「AIに仕事が奪われるのではないか」──広告業界でも、クリエイターの存在意義を問う声が絶えません。
しかしその問いに対して、いち早く答えを出し実践してきた会社があります。デジタル広告事業を展開する株式会社アドウェイズです。
同社は2018年から「人と機械の共生」をテーマに掲げ、AIを脅威ではなくパートナーとして位置づけてきました。2025年には漫画広告に特化したクリエイティブ最適化システム「Agent MALOOK」を社内展開。個人の経験や勘に頼っていた広告クリエイティブの制作プロセスを進化させ、業務効率化と事業成長の両立を実現しています。
本記事では、執行役員の中大輔氏と、現場でAIを駆使しながら子育てとキャリアを両立するシニアクリエイティブディレクターの秋元絵里氏に、変革の実態を伺います。

株式会社アドウェイズ 執行役員
M&Aを経てアドウェイズグループへ参画。複数の子会社立ち上げや広告事業のプロダクトマネジメントを経て、エージェンシー事業全体の戦略策定・組織管理を担う。現在は同事業とグループ全体のAI活用推進を統括している。

株式会社アドウェイズ シニアクリエイティブディレクター
2019年アドウェイズ入社。前職はテレビ制作会社のデザイナー。入社後は一貫して漫画広告のクリエイティブディレクターとして活躍し、2025年よりシニアクリエイティブディレクターとしてディレクターをまとめる立場を担う。
※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介する企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。
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2018年から問い続けた哲学「人の価値をどうレバレッジできるか」
アドウェイズのAI活用を語る上で欠かせないのが、2018年から掲げてきた「人と機械の共生」というテーマです。ChatGPTが登場する以前から、同社は人とテクノロジーの役割分担について議論を重ねてきました。

「当時から、代表の山田と『人の価値をどうレバレッジできるか』をよく話していました。顧客の要求レベルがどんどん上がっていく中で、我々がより大きく貢献するにはどうすればいいか。その問いがずっとベースにありました」
この哲学があったからこそ、同社はAIを「脅威」ではなく「強力な協力者」として迎え入れることができたといいます。
ただし、AI活用の全社展開には慎重なステップを踏みました。広告主のデータを預かる支援会社として、ガバナンスとセキュリティへの配慮が最優先だったからです。

「2024年末まで利用を限定的な範囲に留めていたのは、ガバナンス・セキュリティの問題と、新しいAIを使いたいという期待値のバランスを取る必要があったからです。エンタープライズライセンスの拡充と社内体制の整備を経て、ようやく全社展開に踏み切りました。現場からは待ち望む声がとても大きかったですね」
解禁後、社内では浸透が急速に進み、現在はほぼ全社員がAIツールにアクセスできる環境が整っているそうです。
暗黙知をデータ化する「Agent MALOOK」が変えた制作現場
同社が推進するAI活用の取り組みの一つに、社内システム「Agent MALOOK」があります。過去の膨大な広告実績やベテランディレクターの思考プロセスを学習したAIが、最適な「次の一手」をレコメンドするという仕組みです。
これまで広告制作の現場では、ネクストアクションの決定がディレクター個人の感覚や経験に依存しがちでした。

「過去の施策や実績が個人の頭の中に暗黙知として蓄積されていました。Agent MALOOKの機能を活用すれば、AIが過去の事例を構造化してレコメンドしてくれるので、個人の感覚に依存しない判断ができるようになります。新しいディレクターでも業務に入りやすく、精度の高い判断を実現できる環境に変わってきたと感じています」
この仕組みがもたらした変化は2つあります。
1つは、若手の即戦力化です。ジュニアレベルのスタッフがシニアレベルのナレッジを活用できるようになり、成長速度が飛躍的に向上しました。

「これまで作業に使っていた時間を、判断の経験に振ることができるようになりました。試行錯誤の回数は変わらなくても、成果につながる部分に力を注げるので、経験値の上がり方が早くなっています」
もう1つは、ベテランの役割の高度化です。

「シニアのメンバーには、AIに判断材料を与えたりチューニングしたりする役割を発揮してもらっています。経験で培ったノウハウをAIに実装していく。ここに大きな価値があると感じています」
2025年8月頃からシステムが稼働して以降、業務効率化と事業成長を同時に実現し、より精度の高い広告提案を通じて、クライアントの事業拡大に大きく貢献しています。
オペレーターではなく、クリエイターへ AIが問い直す「デザイナーの本質」
広告業界でよく聞かれる「AIでクリエイターは不要になるのか」という問いに対して、秋元氏は明確な見解を持っています。

「オペレーターとしてのデザイナーと、クリエイターとしてのデザイナーは全く別物だと思っています。上流の設計やディレクション業務、本質的な意味でのクリエイターであれば、むしろ活躍の場は広がると思います」
実際に同社では、実制作においては外部のデザイナーとの柔軟な連携体制を敷いており、社内チームはディレクションと判断に集中する役割分担にすでに移行しつつあります。
AIがレコメンドするネクストアクションの中から「今この顧客の課題に最もフィットするのはどれか」を選ぶ最終判断は、常に人間が行います。

「AIは過去のデータから提案することが得意ですが、実績のないゼロベースの新しい表現を生み出すことは苦手です。前例のないクリエイティブに挑む『決断』と、クライアントの想いを汲み取る『共感力』こそが、人間にしかできない役割だと考えています」
AIが実現した「限られた時間で、高いアウトプット」
AIの活用は業務効率だけでなく、働き方そのものも変えています。秋元氏は、子育てと仕事を両立しながら、AIとともに業務を進めていると語ります。

「現在は子供が小さいので、お迎えのために中抜けが必要な状況です。それでもお客様の担当とAgent MALOOKの推進を両立できているのは、AIのおかげだと考えています。」
広告業界は長時間労働のイメージが根強い業界です。しかし、AIを使いこなすことで、限られた時間でもプロとしての責任を果たせる環境が生まれています。

「AI推進に関わるメンバーの中には、できることが増えすぎてワクワクして眠れないという者もいます。一方で秋元のように、制約がある中でAIを活用して最大の価値を出せる。こうした多様な働き方をAIが支えてくれることは、組織にとって大きな可能性だと感じています」
「なにこれ すげー」を創り続けるAIと人が共創する未来
アドウェイズが掲げるパーパスは「全世界に『なにこれ すげー こんなのはじめて』を届け、すべての人の可能性をひろげる『人儲け』を実現する。」です。AIが進化した先に、同社はどのような未来を見据えているのでしょうか。

「目指しているのは、AIが各社員の有効なサポーターとして機能する世界です。社内のあらゆるナレッジがシームレスに結びついていて、それを全員が活用できる。それによって人の価値がさらに増幅される。そういう状態をまず作ることが、今の理想です」
最後に、広告主やパートナー企業へのメッセージとして、同社が最も大切にしている姿勢を伺いました。

「AIを推進する上で最も意識しているのは透明性と誠実さです。会社が責任を持って安全性を確認し、認めたツールだけを活用する。クライアントの素材をお預かりしている立場として、このガバナンスの徹底こそが私たちの矜持です」
AIは脅威ではなく、人の善意と創造力を増幅させるパートナーである。
アドウェイズの挑戦は、テクノロジーの進化が人間を「より人間らしい仕事」へと解放していく未来を、力強く示しています。
アドウェイズから学ぶ3つのポイント
1. AIは「脅威」ではなく「人の価値を増幅させるパートナー」
2018年から「人と機械の共生」をテーマに掲げ、AIを協力者として位置づけることで、組織全体のポジティブな変革を実現している。
2. 暗黙知のデータ化が、組織全体のレベルを底上げする
ベテランの経験をAIに実装することで、ジュニアがシニアのナレッジを活用できる環境を構築。若手の成長速度を加速させながら、ベテランはより高度な判断と創造に集中できる役割分担が生まれている。
3. 厳格なガバナンスが、自由な活用の土台をつくる
広告主のデータを預かる立場として、セキュリティと透明性を最優先に置いたAI展開が、クライアントからの信頼とクリエイターの安心感を同時に実現している。
AIによる効率化で生まれた時間を、お客様の課題解決と新しい価値の創造に充てる。アドウェイズの「人と機械の共生」は、広告業界の未来像を示す実践的なモデルケースとなっています。
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