと「入力して安全」であることは別問題として扱います。

Microsoft 365 CopilotとGitHub Copilotの違い

同じ「Copilot」でも、対象とデータの扱いは大きく異なります。Microsoft 365 Copilotは企業テナント内で処理され、暗号化と権限管理が組み込まれた業務アプリ向けのAIです。これに対しGitHub Copilotはコード補完に特化した開発者向けのサービスで、個人向けや無料の利用形態では機密コードの入力に注意が必要です。どのCopilotを使うかで情報漏洩リスクの水準が変わるため、自社が導入するサービスを正式名称で特定したうえで判断します。

テナント分離とデータ保護の仕組み

Microsoft 365 Copilotは「テナント分離」によって、自社のデータが他社のテナントと混在しない設計になっています。Copilotが回答を生成する際は、ログインしている利用者がMicrosoft 365上でアクセス権を持つ範囲のデータだけを参照し、権限のないファイルやメールは回答に使われません。つまりCopilotは新たにデータを公開するのではなく、既存のアクセス権限の設計をそのまま引き継ぎます。逆に言えば、権限設定が甘い組織ではCopilotがその穴をそのまま露呈させるため、導入前の権限棚卸しが防御の起点になります。

クラウド環境でのデータ保護と暗号化

Copilotの利用はクラウド処理が前提です。Microsoft 365では、Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)による認証と、通信・保存データの暗号化が標準で備わっています。ただし標準機能が有効でも、共有範囲が広すぎるファイルや退職者アカウントの放置といった運用上の不備があれば、暗号化の効果は限定的になります。技術機能と運用ルールの両輪でリスクを最小化します。

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Copilotのプラン別セキュリティ比較

Copilotの情報漏洩リスクは、利用するプランによって大きく変わります。業務で社内データを扱うなら、商用データ保護とテナント分離が効く法人向けのMicrosoft 365 Copilotが前提です。無料版や個人向けプランは私的な調べ物には便利ですが、社外秘の入力には向きません。主要なCopilotのデータ保護水準と適切な用途を比較すると、次の違いが見えてきます。

プラン主な対象入力データのAI学習への利用商用データ保護(テナント分離・暗号化)向いている用途
無料のMicrosoft Copilot(個人アカウント)個人法人向けのエンタープライズデータ保護の対象外限定的私的な調べ物・下書き。業務機密の入力は避ける
Copilot Pro(個人向け有料)個人個人向けプランのため法人向けのデータ保護とは設計が異なる個人向けの範囲にとどまる個人のOfficeアプリ高度活用。社外秘の入力は非推奨
Microsoft 365 Copilot(法人向け)企業Microsoft公式は基盤モデルの学習に使わないと明言エンタープライズデータ保護・テナント分離・暗号化あり社内データを扱う業務利用に適する
GitHub Copilot(開発者向け)開発者データプライバシー保護・知財免責はBusiness/Enterpriseのみ個人・Free版は公開リポジトリ前提でコード入力に注意コード補完。機密コードはBusiness以上で設定を確認

業務利用ではMicrosoft 365 Copilot(法人向け)を選ぶことが、情報漏洩リスクを下げる第一歩になります。なお法人向けMicrosoft 365 Copilotの利用には、別途対象のMicrosoft 365サブスクリプションが必要です。プランごとの料金体系や個人・法人の違いはCopilotの料金を徹底比較した記事で詳しく整理しています。

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Copilotで懸念される情報漏洩のシナリオ

Copilotの情報漏洩は、攻撃よりも日常の使い方から生じるケースが多くを占めます。代表的なのは「社外秘の誤入力」「権限設定の不備」「リテラシー不足による誤用」の3つです。いずれも技術ではなく運用とルールで防げる領域のため、ガイドライン整備と教育の優先度が高まります。

社外秘データをプロンプトに入力してしまうケース

最も多いのは、社員が顧客名簿や契約書、未公開の財務情報をそのままプロンプトに貼り付けるケースです。Microsoft 365 Copilot自体は入力を学習に使いませんが、クラウド経由で処理されるため、入力した時点で処理履歴やログに残ります。社内規程で「入力してよい情報の範囲」を明文化していない組織ほど、この誤入力が広がりやすくなります。

アクセス権限が不適切なまま利用されるケース

権限設定が甘いと、本来アクセスできない人に機密情報が見えてしまいます。Copilotは利用者のアクセス権の範囲で回答するため、共有範囲を広げすぎたSharePointやOneDriveの文書が、Copilot経由で意図せず参照される事態が起こります。権限の棚卸しを怠ると、Copilotが「見えてはいけない情報」を要約して提示するリスクが残ります。

誤用によるリスク(社員が知らずに危険な利用をする)

Copilotは自然言語で操作できるため、ITリテラシーの低い社員でも気軽に使えます。その手軽さの裏返しで、危険なプロンプト入力に無自覚で踏み込む可能性があります。「便利だから」と個人アカウントの無料版に業務データを入力するといった行動は、ガイドラインと教育がなければ防げません。

以下の資料では、プロンプトの設計やルールの考え方など、情報漏洩を防ぐのに必要な基礎知識をまとめています。社員のAIリテラシーを上げてデータを漏らさない、情報が洩れづらい組織体制を整えたい方はぜひご覧ください。

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2025年以降に判明したCopilotの既知脆弱性と対策状況

Copilotには、運用の不備とは別に、製品自体の脆弱性も報告されています。2025年に公表された「EchoLeak(CVE-2025-32711)」は、利用者の操作を介さずに社内情報が外部へ流出しうる深刻な脆弱性として注目されました。クラウドサービスであるMicrosoft 365 Copilotの脆弱性はMicrosoft側で修正が反映されるため、利用企業は最新情報の把握と影響範囲の点検を継続します。

EchoLeak(CVE-2025-32711)のゼロクリック情報窃取の仕組み

公的な脆弱性データベース(NVD)によると、CVE-2025-32711は通称「EchoLeak」と呼ばれ、対象はMicrosoft 365 Copilotです。深刻度はMicrosoftの評価でCVSS 9.3「緊急(Critical)」、NIST(NVD)の評価で7.5「重要(High)」とされ、2025年6月11日にNVDへ登録されました。セキュリティ企業のAim Labsが報告した脆弱性として知られています。

脆弱性の種類は、出力に含まれる特殊な要素が適切に無害化されないインジェクションで、いわゆるAIコマンドインジェクション(プロンプトインジェクション)型です。NVDの評価では、攻撃者の認証は不要、かつ利用者の操作も不要で、ネットワーク経由で成立するとされています。具体的には、攻撃者が罠の指示を仕込んだメールやファイルを送り、Copilotがそれを参照対象として読み込むと、利用者がクリックしなくても隠された指示に従い、社内の機密情報を外部へ送り出してしまう——という流れです。利用者の操作を介さない点が「ゼロクリック」と呼ばれます。影響として、NVDは「認証されていない攻撃者がネットワーク越しに情報を開示(窃取)できる」と記載しています。

自社が影響を受けるかの確認手順とパッチ適用状況

Microsoft 365 Copilotはクラウドサービスとして提供されるため、この種のサーバー側で生じる脆弱性は、利用企業が個別にパッチを当てるのではなく、Microsoft側の修正がサービスに反映される形で対応されます。最新の対応状況と該当範囲は、Microsoft Security Response Center(MSRC)のセキュリティ更新プログラムガイドで、CVE番号「CVE-2025-32711」を検索して確認します。

自社の影響範囲を点検する手順は次のとおりです。

  • Microsoft 365管理センターのメッセージセンターで、Copilot関連のセキュリティ通知を確認します。
  • Copilotが参照できるデータ範囲(SharePoint・OneDrive・メール)のアクセス権限を棚卸しします。
  • 外部からのメールや共有ファイルをCopilotの参照対象に含める設定を見直します。
  • 監査ログで、Copilot経由の不審なデータアクセスや応答が発生していないかを点検します。

脆弱性は今後も継続的に発見されるため、MSRCの更新情報を定期的に確認する運用体制を社内に組み込みます。

実際に起きた生成AI・Copilot関連の情報漏洩事例

生成AIへの情報入力による漏洩は、想定にとどまらず現実に発生しています。代表例が、サムスン電子で社員が社外秘をChatGPTに入力した事案です。Copilotでも「社外秘をプロンプトに入力する」という構図は共通するため、他社の失敗から学ぶ価値があります。一方で、ルールを整備して安全に運用している企業も存在します。

サムスン電子のソースコード流出

海外メディアの報道によれば、2023年4月、サムスン電子の半導体部門で、社員が社内のソースコードや、設備の不良・歩留まり測定に関するコード、社内会議の文字起こしをChatGPTに入力してしまう事案が、約20日間に3件発生したと報じられています。これを受けてサムスンは、社内デバイスでのChatGPTをはじめとする生成AIツールの利用を制限する措置を取ったと報道されています。

この事例が示すのは「生成AIが危険」ということではなく、入力してよい情報の範囲を定めないまま現場任せにすると、利便性を理由に社外秘が外部サービスへ流れ込むという構図です。Microsoft 365 Copilotは法人向けのデータ保護が効きますが、利用ルールが曖昧であれば同じ誤入力は起こり得ます。

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安全運用に転じた企業との対比

失敗事例の対極として、公式ガイドラインを土台に自社ルールを整え、Copilotを安全に運用している企業もあります。たとえば九州旅客鉄道は、業界団体のガイドラインをベースに自社ルールを策定したうえでCopilotを目的別に使い分けています。こうした「ルールを固めてから広げる」アプローチの具体像は、後述の「他社の取り組み」で詳しく紹介します。

起こり得る事例と脆弱性から学ぶ

ここまでのシナリオ・脆弱性・実事例を整理すると、Copilotのリスクは大きく3タイプに分類できます。それぞれ防御の打ち手が異なるため、自社がどのタイプに弱いかを見極めて対策を優先します。

指摘されている脆弱性・リスクのタイプ

Copilotをめぐるリスクは、技術・運用の両面で次のように整理できます。

  • ゼロクリック型攻撃:EchoLeakのように、利用者の操作なしで情報が外部へ流出するタイプです。
  • 権限管理の不備を突かれるリスク:アクセス権限の設定ミスにより、本来見えない情報がCopilot経由で参照されるタイプです。
  • 外部連携機能の悪用:外部アプリやAPI連携を経由して情報が流出するタイプです。

起こり得る事例と脆弱性から得られる教訓

これらが示すのは、「Copilotが危険」ではなく「運用と統制の設計次第で安全に使える」という事実です。誤用を防ぐには社員教育とガイドライン策定が前提になり、製品の脆弱性に備えるには導入後の継続的なセキュリティ更新の追跡と監査が欠かせません。技術対策と人の運用を切り離さず、両輪で整えます。

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企業が直面するリスクの種類

情報漏洩は、漏れた情報そのものの損失にとどまりません。法務・知財・ブランドの3領域で、経営に直結するダメージへと連鎖します。リスクを金額や規制の観点で具体化しておくと、対策投資の優先順位を経営層に説明しやすくなります。

法務・コンプライアンス上のリスク

社外秘や個人情報を扱う場合、個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)などの規制に抵触するおそれがあります。取引先との契約に外部サービスの利用禁止が明記されているケースでは、契約違反による損害賠償リスクも発生します。規制対応を後回しにすると、漏洩時の制裁金や訴訟コストが膨らみます。

知的財産権の侵害リスク

ソースコードや設計書などの知財情報を入力すると、社内ノウハウが外部に流出するリスクがあります。また、生成物が既存の著作物と類似した場合、著作権をめぐるトラブルも無視できません。競争優位の源泉となる情報ほど、入力の可否を厳格に線引きします。

ブランド毀損・信用低下のリスク

情報漏洩が公になった場合、最も大きな損失となるのは企業の信用です。ブランドイメージの毀損は、直接的な金銭損失以上に長期にわたって取引や採用へ悪影響を及ぼします。一度失った信頼の回復には、漏洩対応そのものを上回るコストと時間がかかります。

導入可否を判断するチェックリスト

Copilotを導入してよいかは、技術・法務・運用の3観点で点検すると判断を誤りません。1つでも欠けると漏洩リスクが跳ね上がるため、3観点をそろえてから本格展開へ進みます。以下のチェック項目を導入前のセルフ診断として活用します。

導入可否は、次の3観点で判断します。

  • 技術的観点:セキュリティ機能とインフラ整備が整っているか
  • 法務的観点:契約・規制遵守が確実か
  • 運用的観点:ガイドラインと教育体制が機能しているか

技術的観点:セキュリティ機能とインフラ整備

  • データ暗号化とアクセス権限管理が適切に運用されているかを確認します。
  • 既存のセキュリティソフトや監査ログ管理と統合できるかを確認します。
  • クラウド利用に関する社内規定にCopilotの利用が適合しているかを確認します。

法務的観点:契約・規制遵守の確実性

  • 個人情報保護法やGDPRなど関連法規に違反しないかを確認します。
  • 取引先との契約に外部サービスの利用禁止が盛り込まれていないかを確認します。
  • Copilotの利用規約を社内ポリシーと照合しているかを確認します。

運用的観点:ガイドラインと教育体制

  • 利用可能な情報範囲を明文化したガイドラインがあるかを確認します。
  • 禁止事項(顧客データの直接入力など)を全社へ周知できているかを確認します。
  • 部署ごとに利用責任者を置き、定期的に利用状況をチェックしているかを確認します。

ガイドラインがない状態では、「便利さ」を理由に誤用が広がり、大規模漏洩につながる恐れがあります。

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業界別に見るCopilot導入リスク

情報漏洩の重大度は業界によって異なります。扱うデータの機微性に応じて、利用範囲の制限と教育の強度を変えます。代表的な3業界のリスクの違いを整理します。

  • 金融業界:顧客の口座情報や取引データの漏洩は致命的になります。利用範囲を厳格に制限し、入力禁止情報を明確に定めます。
  • 医療業界:患者データは個人情報保護法の最重要対象です。誤入力防止の仕組みと厳格なポリシーを前提にします。
  • 製造業界:設計図やノウハウの漏洩は競争優位の喪失に直結します。知財保護のルールと現場教育を組み合わせます。

安全に導入するためのステップ

Copilotの安全導入は、いきなり全社展開せず、検証から段階的に進めます。小さく試してリスクを洗い出し、ルールと教育を固めてから広げる順序が、誤用と漏洩を最小化します。あわせて、Microsoft標準のセキュリティ機能で多層防御を構築します。

導入は次の3ステップで進めます。

  1. PoC(小規模検証)でリスクを洗い出します。
  2. 社内ガイドラインを策定し、禁止事項を明示します。
  3. 社員教育を実施し、安全な利用を習慣化します。

社員教育は、防止策を形骸化させない唯一の手段になります。

具体的なセキュリティ機能による多層防御

ルールと教育に加えて、Microsoft標準のセキュリティ機能を組み合わせると、技術面でも漏洩を多層で防げます。1つの機能に依存せず、検知・保護・追跡・権限制御を重ねることが要点になります。

  • Microsoft Purview:DLP(データ損失防止)と秘密度ラベル(Sensitivity Labels)により、機密データの持ち出しや不適切な共有を検知・ブロックします。公式で案内されている動作では、秘密度ラベルで保護された機密文書は、利用者の暗号化アクセス権に応じてCopilotの要約・生成の対象から除外または制限され、ラベルの保護設定はCopilotが生成した成果物にも引き継がれます。これにより、機密文書がCopilot経由で不用意に要約・転用される経路を元から断てます。
  • Microsoft Defender:不正アクセスやマルウェアを検知し、Copilotが参照する環境そのものを保護します。
  • 操作ログの監査:誰がいつどのデータにCopilot経由でアクセスしたかを記録し、不審な挙動を追跡します。
  • ゼロトラスト・最小権限:「社内だから信頼する」を前提とせず、利用者ごとに必要最小限の権限だけを付与します。

これらを組み合わせることで、誤入力や権限不備が起きても被害の拡大を食い止める防御層が機能します。

Copilotを安全に活用するために必要なこと

Copilotを安全な戦力にする鍵は、社員一人ひとりがリスクを理解したうえで使える体制を作ることです。技術機能だけでも、ルールだけでも漏洩は防げません。教育とガイドラインを継続的に更新し続ける仕組みを社内に根付かせます。

必要な対策は次のとおりです。

  • 利用可能な情報の範囲を明文化します。
  • 禁止事項と具体的な誤用例を社員に示します。
  • 新たな脆弱性に合わせてガイドラインを定期的に更新します。

これらを単発の研修で終わらせず、運用に組み込むことで、現場が安心して使える状態を維持します。

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他社の取り組み|九州旅客鉄道・朝日新聞社に学ぶ安全な生成AI運用

ルールと統制を整えてからCopilotや生成AIを広げた企業は、漏洩リスクを抑えながら活用を進めています。AI経営総合研究所が独自に取材した先行企業のうち、セキュリティガバナンスを起点に安全運用を実現した2社の取り組みを紹介します。

九州旅客鉄道|公式ガイドラインを土台に自社ルールを整備しCopilotを安全活用

九州旅客鉄道では、業界団体のガイドラインをベースに自社ルールを策定したうえで、Copilot・Gemini・NotebookLMを目的別に使い分けています。ルールを固めた環境を整えたことで、非エンジニアがRPAのエラー解析や社内アプリの試作まで踏み込めるようになりました。同社は「​​非エンジニアが自律的に対応できる体制を目指しています。​​」と語っています。

注目すべきは、​​禁止事項を並べる前に「公式ガイドラインを土台に自社ルールを明文化する」順序で統制を設計している点​​です。土台となる基準があるからこそ、現場は安心して利用範囲を広げられます。Copilotの情報漏洩対策でも、この「ルールを先に固めてから広げる」発想がそのまま再現できます。

詳細は九州旅客鉄道株式会社のインタビュー記事で紹介しています。

朝日新聞社|AI委員会とセーフリストでシャドーAIを防ぐ統制

朝日新聞社では、2025年4月に社長直下のAI委員会を設置し、各部署にAIエバンジェリストを約90名配置しました。あわせて、承認済みAIサービスのセーフリストを定めることで、会社が把握できない「シャドーAI」の利用を防いでいます。同社は「​AIの影響範囲が大きくなるほど、記者が向き合うべきテーマは増えていくはずです​​」と語っています。

注目すべきは、​​利用してよいツールを会社として一覧化し、野放しの利用を統制で抑え込んでいる点​​です。利用範囲を会社が管理することは、Copilotの情報漏洩対策でいう「個人アカウントの無料版に業務データを入力させない」統制と同じ発想にあたります。

詳細は株式会社朝日新聞社のインタビュー記事で紹介しています。

2社に共通する設計思想:①公式ガイドラインや承認基準を土台に自社ルールを明文化する ②利用できるツールと範囲を会社として管理し、現場任せにしない ③統制と教育・エバンジェリスト配置をセットで進める。Copilotの安全運用も、この3点を自社の状況に置き換えて設計すると再現性が高まります。

まとめ:Copilotを”安全に使える武器”にするために

Copilotの導入は、リスクを正しく理解し、仕組み・運用・教育を整えれば安全に活用できます。要点は次のとおりです。

  • 法人向けのMicrosoft 365 Copilotでは入力データは学習に使われませんが、クラウド処理ゆえの誤入力リスクは残ります。
  • 主要な漏洩シナリオは「誤入力」「権限不備」「誤用」の3つに集約されます。
  • EchoLeak(CVE-2025-32711)のような脆弱性は継続的に発見されるため、MSRCの更新追跡と監査が前提です。
  • 法務・知財・ブランドのリスク軽視は、経営に直結するダメージになります。
  • 技術・法務・運用の3観点から導入可否を判断し、Microsoft Purviewなどで多層防御を構築します。

ルールを先に固め、教育で定着させ、技術で守る——この順序を踏めば、Copilotは漏洩リスクを抑えた業務の戦力になります。

以下の資料では、リスク管理方法やコンプライアンス対策、ルール設計のポイントなどをより深く解説しています。社員がAIのリスク対策を理解してデータを漏らさない、情報漏洩を防ぐ体制を整えるヒントになりますので、ぜひご活用ください。

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Copilotのよくある質問(FAQ)

Q
Microsoft 365 Copilotは入力データをAIの学習に利用しますか?
A

Microsoft公式によれば、Microsoft 365 Copilotでは入力データは基盤モデルの再学習に利用されません。ただしクラウドで処理されるため、社外秘を入力すれば処理履歴やログには残ります。学習に使われないことと入力して安全であることは別問題として扱います。

Q
EchoLeak(CVE-2025-32711)とはどのような脆弱性ですか?
A

公的な脆弱性データベース(NVD)によると、EchoLeakはMicrosoft 365 Copilotを対象としたAIコマンドインジェクション型の脆弱性で、2025年6月11日に登録されました。利用者の操作なしで情報が外部へ流出しうる「ゼロクリック」の特性を持ち、深刻度はMicrosoft評価でCVSS 9.3(緊急)とされています。最新の対応状況はMSRCで確認します。

Q
無料版や個人向けのCopilotを業務で使っても安全ですか?
A

無料のMicrosoft Copilotや個人向けのCopilot Proは、法人向けのエンタープライズデータ保護やテナント分離の設計が異なるため、業務の社外秘入力には向きません。社内データを扱う業務では、商用データ保護が効く法人向けのMicrosoft 365 Copilotを利用します。

Q
社外秘データをCopilotに入力してしまった場合はどうなりますか?
A

即座に外部公開されることはありませんが、ログや監査に処理履歴が残ります。社内規程違反や、取引先との契約違反に発展する恐れがあります。発覚時は利用責任者へ速やかに報告し、影響範囲の確認と再発防止のルール周知を行います。

Q
GitHub CopilotとMicrosoft Copilotではセキュリティが違いますか?
A

異なります。Microsoft 365 Copilotは企業テナント内で処理される業務アプリ向けの設計ですが、GitHub Copilotはコード補完に特化した開発者向けで、データプライバシー保護や知財免責はBusiness/Enterpriseプランに限られます。機密コードを扱う場合は、プランと設定を確認してから利用します。

Q
全業界でCopilotの導入は安全といえますか?
A

業界によってリスク水準は異なります。金融・医療・製造業などは、扱うデータの機微性が高いため、利用範囲の厳格な制限と業界別の規制対応を前提にしたガイドラインが必要になります。