「自社の強みを競合と比較しよう」と思ったものの、実際に並べてみると価格や機能しか出てこない。競合も似たような表現ばかりで、結局「どこも同じ」に見えてしまう。そんな違和感を抱えたまま、比較表づくりに行き詰まっているBtoB企業は少なくありません。
この状態は、あなたの分析力や整理力が足りないから起きているわけではありません。むしろ多くの場合、「競合比較で強みを見つけようとする考え方」そのものが、今のBtoB市場と噛み合っていないことが原因です。
本記事では、なぜ自社の強みが競合と比較できないのかを構造的に整理したうえで、価格や機能に頼らず「選ばれる理由」を定義するための考え方を解説します。比較できない状況を失敗と捉えるのではなく、次の一手に変えるための視点を確認していきましょう。
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そもそも「競合比較で強みを見つける」という考え方が前提ズレしている
自社の強みが競合と比較できないと感じる背景には、やり方の問題ではなく、考え方そのもののズレがあります。多くの企業が当たり前のように使っている競合分析のフレームワークは、すべての業種・市場で有効とは限りません。ここでは、なぜ競合比較を前提にすると強みが見えなくなるのか、その構造を整理します。
| 観点 | 競合比較を前提にした考え方 | 実際のBtoB意思決定 |
|---|---|---|
| 判断軸 | 価格・機能・スペックの差 | 任せられるか、理解してくれるか |
| 比較の前提 | 明確な差が存在している | 各社の提供内容はほぼ横並び |
| 意思決定の基準 | 一番優れている企業を選ぶ | 納得できる理由がある企業を選ぶ |
| 強みの見え方 | 差が小さいほど見えなくなる | 文脈や考え方で意味づけされる |
| 起こりやすい問題 | 「どこも同じ」に見える | 比較表では説明できない決定が起きる |
競合分析フレームワークは「差がある市場」を前提に作られている
SWOT分析や3C分析、ベンチマーク分析といった競合分析フレームワークは、本来「価格差」「機能差」「提供範囲の差」といった明確な違いが存在する市場を想定して設計されています。製品スペックやサービス内容に大きな差がある業界であれば、これらのフレームワークは非常に有効です。
一方で、BtoBのサービス業やIT、研修、コンサルティング領域では、各社の提供内容が年々均質化しています。その結果、フレームワークに沿って整理すればするほど、価格・機能・対応範囲といった要素しか比較軸として残らず、本質的な強みが削ぎ落とされてしまうのです。
これは分析が浅いからではなく、フレームワークの前提と市場構造が合っていないことによって起きる必然的な現象です。
BtoBの意思決定は「比較」よりも「納得」で決まっている
BtoBの購買や発注は、単純な条件比較で決まるケースばかりではありません。むしろ重要視されているのは、「この会社に任せて本当に大丈夫か」「自社の状況を理解してくれそうか」といった、数値化しにくい納得感です。
担当者は複数社を比較しながらも、最終的には価格や機能の差では説明しきれない理由で意思決定を行っています。それにもかかわらず、企業側が比較表の中だけで強みを探そうとすると、実際の意思決定軸とズレが生じます。このズレこそが、「比較しても強みが見つからない」と感じる最大の原因です。
「比較できない=失敗」ではなく、「問いの立て方が間違っている」
競合と比較できない状況に直面すると、「自社には強みがないのではないか」「打ち出し方が悪いのではないか」と考えてしまいがちです。しかし、多くの場合、問題はそこではありません。
本質的な問題は、「競合と何が違うか」という問いそのものが、今の市場に合っていない点にあります。比較できないのは失敗ではなく、強みを定義する問いを見直すべきサインです。競合との差分を探すのではなく、「なぜこの会社が選ばれているのか」「誰にとってどんな前提条件を満たしているのか」といった視点に切り替えることで、初めて言語化できる強みが見えてきます。
それでも多くの企業が競合比較をやめられない理由
競合比較がうまく機能しないと感じていても、多くの企業はそのやり方から抜け出せません。ここには個人の問題ではなく、組織構造や業務プロセスに根ざした理由があります。
強みを説明する「共通言語」が社内に存在しない
自社の強みが言語化できない企業の多くでは、部署ごとに強みの捉え方が異なります。営業は現場感覚で語り、マーケティングは抽象的な価値で表現し、経営はビジョンや方針として語る。
こうした状態では、何をもって自社の強みとするのかが社内で揃わず、比較という分かりやすい枠組みに頼らざるを得なくなります。比較表は一見客観的に見えるため、共通言語がない組織ほど「とりあえず比較する」という判断を選びやすくなります。
比較以外に拠り所となる判断軸を持っていない
競合比較が続く背景には、「比較しない場合、何を基準に強みを語ればいいのか分からない」という不安があります。
フレームワークやテンプレートは、思考を補助する道具として便利ですが、それ自体が目的になると、判断軸のないまま作業だけが進む状態に陥ります。結果として、比較をやめたくても代替手段が見つからず、同じやり方を繰り返してしまいます。
比較作業が「仕事をしている実感」を生みやすい
競合比較は、調査・整理・資料化といったアウトプットが分かりやすく、業務として完結しやすい側面があります。そのため、実際には強みにつながっていなくても、「やるべきことをやっている」という安心感を得やすい手法です。
しかし、この安心感こそが、本来向き合うべき強み定義の議論を後回しにしてしまう原因にもなっています。
比較しなくても成り立つ「自社の強み」の定義とは
競合比較を前提にしなくても、自社の強みは定義できます。ここで重要なのは、強みを「差分」ではなく「選ばれる理由」として捉え直すことです。この視点に切り替えることで、これまで言語化できなかった価値が構造的に見えてきます。
| 要素 | 内容 | 言語化するときのポイント |
|---|---|---|
| 提供価値 | 顧客が得ている本質的な価値 | 機能ではなく「何が楽になるか」で表現 |
| 思想・スタンス | 価値提供に対する考え方や姿勢 | なぜそのやり方を選んでいるのかを言語化 |
| 前提条件 | 向いている企業・向いていない企業 | すべての人に向けない勇気を持つ |
| 判断基準 | 意思決定時に重視している軸 | 社内でブレない基準になっているか |
| 再現性 | 同じ価値を提供し続けられる理由 | 属人化せず説明できるか |
強みは「競合との差」ではなく「選ばれる理由」である
自社の強みというと、つい競合より優れている点を探そうとしがちですが、BtoBにおける強みは必ずしも相対的な優位性だけで決まるものではありません。発注側が求めているのは、最も安い企業や最も高機能な企業ではなく、自社の状況や課題に対して「ここなら任せられる」と納得できる理由です。
つまり強みとは、比較表の中で一番になることではなく、特定の顧客にとって合理的な選択肢になることを指します。この視点に立つと、競合との差を無理に探さなくても、語るべき価値は存在していることが分かります。
自社の強みは「提供価値・思想・前提条件」の組み合わせで決まる
比較しない強みを定義するうえで重要なのは、単一の要素に強みを求めないことです。自社が提供している価値、その価値を支える考え方やスタンス、そして「どんな企業に向いているのか」という前提条件が組み合わさって初めて、強みとして機能します。
たとえば、提供内容が似ていても、向き合い方や重視している基準が異なれば、選ばれる理由は変わります。強みは点ではなく構造で捉えるものであり、この構造を言語化することが、比較に頼らない差別化につながります。
価格や機能が同じでも、選ばれる企業が存在する理由
同じような価格帯、同じような機能を提供しているにもかかわらず、継続的に選ばれている企業は確実に存在します。そこでは、比較表には表れない要素が意思決定に影響しています。たとえば、理解の深さ、説明の一貫性、期待値のすり合わせ方などです。
これらは数値化しにくい一方で、顧客にとっては意思決定のリスクを下げる重要な判断材料になります。比較しなくても強みが成り立つとは、こうした「選ばれる理由」を意図的に整理し、言葉として共有できている状態を指します。
競合比較をしなくても強みを定義するために、最低限必要な視点
比較に頼らず自社の強みを言語化するためには、感覚や経験だけに依存しない視点が必要です。ここでは、多くの上位記事でも断片的に触れられている要素を整理しつつ、比較に置き換えられない本質的な視点を明確にします。
顧客が比較しているのは「企業」ではなく「意思決定リスク」
顧客は複数の企業を横並びで見ているようで、実際には「どの会社が一番優れているか」を比較しているわけではありません。本当に比較しているのは、「この選択で失敗しないか」「社内で説明がつくか」といった意思決定に伴うリスクです。
価格や機能は、そのリスクを判断するための材料の一部にすぎません。だからこそ、顧客の不安や判断基準に応える言葉を持っている企業ほど、比較表の外側で選ばれるようになります。強みを定義する際には、「何が優れているか」ではなく、「どんな不安をどう解消しているか」という視点が欠かせません。
外部視点と内部視点を接続しなければ、強みは成立しない
自社の強みを考える際、内部の視点だけに寄ると主観的になり、外部の視点だけに寄ると表面的になります。本当に使える強みは、顧客や市場からの評価と、自社が大切にしている価値観や判断基準が重なった部分に存在します。
外部視点で「選ばれている理由」を捉え、内部視点で「なぜそれを再現できるのか」を説明できる状態になって初めて、強みは組織の中で共有可能な概念になります。比較に頼らない強み定義とは、この二つの視点を意図的に接続する作業だと言えます。
なぜ個人作業やテンプレートでは、強みは言語化できないのか
ここまでの内容を理解しても、実際に強みを言語化しようとすると手が止まる企業は少なくありません。その原因は能力不足ではなく、強み定義を「個人の作業」や「型に当てはめる作業」として扱ってしまう点にあります。
強みは「考える作業」ではなく「揃える作業」である
自社の強みは、誰か一人が考え抜けば完成するものではありません。営業、マーケティング、経営、それぞれが持っている断片的な認識をすり合わせ、共通の前提として揃えていくことで初めて機能します。
にもかかわらず、担当者個人がテンプレートに沿って言葉を埋めようとすると、表面的には整っていても、現場で使われない強みが出来上がります。強みを言語化するとは、新しい言葉を生み出すことではなく、組織の中に散らばっている判断基準を一つに揃える作業です。
部門や立場ごとに解釈が分かれたままでは、強みは使えない
営業資料では強みとして語られている内容が、Webサイトでは別の表現になっている。このようなズレがある状態では、強みは存在していても機能しません。顧客との接点ごとに言っていることが変われば、納得感は薄れ、比較対象に戻されてしまいます。
強みとは、どの部門が使っても同じ意味で通じる共通言語になっている必要があるため、個人や一部門だけで完結させることはできません。テンプレートで整理しても強みが腹落ちしないのは、この前提が欠けているからです。
自社の強みを「使える言葉」に変えるために必要なこと
比較に頼らず強みを定義できたとしても、それが実務で使えなければ意味がありません。ここでは、強みを単なる概念で終わらせず、マーケティングや営業の現場で機能させるために欠かせない要件を整理します。
フレームワークではなく「思考プロセス」を揃える
多くの企業がフレームワークを導入しても強みを活かしきれない理由は、結論だけを共有し、そこに至る思考プロセスが揃っていないからです。言葉だけを決めても、その背景にある判断基準や価値観が共有されていなければ、解釈は部門ごとにズレていきます。
強みを使える言葉にするためには、「なぜその強みが成り立つのか」を説明できる共通の思考プロセスを組織全体で持つことが不可欠です。これが揃って初めて、強みは状況に応じて応用できる軸として機能します。
第三者視点と設計された場が必要になる理由
強みの定義を社内だけで進めようとすると、無意識の前提や過去の成功体験に引っ張られ、議論が堂々巡りになりがちです。そこで重要になるのが、外部の視点と、議論を前に進めるために設計された場です。
第三者が介在することで、「当たり前だと思っていた前提」や「言語化されていなかった判断基準」が浮き彫りになります。強みを実務で使えるレベルまで落とし込むには、偶発的な議論ではなく、思考を揃えるための設計が必要であり、その設計こそが組織全体で強みを共有する近道になります。
SHIFT AI for Bizが支援できること
ここまで見てきたように、比較に頼らず自社の強みを定義するには、考え方を変えるだけでなく、組織全体で思考を揃えるプロセスが欠かせません。そのプロセスを現実的な形で支援するのが、SHIFT AI for Bizの法人向け研修です。
自社の強みを、マーケ・営業で使える「共通言語」に変える
強みが機能しない最大の原因は、言葉として存在していても、使う人によって解釈が異なることです。SHIFT AI for Bizでは、強みを単なるスローガンやコンセプトで終わらせず、マーケティング施策や営業活動の中で一貫して使える共通言語として整理します。
どの部門でも同じ前提で語れる状態をつくることで、比較に戻らず、自社ならではの文脈で価値を伝えられるようになります。
競合比較に頼らない強み定義を、組織全体で揃える支援
強みは個人が考えて完成するものではなく、組織として揃って初めて意味を持ちます。SHIFT AI for Bizでは、第三者視点と設計されたプロセスを通じて、部門や立場の違いによって分断されがちな認識を整理し、再現性のある強み定義へと落とし込みます。
比較表では説明しきれなかった「選ばれる理由」を、自社の中に根づく言葉として整えたい企業にとって、次の一手となる支援です。
まとめ|「比較できない」は、強みを見直すためのサイン
自社の強みが競合と比較できないと感じたとき、多くの人は「差別化できていない」「打ち出し方が弱い」と考えてしまいがちです。しかし、本記事で整理してきた通り、その違和感は失敗ではなく、強みを定義する問いそのものを見直すべきタイミングだと捉えることができます。
競合比較は、差がある市場では有効な手段ですが、BtoBの多くの領域では、価格や機能だけでは選ばれる理由を説明しきれません。顧客が見ているのは「どこが一番か」ではなく、「この選択で納得できるか」「意思決定のリスクを下げられるか」です。そのため、強みは競合との差分ではなく、選ばれる理由として構造的に定義されている必要があります。
もし今、競合比較に行き詰まり、「結局うちの強みは何なのか」を説明できずにいるなら、それは次の一手を考えるべきサインです。
比較に頼らず、選ばれる理由を組織全体で言語化したいと考えている方は、SHIFT AI for Bizの法人向け研修をご検討ください。自社の強みをマーケティングや営業で実際に使える共通言語へと落とし込み、競合比較に戻らない戦略づくりを支援します。

「競合と比較できない」に関するよくある質問
ここでは、「自社の強みが競合と比較できない」と感じたときに、多くの担当者が抱きやすい疑問について整理します。比較に頼らない考え方を正しく理解するための補足として確認してください。
- Q自社の強みは、競合と比較しなくても問題ありませんか?
- A
問題ありません。BtoBにおいて重要なのは、競合より優れている点を証明することではなく、特定の顧客にとって「この会社を選ぶ理由」が明確であることです。比較はあくまで一つの手段であり、比較できないからといって強みが存在しないわけではありません。むしろ、比較できない状況は、強みを定義する視点を見直すべきサインだと捉えることができます。
- QUSPと自社の強みは、どのように違うのですか?
- A
USPは「独自の売り」を端的に表現した概念であり、主に外部に伝えるための言葉です。一方で、自社の強みは、そのUSPを支えている思考の前提や判断基準、提供価値の構造まで含んだものを指します。強みが整理されていなければ、USPは一時的なキャッチコピーに留まり、現場で使われなくなります。強みは内側の軸、USPは外側への表現だと考えると整理しやすくなります。
- Q強みについて社内で意見が割れている場合、どう進めればよいですか?
- A
意見が割れること自体は珍しいことではなく、むしろ自然な状態です。重要なのは、どの意見が正しいかを決めることではなく、なぜその意見が出てきたのかという前提や判断基準を言語化することです。立場ごとに見えている情報が違う以上、最初から一致することはありません。強み定義は、意見をまとめる作業ではなく、前提を揃える作業として進めることが重要です。
- Qフレームワークを使っても強みが見つからないのはなぜですか?
- A
フレームワーク自体が間違っているわけではありませんが、多くの場合、フレームワークを「答えを出す道具」として使ってしまっていることが原因です。フレームワークは思考を整理する補助線であり、それ自体が結論を生むものではありません。強みが見つからないのは、フレームワークの問題ではなく、その前提となる視点や判断基準が揃っていないことによって起きています。
