導入事例 東海学園大学 様
大学教育に変革をもたらす生成AI──
東海学園大学「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」の挑戦

導入企業プロフィール

企業名
東海学園大学
事業内容
愛知県名古屋市・みよし市にキャンパスを構える。建学の精神「共生(ともいき)」にもとづく教育を展開。
導入目的
「多くの企業がすでに生成AIを業務導入し、生産性向上や効率化を実現している」現状を知り、「この技術を知らないと社会の流れから取り残されるかもしれない」という危機感を抱き、解消したかったため。

21世紀を生きるビジネスパーソンにとって、もはや生成AI技術はなくてはならないもの。そのテクノロジーを自在に操れば、AIは単なる便利なツールから、企業に眠る大きな可能性を引き出す“変革のパートナー”になるのかもしれません。この記事では、さまざまな業種の企業を訪ね、百社百様のAI導入の事例を探っていきます。

今回、登場するのは、愛知県名古屋市およびみよし市のキャンパスを拠点に「共生(ともいき)」教育を展開している東海学園大学です。現在、生成AI技術が目覚ましく発達している一方で日本の大学の教育現場では、学生のAI使用に危惧の念を表明している大学も多くあります。そんななか、東海学園大学は他大学に先駆け「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」を立ち上げました。果たしてその背景には、どんないきさつがあったのでしょう?

生成AIの衝撃「これを知らないと社会から取り残される」

同大学の学長の石川清氏はAIに対して懐疑的な立場でした。2023年7月には、全学生に向けて「チャットGPTなど対話型生成AIとの向き合い方について」と題した声明をホームページに掲載しました。この声明では、生成AIが画期的な技術であることを認めながらも、「機密情報や個人情報の漏えい」や「著作権侵害」などのリスクがあると指摘、思考→創造のプロセスをすべてAIに任せてしまうことへの危惧が表明されていました。

石川清学長

あのときの私の対応は、他の多くの大学のガイドラインを参考にして、いわば「右へならえ」の姿勢で取った対応でした。私自身が生成AIについて、多くの知識を持っていなかったからかもしれません。

そんな私の考えを根底からくつがえした出来事が起こりました。2024年12月に行われた産経新聞社主催の「生成AI×DX 2025展望」というオンラインセミナーに参加したときのことです。登壇者は、生成AI開発力の加速化を進めるGENIACプロジェクトなどの支援を行っている経済産業省の渡辺琢也さんをはじめ、東京大学大学院・松尾研究室の出身でGenesisAIを創業した今井翔太さんなど、6人のイノベーターたちが生成AIによって未来がどのように変革していくのかを語っていました。

登壇者のなかには、SHIFT AIの木内翔太さんもいました。これまでに数多くの企業のAI導入支援を通じて、AI人材育成の重要性を指摘していました。その話を聞いて、すでにかなり多くの企業が生成AIの技術を業務に導入し、生産性向上や業務の効率化を実現していることを知り、焦りました。この技術に真剣に向き合わねば社会の流れから取り残されるんじゃないか、と。
それと同時に、ソフトバンクの孫正義さんが折に触れて、声高に生成AI技術の重要性を指摘たことを思い出したんです。

そこで、年末から正月の休暇期間に、書籍や雑誌を買い込んで独学で猛勉強を始めました。その結果、わかったことは、生成AI技術は実に奥が深く、しかも新しい技術が次々とリリースされていて目まぐるしい発展を遂げているということです。その動きを網羅的に追うのは素人の私だけでは不可能に近い。専門家の助けを借りて、東海学園大学に「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」を立ち上げることを決意しました。

生成AIに向き合うには、スキルのみでなく、リテラシーこそ必要

石川清学長が「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」の先導者としてSHIFT AIを選んだのは、代表の木内翔太が掲げていたビジョンに共感したことが大きな要因だったといいます。

石川清学長

木内さんの「日本をAI先進国にする」という理念に心を打たれたのは、もちろんのことですが、その他にも東海学園大学と相性の合うコンサルティング機関があるのではないかと、いろいろと下調べしてみました。実際、SHIFT AI以外にも、たくさんのコンサルティング機関があることを知ったときは、驚きました。ただ、その多くが企業のビジネスの実務面でのAIスキルに特化しているところが多く、基礎から応用までを網羅的に学べるSHIFT AIの講座に魅力を感じるようになりました。

東海学園大学の「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」では、まず教員と職員を対象にして、生成AIについてのスキルとリテラシーの両者を向上させることを目標にしました。単に生成AIのスキルを身につけるだけでなく、今の時代の倫理観やリスクを知ったうえで、それを運用するリテラシーを育むことが重要だと考えたのです。SHIFT AIの教材には、そのうえで信頼をおけるものだと考えて導入へ踏み切りました。

創作の現場にもAIの波――文学ゼミで始まった新たな実験

東海学園大学の「全学的生成AIリテラシー向上プロジェクト」は、全教職員に参加を呼びかけましたが、定員20名のところ、約50名もの応募が殺到。最終的には授業などでの教育改革、業務での業務改革に具体的な目的意識を持っている20名のメンバーが選ばれました。職員内でも広報職や学生の問い合わせ担当者など、幅広い部署から参加者が相次ぎました。そのメンバーのひとり、人文学部創作文芸領域の加藤孝男教授に話を聞きました。

加藤孝男教授

私のゼミでは小説の創作について、学生とともにさまざまな方法を模索しています。学生のなかには、漫画やライトノベルしか読んだことのない学生もいれば、過去の名作を読み込んでいる文学通までさまざまです。彼ら彼女らが卒業制作として、雑誌に載せる様々なジャンルの作品を共に創作していくのが加藤ゼミの目標です。

ただ、なかなか創作が進まない学生の提出物のなかには、生成AIの助けを借りて作られたらしいものがありました。私の目にはなんとなく、そのことがわかってしまうのです。どうしたものかと正直、悩みましたね。
学生たちの創作に携わる身として、生成AIについて、何らかの考え方を示すべきではないかと迷っていたとき、石川清学長のプロジェクトの募集の話を聞き、真っ先に手を挙げました。ちょうど「NotebookLM」がリリースされた時期で、このサービスが小説や論文に利用できるのではないかと思っていたのでベストなタイミングだと思いました。

SHIFT AIの教材に触れるなかで、生成AIの可能性をあらためて再認識することになり、2025年4月からの加藤ゼミでは、生成AIによる創作活動を解禁したんです。
第170回芥川賞を受賞した九段理江さんは、「Chat GPTのような生成AIを駆使して書いた小説」と発言し話題を呼びました。その後も九段さんは2025年3月には「AIが95%、人間が5%を執筆した」とされる『影の雨』を発表しました。この作品は、プロンプトそのものや制作の裏話も公開することで話題を読んでいます。今後、生成AI技術は、小説の創作にも大きな影響を及ぼしていくでしょう。

変革のパートナーとしてAIと歩むこれからの大学教育

生成AIの技術をいち早く取り入れた東海学園大学の取り組みは今後、どんな発展をしていくのでしょうか?最後に石川清学長にその展望を語っていただきましょう。

石川清学長

現在、大学職員の間では、学生からの問い合わせ対応の自動化や議事録や報告書作成の省力化など、さまざまな業務改革が模索されています。また、加藤孝男先生のように、ゼミの場で積極的に生成AIを用いる動きが活発化しています。

私自身にとっても、いまや生成AIは大事なパートナーです。学長メッセージなどの原稿を書いたり、講義のスピーチ原稿をまとめるとき、的確なアドバイスをしてくれています。ゆくゆくは、SHIFT AIが企画・開発した「生成AIパスポート」の資格取得に挑戦しようと思っていますし、学生たちにもこれを薦めたいと思っています。

大学の役割は、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造できる人材を社会に送り込むことです。生成AIの技術はそのために今後、欠かせないものとなるでしょう。

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