本記事では、三井住友、みずほ、三菱UFJといったメガバンクはもちろん、地方銀行や海外の銀行まで、業務効率化、顧客サービス向上、リスク管理強化といった観点から20の活用事例を厳選してご紹介。

さらに、銀行業界がAIを導入するメリットや注意点、失敗しないためのポイントをわかりやすく解説します。この記事を読めば、銀行業務におけるAI活用の最前線がわかり、自社のDX推進や業務効率化の具体的なヒントが得られるはずです。

この記事の監修者
SHIFT AI代表 木内翔大

SHIFT AI代表 木内翔大

(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO AI & Web3株式会社AI活用顧問 / 生成AI活用普及協会(GUGA)協議員 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ SHIFT AI(会員20,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現のために活動中。Xアカウントのフォロワー数は12万人超え(2025年6月現在)

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目次
  1. 銀行業界におけるAI導入の背景
    1. デジタル化の進展と顧客ニーズの変化
    2. 競争激化による業務効率化の必要性
  2. 【厳選】銀行業界のAI導入事例20選を紹介
    1. 1.三井住友フィナンシャルグループ|AIチャットボット導入
    2. 2.三井住友フィナンシャルグループ|全社横断ナレッジ検索「SMBC-GAI」
    3. 3.三井住友フィナンシャルグループ|経営理念浸透ツール「AI-CEO」
    4. 4.三井住友フィナンシャルグループ|顧客向け財務分析AI「CFO Agent」
    5. 5.みずほフィナンシャルグループ|社内照会作業の負担を軽減
    6. 6.みずほフィナンシャルグループ|次世代AIコンタクトセンター
    7. 7.みずほフィナンシャルグループ|AIエージェント・プロトタイピング
    8. 8.みずほフィナンシャルグループ|金融特化型「〈みずほ〉LLM」
    9. 9.三菱UFJフィナンシャル・グループ|不正検知システム
    10. 10.三菱UFJフィナンシャル・グループ|行内業務効率化のためのセキュアな生成AI基盤
    11. 11.三菱UFJフィナンシャル・グループ|Sakana AIとの戦略的提携
    12. 12.三菱UFJフィナンシャル・グループ|AI営業研修「iRolePlay」
    13. 13.三菱UFJフィナンシャル・グループ|人事領域での生成AI活用
    14. 14.りそな銀行|音声認識AI「PKSHA Speech Insight」
    15. 15.横浜銀行|顧客対応AIシステム
    16. 16.七十七銀行|与信業務の効率化に向けて先端AIシステムを実証導入
    17. 17.東京スター銀行| VRラウンジで顧客が簡単操作
    18. 18.京都銀行|生成AIによる文書照会自動化で全行業務の効率化を推進
    19. 19.シンガポールDBS銀行|組織横断型AI導入
    20. 20.Bank of America|AIアドバイザーと顧客洞察
  3. 銀行業務にAIを導入する3つのメリット
    1. メリット1.業務プロセスの自動化と効率の向上ができる
    2. メリット2.顧客サービスの向上とパーソナライズができる
    3. メリット3.リスク管理と不正検知の強化ができる
  4. 銀行業務にAIを導入する前に知っておきたい2つの注意点
    1. 注意点1.初期投資と運用コストが増加する
    2. 注意点2.データプライバシーとセキュリティの懸念がある
  5. 銀行業務のAI導入で失敗しないための3つのポイント
    1. ポイント1.データの質と量の確保
    2. ポイント2.専門知識を持つ人材の育成
    3. ポイント3.継続的なシステムの改善と評価
  6. 銀行業界におけるAIの未来展望
    1. AIと人間の協働による新たなサービス
    2. 規制と倫理の課題への対応
  7. まとめ|早期にAIを導入して銀行業務の効率化を実現しよう
    1. 「AI、どう活用すれば…?」そのお悩み、ご相談ください
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銀行業界におけるAI導入の背景

顧客ニーズの変化や収益構造の見直しが求められる中、銀行は競争力を確保するために、AIをはじめとした先端技術の導入を本格化させています。

下記でデジタル化の進展と、顧客の行動変化がAIの導入にどのように影響しているのかを詳しく見ていきましょう。

デジタル化の進展と顧客ニーズの変化

銀行業界ではデジタル化の進展に伴い、顧客のニーズやサービス利用の形が大きく変化しています。

スマートフォンやオンラインバンキングの普及により、若い世代を中心にフィンテックの決済・送金サービスを活用する動きが広がり、24時間対応や個別に最適化されたサービスへの要望が高まっています。

さらに、少子高齢化や長引く低金利の影響で、銀行は従来の収益モデルの見直しを迫られているのです。こうした状況で注目されているのがAIの導入です。

顧客対応の自動化や業務効率化、パーソナライズなど、AIを利用することで利便性の向上と生産性の改善を同時に実現できる可能性があり、多くの銀行が導入に向けた取り組みを加速させています。

出典:わが国銀行を取り巻く環境変化と収益源の多様化

競争激化による業務効率化の必要性

銀行同士の競争が激しくなる中で、これまで以上に業務の効率化が求められるようになりました。AIを使えば、くり返しの作業を自動的に行ったり、データをすばやく分析したりと、正確な判断ができるようになります。

これにより、時間や人手を減らしながら、よりよいサービスを提供できるようになったのです。競争に勝つためには、今の働き方やサービスの進め方を見直し、AIを取り入れた新しい仕組みを考えることがもはや必要不可欠になっています。

【厳選】銀行業界のAI導入事例20選を紹介

ここからは、実際にAIを導入し、効率的に活用している銀行の事例20選をご紹介します。

1.三井住友フィナンシャルグループ|AIチャットボット導入

三井住友銀行では、AIチャットボットを行内業務に導入し、ヘルプデスクへの問い合わせ対応や人事関連の手続き照会などを自動化しています。

これによって、電話応答の削減や対応時間の短縮といった業務効率化が実現しました。質問内容はチャット入力欄に自由に記入でき、ボットでの対応が難しい場合には自動的に有人チャットへと切り替わる仕組みも整備されています。

また、学習データの自動生成ツールを活用することで、チャットボットの運用に必要なデータ準備も効率化されており、継続的な精度向上と利用促進につながっています。

出典:SMBCグループにおけるチャットボット活用事例

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2.三井住友フィナンシャルグループ|全社横断ナレッジ検索「SMBC-GAI」

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)では、社内規程や業務マニュアルといった膨大な情報の中から、従業員が必要な情報を迅速かつ正確に見つけ出すことに課題がありました。

この課題を解決するため、RAG(検索拡張生成)技術を活用した社内向けAIアシスタント「SMBC-GAI」を開発。このシステムは、約130万件に及ぶ社内ファイルを学習対象としています。

「SMBC-GAI」の最大の特徴は、質問に対して回答を生成するだけでなく、その根拠となった社内文書を明示する点です。これにより、金融機関に不可欠な情報の信頼性を担保しながら、組織全体のナレッジマネジメント基盤を抜本的に強化しました。

出典:株式会社三井住友フィナンシャルグループ ニュースリリース

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3.三井住友フィナンシャルグループ|経営理念浸透ツール「AI-CEO」

SMFGは、経営トップの理念やビジョンを組織の隅々まで浸透させ、AIとともに働く組織風土を醸成することを目指しています。

そのユニークな解決策として、グループCEOである中島 達氏の過去の発言や考え方を学習させた「AI-CEO」を開発しました。従業員がチャットツールを通じてこの「AI-CEO」と対話でき、経営トップの視点からアドバイスを得ることができます。

この取り組みにより、従業員がいつでも間接的に経営トップの思考に触れる機会が生まれました。これは、組織文化の浸透を促進し、次世代リーダーが経営的視座を養うための、かつてない規模のメンターシップ・プログラムです。

出典:Impress Watch

4.三井住友フィナンシャルグループ|顧客向け財務分析AI「CFO Agent」

SMFGは、法人顧客に対して従来の金融サービスを提供するだけでなく、経営に深く関わる戦略的パートナーとしての付加価値を提供しています。

その一環として、法人顧客向けに財務情報ダッシュボード「CFO Agent」の提供を開始しました。このツールは、AIを用いて顧客企業自身の財務データを可視化・分析し、財務戦略の立案といった高度な意思決定を支援します。

「CFO Agent」の提供により、銀行は単なる取引相手ではなく、顧客の経営に不可欠なアドバイザーとしての地位を確立。顧客との関係性を強化し、新たな金融商品を提案する機会を生み出す、強力な競争優位性となります。

出典:金融庁 第5回「金融分野におけるAI活用とガバナンスの在り方等に関する有識者検討会」

5.みずほフィナンシャルグループ|社内照会作業の負担を軽減

みずほフィナンシャルグループでは、2023年2月下旬から生成AIの導入検討を開始し、6月に社内向けテキスト生成AI「Wiz Chat」を導入しました。社員が業務の中で使い方を試し、活用法を社内SNSで共有するなど、全行的な利用促進が進められています。

さらに、事務手続き書などの社内情報と連携させたチャットボットも構築され、照会内容に対して意図をくみ取った回答が可能かを検証中です。

特に、これまで人に依存していた曖昧な照会や個別対応の領域において、生成AIがどこまで柔軟に対応できるのかを、現場の受電メンバーと連携しながら開発が進められています。

出典:〈みずほ〉が見据える、10年後の金融。生成AIを活用して、業務効率化と新たなイノベーションの実現へ。

6.みずほフィナンシャルグループ|次世代AIコンタクトセンター

みずほフィナンシャルグループは、顧客が電話やチャット、店舗など複数のチャネルを利用する際に、情報が分断され、その都度同じ説明を繰り返す必要があるという顧客体験の課題を抱えていました。

この課題を解決するため、2024年8月に生成AIを活用した次世代コンタクトセンターシステムをリリース。このシステムは、顧客との通話内容をリアルタイムで分析・要約し、オペレーターに最適な回答や提案をサジェストします。

さらに、あらゆるチャネルの応対記録をAIが自動で要約し、セキュリティ環境で営業店と共有が可能です。これにより、顧客がチャネルを移動してもスムーズに対応を引き継ぐことができ、シームレスなチャネル体験の提供を目指しています。

出典:株式会社みずほ銀行 ニュースリリース

7.みずほフィナンシャルグループ|AIエージェント・プロトタイピング

みずほフィナンシャルグループでは、従来のシステム開発が専門知識を要し、現場のニーズに迅速に応えることが難しいという課題がありました。この状況を打破するため、AIがもたらす「ソリューション開発の民主化」の可能性を模索していました。

その象徴的な取り組みとして、加藤 勝彦頭取自らがAIエージェントの構築を体験しました。頭取は自然言語による簡単な指示だけで、AIエージェントが自律的にタスクを分解し、わずか1分程度で来店予約システムのプロトタイプを完成させる様子を実見しました。

この体験は、プログラミングスキルを持たない現場担当者が、自らの手で迅速に業務改善ツールを作成できる時代の到来を示すものです。経営トップが自らその可能性を発信することで、組織全体に「仕事の仕方が根本的に変わる」という強力なメッセージを送り、現場主導のイノベーションを加速させています。

出典:みずほフィナンシャルグループ DXの取り組み

8.みずほフィナンシャルグループ|金融特化型「〈みずほ〉LLM」

みずほフィナンシャルグループは、汎用的な生成AIではカバーできない、独自の業務マニュアルや金融商品の専門知識、さらには企業文化といった要素を反映したAIの必要性を認識していました。

そこで、NTTデータグループが開発したLLM「tsuzumi®」などを活用し、金融業務に特化した大規模言語モデル「〈みずほ〉LLM」の開発に着手しました。

このプロジェクトの目的は、みずほ独自の膨大な社内データを追加学習させることで、他社には模倣不可能な、みずほ独自の「思考」を持つAIを創出することです。

出典:みずほフィナンシャルグループ DXの取り組み

9.三菱UFJフィナンシャル・グループ|不正検知システム

三菱UFJフィナンシャル・グループは、従来の偽造カード対策では限界があり、少額かつ巧妙な手口が増えたことで、人の目では見分けがつきにくくなっているという問題を抱えていました。

そこでPKSHA Technologyの「PKSHA Security」を採用し、AIによって小口から大口取引まで幅広い不正を検知可能にしました。

さらに、独自のアルゴリズムにより不正パターンを日々自動学習し、新たな手口にも迅速に対応できる体制を構築しています。結果として、不正抑止の精度とスピードの両面で大きな成果を上げています。

出典:三菱UFJニコスがクレジットカードの不正使用検知にAIを導入~「人的ノウハウ・知見×AI」で業界最高水準の不正抑止精度に!

10.三菱UFJフィナンシャル・グループ|行内業務効率化のためのセキュアな生成AI基盤

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では、生成AIの活用にあたり、情報漏洩リスクを完全に排除したセキュリティ環境の構築が課題でした。一般公開されているAIサービスでは、入力したデータが外部のAIモデルの学習に利用される懸念があります。

そこで、マイクロソフト社の「Azure OpenAI Service」を基盤とし、入力データが外部に漏れることのない独自の生成AI基”MUFG版ChatGPT”を開発。これにより、行員は安全な環境でAIの能力を最大限に活用できる体制が整いました。

この安全な基盤の上で、稟議書の作成支援や金融レポートの要約など、現場から110を超えるユースケースが自発的に生まれています。

出典:MUFG DXストーリー

11.三菱UFJフィナンシャル・グループ|Sakana AIとの戦略的提携

MUFGは、中期経営計画の柱の一つとしてAI活用を掲げ、データ駆動型経営への変革を加速させています。その中で、最先端のAI技術を迅速に取り込み、金融業界特有の要件に応える独自のAI能力を確立する必要がありました。

その解決策として、AIスタートアップであるSakana AIと数年間にわたる包括的なパートナーシップ契約を締結。この提携は、外部のトップレベルの専門家と協業することで、自社のAI戦略をさらに進化させるという強い意志の表れです。

提携の初期段階では、高度な専門知識が求められる複雑な社内外文書の作成プロセス自動化に共同で取り組みます。これにより、付加価値の高い業務を拡張し、他社にはない競争優位性を確立することを目指しています。

出典:Impress Watch

12.三菱UFJフィナンシャル・グループ|AI営業研修「iRolePlay」

MUFGでは、営業担当者の育成において対人でのロールプレイングを重視していましたが、指導者と担当者の双方の時間を確保することが大きな課題となっていました。

そこで、SCSK社が提供するAIロールプレイングサービス「iRolePlay」を導入。このシステムにより、行員はAIを相手に、時間や場所の制約なく、いつでも対話形式のトレーニングを行うことが可能になりました。

この取り組みは、特に経験の浅い若手行員の早期戦力化に貢献しています。さらに、優秀な人材の営業ノウハウをデジタル化して組織全体で共有することで、自律的な学習文化の醸成と人的資本の価値最大化を推進しています。

出典:PR TIMES

13.三菱UFJフィナンシャル・グループ|人事領域での生成AI活用

MUFGは、企業価値向上に不可欠な「人的資本経営」を高度化するため、従来の人事異動や人材配置において、より客観的でデータに基づいたアプローチを模索していました。

そこで、野村総合研究所(NRI)と共同で、人事領域における生成AI活用の実証実験(PoC)を進めています。この実験では、NRIが開発した「Talent Market Place(TMPi)」を活用し、行員一人ひとりのスキルと各ポストで求められるスキル要件をAIが可視化し、照合します。

AIの活用により、人事部は行員の強みや個性を的確に把握し、最適な人材配置を提案できるようになりました。これにより、従業員のキャリア満足度と組織全体の生産性向上を両立させ、データ駆動型の人事戦略の実現を目指しています。

出典:株式会社三菱UFJ銀行 ニュースリリース

14.りそな銀行|音声認識AI「PKSHA Speech Insight」

得率に差が生じていること、また、通話後の後処理に時間がかかっていることが課題でした。

そこで、顧客との電話応対をAIで分析する「PKSHA Speech Insight」を導入。このシステムは、通話内容を自動でテキスト化・要約するだけでなく、LLMを用いて会話の品質を分析します。

アポイント獲得に成功したハイパフォーマーの対話とそうでない対話を比較分析することで、成功に繋がる話し方といった「暗黙知」をデータに基づいて可視化。これにより、オペレーターは客観的なデータに基づいたフィードバックを得て自律的にスキルを改善でき、チーム全体のパフォーマンスの底上げを実現しています。

出典:PR TIMES

15.横浜銀行|顧客対応AIシステム

横浜銀行では、人手不足への備えと業務効率化を目的に、ボイスボット「MOBI VOICE」を導入し、電話対応の一次受電業務を自動化しました。導入により、対応の取りこぼしを防ぎ、放棄呼ゼロを実現しています。

さらに、従業員の負担軽減にもつながり、月に67時間分の対応業務を削減する効果がありました。顧客対応の質を保ちつつ、デジタルチャネルの強化と従業員満足度の向上を同時に実現した好事例です。

出典:株式会社横浜銀行|電話からボイスボットへ。自動化によるデジタルチャネルの促進で放棄呼ゼロを実現

16.七十七銀行|与信業務の効率化に向けて先端AIシステムを実証導入

七十七銀行では、与信関連業務の増加に対応し、業務の効率化と取引先企業との関係強化を目的として、先端的なシステムの導入に向けた実証実験を開始しました。

導入に際しては、セキュリティの信頼性と導入までのスピードを重視し、三井住友銀行での運用実績があるNTTデータの「OpenCanvas」上で提供されるクラウドサービスを採用しています。

安全性と実用性を兼ね備えた形で業務改善を図りながら、今後の本格展開に向けた検証を進めています。

出典:七十七銀行へAI業況変化検知システム導入に向け実証実験開

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17.東京スター銀行| VRラウンジで顧客が簡単操作

東京スター銀行では、時間や場所にとらわれず、顧客が自身のペースで操作できるバーチャル空間の提供を目指し、「東京スター銀行 VRラウンジ」を構築しました。

この取り組みは、同行の目的や要望を丁寧に整理しながら進められ、スマートフォンやパソコンからアクセス可能な仮想店舗として、利便性と新しい体験価値を両立しています。

VRラウンジは、銀行業務のデジタル化を推進する「MiraiLab」事業の一環で、金融業界では初の本格導入事例として注目を集めました。

出典:「実店舗での体験をオンライン上でも!」株式会社タッグ、独自の特許技術を活用し「東京スター銀行 VRラウンジ」を構築!

18.京都銀行|生成AIによる文書照会自動化で全行業務の効率化を推進

京都銀行は2025年2月、行内向けAIチャットボットに生成AIを活用した文書検索・回答機能を追加し、約4300人の全従業員を対象に運用を開始しました。

この新機能により、行内規定やマニュアルをもとにした問い合わせ対応が迅速化され、業務の効率化が進んでいます。現在は約1000種類の文書に対応していますが、2025年内には約4000種類へ拡大予定で、対応範囲の拡充によるさらなる業務支援が期待されています。

同行では年間8000時間の削減効果も見込んでおり、生産性向上の有力な取り組みとして注目されています。

出典:京都銀行が生成AIで行内業務を自動化、年8000時間の削減効果を見込む

19.シンガポールDBS銀行|組織横断型AI導入

シンガポールのDBS銀行は、AIチャットボットを導入し、問い合わせ対応の迅速化とサービス品質の向上を実現しています。こうした動きは、銀行業界におけるデジタル競争の激化を象徴しました。

さらに、テクノロジー企業の金融サービス参入も進み、競争は一層厳しさを増しています。配車アプリで知られるGrabやGojekは、モバイル決済機能を拡充し、銀行の顧客を取り込もうとするなど、従来の金融機関にとって脅威となる存在となっています。

出典:SEA銀行業界のデジタル時代を制する人材マネジメント

20.Bank of America|AIアドバイザーと顧客洞察

Bank of Americaが提供する「LifePlan」は、利用者のライフステージに応じた資金計画を支援するデジタルアプリです。出産や住宅購入といった目標に対して、口座と連携しながら金融アドバイスを提供し、動画・ツール・読み物・チェックリストなどを通じて達成をサポートします。

個々の目標に合わせたパーソナライズ体験が特徴で、顧客満足度の向上に貢献しています。2020年のリリース以降、2023年3月時点で1,000万人以上が利用し、累計550億ドル超が同行口座に追加されるなど、大きな成果を上げました

出典:Bank of Americaのデジタルを利用した顧客体験への取り組み

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銀行業務にAIを導入する3つのメリット

銀行業務にAIを導入することで、どのようなメリットがあるのかをまとめました。

  • 業務プロセスの自動化と効率の向上ができる
  • 顧客サービスの向上とパーソナライズができる
  • リスク管理と不正検知の強化ができる

メリット1.業務プロセスの自動化と効率の向上ができる

これまで人の手で行っていた定型的な作業をAIに任せることで、業務の効率を高められます。例えば、紙の伝票処理にAI-OCRを導入すれば、膨大な量の帳票も短時間で正確に読み取りをし、人為的ミスが減ります。

作業が速くなることで、顧客への対応もスムーズになり、全体のサービス品質向上につながるでしょう。

また、チャットボットを使えば問い合わせ対応に割いていた人件費を削減できるなど、コスト面でも効果があります。不正取引の監視や融資の審査といった作業もAIに任せることで、限られた人手でも効率よく業務を進められることから、銀行にとってAIは今や重要な経営ツールとなっています。

メリット2.顧客サービスの向上とパーソナライズができる

AIを活用することで、銀行はきめ細かい顧客サービスを提供できるようになります。例えば、AIが取引履歴や属性データを分析し、個々のニーズに応じた商品やサービスを自動で提案することが可能です。

ある銀行では、AIによる住宅ローンのレコメンド機能を導入した結果、申込件数が前年比で1.4倍に増加したというケースもありました。さらに、チャットボットによる24時間対応の導入により、問い合わせ対応の待ち時間が大幅に短縮され、顧客満足度調査で「非常に満足」と回答した割合が約20%改善したという報告もあります。

AIの導入は利便性だけでなく、顧客との信頼関係の構築にも効果が期待できます。

メリット3.リスク管理と不正検知の強化ができる

AIは膨大な取引データをリアルタイムで分析し、通常とは異なるパターンや口座の不自然な動きを即座に検知します。

そのため、不正送金やマネーロンダリングなどの金融犯罪を早期に察知し、速やかに対処できます。人間では見逃しがちな微細な兆候もAIが高精度に予測・判別できるため、セキュリティ体制が一段と強化されるでしょう。

実際に、一部の銀行ではAIによる不正検知導入後、該当する取引の発見率が従来比で30%以上向上したという例もあり、AIはリスク対策においてもおすすめのツールです。

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銀行業務にAIを導入する前に知っておきたい2つの注意点

AIを導入するにあたり、メリットだけではなくデメリットもしっかり押さえておきましょう。ここでは2つの注意点をご紹介します。

注意点1.初期投資と運用コストが増加する

AIの導入には、初期投資や運用コストが伴い、銀行にとっては無視できない負担です。AIシステムの構築には専門的な技術や外部ベンダーとの契約が必要になり、その分コストがかさみます。

また、導入後も保守・アップデートやデータ管理、人材育成に必要な費用が発生し、これらが人件費やシステム維持費として収益を圧迫することもあるでしょう。特に投資が先行するため、収益とのバランスを慎重に考える必要があります。

注意点2.データプライバシーとセキュリティの懸念がある

銀行業界でAIを導入する際、特に注意すべきなのがデータプライバシーとセキュリティの問題です。AIは膨大な顧客データを分析して機能しますが、個人情報の取り扱いには万全の体制が不可欠です。

不適切な管理や外部からの不正アクセスがあれば、信用失墜や法的リスクに直結します。さらに、AIによる取引や行動パターンの監視が進む中で、利用者のプライバシーをどう守るかも大きな課題です。

また、サイバーセキュリティ対策としては、データの暗号化やアクセス権限の制限、システムの定期的な監査などが必要です。

銀行業務のAI導入で失敗しないための3つのポイント

AIの導入には、あらかじめ知識を入れておく必要があります。ここでは銀行業務のAI導入で失敗しないためのポイントを3つ紹介します。

ポイント1.データの質と量の確保

AI導入を成功させるには、高品質で十分な量のデータを確保することが欠かせません。まずは、どのようなデータが必要かを明確にし、その収集方法を具体化することが重要です。

収集後は、データの精度や一貫性を保つために定期的なチェックとクレンジングを行い、常に最新でなおかつ信頼できる状態を維持する必要があります。

さらに、社内の複数部門や外部ソースからのデータも統合し、AIにとって有効な情報量を確保することで、モデルの精度と実用性を高められるでしょう。

ポイント2.専門知識を持つ人材の育成

AIを効果的に活用するためには、専門知識を持つ人材の存在が欠かせません。まずは、AIやデータ分析に関するスキルを持つ人材を採用し、プロジェクト推進の核となるチームを強化することが重要です。

加えて、既存社員にも技術や知識のアップデートを目的とした継続的なトレーニングを実施し、社内全体のAIリテラシーを底上げしていく必要があります。

さらに、自社の業務特性に合わせた教育プログラムを構築すれば、特定領域に特化したスキルを持つ人材を効率的に育成できます。

ポイント3.継続的なシステムの改善と評価

目的に応じた明確な評価基準を設定し、システムが期待通りに機能しているかを定期的にチェックする体制を整えることが重要です。

評価結果をもとに改善点を洗い出し、新たな技術や手法を柔軟に取り入れることで、常に最適な状態を維持できます。また、過去の運用履歴や改善内容を記録・管理すれば、効果の検証と再発防止が可能になり、AIシステムの品質と信頼性を継続的に高めることにつながります。

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銀行業界におけるAIの未来展望

銀行業界では、AIの役割が業務の効率化から価値創出へと広がりつつあります。今後は、人とAIが協力しながら新たなサービスを生み出す時代が到来すると考えられます。

一方で、社会的責任を伴う業界だからこそ、規制や倫理への配慮も欠かせません。ここからは、今後の展望を2つの視点から解説します。

AIと人間の協働による新たなサービス

AIと人間が協力することで、銀行業務はより効率的で質の高いサービスになります。AIは顧客データをもとに最適な提案を行い、人間はその情報を活用して判断や対話を担当します。

AIが分析と処理を、人間が信頼構築や柔軟な対応を担うことで役割分担が生まれ、業務のスピードと精度が向上するでしょう。この協働によって、一人ひとりに合ったサービスを提供できるようになり、より豊かな顧客体験が実現されます。

規制と倫理の課題への対応

銀行業界でAIを活用する際には、顧客の資産や個人情報を扱うという性質上、法的な規制と倫理的配慮が不可欠です。

特に融資や審査など重要な判断にAIを用いる場合、根拠やプロセスが不透明では説明責任を果たせません。こうしたリスクを回避するため、判断の透明性や公平性を確保する規制が必要です。

また、多くの金融機関では、AI活用ガイドラインの策定やデータの偏りを防ぐ仕組み、外部監査の導入など、倫理面への配慮も進めています。これらの取り組みによって、顧客の信頼を守りつつ、安全で持続可能なAIの活用が可能となっています。

まとめ|早期にAIを導入して銀行業務の効率化を実現しよう

銀行業界におけるAI導入は、業務効率化や顧客サービスの質向上にとどまらず、不正検知やリスク管理といった重要な分野にも広がりを見せています。大手銀行の先進事例からもわかるように、AIは今や銀行経営に欠かせない存在となりつつあります。

一方で、導入には初期投資やセキュリティ、倫理面での配慮も必要で、技術だけでなく体制や人材の整備も重要です。これからAI導入を検討する銀行にとっては、目的に合った活用法と信頼できるパートナー選びが鍵となります。
SHIFT AIでは、金融業界の特性に合わせたAI導入支援を行っており、課題の整理からPoC、本番展開まで一貫してサポートが可能です。AI活用にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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