「うちの業務、なんか非効率だなと思うんですけど、どこから手をつけたらいいか分からなくて…」
「現場が疲弊してる感じはあるのに、上司に説明しようとしてもうまく言葉にできない」
——そんな“モヤモヤした状態”に陥ったことはありませんか?

組織やチームに課題がないわけではない。けれど、「何が問題か」をはっきり言語化できず、会議や報告書も“なんとなくの改善”で終わってしまう。結果として、同じ課題が繰り返され、現場の停滞感だけが増していく。

この「何に困っているのか分からない」状態こそ、課題発見力が不足しているサインです。

本記事では、そうした状況から抜け出すための構造的な原因と、課題を“言葉にする”ための実践的な方法・フレームワークをステップで解説。さらに、生成AIを活用した“課題の可視化”手法や、組織全体で課題発見力を育む仕組みづくりについても紹介します。

「なんとなくの違和感」から、「具体的な改善」へ。

いま抱えている“見えない課題”に、名前をつけるところから始めてみませんか?

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目次

なぜ“課題が見えない”のか?──その原因は3つの構造にある

課題が「ある気はする」のに、具体的に見えてこない──。

この状態は、個人の思考力不足ではなく、組織の構造的な原因に起因していることが少なくありません。以下の3つの構造が、課題の発見を阻んでいる主な要因です。

属人化により情報が共有されていない

誰が何を担当しているのか、業務がどこまで可視化されているのか。属人化が進んでいる現場では、「業務の全体像」が把握できず、課題が“個人のやり方の問題”として処理されがちです。

これにより、根本的な業務設計やフローの問題が見逃され、改善が進まなくなります。

「問題の言語化」が苦手な文化・スキルの欠如

「なんとなくうまくいっていない」と感じていても、それを言葉にする力がなければ、課題は組織内で共有されません。

また、上司や他部署に気を使いすぎるあまり、本音での課題提起ができないことも。「問題を言うこと=批判」と捉えられる文化は、課題の“芽”を摘んでしまうリスクを孕んでいます。

「手段ありき」で動き、課題が置き去りにされる

「DX推進のためにツールを導入した」「改善プロジェクトを始めた」

——このように、“課題の明確化”をすっ飛ばして解決策から入ってしまうケースも散見されます。手段が目的化すると、本来解くべき問題が曖昧になり、形だけの活動で終わってしまうのです。

こうした構造が重なると、現場には「問題意識はあるが、どう動けばいいか分からない」という“見えない停滞”が広がります。

次のセクションでは、この状態から抜け出すための第一歩——「モヤモヤを言語化する方法」について解説します。

「課題発見」は、モヤモヤの言語化から始まる

面倒な作業

“課題が見えない”状態にあるとき、最初にやるべきは「明確にすること」ではなく「言語化すること」です。

完璧なロジックや客観性を追い求める前に、自分たちが感じている「違和感」や「やりにくさ」に言葉を与えることで、初めて課題は姿を現します。

「違和感メモ」から始めよう(主観を可視化する)

まずは主観で構いません。

「なんとなく手間がかかる」「最近ミスが増えた気がする」「説明しづらいフローがある」——こうした“違和感”を、業務中にメモとして残すだけでも重要なヒントになります。

特別なツールや時間を使う必要はなく、Slackの自分宛メッセージや日報の「気づき欄」でも十分。主観を可視化することで、課題の兆候を“言葉”として残すことができます。

「なぜ?」を繰り返す“5Why”で本質に近づく

「〇〇の作業に時間がかかっている」

→「なぜ?」→「確認事項が多いから」

→「なぜ?」→「情報が集約されていないから」……というように、“なぜ”を5回繰り返すことで、表層ではなく構造的な問題が見えてきます。

この「5Why分析」は、特に“なんとなく非効率”といった定性的な悩みの掘り下げに有効です。

「あるべき姿」とのギャップを描く(AsIs/ToBe)

課題は常に、“現状(AsIs)”と“理想(ToBe)”のギャップから生まれます。

たとえば、「今はExcelで毎月手入力している」という業務が、「理想はリアルタイムで自動集計されている状態」だとしたら、その間に存在する“差分”こそが課題です。

このギャップを図やフローで書き出すことで、曖昧な課題が明確なプロセス上の問題へと変わります。

「課題を言語化する力」は、個人のスキルだけではなく、組織の仕組みや文化に左右されます。

次のセクションでは、“声にならない声”を拾い上げるための技法を紹介します。

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現場の“声にならない声”を拾い上げる技法

課題の多くは、現場の中にすでに“兆し”として存在しています。

しかしそれらは、明文化されず、数字にも現れない“声にならない声”として埋もれてしまいがちです。ここでは、そうした無意識の気づきを拾い上げ、課題として可視化するための具体的な手法を紹介します。

KPT・YWT・日報などで“主観の断片”を収集する

定期的なふりかえりフレームワーク(KPT=Keep/Problem/Try、YWT=やったこと/わかったこと/次にやること)は、形式化された“感覚の共有”の場をつくるうえで有効です。

これらを1on1やチームミーティング、あるいは日報のテンプレートとして仕込むことで、メンバーのモヤモヤや違和感が表面化しやすくなります。

主観情報を意図的に収集することは、課題発見の第一歩です。

Slack・チャットログを“課題の鉱脈”として見る

日々のSlackやTeamsのやり取りの中には、「時間かかりますが対応します」「念のため手動でも確認します」といった、非効率や不安のサインが紛れています。

こうした“当たり前になっている非効率”は、本人すら課題と認識していないことが多いため、意識的にログをレビューする仕組みが必要です。

生成AIで“言語の山”からパターンを抽出する

ここで登場するのが、生成AIの活用です。

Slackや日報など大量の文脈情報をもとに、「よく出るフレーズ」「繰り返される表現」をAIで分析することで、“言葉にならなかった困りごと”の傾向を可視化できます。

たとえば、「確認」「手間」「再対応」などが頻出するチャンネルは、業務設計や情報共有に課題がある可能性が高いと言えるでしょう。

CopilotやChatGPTを活用すれば、人の気づきでは拾いきれないレベルの構造パターンを浮き彫りにすることができます。

こうして集めた“声なき課題”を、次にどう整理・分析し、行動につなげていくか

続くセクションでは、課題を整理するための具体的なフレームワークを紹介します。

課題を整理するための実践フレームワーク集

フレームワーク

「違和感」や「声なき課題」を言語化できたら、次に必要なのはそれらを構造的に整理することです。

現場で見つけた課題を放置せず、行動につなげるためには、“整理の型”を持っておくことが不可欠です。ここでは、汎用性が高く、属人化しにくい課題整理フレームを厳選して紹介します。

ECRS・4M・ロジックツリーなどの使い分け

▪ ECRS(Eliminate・Combine・Rearrange・Simplify)

現状の業務を「なくせないか」「まとめられないか」「順番を変えられないか」「簡素化できないか」という視点で見直す。

日々の業務棚卸しに最適な“見直しチェックリスト”として有効です。

▪ 4M(Man・Machine・Method・Material)

問題が「誰に起因するのか」「どのプロセスにあるのか」「使っているツールか、素材か」など、要因を分類して捉えることができます。

属人化を解く視点にも活用可能。

▪ ロジックツリー(What/Why型)

課題を「What(何が問題か)」「Why(なぜ問題か)」で分解し、因果関係や優先順位を明確に整理することが可能です。

“なんとなくの仕事”を炙り出す業務チェックリスト

見逃されがちなのが、「慣習で続けている業務」や「誰のためか分からない報告書」などの“名もなきムダ”。

以下のような問いかけで、思考停止になっている業務を可視化できます。

  • そもそもこの作業は何のためにやっている?
  • 成果につながっていると言えるか?
  • 自動化や代替手段は本当にないか?

このチェックリストは、チーム単位で振り返ることで、共有課題としての認識が進みます。

チームで共通認識をつくる「課題棚卸しシート」

個々の違和感やムダを、チームで持ち寄り、言語化・分類・優先順位付けするためのテンプレートを活用するのも有効です。

「違和感・仮説・影響度・発生頻度・関係部署」などの項目で整理することで、課題の粒度と影響範囲が明確になります。

SHIFT AIではこの「課題棚卸し」に関して、生成AIが活用できるようになる研修プログラムも提供しています。“課題が見えない”状態から抜け出す仕組み、あなたの組織にも導入してみませんか?

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課題をフレームに落とし込めれば、主観的な不満を、客観的な改善アクションに変換することができます。

次のセクションでは、こうした課題発見力を組織全体で育てる視点について掘り下げます。

「課題発見力」は、組織で育てるべき“共通言語”

課題発見力は、個人のスキルに依存するものではありません。

それはむしろ、組織の風土や仕組みのなかで育まれる“共通言語”であり、日常的に使われることで組織全体の問題解決力が底上げされます。

この力を“個人任せ”にしているうちは、属人化や属人的改善のループから抜け出すことはできません。

「対話」の習慣が課題発見の起点になる

定例会議や1on1、Slackのやり取りも含め、どれだけ“問題”について話す場があるかが課題発見力の強さを左右します。

特に、「感じているけど口にしづらいこと」を拾えるような対話の場は、違和感の共有と早期解決につながります。

例:

  • KPTを使って、毎週“Problem”を出す文化をつくる
  • チームで「気になることを5分だけ話す時間」を設ける

「課題を出すこと」が評価される文化があるか?

問題を指摘する人が“文句を言っている人”扱いされていないか。

「課題提起=前向きな行動」として評価される文化があるかどうかが、メンバーの発言の質と量に直結します。

この文化が醸成されていないと、問題は“知っている人の頭の中”に閉じ込められたままになります。

業務に追われず、立ち止まる時間を確保できているか

課題発見には、一歩引いて現状を振り返る“余白”が必要です。

業務に追われるだけの環境では、そもそも「考える時間」が生まれません。

例えば以下のような仕掛けが有効です。

  • 月初の“業務棚卸しミーティング”を固定化
  • 一週間に1時間だけ“非生産的な思考の時間”を設定
  • チームごとの課題発見ミッションの導入(ゲーミフィケーション的)

このように、課題発見力は「一部の優秀な人が持っているスキル」ではなく、全員で使えるようにするべき組織能力です。

ではここで、それを強化するために今注目されている生成AIの活用について見ていきましょう。

生成AIは「問い」を広げる力を持っている

AI活用が難しいと感じる現場がやるべき5つのこと|「うちにはムリ」の先にある突破口

課題発見力の強化において、いま注目されているのが生成AIの活用です。

「正解を出すツール」としてAIを捉えるのではなく、「問いを広げるパートナー」として使うことで、これまで見えてこなかった課題の“気配”を拾い上げることが可能になります。

業務記録の要約から“違和感パターン”を抽出する

たとえば、ChatGPTやCopilotを使って、Slackや日報の記録を自動要約させると、何度も出てくるキーワードや表現の偏りが浮かび上がってきます。

  • 「確認します」「再度やり直します」「時間かかります」などの繰り返しは、業務設計や情報共有の課題のサイン
  • 「〇〇さんに聞かないとわからない」などの発言は、属人化の兆候

人力では見逃してしまう頻出表現を拾い、パターンとして見せてくれるのが生成AIの強みです。

AIとの対話が“課題の言語化”を助ける

個人が感じている違和感や仮説を、AIに向かって説明することで、思考の整理や論点の発見が進むケースも多くあります。

例:

「この業務がなんとなく無駄に思えるんだけど…」→ChatGPTに背景や流れを説明→「なぜそれが必要とされているのか?」などの“問い返し”により、自分でも気づいていなかった前提や盲点が明らかに。

AIは“課題発見の壁打ち相手”にもなりうるのです。

AIリテラシー×業務理解が、実践型研修の鍵になる

生成AIの力を活かすには、ただツールを使うだけでは不十分です。

現場の業務を理解している人材が、AIをどう活かすかを考えられる状態が必要です。

そのため、AIリテラシー教育と業務課題の棚卸しをセットで行う「実践型研修」が、いま企業から注目されています。

SHIFT AIでも、こうした課題発見から業務改善までを支援する法人向け研修プログラムを提供しています。

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まとめ|課題を“見える化”できれば、改善は動き出す

「何に困っているのか分からない」状態は、課題が“存在していない”わけではありません。

むしろ、違和感や非効率の“種”が散らばっているのに、拾い上げる仕組みや言語化の技術が不足している状態だと言えます。

本記事では、課題が見えなくなる主な構造(属人化・文化・思考パターン)を明らかにし、

  • モヤモヤの言語化から始める課題発見のステップ
  • 課題整理に役立つフレームワーク
  • 組織的に課題発見力を育てる視点
  • そして、生成AIを活用した新しいアプローチ

を紹介しました。

「課題が見えるようになる」というのは、ただ問題点を列挙することではなく、次のアクションを定義できる状態にすることです。

課題を見える化できれば、改善は自然と動き出します。

そしてそれは、チームの成長や、組織の進化の第一歩でもあります。

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