「エッジAI」という言葉、最近よく耳にするけれど、正直「クラウドAIと何が違うの?」と思っていませんか? 

AIがビジネスに不可欠となりつつある今、このエッジAIがさまざまな業界で注目を集め、業務効率化やコスト削減、新しいサービスの創出に繋がる事例が次々と生まれています。

本記事では、製造、自動車、小売、ヘルスケア、農業、金融までの業界別エッジAI活用事例を徹底解説します。合わせてエッジAIを活用するメリットや導入を成功させるコツも紹介します。

ぜひ最後までご覧いただき、未来のビジネス戦略にお役立てください。

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目次

そもそもエッジAIとは? クラウドAIとの違いをわかりやすく解説

「AI」は身近になったけれど、「エッジAI」と聞くと「クラウドAIと何が違うの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。じつはこのエッジAIは、さまざまなビジネスシーンで注目されている重要な技術なのです。

ここでは、エッジAIの基本的な考え方から、多くの人がすでに知っているクラウドAIとの違いまで解説していきます。

まずはエッジAIの基本から押さえていきましょう。

エッジAIとはデバイス側でAI処理を実行する技術

エッジAIとは、一言でいうと「データが発生する現場(エッジ)に近い場所でAI処理を行う技術」のことです。

ここで言う「エッジ」とは、ネットワークの「端」、つまり皆さんが使っているスマートフォンやパソコン、街なかの監視カメラ、工場のセンサー、自動車といった「デバイス(端末)」そのものを指します。

通常AIを使うときは、デバイスが集めたデータをインターネット経由で遠くにある高性能なコンピューター(クラウド)に送り、そこでAIが分析・判断して結果をデバイスに返す、という流れが一般的です(これをクラウドAIと呼びます)。

しかしエッジAIでは、AIの「頭脳」の一部(推論モデル)をデバイス自体に搭載します。そのため、デバイスがデータを集めたら、クラウドに送ることなく、その場でAIが考えて判断を下すことができるのです。

クラウドAIとの主な違い

エッジAIとクラウドAIの最も大きな違いは、先ほども触れた「AIが処理を行う場所」です。エッジAIはデバイス側(現場)、クラウドAIはデータセンター(遠隔地)で処理します。この違いが、他のさまざまな特徴の違いを生み出しています。

どちらが良い・悪いというわけではなく、それぞれに得意なこと、苦手なことがあります。以下の表で主な違いを比べてみましょう。

比較項目エッジAIクラウドAI
AI処理現場デバイス(端末)またはローカルサーバークラウド上のデータセンター
応答速度◎高速(リアルタイム性が高い)△低速(データ転送に時間がかかる)
データ通信量◎少ない(必要な結果のみ送信)△多い(生データをクラウドに送信)
通信コスト◎低い△高い(データ量に比例)
セキュリティ◎高い(機密データをローカルで処理可能)△注意が必要(通信経路やクラウド上の保護)
処理能力△デバイスの性能に依存(制限あり)◎高い(大規模な計算リソースを利用可能)
オフライン動作⚪︎可能×不可(ネットワーク接続が必須)
モデル更新△複雑(多数のデバイスへの配布・管理が必要)⚪︎容易(クラウド上で一元管理)

このように、エッジAIは「速さ」「通信量・コストの少なさ」「セキュリティの高さ」「オフラインでも動く」といった点が強みです。そのため、自動運転や工場のリアルタイム制御、プライバシーが重要な顔認証などに適しています。

一方、クラウドAIは「パワフルな処理能力」と「管理のしやすさ」が強みです。非常に複雑なAIモデルを動かしたり、大量のデータを時間をかけて分析したり、常に最新のAIを使いたい場合に適しています。

どちらか一方を選ぶだけでなく、両方の良いところを組み合わせた「ハイブリッドAI」という考え方もあります。大切なのは、解決したい課題や目的に合わせて、最適なAIの形を選ぶことです。

エッジAIが活用される場面

具体的にエッジAIが利用されるシーンも少し整理してみましょう。エッジAIは以下のような使われ方をします。

  • カメラによる機械の異常検知
  • カメラによる人の転倒監視
  • 自動車の自動運転
  • ドローンの自動飛行
  • 生産機器の自動操縦
  • スマートフォンの画像の自動翻訳

エッジAIはカメラに搭載されることが多く、工場での設備監視や病院、介護施設などでの人の転倒監視に利用されます。画像処理機能を最大限生かして自動車やドローン、工場の生産機械などの自動化も可能です。また、近年ではスマートフォンにもエッジAIが搭載されることがあり、カメラで画像を撮影した際の自動翻訳、画像編集などの機能も一例だと言えるでしょう。

エッジAIを導入するべき4つのメリット

エッジAIは、従来のクラウドAIだけでは解決が難しかった課題を克服できる、大きなメリットがあります。

ここでは、エッジAIがもたらす主な4つのメリットについて、それぞれ詳しくみていきましょう。

  1. リアルタイム性の向上
  2. 通信コストの削減
  3. セキュリティの強化
  4. オフラインでの安定稼働

詳しく解説するので参考にしてみてください。

メリット1.リアルタイム性の向上

エッジAIの最大の強みの一つが圧倒的な「リアルタイム性」、つまり応答速度の速さです。

インターネットを経由したデータのやり取りには、どうしても時間的なロス(遅延、レイテンシとも言います)が発生してしまいます。しかし、エッジAIはこの通信時間をほぼゼロにできるのです。

例として、車の自動運転をみてみましょう。もし前方に急に人が飛び出してきたとき、クラウドに「人がいる!」とデータを送って、クラウドからの「ブレーキを踏め」という指示を待っていては、手遅れになるかもしれません。

エッジAIなら、車載カメラが人を捉えた瞬間に車自身が判断してブレーキをかけることができます。この一瞬の判断が生死を分ける場面では、エッジAIのリアルタイム性が不可欠なのです。

同様に、工場の生産ラインで不良品を見つけたり、監視カメラが不審な動きを捉えたりする場面でも即座の対応が求められます。エッジAIによる遅延のない高速処理は、事故のリスクを減らし、生産性を高め、より安全でスムーズなサービス運用を可能にするのです。

メリット2.通信コストの削減

エッジAIには、ネットワークにかかる「通信コスト」を大幅に削減できるというメリットもあります。

AIが扱うデータ、特にカメラの映像や多数のセンサーからの情報はサイズが大きいことが多いです。これらの「生データ」をすべてクラウドに送ろうとすると、膨大なデータ通信量が発生し、ネットワーク回線の費用やクラウドサービスの利用料がかさんでしまいます。

しかしエッジAIなら、デバイス側である程度のデータ処理や分析を実施し、本当に必要な情報だけを選んでクラウドに送る、という運用が可能です。

例えば、工場の機械を監視するセンサーがあるとします。通常時は「異常なし」という結果だけを送るか、何も送らない。そして、温度や振動に異常なパターンが見られたとき、そのデータや警告情報をクラウドに送信します。

このように、クラウドへ送るデータ量を最小限に抑えることで、月々の通信費用を大幅に節約できます。また通信コストの削減だけでなく、ネットワーク全体の負荷が軽くなり、他の通信が快適になるという副次的な効果も期待できるでしょう。

メリット3.セキュリティの強化

データの安全性を高められる点も、エッジAIの重要なメリットです。

特に、個人のプライバシーに関わる情報や、企業の重要な機密情報を扱う際に、その真価を発揮します。 なぜなら、エッジAIはデータをデバイス内部や、インターネットに接続されていない閉じたネットワーク(ローカル環境)の中で処理できるからです。

例として、顔認証システムを考えてみましょう。顔のデータは非常にデリケートな個人情報です。エッジAIを使えば、カメラが捉えた顔の特徴をデバイス内で分析し、登録データとの照合まで完結させられます。顔画像そのものをクラウドに送らずに済むため、プライバシー保護の観点から非常に安全です。

エッジAIなら、機密性の高いデータを外部に送信する必要がない、あるいは最小限にできるため、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。

一方、クラウドAIを利用する場合、データをインターネット経由で送信する必要があります。この通信経路上でデータが盗み見られたり、クラウドサーバー自体が攻撃を受けたりするリスクはゼロではありません。

メリット4.オフライン環境での安定稼働

エッジAIは、インターネットに繋がっていない「オフライン」の状態でも安定して動作できるという、クラウドAIにはない大きなメリットを持っています。これは、AIの「頭脳」がデバイス自体に組み込まれており、クラウドに頼らずとも自分で考えて判断できるからです。

世の中には、インターネット接続が不安定だったり、そもそも利用できなかったりする場所がたくさんあります。例えば、山間部にあるダムや橋などのインフラ設備、トンネルの中、通信網が整備されていない農地、あるいは災害発生時に通信が途絶えてしまった状況などです。このような環境でクラウドAIを使おうとしても、ネットワーク接続が切れた瞬間に機能しなくなってしまいます。

しかしエッジAIであれば、ネットワーク環境に左右されずに、デバイス単体でAI処理を続けられます。 センサーが異常を検知したり、カメラが特定の状況を認識したりといった機能を、オフラインでも維持できるのです。

これにより、これまでAIの導入が難しかった場所での課題解決や、絶対に停止が許されない重要なシステムの信頼性を高めることが可能になります。AIを活用できる範囲が大きく広がる点も、エッジAIの魅力といえるでしょう。

【業界別】ビジネスを加速させるエッジAIの活用事例10選

それでは具体的な活用事例をみていきましょう。

実際に企業がどのようにエッジAIを活用し、どんな成果を上げているのか。ここでは業界別に、製造からヘルスケア、そして金融といった幅広い分野を取り上げていきます。

  1. 【製造】外観検査・品質管理の自動化と精度向上(アイシン)
  2. 【自動車】リアルタイムな物体・歩行者検知と衝突回避システム(SUBARU)
  3. 【小売】無人店舗・スマートストア実現のための自動決済・在庫管理(TOUCH TO GO)
  4. 【医療】CT/MRIなど医療画像のリアルタイム解析と診断支援(NTTデータ)
  5. 【ヘルスケア】ウェアラブルデバイスを用いた患者の健康状態モニタリング(ユビテック)
  6. 【農業】ドローンやセンサーによる農作物の生育状況モニタリング・病害虫検知(オプティム)
  7. 【金融】ATM等におけるリアルタイム不正利用・異常取引検知(日立システムズ)
  8. 【鉄道】乗客データの収集による運用計画最適化(東京都)
  9. 【販売】顧客属性の把握によるマーケティング(JR博多シティ)
  10. その他分野(インフラ管理、エンターテイメント等)での活用事例紹介

さまざまな業界の事例を参考にすることで、自社のビジネスへのヒントがきっと見つかるはずです。

【製造】外観検査・品質管理の自動化と精度向上(アイシン)

製品の品質を守る上で欠かせない外観検査。従来は人の目に頼る部分も多く、検査員の負担や見逃し、検査基準のばらつきが課題でした。

ここにエッジAIを活用したのが、自動車部品メーカーのアイシンです。同社では、製造ラインの目視検査に使う検査ソフトが不安定で、ライン停止が頻発し生産効率が下がっていたという課題がありました。

そこで、高性能なエッジデバイス(NVIDIA Jetson)とAI画像認識アプリを現場のカメラ側に設置。クラウドに頼らず、エッジ側で高速に画像処理を行うことで、検査装置の安定稼働を実現しました。

出典:デジタルクロス「アイシン、目視検査工程にエッジAI使う自動判定システムを導入」

その結果、ライン停止の原因だった検査トラブルがなくなり、「止まらないライン」の実現に大きく前進したのです。このように、エッジAIは検査を自動化・安定化させ、品質を維持しながら生産ダウンタイムを削減することに貢献しています。

【自動車】リアルタイムな物体・歩行者検知と衝突回避システム(SUBARU)

交通事故、特に追突事故や歩行者との接触事故を減らすために、多くの新型車に搭載されているのが、衝突被害軽減ブレーキなどの安全機能です。この心臓部とも言えるのが、エッジAIによるリアルタイムな物体検知技術。そしてその代表例が、SUBARUの運転支援システム「アイサイト」です。

アイサイトは、車に取り付けられたステレオカメラが捉えた映像を、車載コンピュータ(エッジ)に搭載されたAIが瞬時に解析します。前方の車や歩行者、自転車などを正確に認識し、もし衝突の危険があると判断すれば、ドライバーに警告したり、自動でブレーキをかけたりして衝突回避や被害軽減を支援します。

出典:SUBARU「SUBARUの総合安全」

クラウドとの通信を待っていては間に合わないため、このリアルタイムなエッジ処理が極めて重要です。その効果は絶大で、SUBARUの公式サイトではアイサイト搭載車は追突事故発生率が0.06%という結果が出ています。

ドライバーの安全を守る上で、エッジAIがいかに重要な役割を果たしているかが分かる事例です。

【小売】無人店舗・スマートストア実現のための自動決済・在庫管理(TOUCH TO GO)

レジの行列に並ぶことなく、商品を手に取って店を出るだけで支払いが完了する。そんな未来のような「無人店舗」や「スマートストア」の実現にも、エッジAIが不可欠な技術となっています。

JR東日本系列のコンビニ「NewDays」の無人店舗などで導入されている、TOUCH TO GO社のシステムが良い例です。

このシステムでは、店舗の天井に設置された多数のカメラと、商品棚に埋め込まれた重量センサーがお客様の動きと手に取った商品を捉えます。そして、店舗内に設置されたサーバー(エッジ)でAIが「誰が、どの商品を、いくつ手に取ったか」をリアルタイムに判定します。お客様が決済エリアに立つと、合計金額が自動で表示され、キャッシュレスで支払いを済ませるとゲートが開いて退店できる、という仕組みです。

出典:TOUCH TO GO「TTG製品」

レジ待ち解消による顧客満足度向上はもちろん、店舗側にとっても人件費削減や正確な在庫管理に繋がる、まさに店舗DXの象徴的な事例と言えるでしょう。

【医療】CT/MRIなど医療画像のリアルタイム解析と診断支援(NTTデータ)

病気の早期発見に不可欠なCTやMRIといった医療画像。しかし、その画像を読影(読み解いて診断すること)する専門医は限られており、負担が大きいのが現状です。

この課題に対し、NTTデータが開発したAI画像診断支援ソリューションは、医師の「目」を強力にサポートします。このAIは患者の医療画像を分析し、病気の可能性がある箇所を画像上やテキストで示してくれるのです。

出典:NTTデータ「ニュース」

このソリューションの大きな特長は、腎臓がんのような特定の病気だけでなく、さまざまな臓器のあらゆる異常を検出できる点、そしてCTのメーカーや撮影条件(造影剤の有無など)によらず安定した性能を発揮する点です。

その実力を検証するために行われた宮崎大学医学部附属病院での実証実験では、診断ニーズの高い腎臓がんに対して正解率89%という高い診断性能が確認されました。この結果は、NTTデータのAIが実際の医療現場での診断支援に大きく貢献できる可能性を示しています。

【ヘルスケア】ウェアラブルデバイスを用いた患者の健康状態モニタリング(ユビテック)

腕時計型のスマートウォッチなど、身につけるだけで健康状態をチェックできる「ウェアラブルデバイス」。これとエッジAIを組み合わせることで、日々の体調変化を捉え、事故や病気の予防に繋げる取り組みが始まっています。特に、建設現場や運輸業など、厳しい環境で働く人々の熱中症対策としても注目されています。

ユビテックの「Work Mate」というサービスでは、作業員が身につけたスマートウォッチが心拍数などの生体データを常に計測。そのデータをデバイス自体や近くのゲートウェイ(エッジ)でAIがリアルタイムに分析し、個人の体調や暑さ指数なども考慮しながら、熱中症になる危険な兆候を検知します。

出典:ユビテック「2023年「Work Mate」熱中症予兆検知機能の“効果実績値”を公開 」

もし危険なサインが見られた場合は、即座に本人と管理者のスマートフォンに「休憩してください」といった警告を通知。実際に、2023年の夏には、このシステムから警告を受けた作業者の多く(84%)がすぐに休憩などの対策を取り、その中の9割以上(91%)が無事に体調を回復したという実績データが公開されています。

クラウドにデータを送るタイムラグがないため、まさに「手遅れになる前に」知らせることができるのです。

【農業】ドローンやセンサーによる農作物の生育状況モニタリング・病害虫検知(オプティム)

広大な畑や水田を隅々まで見て回り、作物の状態を常に把握するのは大変な労力です。この作業を効率化するために、AIを搭載したドローンやセンサーが活用されています。

オプティムの事例では、AIを搭載したドローンが上空から圃場(畑や水田)の画像を撮影します。その画像をドローン自体(エッジ)のAIが解析し、作物の生育にムラがある場所や、病気や害虫が発生している箇所をピンポイントで特定するのです。

出典:オプティム「プレスリリース」

この技術のすごいところは、特定した場所にだけ、必要な量の農薬をドローンが自動で散布できる点です。これにより、圃場全体に農薬を撒く必要がなくなり、農薬の使用量を大幅に削減しながら、効果的に病害虫を防除できます。

エッジAIが農家の「目」となる好例といえるでしょう。

【金融】ATM等におけるリアルタイム不正利用・異常取引検知(日立システムズ)

高齢者を狙った「振り込め詐欺」は後を絶たず、ATMが犯罪に利用されるケースが問題となっています。この対策として注目を集めているのが、ATM自体にエッジAIを搭載し、利用者の怪しい動きを検知するシステムです。

日立システムズが提供する「振り込め詐欺防止AIカメラサービス」は、ATMブース内に設置されたカメラの映像をエッジAIがリアルタイムで解析します。

出典:日立システムズ「振り込め詐欺防止AIカメラサービス」

もし利用者が「携帯電話で誰かと話しながらATMを操作している」といった、振り込め詐欺でよく見られる特徴的な行動を検知すると、即座にATM画面に警告を表示したり、あるいは銀行員に通知したりします。

これにより、犯人の指示に従って送金させられそうになっている被害者を、まさにその場で食い止めることが可能になるのです。

【鉄道】乗客データの収集による運用計画最適化(東京都)

エッジAIは公共交通機関でも活用が進んでいます。

東京都は都営地下鉄にエッジAI搭載のカメラを設置し、電車に乗る乗客数などのデータを収集しました。

出典:Idein、東京都との協働プロジェクトで鉄道DXを推進 都営地下鉄の乗客量データをAIカメラで取得・可視化

高精度での人物検出ができ、乗車数を正確に把握することにつながりました。得られたデータは、人員配置や運航計画の作成に活用される予定です。

エッジAIは人の監視だけではなく、人数といった顧客データの収集にも活用できることを示す例だと言えるでしょう。

【販売】顧客属性の把握によるマーケティング(JR博多シティ)

商業施設の運営を行うJR博多シティも施設内にエッジAI搭載のカメラを試験的に導入しています。

カメラの映像をもとに、時間帯別の顧客の人数や性別、年齢などの情報を収集しました。その結果、曜日や時間帯ごとの客層分析が正確に行えるようになり、掲示物の効果検証をしやすくなりました。得られたデータは、顧客や店舗運営者の満足度向上に向けて、多角的に役立てられる予定です。

出典:JR博多シティにてエッジAIカメラによる来店者分析を実施しました

エッジAIは安全性向上や自動化だけでなく、マーケティングのための情報収集手段になりえます。

その他分野(インフラ管理、エンターテイメント等)での活用事例紹介

ここまでさまざまな業界でのエッジAI活用をみてきましたが、その応用範囲はこれらに留まりません。私たちの社会や生活を支える、さらに多様な分野でエッジAIの可能性が追求されています。

例えば、社会インフラの維持管理です。古くなった橋やトンネル、道路などの状態を、センサーやカメラとエッジAIで監視。ひび割れや歪みといった異常の兆候を早期に発見することで、事故を未然に防ぎ、効率的な点検・補修計画に繋げます。

少し意外なところでは、エンターテイメント分野でも活用されています。スポーツ中継で特定の選手の動きだけをAIが自動追跡してハイライトを作成したり、AR/VRゴーグル内でユーザーの動きに合わせてリアルタイムに映像を生成したりするなど、新たな体験価値を生み出しています。

さらに身近なスマートホームでは、スマートスピーカーが私たちの声(音声)をエッジで認識し、より速く、そしてプライバシーに配慮しながら応答したり、家電を制御したりしています。

このように、エッジAIは社会のさまざまな場面で、より安全・便利・快適な未来を実現するためのキーテクノロジーとして、その活躍の場を広げているのです。

エッジAIをうまく活用するためのポイント

上記の通り、エッジAIは企業にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、より恩恵を引き出せるよう、活用のポイントをいくつかピックアップして紹介します。

  • AIの導入について従業員から理解を得る
  • 従業員のAIリテラシーを高めておく

AIの導入支援を進めている当社の経験にもとづいた内容も含まれていますので、参考にしてみてください。

AIの導入について従業員から理解を得る

まず、AIの導入について従業員に納得してもらうことが大事です。

AIは人間の作業を大きく補助する存在ですが、裏を返せば、それだけ業務に与えるインパクトも大きいです。特にエッジAIは設備や監視の自動化ができるなど、従業員の仕事を代替えする存在にもなり得ます。

AIを導入する意義や弊害はないことを説明しておくべきでしょう。

従業員のAIリテラシーを高めておく

経営層や従業員がAIの知識を持っていることも望ましいです。

エッジAIはデバイス側に搭載されるため、運用にプログラミングやサーバーの仕組みといった知識はそこまで求められません。しかし、AIとはそもそも何なのか、どんなことができるのかといった基礎知識を持っておくと、経営層は事業戦略を立てやすくなります。また、従業員は導入や活用を前向きに感じてもらえます

また、AIにちょっとした不具合などが生じても、自社内で解決しやすくなります。大きなトラブルの対処は難しいかもしれませんが、少しの設定変更などは契約業者に頼む必要が減るでしょう。長い目で見ればコスト削減にもつながるはずです。

さまざまなエッジAI事例を参考にして、あなたのビジネスを加速させよう

さまざまな事例からわかるように、エッジAIは「現場」のリアルタイムな判断や処理を可能にし、業務の効率化、コスト削減、セキュリティ向上に大きく貢献します。

クラウドAIとの違いを理解し、それぞれの特性を活かすことで、これまで解決が難しかった課題へのアプローチも可能になるはずです。将来の競争力を左右するかもしれないこのエッジAI技術、ぜひ積極的に情報を集め、活用への一歩を踏み出してみてください。

さらに詳しい情報や自社の状況に近い他社事例、具体的なソリューションについて知りたい方は、SHIFT AIの無料相談がおすすめです。SHIFT AIでは、エッジAIを含むAI技術全般に関する相談が可能です。また、従業員や経営層に向けて、エッジAIを含むAIの基礎知識や使い方の研修サービスも提供しています。

情報収集の一環として、ぜひお気軽にご活用ください。

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