「工数を削減しました」だけでは、誰も動いてくれません。
上司や経営層が本当に知りたいのは、 どれだけ業務が軽くなったかではなく、それで会社にどれほどの成果が生まれたのかです。
しかし現実には、「何時間減ったの?」「人件費は何円下がる?」と問われても、根拠を持って説明できず、せっかく改善しても評価されないケースが少なくありません。
この記事では、工数削減の効果や数字で伝えるための計算式と手順を、実務でそのまま使える形で解説します。
改善前→改善後を比較し、年間インパクトとROI(投資対効果)まで出せるようになります。
エクセルでも無料で始められる方法なので、今日から社内提案の説得力が一段上がります。まずは、成果を数字に変えるための3つの指標(工数×人数×人件費)から見ていきましょう。
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工数削減を数値で説明するために必要な3つの指標(工数×人数×人件費)
工数削減の成果は、時間だけで語ると相手に伝わりきりません。「誰が・どれだけ・いくら」の視点をそろえることで、はじめて評価される数字になります。
指標① 工数(時間)
工数とは、業務を完了させるために必要な作業時間のことです。「1人あたりの工数」だけでなく、「週・月・年」とスパンを広げて捉えることで、経営判断に直結する規模感が見えるようになります。例えば、1作業の改善が週単位で積み上がれば、年間の削減インパクトが一気に大きくなります。
指標② 人数・稼働率
同じ作業でも、担当人数が違えば成果も変わります。また、削減した時間を別業務に再配分できれば、生産性向上につながる実質的効果が生まれます。誰の時間が浮くのか、浮いた人が別の成果を出せるのか。この視点を含めない計算は、現場にとってリアリティがありません。
指標③ 人件費(時間単価)
工数削減は最終的にコスト削減=利益改善として企業に貢献します。月給ではなく、時給換算して評価することで、改善額をわかりやすく提示できます。固定費だけでなく、残業削減が発生する場合は、割増賃金部分も含めると効果がさらに明確になります。
次は、これら3つの指標を正確に把握するための「現状工数の測り方」を整理していきます。数字の精度が上がるほど、改善提案の説得力も強くなります。
現状工数の測り方|ヒアリングから数値化までの基本手順
改善の成果を数字で示すためには、まず現在どれだけ時間がかかっているのかを正しく把握する必要があります。曖昧な前提では、どんな計算式も機能しません。ここでは実務で使える工数の棚卸し方法を整理します。
タスクを分解し、全て洗い出す(WBSの考え方)
1つの業務は複数の作業で成り立っています。入力、確認、承認、報告など、小さな単位に分解することでどこが重いのかが初めて見えてきます。属人化されている手順ほど棚卸しで漏れやすいので、複数人へのヒアリングや実際の業務チェックが有効です。
所要時間を正しく取得する方法
「体感」だけで判断すると、ほぼ確実に誤差が生まれます。実測・自己申告・標準工数の3つの視点で時間を捉えることで精度が高まります。特に残業時間や待機時間の扱いは成果評価に大きく影響するため、切り分けて記録しておくことが重要です。
優先順位をつけて改善余地を発見する
すべての工数を一度に改善する必要はありません。工数が大きい、頻度が高い、担当人数が多いなど、効果の大きい順に狙う方が成果が出ます。インパクトと実現性の掛け合わせで、改善対象を見極めましょう。
次は、現状把握をもとに削減効果を計算する具体的な式と手順に進みます。説得力ある提案の核心部分に入っていきます。
削減効果の計算式と算出ステップ(基本形)
現状工数を把握できたら、次はどれだけ改善効果が出せるのかを数字で示す工程です。ここでは、提案資料や上司説明ですぐに使える計算式を整理します。複雑に見えても、押さえるべきはたった2つの数値です。
削減効果(時間)の計算式
削減効果(時間)=改善前工数 − 改善後工数
何時間浮くかを正しく算出することが、すべての出発点です。1回あたりだけの測定ではインパクトが小さく見えるため、週・月・年単位で展開することが大切です。頻度を掛け合わせるだけで、年間効果は一気に可視化できます。
削減効果(金額)の計算式
削減効果(金額)=削減効果(時間) × 時間単価
効果をコスト面で示すと、経営層への説得力が一気に高まります。残業削減が伴う場合は、割増賃金を含めると効果額が正確になります。また、直接的な人件費削減だけでなく、空いた時間を別業務に充てられる場合、その価値も含めることで実質的利益を説明できます。
次は、この削減効果を改善前→改善後の比較として、誰が見ても納得できる形に落とし込む方法を解説します。提案資料で勝つための重要ステップです。
改善前と改善後の比較で説得力を作る方法
削減効果を数字で示すだけでは、相手の心は動きません。改善前と改善後を並べて示すことで、「本当に良くなった」ことが一目で伝わるようになります。提案資料でも評価される最重要ポイントです。
Before→Afterの比較表で視覚化する
数字の羅列では変化が伝わりにくくなります。一覧表で比較することで改善幅が直感的に理解でき、上司や経営層の判断が早くなります。週・月・年と時間軸を広げることで「小さな改善でも年間では大きな成果につながる」というストーリーを描けます。特に「担当人数」「頻度」「稼働率」を併記するのが効果的です。
削減率を正しく計算してインパクトを補強する
「何%削減できたのか」は、改善の分かりやすい指標です。ただし、計算式を誤るとインパクトを小さく見せてしまうことがあります。削減率(%)=(改善前工数 − 改善後工数)÷ 改善前工数 × 100が正しい式です。ベースラインを誤ると成果が正しく伝わらないため注意が必要です。
変化を意思決定につながる言葉に変換する
伝えるべきは「何時間減ったか」ではなく、「その結果、何ができるようになったか」です。顧客対応の改善、新しい投資時間の創出、残業削減による働き方改善など、企業にとっての具体的メリットに言い換えることで、提案が単なる数字説明から未来を示す提案になります。
比較までできれば、あとはその成果がどれだけ会社の利益につながるのかを説明するだけです。次に、経営判断を一気に引き寄せるROI(投資対効果)の計算式を解説します。
工数削減のROIを経営層に説明する式(投資判断につながる数値化)
改善提案を通すうえで最も重視されるのが、投資対効果(ROI)です。「どれだけ効率化できたか」よりも、「会社の利益がどれだけ改善するのか」を示すことが経営層の意思決定を動かします。
ROI(投資対効果)の基本計算式
ROI(%)=削減効果(金額)÷ 改善コスト × 100
ここでいう改善コストには、ツール導入費や研修費、工数棚卸しに必要な時間など、成果に至るまでに掛かったリソースを正確に含めることがポイントです。投資額が少なく効果が大きければ、ROIは自然と高くなり、「やらない理由」がなくなります。
浮いた時間をどこへ振り向けるかを示す
空いた工数がただの空白時間では、経営層は納得しません。浮いた時間を、売上に直結する業務や品質向上施策へ再配分できるなら、実質的な利益創出として評価が跳ね上がります。成果の数字に「活用先ストーリー」を添えることで、提案は格段に通りやすくなります。
経営視点を取り入れた資料化で優先度が一気に上がる
ROIは単なる計算式ではなく、改善が投資判断を変える武器になる数値です。「時間削減」から「利益創出」へ視点を変えるだけで、評価基準は大きく変わります。提案資料では必ずROIを含めることで、社内の意思決定スピードを高められます。
無料で始められる工数削減のベースフォーマット(Excelでそのまま使える)
ここまでの内容を実務に落とし込むには、すぐに使える型を持っておくことが重要です。以下の3つを押さえれば、今日から工数削減の成果を数字で示せる状態が整います。
工数棚卸しシート|まずは現状を見える化する
工数削減の第一歩は、何にどれだけ時間がかかっているかの事実把握です。
属人化している工程ほど見落としやすいため、担当者複数へのヒアリングが必須です。
| 業務名 | 作業内容 | 担当者 | 1回あたり工数(分) | 頻度(回/週) | 人数 | 合計工数(時間/週) |
| 入力作業A | 例:データ入力 | 田中 | 15 | 20 | 1 | =(工数×頻度×人数)÷60 |
| 承認フローB | 例:上長承認 | 鈴木 | 5 | 20 | 1 | |
| … | … | … | … | … | … | … |
| 合計 | SUM |
ポイント
・作業はできる限り細かく分解
・週単位で積算 → 年間換算の基礎データになる
・担当者が違えば時間も変わるため、人数を必ず入れる
削減効果シミュレーション表|Before→Afterを数字で比較する
改善前後を並べることで、成果のインパクトが直感的に伝わります。
週→年へ換算しておくと、経営層への説明がスムーズです。
| 業務名 | 改善前(時間/週) | 改善後(時間/週) | 削減時間(時間/週) | 削減時間(時間/年) |
| 業務A | 5 | 3 | =前−後 | =削減×52 |
| 業務B | 2 | 1 | ||
| 合計 | 7 | 4 | SUM |
ポイント
・頻度×時間×人数を反映 → 誤差を防ぐ
・年間換算を明示し「規模感」を増やす
削減額・ROI算出表|評価者が知りたい数字を一括表示する
工数削減は時間削減=利益改善です。
効果をお金で示せれば、提案は一段強くなります。
| 指標 | 計算式 | 結果(例) |
| 削減額(年間) | 削減時間(年)×時間単価 | 円表示 |
| ROI(投資対効果) | 削減額 ÷ 改善コスト ×100 | %表示 |
ポイント
・残業削減が含まれる場合は割増賃金を必ず反映
・研修や改善にかかった時間も「コスト」として含める
たったこの3つが揃えば、工数削減を語る段階から工数削減を証明できる担当者へと変われます。
このフォーマットを活用しつつ、次章ではよくある疑問と詰めのポイントを整理して、提案の成功確度をさらに高めていきましょう。
まとめ|数字で語れる担当者が、改善を動かせる
工数削減は「頑張り」では評価されません。評価されるのは、根拠ある数字で成果を示せる人です。本記事では、改善を数字で伝えるための3つの指標(工数×人数×人件費)、現状把握の方法、削減効果の計算、比較、そしてROIまで、提案に必要な一連のステップを整理してきました。
無料フォーマットを活用すれば、今日から改善のインパクトを数字で示し、上司や経営層を納得させることができます。ここで終わりではありません。数字を武器に改善を推進するなら、データ管理と可視化の精度が成果の継続性を左右します。
Excel管理に限界を感じる前に、仕組み化と支援の検討が未来の投資判断をスムーズにします。
SHIFT AI for Bizでは、工数の見える化と改善を実務レベルで伴走し、成果につながる仕組みを構築するサポートを行っています。「成果の出る改善」を最短ルートで実現する一歩を、一緒に踏み出しませんか?

工数削減のよくある質問(FAQ)|提案前に必ず押さえたい論点
工数削減は数字で示せば説得力が上がりますが、評価者が抱く疑問に先回りして答えられるかどうかが、提案成功の分岐点になります。ここでは担当者がつまずきやすいポイントを整理します。
- Q標準工数がわからない場合はどうすればいい?
- A
現場の「体感」に頼るのではなく、実測・サンプル計測・複数人ヒアリングの3点セットで補正します。作業によって時間差が出る場合は、平均値ではなく中央値を採用することで精度が高まります。工数の過小見積もりは、効果が小さく見える原因になるため注意が必要です。
- Q効果が数字に表れないときは?
- A
改善対象の選び方を見直すことが最優先です。工数×頻度×人数が大きい業務から先に狙うことでインパクトは生まれます。また、空いた時間が成果に転換されていない場合は、再配分先(利益につながる業務)の設計こそが真の改善です。数字と業務設計はセットで語りましょう。
- QExcel管理の限界はどこにある?
- A
Excelは「始める」には最適ですが、工数データが増えるほど更新負荷が爆発します。不整合、二重管理、棚卸し遅延が起きると、改善のスピードが鈍化します。自動化・可視化まで踏み込むなら、専門的な支援やツール活用が必要になります。提案資料でも壁の存在を示すことで投資判断を後押しできます。
改善の正当性を数字で示しつつ、疑問を先回りして潰しておくことで、提案はブレずに通りやすくなります。
