「AI研修をやったのに、現場では誰も使っていない」
そう感じたことはありませんか?
生成AIの急速な普及により、企業では“AIリテラシーの底上げ”が喫緊の課題となっています。しかし、その多くが「知識の習得」「ツールの操作方法」といった“スキル型の研修”にとどまっているのが現状です。
けれど、現場で実際にAIを活用できる人材は、単にスキルを持っているわけではありません。彼らに共通するのは、「変化を楽しむ姿勢」や「まず試してみるマインド」など、行動を変えるための“姿勢”です。
本記事では、「AIリテラシー=スキル」という誤解を解き、企業がいま本当に育てるべき“姿勢としてのAIリテラシー”とは何かを掘り下げます。
- なぜスキルだけでは不十分なのか?
- “姿勢”を育てるには、どんな研修が必要か?
- 社員が自然にAIを活用する組織の共通点とは?
このような疑問に対し、具体的な行動変容のポイントや研修設計のヒントも交えながら解説します。AIを“使える”人材を育てたい中堅マネージャーや教育企画担当者の方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
👉 AIリテラシーの全体像についてはこちらもご参照ください。
AIリテラシーとは|企業で“使いこなせる人材”を育てる5ステップ
そもそもAIリテラシーはスキルなのか?
知っている ≠ 使いこなせる
「うちの社員にはAIの基礎知識を学ばせました。研修も実施済みです。」
そんな企業でも、実際に現場でAIを活用している人はごく一部、というケースは珍しくありません。
なぜこうしたギャップが生まれるのでしょうか?
その理由の一つが、「AIリテラシー=知識や操作スキル」という捉え方にあります。
もちろん、基礎知識やツールの使い方を知っておくことは重要です。しかし、それだけでは実際の業務に活用されるには至りません。
現場で求められるのは、知識の“保有”ではなく、知識の“活用”に踏み出す行動です。
“スキルだけの人材”が現場でつまずく理由
スキルだけを与えられた社員が、実際の現場で次のようにつまずくことがあります。
- 「何に使えばいいかわからない」
- 「間違った使い方をしてしまいそうで怖い」
- 「上司の目が気になって試せない」
このような心理的なブレーキは、どれも“スキルの有無”ではなく、“姿勢のあり方”に関わるものです。
AIリテラシーは、ただの操作訓練や知識詰め込みでは根づかない。
むしろ、「試してみる」「問いを立てて使ってみる」といった行動の前提になるマインドセットこそが、リテラシーの中核だといえるのです。
「姿勢としてのAIリテラシー」が求められる3つの理由
① 技術の進化が早すぎて“正解”が存在しない
生成AIは、1年前の常識が半年後には通用しなくなるほど進化のスピードが速い分野です。
ChatGPTやGoogle Gemini、Microsoft Copilotなどのツールは、今この瞬間もアップデートを繰り返し、できることが日々拡張されています。
このような環境下では、「正しい使い方を完璧に学んでから使う」という発想そのものがリスクになり得ます。
なぜなら、習得に時間をかけた頃には、その知識がすでに陳腐化している可能性があるからです。
だからこそ、重要なのは「完璧な理解」よりも「変化に向き合う姿勢」。
リテラシーを“スキル”と捉えて学び終えた人材よりも、“姿勢”として持ち続ける人材の方が、圧倒的に価値を発揮しやすいのです。
② スキルは外注できても“向き合う姿勢”は内製が必要
AIを業務でどう使うかを最も理解しているのは、実は現場の社員自身です。
ベンダーや外部パートナーが導入支援をすることはできますが、「この業務にどう使うか」「使いながらどう最適化するか」という問いは、現場でしか答えが出せません。
つまり、スキルはツールや外部支援で補えても、“使いどころを考える力”や“試す姿勢”は自社の文化として内製するしかない。
企業が本当に投資すべきは、ツールではなく、AIに向き合う“構え”を持った人材の育成なのです。
③ 現場の行動変容なしに、経営インパクトは生まれない
経営層がいくら「AIを活用しよう」と号令をかけても、現場の行動が変わらなければ何も変わりません。
生成AIは現場の業務プロセスを最適化する力を持っていますが、その入口に立つには、個々人が「使ってみる」一歩を踏み出すことが不可欠です。
このとき、社員の中にあるのは“能力差”ではなく、“姿勢の差”です。
失敗を恐れずに試せるか。仮説を持って活用できるか。成果が出なくても学びに変えられるか。
それらは、すべてAIリテラシーという「姿勢」に支えられた行動の質なのです。
管理職・中堅社員に必要な“姿勢型リテラシー”の3原則
「AIリテラシーは姿勢である」と言っても、抽象的なままでは社内での育成や浸透は難しいものです。
そこで本章では、企業が育てるべき“姿勢”の具体的な要素を3つに整理して解説します。
① 試す勇気──“完璧じゃなくても使ってみる”という行動
生成AIは「使いながら覚える」ツールです。
にもかかわらず、「失敗したらどうしよう」「正しい使い方がわからない」と手を出せずにいる社員が多いのも現実です。
このとき求められるのは、マネージャー自身が試すことで、他の社員の心理的安全性も高まり、「やっていい空気」が組織全体に広がります。まずは上司から“小さな実験”を始めましょう。
- まずは一文だけ書かせてみる
- 会議メモを要約してみる
- 資料の叩き台をAIに作らせてみる
こうした“実験的な使い方”を重ねることが、スキルよりも実践知を育てます。
「やってみる」ことが最大のリテラシー教育だと言っても過言ではありません。
② 疑う力──AIを鵜呑みにしない“批判的思考”
生成AIは万能ではありません。
不正確な情報を堂々と出すこともあれば、倫理的に問題のある回答をしてしまうこともあります。
だからこそ重要なのが、AIの出力をうのみにせず、自ら評価・判断する力です。
たとえば、
- 出典が不明なら自分で調べる
- 複数の候補案を比較検討する
- 「これは本当に正しいか?」と問い直す
これらの思考を習慣化できる人材は、AIと“共に考える”ことができるようになります。
リテラシーとは知識ではなく、“使い手としての責任感”でもあるのです。中堅以上の人材には、AIの出力を自分で使うだけでなく、他者の生成物を評価・指導する力も求められます。その際の基準や問い方こそが、次世代リテラシーです。
③ 学び続ける習慣──変化を前提にアップデートする
AIツールは進化し続けています。
だからこそ、今の知識ややり方に固執せず、自ら情報をキャッチアップし、使い方をアップデートする姿勢が重要です。
- 社内のTips共有を能動的に見る
- 新しいプロンプト例を試してみる
- 他部署の活用事例を自部署に転用してみる
こうした行動が自然とできる人は、「使いこなせる人材」として組織の生産性向上に直結します。
AIリテラシーとは一過性のスキルではなく、“学び続ける文化”の一部として育むものなのです。
中堅層が担うべきは、自分の学びだけでなく、チームで学びを蓄積・循環させる仕組みづくりです。SlackでのTips共有や週報への記載など、小さな仕掛けが文化を育てます。
よくある失敗例|“姿勢なきAI研修”が機能しない理由
生成AI研修を導入したものの、「実務で使われていない」「研修の成果が見えない」といった声があがるケースは少なくありません。
その背景には、“姿勢”にフォーカスしない研修設計があることが多いのです。
ここでは、よくある失敗パターンを2つ紹介します。
マニュアル型研修で「やった気」になって終わる
研修の設計でありがちなのが、座学中心・知識詰め込み型の内容です。
- 生成AIの歴史や技術的な分類
- 各種ツールの紹介
- プロンプトの書き方パターン集
こうした情報提供はもちろん重要ですが、受講者の行動変容にはつながりにくいという課題があります。
とくに中堅社員や管理職層は、「知っている」だけでは動かず、“自分の業務でどう活用できるか”を実感することが必要です。
結果として、受けっぱなし/やりっぱなしで終わり、「学んだのに何も変わらない」という残念な状態になりがちです。
アウトプット設計がないと定着しない
知識のインプットだけでは、リテラシーは身につきません。
むしろ、「使ってみる→振り返る→応用する」というアウトプットのサイクルがなければ、実務への橋渡しは不可能です。
たとえば、次のような設計が欠けていませんか?
- ワークがあっても実業務とかけ離れている
- 実務応用の宿題やフィードバックがない
- 学んだあとに「どこで使えばいいか」が示されていない
このような状態では、社員は「試す」機会を持てず、行動に移す理由も見いだせません。
つまり、“姿勢”を育てることなく、スキルだけを置き去りにしてしまう研修なのです。
▼研修の効果が出ない理由について詳しく知りたい方はこちらも!
👉 研修しても人が育たない職場の特徴|“やりっぱなし教育”を脱する5つの処方箋
姿勢を育てるための研修設計とは?
“AIリテラシー=姿勢”と捉えるならば、研修の設計自体も大きく変える必要があります。
単なる知識の伝達ではなく、行動変容を促し、学びを習慣化するための仕掛けが不可欠です。
ここでは、姿勢を育てる研修のポイントを2つの視点から解説します。
行動設計に主眼を置いた育成ステップ
姿勢を育てるには、インプット型の研修ではなく“試して、振り返り、再実行する”型の設計が必要です。
たとえば以下のような構成が効果的です。
- 事前課題で「試す場面」を考えさせる(例:AIを使って提案資料を一度作ってみる)
- ワークショップで他者と活用法を共有・比較(例:同じ業務に対するAIの使い方を持ち寄る)
- 研修後の業務内実践&フィードバック(例:Slackなどで成果物を共有→フィードバック)
これにより、“試す→気づく→応用する”という行動サイクルが回りやすくなります。
社員が「試していい」と思える環境自体が、AIリテラシーを育てる土壌になります。
「学習する組織」をつくる視点
リテラシーは、一度教えて終わりのものではありません。
日々進化するAIに対応していくには、「学び続ける文化」を組織内に定着させることが重要です。
たとえば、
- Slack上に“生成AI活用チャンネル”を設けて気づきや成果をシェア
- 週1回のナレッジ共有会で、良い活用例をメンバー間で発表
- 業務日報に「本日AIを使った業務」の項目を追加 など
こうした仕掛けを通じて、“AIを使うのが当たり前”という空気感を醸成していくことが、最終的にリテラシーを“姿勢として”根付かせるためのカギになります。
\ “スキル”だけで終わらせない。行動変容を引き出すAIリテラシー研修とは? /
まとめ|AIリテラシーは“変化に向き合う姿勢”である
いま、企業に本当に必要なのは、「AIを学んだ人材」ではなく、「AIと共に動ける人材」です。その違いを生み出すのが、“姿勢としてのAIリテラシー”です。
なぜなら、AIという技術そのものが、正解のない・変化し続ける領域だからです。
だからこそ、企業が育てるべきなのは
- 完璧ではなくてもまず試してみる勇気
- 出力を自ら評価し判断する批判的思考
- 環境変化に対して学び続ける習慣
こうした“姿勢”を土台に持つことで、社員一人ひとりがAIを使いこなせるようになります。
そして、その積み重ねが現場の生産性を高め、組織としての競争力につながるのです。
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FAQ(よくある質問)
- QAIリテラシーは本当にスキルだけでは不十分なのでしょうか?
- A
はい、不十分です。AIに関する知識や操作スキルは大切ですが、それだけでは実務での活用にはつながりません。実際に使いこなせる人材に共通するのは、「試してみる」「疑う」「学び続ける」といった行動につながる“姿勢”です。
- QAIリテラシーを“姿勢”として捉えると、研修はどう変わりますか?
- A
インプット中心の座学ではなく、「使ってみる→振り返る→応用する」といった行動変容を前提とした設計が求められます。
ワークショップ型や実務連動型の研修が効果的です。
- Q社員にAIを試す“勇気”を持たせるには、どうすればいいですか?
- A
まずは「失敗してもよい場」をつくることが重要です。小さな成功体験を重ねることで、心理的ハードルが下がります。
また、上司や先行者が活用例をオープンに共有することで、「やっていいんだ」という空気を醸成できます。
- Qどのような組織が“姿勢としてのAIリテラシー”を根づかせやすいですか?
- A
「学び続ける文化」がある組織です。たとえば、AI活用の成果共有・SlackチャンネルでのTips交換・定期的なフィードバックの場などを仕組みとして持つ企業は、リテラシーが行動として定着しやすくなります。
- Q“姿勢”を育てる研修を外部に依頼することはできますか?
- A
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