中小企業の経理は少人数で業務が集中し、請求書チェックや仕訳、属人化したExcelに追われがちです。本記事で扱う「Copilot」は、Word・Excel等に統合されたMicrosoft 365 Copilotです。

本記事では、経理のどの定型業務をCopilotで自動化できるか、具体的なプロンプト例とともに、AI経営総合研究所が​独自に取材した先行企業の活用実態​も交えて解説します。

弊社では、Copilotを使った経理業務の自動化を後押しする資料を配布しています。プロンプトの考え方や運用ルール設計、組織体制など、業務活用を進めるための基礎知識が得られます。AIの使い方を理解し、自動化を進めるヒントになりますので、ぜひご活用ください。

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中小企業の経理が抱える定型業務の壁

中小企業の経理は、少人数体制ゆえに月末・月初へ業務が集中し、ミスと属人化が起きやすい構造にあります。この2つの壁を理解すると、どこをCopilotに任せるべきかが見えてきます。

少人数体制では、請求書処理や支払データ確認が月末・月初に一気に重なり、目視チェック頼みの記載漏れや勘定科目の誤りが生まれやすくなります。さらに、担当者が独自に作ったExcelが「関数の意味がわからず壊せない」「引き継げない」状態で資産として残り、業務を人に依存させたままにしています。

Copilotが自動化できる経理業務

Copilotは経理の「整理・下準備」を担い、人は「判断」に集中する——この役割分担が基本です。定型業務ごとに、Copilotに任せられる範囲と人が判断すべき範囲を整理します。

経理の定型業務Copilotでできること人が行うべき判断
請求書の不備チェック金額・日付・品目の抽出、差異の指摘契約条件の確認・例外処理
仕訳候補の作成取引内容から勘定科目候補を提示最終仕訳の決定
支払予定表の作成過去データからたたき台を生成期日・誤差の確認
経費精算の整理内容の分類・摘要の要約経費可否の判断
属人化Excelの対策関数・参照関係を自然言語で解説運用ルールの判断
月次前処理差異抽出・数値整形異常値の検証

いずれも、Copilotが下準備を担うことで、担当者は確認と判断に集中できます。Excelでは集計やピボットテーブルの提案、関数の自動生成にも対応し、属人化の解消にもつながります。

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経理で使える具体的なプロンプト例

実際に成果を出すには、用途別にプロンプトをテンプレ化すると、担当者のスキル差が出にくくなります。経理の代表的な3場面で、そのまま使えるプロンプト例を紹介します。

請求書の不備チェック

請求書の項目抽出と差異指摘を任せるプロンプトです。実行環境は、ファイルを添付して読み取れるMicrosoft Copilot(BizChat)や、請求書を開いた状態のCopilotチャットを使います(ExcelのCopilotにPDFを直接添付して読み取ることはできません)。

添付の請求書から、請求金額・消費税額・取引先・支払期限を一覧表にまとめてください。
前月の請求と比べて金額差が大きい項目や、記載漏れがあれば指摘してください。

仕訳候補の作成

勘定科目の候補出しを、経験の浅い担当者でも使えるように根拠付きで依頼します。実行環境は、Microsoft Copilot(BizChat)など取引内容を貼り付けて相談できるチャット画面を使います。

次の取引内容について、勘定科目の候補と借方・貸方、消費税区分を提示してください。
経理に不慣れな担当者にもわかるよう、その仕訳にする根拠も説明してください。

属人化Excelの構造説明

引き継ぎや修正のために、Excelの数式の意味を解説させます。実行環境は、対象のブックを開いた状態のExcelのCopilotパネルを使います。

このExcelシートのセル{セル番地}の数式が何を計算しているか、
参照しているセルや他シートとの関係も含めて、日本語で説明してください。

これらをテンプレートとして共有すれば、誰が使っても安定した品質で処理できます。

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中小企業の経理だけが直面する導入の落とし穴

中小経理には、大企業とは異なる固有のつまずきがあります。導入前に押さえておくと、「効果がない」と早合点する事態を避けられます。

  • ​属人化Excelが読み取りを妨げる​​:複雑な関数や別シート参照が多いと、前提データが整理されていないとCopilotが誤解しやすい
  • ​請求書が紙・PDF・画像で混在​​:形式が不統一だと読み取り精度にムラが出る
  • ​プロンプトが標準化されず品質がぶれる​​:担当者ごとに指示が異なると成果物が安定しない
  • ​月次が逼迫し試行期間を取れない​​:検証の余力がなく、使いこなす前に見限られる

これらは、データ形式の整備とプロンプトの標準化、月次前の試行で大半が解消します。

経理ワークフローにCopilotを組み込む導入〜定着ステップ

導入は一気に本番投入せず、棚卸し→データ整備→テンプレ化→試行→運用切替の順で進めると定着します。中小の限られたリソースでも無理なく回せる手順です。

  1. ​定型業務の棚卸し​​:請求書チェック・仕訳候補・支払予定・突合など、繰り返し作業を洗い出し、判断が必要な箇所と整理だけの箇所を分ける
  2. ​情報源を整える​​:請求書の形式統一、Excelのセルで文字と数値を混在させない、参照先の統一
  3. ​経理専用プロンプトをテンプレ化​​:用途別テンプレートで担当者のスキル差をなくす
  4. ​月次前に小さく試す​​:余裕のあるタイミングで部分的に試し、出力の癖をつかむ
  5. ​最終確認だけ人が担う運用へ​​:たたき台はCopilot、最終チェックと判断業務に人が集中する

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他社の取り組み|花王・住友ゴム工業に学ぶ「定型はAI、判断は人」

経理に限らず、定型業務の自動化で成果を出す企業は「下準備はAI、判断は人」という役割分担を徹底しています。AI経営総合研究所が独自に取材した先行企業から、この考え方を実践する2社を紹介します。

花王|定型業務の自動化を教育とセットで進める

花王株式会社は、​​「定型業務をどこまで自動化できるかということに注力していきたいです」​​という方針で活用を進めています。AI教育プログラム「Kao AI Academy」を1万人以上が受講し、独自ツール「Kao AI Chat」は毎日2,000人以上が利用しています。

ポイントは、​​定型業務の自動化を教育とセットで広げた​​こと。経理のような定型業務でも、使い方を学ぶ場を用意することで全社的に成果が出ます。

詳細は​花王株式会社のインタビュー記事​で紹介しています。

住友ゴム工業|下準備はAI、最終判断は人

住友ゴム工業株式会社は、Microsoft Copilotをメール作成・レポート要約・翻訳に活用し、​​「プロセスのどの部分をAIに任せるか。人が判断していくことがより一層大事です」​​という方針を掲げています。AIに任せる範囲と人が判断する範囲を明確に分けています。

ポイントは、​​役割分担を明確にして品質を担保した​​こと。経理でも、抽出・整理はCopilot、数字の判断は人という線引きが、ミスを防ぎます。

詳細は​住友ゴム工業株式会社のインタビュー記事​で紹介しています。

2社に共通する設計思想​​:①定型業務の下準備をAIに任せる ②最終判断は人が持つ役割分担を明確にする ③教育で「使える人」を増やす。大企業の事例ですが、この役割分担は少人数の中小経理にこそ応用しやすい考え方です。

まとめ|経理の定型業務はCopilotで確実に変わる

中小企業の経理は、請求書チェック・仕訳判断・属人化Excelといった定型業務が月次のスピードと正確性を左右します。Copilotにこれらの下準備を任せ、担当者が判断に集中する運用に切り替えれば、限られたリソースでも品質を維持できます。

成果を最大化する鍵は、経理フローの棚卸し、プロンプトの標準化、データ形式の整備です。花王や住友ゴム工業の事例が示すとおり、「下準備はAI、判断は人」の役割分担を徹底することが、経理業務の再設計を成功させます。

以下の資料では、プロンプトの考え方や運用ルール設計、組織体制など、Copilotで自動化を進めるのに欠かせない基礎知識が得られます。Copilotを使いこなし、自動化をする第一歩をサポートする内容ですので、ぜひご活用ください。

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中小企業の経理に関するよくある質問

Q
中小企業の経理でCopilotは従業員30名規模でも効果が出ますか?
A

効果が出ます。毎月必ず発生する作業の初期工程をCopilotに任せるだけで工数が圧縮されます。判断業務は人が担い、整理工程をAIに寄せる運用なら、規模に関わらず効果が出やすい領域です。

Q
経理のどの作業をCopilotに任せても問題ありませんか?
A

判断の要否で線引きします。勘定科目の確定、数字の最終判断、契約内容の読み込みは人が担当し、Copilotは項目抽出や候補出しなどの前処理に限定するのが安全です。

Q
属人化したExcelでもCopilotを活用できますか?
A

活用できますが、前提データの整理が必須です。形式を整えたうえで「この式の意味を教えて」と指示すると構造理解が正確に返り、引き継ぎや修正が速くなります。

Q
中小企業の経理情報をCopilotで扱ってもセキュリティは問題ありませんか?
A

Microsoft 365 Copilotは企業データの取り扱い基準に準拠した環境で動作し、アクセスできる情報は組織の権限設定に依存します。社内の共有環境と同等のセキュリティで運用できます。

Q
社内にAIに不慣れなメンバーが多くても経理に定着しますか?
A

プロンプトの標準化と段階的な導入で定着します。用途別のプロンプトテンプレートを用意し、負荷の小さい前処理から始めると、品質が安定し定着が進みます。

Q
導入コスト以上の効果が本当に見込めますか?
A

経理は毎月必ず発生する反復作業が多いため、削減時間が積み上がりやすくROIは出やすい領域です。請求書処理、仕訳候補作成、Excel構造の理解など、1件あたりの削減時間は小さくても、月単位・年単位で見ると担当者1人分近い余力が生まれるケースもあります。少人数体制の企業ほど費用対効果が明確です。