「ChatGPTを業務で使っているけど、情報漏洩って本当に大丈夫?」

そんな不安を感じたことはありませんか?

生成AIの活用が急速に進む一方で、「社外秘の資料をうっかり入力してしまった」「機密情報が外部に漏れるのでは?」といった懸念も増えています。実際、大手グローバル企業がChatGPTの利用によって情報漏洩を起こした事例もあり、企業の信用や競争力を揺るがす事態にもなりかねません。

しかし、問題なのは「ChatGPTが危険かどうか」ではなく、“どう使うか”のルールと運用体制が整っているか

履歴オフにすれば安全――そんな表面的な対策では、現場のリスクは防ぎきれないのが実情です。

本記事では、

  • ChatGPTによる情報漏洩の実態と仕組み
  • 企業で実際に起きる可能性がある“再現されやすいミス”
  • 安全に業務活用するための具体的な対策と設計方法

を、現場担当者・情報システム部門・ミドルマネジメントの視点で、実務的に解説します。

安全と成果を両立させるための「リスク管理と活用のバランス」を、一緒に考えていきましょう。

なぜChatGPTで情報漏洩が起こるのか?

ChatGPTは非常に便利なツールですが、「入力した情報がどのように扱われるのか?」を正しく理解していないと、思わぬ情報漏洩につながるリスクがあります。ここでは、ChatGPTの仕組みや、業務でありがちな“入力ミス”によって起こる情報漏洩の構造を解説します。

ChatGPTの仕組みと「学習利用」の誤解

まず前提として、ChatGPTには「ユーザーが入力した情報を、後のAIモデルの学習に活用する場合がある」という仕様があります。ただし、これは利用プランや設定によって大きく異なります

利用形態入力情報の学習利用
ChatGPT Free / Plus(Web版)初期設定では学習に使われる(履歴オフで回避可)
ChatGPT Team / Enterprise情報は学習に使われない(OpenAIが明言)
API経由(Azure OpenAIなど)情報は学習に使われない(デフォルトで非学習)

つまり、「とりあえず無料版を試している」「有料プランだけど履歴設定を知らない」といった状況では、うっかり機密情報を学習に使われてしまう可能性があるのです。

※なお、履歴オフにしてもOpenAI側で一時的な保持(最大30日間)が行われる場合があります。セキュリティ対策としては「重要情報を入力しない」前提での運用が基本です。

業務利用で起きる“うっかり入力”の危険性

情報漏洩は、悪意のある外部攻撃よりも、「ついうっかり」の内部ミスによって引き起こされることが多いのが実情です。ChatGPTを使う場面では、以下のような“よくある入力ミス”が、重大なリスクに直結します。

  • 顧客名や商談内容をそのままプロンプトに入力してしまう
  • 社内用の議事録や要件定義書を丸ごと貼り付ける
  • 開発コードやシステム仕様書を添付ファイル代わりに利用する

これらは「漏れたら問題になる」と理解していても、便利さやスピードを優先するあまり、無意識に実行してしまうケースが後を絶ちません。

「学習される/されない」だけではないリスク

たとえ学習に使われない設定であっても、情報漏洩のリスクはゼロではありません。ChatGPTの利用には、以下のような別の観点でも注意が必要です。

  • 出力結果に情報が残るリスク:プロンプトに入力した内容が、別のユーザーとの対話中に“出力”されることはないとされていますが、社内で使っている場合、スクリーンショットや再共有で漏れる可能性があります。
  • ガイドラインの不在による混乱:ツールの導入だけが先行し、「何を入力してはいけないか」が社内で明確になっていないケースも。
  • 「安心だと思っていたが実は設定ミス」:履歴オフにしたつもりが、ログインしていなかったために無効だった…など、設定運用のヒューマンエラーも起こり得ます。

情報漏洩のリスクは、“ツールの問題”ではなく、“使い方の設計と教育の問題”であるという認識が、今後のAI活用には欠かせません。

実際に起きてしまう“情報漏洩につながる構造”とは?

ChatGPTの情報漏洩リスクは、「特殊なケース」ではなく、多くの企業の現場で再現されやすい構造の中に潜んでいます。ここでは、現場でよくある“使い方のクセ”や“起きがちな状況”から、漏洩が発生するメカニズムを整理します。

再現されがちな“危険な使い方パターン”

実際の業務では、以下のような使い方が「便利だから」と無意識に繰り返されており、それが情報漏洩の火種になります。

部門ありがちな“危ない使い方”リスク例
営業商談メモをプロンプトに入力して要約顧客名・提案内容の流出
開発コードや設計書を貼ってデバッグ依頼ソースコード・仕様情報の漏洩
情報システムマニュアルやFAQを整理するためにデータ投入社内業務フローの流出
マーケティング広告文作成に未公開の企画案を使う製品計画や戦略の漏洩

これらの使い方は、ツールとしての便利さを優先しすぎるあまり、セキュリティへの意識が薄れやすいのが特徴です。

共通する構造的な課題とは?

これらのパターンには、いくつかの共通構造があります。

  • 目的が曖昧なまま利用している:「アイデア出し」と「正式な資料作成」が混同されている
  • 利用ルールが未整備または浸透していない:使ってはいけない情報の基準が不明確
  • “入力する人”任せになっている:リテラシーや意識に依存する運用

つまり、情報漏洩を防ぐには単なるツール制限ではなく、“再現されやすい構造”そのものを見直すことが必要なのです。

情報漏洩を防ぐには?企業が取るべき4つの視点

ChatGPTの情報漏洩リスクは、“ツールの使い方を注意するだけ”では防ぎきれません。組織として取り組むべきは、技術・ルール・仕組み・教育の4つをバランスよく整備することです。

ここでは、ChatGPTを業務で安全に活用するために、企業が持つべき4つの視点を解説します。

① ツール選定|履歴オフだけでなく“どのプランか”を見極めよ

ChatGPTには複数の利用形態があり、情報の取り扱いポリシーも異なります。履歴オフ設定によって一部のリスクは軽減されますが、「完全にデータが削除されるわけではない」点には注意が必要です。

より安全に業務活用するためには、最初からモデル学習に使われないプラン(Team / Enterprise / API)を選択し、運用設計まで整えることが基本です。

利用形態主な用途モデル学習利用備考
Free / Plus(Web)個人利用✅(履歴オン時)履歴オフで非学習。ただし一時保持あり
Team / Enterprise法人利用❌(非学習、デフォルト)SSO・監査ログ等の機能あり
API / Azure OpenAI統合利用❌(非学習、原則)データ保持・管理は設計次第

履歴オフだけで「対策は万全」と思い込むのは危険です。 自社の業務用途や部門ごとのリスクに合わせて、最適な利用形態を選びましょう。

② 利用ルール|“何を入力してはいけないか”を明文化せよ

ChatGPTは自由度が高いため、「何がOKで、何がNGか」の判断をユーザーに委ねると、属人化しがちです。

企業として“入力NG情報”を明文化したルールブックを整備し、社員が迷わず判断できるようにしましょう。

  • 入力禁止情報の例:社名・顧客情報・機密文書・パスワード・設計書 など
  • 利用目的別にルールを区分(例:アイデア出しOK/設計依頼はNG)
  • テンプレートプロンプトの用意(例:「機密情報を含まない範囲で○○してください」)

“曖昧なまま”利用させることこそが最大のリスクです。

③ システム設計|内部統制・ログ管理・セキュリティ対策を並行整備

ツールやルールを整えても、それを支えるシステム面の統制がなければ、形骸化してしまいます。具体的には以下のような整備が必要です。

  • アクセス制限:誰がどのプランを使えるのかを明確に管理
  • 操作ログの取得:ChatGPTの利用ログを記録・監査できる設計(API・SSO連携など)
  • DLP(情報漏洩防止)ツールとの連携:社内ファイルの誤入力を防止する制御設計

導入後のセキュリティ全体像については、以下の記事で詳細に解説しています。
👉 生成AI活用におけるセキュリティ対策の全体像

④ 教育設計|“現場が納得する”AIリテラシー研修を

最終的に情報漏洩リスクを防げるかどうかは、現場の“判断力”と“意識”にかかっています。

ただガイドラインを配って終わりではなく、「なぜこの情報は入力してはいけないのか」「どう使えば安全なのか」を実務レベルで学べる研修の場が不可欠です。

  • ChatGPTの仕組み・ポリシーの理解
  • 業務別の利用可否とリスクの例
  • プロンプト設計の基本
  • 実際の入力演習とフィードバック

💡 ここが重要!

単なるツール導入やルール整備では、現場の誤入力は防げません。“教育設計まで含めた全体設計”があってはじめて、リスクは下がります。

私たちSHIFT AIでは、現場で使えるリテラシーを育てる、実践型の法人向け生成AI研修プログラムを提供しています。ChatGPTたCopilotなど生成AIを“安全に”業務活用するための研修を提供しています。

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“履歴オフにすれば大丈夫”は誤解?よくあるQ&A

ChatGPTを使う際、よく聞かれるのが「履歴オフにすれば安全なのでは?」という疑問です。たしかに履歴オフは有効な対策のひとつですが、それだけで完全に情報漏洩を防げるわけではありません

ここでは、ChatGPTの業務利用に関して現場でよくある誤解と、その正しい理解をQ&A形式で整理します。

Q
履歴オフにしたら、入力内容は完全に削除されるの?
A

OpenAIの公式見解では「学習には使われない」ものの、“一時的な保持”はされます。

履歴オフにすると、会話内容はChatGPTのチャット履歴に残らず、OpenAIのモデル学習にも使われません。ただし、OpenAI側は一時的にデータを保持し、安全性・違反検出のために一定期間保存することを明言しています。

🔎 補足:履歴オフは「非表示+非学習」であり、「完全削除」ではないそのため、履歴オフ=絶対安全というわけではなく、「重要な機密情報はそもそも入力しない」ことが基本です。

Q
APIを使えば情報漏洩の心配はない?
A

学習には使われないものの、“設定ミス”や“誤った実装”による漏洩リスクは残ります。

たとえばAzure OpenAIやOpenAI APIを使えば、デフォルトで学習に使われることはありません。しかし、以下のような運用ミスがあると漏洩は起こり得ます。

  • API利用時にログ設定を誤り、出力内容が保存される
  • プロンプトに機密情報を含んだまま実装し、別機能で再利用される
  • エンジニアが安全設計を知らずに構築してしまう

APIだから安心、ではなく“運用設計とガイドライン”が肝心です。

Q
セキュリティソリューションを導入すれば問題は解決する?
A

DLPやアクセス制御は重要ですが、それだけでは不十分です。

たとえば、社内のChatGPT利用を制御するためにDLP(情報漏洩防止)ツールやプロキシを導入する企業も増えています。しかし、ツールはあくまで“最後の砦”

以下が整っていなければ、根本的なリスクは解消されません。

  • 入力ルールが定まっていない
  • 現場のリテラシー教育が不十分
  • 対応部門が限定され、ガバナンスが分断している

つまり、「ツールだけで安全」は幻想。 ツールは、教育・設計・運用の上に成り立つ補完策にすぎません。

現場で“うっかり漏洩”が起きやすい瞬間とは?

ChatGPTによる情報漏洩リスクの多くは、「悪意ある攻撃」ではなく、“いつも通りの業務の中で起きる、無意識の行動”が引き金です。ここでは、企業の現場でよく見られる「漏洩が起きやすいタイミングと心理状態」を紹介します。

タスクに追われて深く考えずに使う瞬間

たとえば、こんなシーンは要注意です。

  • 会議後に議事録をChatGPTで要約しようとしたが、内容に機密が含まれていた
  • 納期が迫り、提案書を急ぎ作成するために顧客情報をそのままプロンプトへ

このように、「スピード重視」「手間を省きたい」という気持ちが勝ってしまい、入力リスクに気づかないケースが後を絶ちません。

成果を早く出したい、便利だからと“一線を越える”瞬間

特に生成AIを使い慣れた社員ほど、「ここまでなら大丈夫」と自己判断で際どい情報を入力してしまうことがあります。

  • 「非公開の売上データを例にすれば、もっと説得力がある」
  • 「他の社員も使っているし、自分もこの程度なら大丈夫だろう」

こうした“慣れ”と“油断”は、社内の情報統制をゆるめる最大の要因です。

“禁止されていないからOK”と判断してしまう瞬間

ルールやガイドラインが明文化されていない場合、社員は「使っていい情報とダメな情報」を自分の感覚だけで判断するようになります。

  • 「明確にNGとは書かれていない」
  • 「前に使っても問題にならなかった」

こうした空気感が組織に根付くと、情報漏洩リスクは日常的に再生産されるようになります。

リスクを減らすには、“現場が納得して動ける仕組み”が必要

重要なのは、「禁止すること」よりも「判断軸とリテラシーを育てること」です。

  • この業務でAIを使うなら、ここまでが安全圏
  • この情報は入力NGだから、別の手段を使おう

こうした自律的な判断ができるように、仕組みと教育を整えることが、結果的に最も確実な漏洩対策になります。

まとめ|AI活用における“信頼と安全性”をどう築くか

ChatGPTをはじめとする生成AIは、業務の生産性や創造性を大きく高める可能性を持つ一方で、使い方を誤れば、企業の信頼や競争力を損なうリスクも孕んでいます。

繰り返しになりますが、情報漏洩を防ぐために重要なのは以下の3点です。

✅ ツールを正しく選ぶ

「履歴オフにすれば安心」「APIだから安全」といった思い込みに頼らず、自社の利用目的や体制に合ったプランと設計を選ぶことが前提です。

✅ ルールと仕組みを明文化・整備する

“なんとなく危なそう”では現場は動けません。何を入力してよくて、何がNGなのかを、具体的に言語化・仕組み化しましょう。

✅ 教育・リテラシーの浸透が最終防衛線

ガイドラインやツールでカバーできない“現場判断”こそが、情報漏洩の本丸です。

だからこそ、現場で本当に使えるリテラシーと判断軸を育てる教育設計が不可欠です。

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👉 生成AIの情報漏洩をどう防ぐ?セキュリティ対策と“導入成功”の実務チェックリスト

ChatGPTの情報漏洩を防ぎつつ、業務活用を進めるには?

単に“禁止”するのではなく、「安全に使いこなせる組織」をどうつくるか?

そのためには、リテラシー・ルール・仕組みを連動させた全社的な設計が求められます。

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