株式会社SHIFT AIが運営する「AI経営総合研究所」では、実際に生成AIを活用している企業に対し「どうやって社内全体で生成AIを使う風土を築いたのか」「生成AIで既存の業務がどう変わったのか」などを取材して話を聞いています。
生成AIの活用が進む企業には、表面的には異なるように見えて、実は“驚くほど似た行動パターン”があります。トップダウンの意思決定、現場の自走、業務棚卸しの精度、ルール整備、教育…。こうした取り組みは、一部の先進企業だけが特別に行っているものではなく、「活用が進んでいく企業が自然と共通して取り組んでいること」なのです。
私たちAI経営総合研究所がさまざまな企業に取材してきた中で、成功企業の共通項が明確な5つのポイントに収束することが分かりました。これらを知ることで、自社がどこにつまずいているのか、どの順番で取り組むべきかが一気に見えてきます。
本記事では、取材で得たリアルな声をもとに、この“成功パターンの核心”をまとめました。
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※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介する企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。
「正しいプロンプト」の考え方
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トップダウン × ボトムアップの両輪をつくることの重要性
生成AIの活用が進まない大きな理由は、活用を推進する組織構造が社内で確立していないことです。トップダウンとボトムアップの両輪から、AI活用の機運を高めていくことが必要になります。
これまでに取材した企業の事例では、以下のようにトップダウン × ボトムアップの両輪をつくるケースが見られました。
株式会社みらいワークス
“あるメンバーがNotebook LMなどのツールを積極的に試し、その成果や面白さをSlackで発信してくれました。それをきっかけに部内での利用が一気に広がりました”
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丸紅株式会社
“生成AIの精度が不安なのであれば、その分たくさん回答案を出力させればいいし、それこそが生成AIの得意領域だ、という視点を地道に共有していくことで、「そういえば別に100%じゃなくてもいいか」という雰囲気を醸成し、利用の心理的ハードルを下げていきました”
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LINEヤフー株式会社
“全社員にAIの活用を義務づけるにあたり、LINEヤフーは社内ガイドラインを整備しました。AIを単なる便利ツールとして広めるのではなく、業務に組み込むためのルールを策定したのです”
“まずは全社員に基礎的な利用を義務づけ、そのうえで各部署の「AIアンバサダー」的な立ち位置の社員にセミナー等を実施してもらうことで、応用的な活用事例を展開する仕組みを整えています”
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サイボウズ株式会社
“トップダウンでもボトムアップでもなく、“サイドウェイ”と呼ばれる横のつながりを軸にしている点です。部署や職種の枠を超え、メンバー同士が互いの実践を共有し合うことで、現場発の知見が自然に広がっていきます。各本部から集まったメンバーが、ルールの更新情報や各部署の課題、成功事例を交換し合う。こうした“横の推進力”こそが、サイボウズの生成AI活用文化を支える土台になっています”
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生成AI活用は「まずは小さく始める」
生成AIの活用に成功している企業は、最初から大きな成功を目指していません。まずは小さな成功を積み重ね、徐々に大きく展開しています。
これまでに取材した企業の事例を紹介します。
株式会社地域新聞社
“一気に全社へ展開しても、使われなければ意味がない。むしろ「広めてくれる人」や「プロンプトを作ってくれる人」の存在が鍵だと感じました”
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株式会社Hajimari
“生成AIの社内定着を進めるうえで、全員に同じスタートラインを用意することを重視しています”
“活用事例のテンプレート化、具体例の共有などを行い、日常業務の中に自然と生成AIが入り込む仕組みを作っています”
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株式会社ジェイック
“もともと、社員が業務効率化の工夫や便利なツールをSlackで共有し合う風土がありました。生成AIが登場した際も、その延長線上で自然と活用事例が流れ始めます”
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何を効率化するのかを「明確」にする
たとえ生成AIを導入しても、業務効率化が必ず実現するわけではありません。何のために導入し、どの業務で活用したいのか、明確にする必要があります。AI活用に成功している企業は、業務の棚卸し精度が高いのです。
LINEヤフー株式会社
“AI活用の義務化の対象が議事録作成や調べ物、資料作成といった、社員なら誰しもが定期的に行う業務に絞られていることがあります。こうした業務はAIの効果が分かりやすく、実際に利用すると利便性を強く感じられるため、抵抗感なく受け入れられたのです”
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株式会社ジェイック
“商談や人材紹介における求職者との面談準備や内容の記録・整理、文章作成等のうち、定型業務をAIに任せることで、社員は顧客と向き合う本質的な業務に時間を割くことができるようになりました”
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CLF PARTNERS株式会社
“忙しすぎる人ほど、AIを使うべきです。こんなに生産性を上げてくれるツールは他にないです。営業準備・資料作成・リサーチ業務などのあらゆる場面で生成AIを活用しています”
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ルール整備→教育→利活用の順番で実践する
生成AIは便利な一方で、さまざまなリスクも存在します。思わぬ不利益をこうむることがないよう、ルール整備は必須です。
多くの企業はルールを整えた後に教育を実施し、従業員のAIリテラシーが高まったのち、本格活用につなげています。
花王株式会社
“「個人情報は入力しない」「出力結果は必ず利用者が確認する」といった基本的なルールが明記されています。法務部門とも連携し、情報漏洩やハルシネーションへの懸念を最小限に抑える形で仕上げました”
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バルテス株式会社
“AI技術推進部では、情報システム部と連携して社内の研修プログラムの設計にも関与しており、「生成AI利用に関する社内教育コンテンツ」や「ClaudeCodeを活用したテスト自動化ハンズオン」などの講座を提供しています”
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株式会社SHIFT PLUS
”社内ポータルや動画インタビュー形式での活用事例の共有も推進。約40件の社内事例を集約し、インタビュー形式で紹介する動画も複数制作。プロンプトの工夫や成果が“見える化”されており、社員同士で気づきをシェアし合う文化を形成しています”
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全社を巻き込んで浸透させる その具体的方法とは
生成AI活用を推進する上では、全社を巻き込む施策が重要です。Slackの活用や研究会の設立など、さまざまな形で全社を巻き込む事例が見られました。
株式会社ジェイック
”Slackに「業務効率化チャンネル」があって、もともとショートカットや便利ツールの紹介が日常的に投稿されていました。ChatGPTが出てきたときも、同じように『こんなことができました』と発信する人が出てきて、それを見た人がまた試す。自発的にナレッジが循環していったんです”
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ディップ株式会社
“AIを活用する過程で全社的な教育活動も展開されました。2023年にはAIアンバサダー制度を設け、250人ほどの社員が立候補しました。さらに横断組織「dip AI Force」を立ち上げ、勉強会やプロンプト大会を開催。優れたプロンプトを共有し合う文化を育てることで、社員一人ひとりのリテラシー差を埋めていきました”
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株式会社イントロダクション
“AIの効果を一過性のものにしないために、イントロダクションは社内での仕組みづくりにも注力しています。同社では実験的に「AI研究会」を立ち上げ、月に一度、土曜にオフィスを開放して自主的に学ぶ場を提供しました”
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成功企業は“共通点以外”に何を考えているのか?
共通項ではないものの、生成AIを活用する企業において「この考え方は覚えておきたい」「こういった活用アイデアがあったのか」といった気づきを個別に紹介します。
生成AIでは「短期的なROI」よりも「社内文化として根付かせること」を重視
世の中にはさまざまなツールやサービスが溢れています。企業が導入する際に最も気にするのは「ROI」、つまり費用対効果です。これは生成AIでも同様のことが言えます。この点に対し、生成AIを活用する企業はどう考えているのでしょうか。
株式会社出前館
“ROIという「短期的な成果指標」よりも、生成AIを社内文化として根付かせることです。従業員が日常的にAIを使いこなし、業務を効率化しながら創造的な仕事に注力できるようになれば、結果的に事業全体の生産性は大きく向上します”
“生成AIを導入するかどうかは、もはや選択肢ではなく必然です。すぐにROIが見えなくても進めるのは、将来の競争力を確保するためなんです”
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生成AI活用に不安や懸念を抱いている社員に対してのアプローチ方法
そして生成AIを活用するときに壁として立ち塞がるのが「現場社員による生成AIへの不安や懸念」です。とくにクリエイティブ領域での生成AI活用が目覚ましい一方で、「生成AIは敵」のような心理的ハードルを抱える人も少なくありません。
株式会社コロプラ
“前提として、当社は「クリエイティビティを向上し続けたい」と考えています。導入当初から組織での浸透を図るために、「生成AIはクリエイティブを加速するための手段でしかない」と強く発信し続けました”
“生成AIの能力の高さは実際に触れてみないとその価値がわかりにくいところがあります。だからこそまずは業務の中で触れてもらい、使っていく中で、生成AIはクリエイターの味方なんだと徐々に知ってもらう形で浸透していきました”
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業務効率化だけではない「事業としての新たな価値創出」にも貢献
生成AIの活用で最も語られることが「業務効率化」です。議事録作成や分析、壁打ちなど「時間をかけたくない業務」を手軽にしてくれる活用方法が最もイメージがつきやすいでしょう。
一方で、すでに生成AIを活用することで「価値創出」「競争優位性の確保」に繋げている企業も出現しています。
株式会社SHIFT PLUS
“SHIFT PLUSでは、CS×生成AIという専門領域において確かな成果を出しており、プリセールス段階から数百件規模のVoC分析を無料で実施することで、競合他社との差別化を図る提案スタイルを実現しています”
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内製化によって時間、費用、コミュニケーション面の「削減効果」
そして生成AIは業務効率化、その中でも「時間削減」に焦点を当てられやすいですが、外注コストを抑える効果も持ち始めています。
なお、生成AIを活用する多くの企業のスタンスとしても「決して外注等をゼロにしたい」というわけではありません。浮いた人員や予算、工数を「本来注力するべき部分に今まで以上に充てられるようになった」という声がほとんどです。
株式会社ジェイック
“以前はデザインの調整や簡単なプログラム修正を外部に依頼していましたが、今ではGeminiを活用して自分たちで対応できるようになりました。結果的に依頼・内容確認・請求書発行等のコミュニケーションを含む時間短縮やコスト削減効果も大きいです”
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生成AI活用の成功企業は「仕組み」をつくっている
生成AIの活用に成功している企業の共通点は、以下の5つです。
- トップダウン × ボトムアップの両輪をつくる
- まずは小さく始める
- 業務の棚卸し精度を高める
- ルール整備→教育→利活用の順番で実践する
- 全社を巻き込んで浸透させる
すべてのポイントを組み合わせて仕組み化することにより、生成AI活用の精度を高めています。
また、生成AIは「使えば使うほど『こんなこともできるんじゃない?』」といったアイデアが創出されやすいのも大きな特徴だと各社への取材を通して得た気づきのひとつです。
AI経営総合研究所を運営する株式会社SHIFT AIでは、多くの業務で生成AIを活用しています。たとえば、「問い合わせ」の対応を効率化することにも生成AIが役立っています。
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※株式会社SHIFT AIでは法人企業様向けに生成AIの利活用を推進する支援事業を行っていますが、本稿で紹介した企業様は弊社の支援先企業様ではなく、「AI経営総合研究所」独自で取材を実施した企業様です。
