ChatGPTを業務に活用したい——。
そう考える一方で、「どこまで情報を入力していいのか」「機密情報は本当に守られるのか」と、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

特に情報システム部門や管理部門では、社外秘や個人情報などの取り扱いに慎重になるあまり、「AIツールの利用自体を止めてしまう」という選択を取るケースも少なくありません。
しかし、正しい判断基準とルール設計があれば、ChatGPTを安全かつ効果的に業務活用することは十分可能です。

本記事では、以下のような疑問にお答えします。

  • ChatGPTに入力してよい情報/ダメな情報の違いとは?
  • 情報漏洩のリスクは具体的にどこにあるのか?
  • 安全に活用するために必要な社内ルールと実践策とは?

また、社内研修やルール整備に使える「チェックリスト」や「テンプレート資料」もあわせてご紹介します。
情報ガバナンスを守りながら、生成AIの恩恵を業務に取り入れるための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

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ChatGPTに“機密情報”を入力してもいいのか?

生成AIの活用が広がる中で、ChatGPTのようなツールに「どこまでの情報を入力してよいのか」は、社内でしばしば議論になります。ここではまず、ChatGPTのデータの取り扱い方を整理し、入力可能な情報の範囲について考えてみましょう。

ChatGPTに入力した情報はどこに保存されるのか?

ChatGPTに入力した内容は、OpenAIのサーバーに一時的に送信され、サービス提供のために処理されます
無料版や一部の有料プランでは、入力内容がAIモデルの改善のために保存・学習に利用される可能性があります。

一方、「履歴オフ」機能を有効にすることで、入力内容が学習に使用されることを防げます。さらに、ChatGPTEnterpriseやTeamプランでは、初期設定で商用利用を前提としたセキュリティ設計がなされており、データは学習に使われません。

OpenAIの「学習に使われる/使われない」の違い

OpenAIでは、利用者が「履歴をオン」にしている場合、入力内容をAIの学習に使うことがあります。
しかし、以下の条件下では入力された情報がAIの再学習に使われないとされています。

  • 履歴がオフになっている
  • ChatGPTEnterprise/Teamプランを利用している
  • API経由での利用(個別に学習許諾をしない限り)

つまり、企業での業務利用を前提とする場合は、これらの設定や契約を整えることが必須といえるでしょう。

業務利用で“危ない入力例”とは?

以下のような情報は、特に注意が必要です。

  • 顧客名簿や取引先の個人情報
  • 社内でまだ公開されていないプロジェクト資料
  • 機密性の高い契約文書・財務情報
  • 他社とのNDA(秘密保持契約)に基づく共有情報

これらをそのまま入力するのはNGです。代わりに、「仮名化」や「抽象化」してプロンプトを設計することで、安全性を保ちながらChatGPTを活用できます。

🔗関連記事:ChatGPTの社内利用規程はこう作る|雛形・記載例・作成の流れを解説

情報の種類別|入力してよいかの判断基準

ChatGPTを安全に活用するためには、入力する情報の“種類”に応じて取り扱いを変えることが重要です。ここでは、入力の可否を判断するための基準や具体的な情報分類の考え方を整理します。

「社外秘・機密情報」の線引きとは?

多くの企業で課題となるのが、「どこからが機密情報なのか」という線引きです。
一般に、以下のような情報は社外に出すべきではない「機密情報」に該当します。

  • 未発表の製品情報や研究開発資料
  • 顧客情報、社員の個人データ
  • 他社との契約に関わる内容(NDA対象含む)
  • 株主・財務・M&Aに関する非公開情報

これらはたとえ履歴オフ設定であっても、AIツールへの直接入力は避けるべきです。

「個人情報」「営業機密」「公開情報」のグラデーション整理

下記のように、情報は段階的にリスクを分けて考えると判断がしやすくなります。

分類入力の可否
公開情報◎OK自社HP上の製品情報、公開済み資料など
営業情報(公開前)△工夫が必要提案資料・施策案など。要仮名化・抽象化
機密情報✕NG顧客リスト、契約書、未公開プロジェクト情報など

このような「情報区分マトリクス」を社内で共有することで、従業員が迷わず判断できる環境を整えられます。

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以下のようなチェック項目が整っていれば、安全性は格段に向上します。

  • 入力内容は一般公開されている情報か?
  • 顧客・社員などの個人情報を含んでいないか?
  • 内容を仮名化・要約化できているか?
  • 入力後に履歴をOFFに設定しているか?

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よくある誤解とトラブル事例|“うっかり”が招く情報漏洩のリスク

生成AIの利用が一般化するなかで、「これくらいなら大丈夫だろう」といった誤解や油断による情報漏洩トラブルが報告されています。ここでは、実際に起こり得るケースとその対策を紹介します。

ケース1|ChatGPTに取引先名を入力してしまった

概要
営業担当が「提案資料の文章をブラッシュアップしたい」という目的で、ChatGPTにそのまま取引先企業名と提案内容を入力。

問題点

  • NDA対象の企業名がそのまま入力されていた
  • 無料版を使っており、履歴オフの設定もされていなかった

結果とリスク
情報がOpenAIの学習に使われる可能性があり、取引先との信頼関係が損なわれかねない状況に。

対策

  • 企業名を「A社」などに仮名化する
  • 履歴オフの徹底と、Enterpriseなどの業務向け環境の導入

ケース2|履歴オフにしていた“つもり”だった

概要
管理部門の社員がFAQの叩き台を作るためにChatGPTを利用。履歴オフのアイコン表示を見落とし、オンのまま業務文書を入力してしまった。

問題点

  • 表示の仕様が変わっていたことに気づかず、誤認していた
  • 入力された内容には、社内業務フローの内部文言が含まれていた

結果とリスク
ログに情報が残る可能性があり、場合によっては社内監査対応が必要に。

対策

  • ユーザーへの「履歴確認手順」の研修を実施
  • Enterprise版の導入により履歴学習を根本的に遮断

ケース3|「これって機密?」の判断が現場で分かれた

概要
マーケ部門が新製品の紹介文案を作るため、ChatGPTに概要を入力。
本人は「もうすぐ公開予定だからOK」と判断したが、法務的には非公開扱い。

問題点

  • 情報の区分が明確でなく、部門間で認識がズレていた

結果とリスク
社内で再発防止策を議論する必要が生じ、業務の停滞にもつながった。

対策

  • 情報区分のマトリクスと例示集を全社共有
  • 入力前に「確認すべき内容リスト」を導入し、曖昧さを減らす

情報漏洩を防ぐために企業が取るべき対策

ChatGPTを安全に活用するためには、「個人の判断に任せない仕組みづくり」が欠かせません。ここでは、企業が取り組むべき基本的な対策と、実践のポイントを紹介します。

ポリシーとルールを文書化する

まず重要なのは、「ChatGPT利用に関する社内ルールを明文化すること」です。

具体的には、以下のような観点をルールに盛り込みます。

  • 利用目的:どの業務範囲で使用可とするか
  • 入力制限:機密情報・個人情報の取り扱い禁止
  • 利用ツール:許可されたツールや拡張機能の明示
  • セキュリティ設定:履歴オフの徹底やログ保管の制限
  • 違反時の対応:情報漏洩が発生した場合の責任所在や報告手順

🔗関連記事:生成AIの社内ルールはどう作る?今すぐ整備すべき7つの必須項目と実践ステップを解説

利用レベルの“レベル分け”で統制をかける

部署や職務に応じて、ChatGPTの利用を「レベル別」に制限する」ことも有効です。

レベル利用範囲
レベル1調査・アイデア出しのみマーケ担当がコピーの叩き台作成に使用
レベル2下書き作成まで許可(入力制限あり)情報システム部門がFAQ案作成に活用
レベル3高度な生成・API活用まで許可開発部門や管理職による業務自動化

このように「職務やリテラシーに応じた利用設計」を行うことで、無用なリスクを防ぎつつ活用の幅を広げられます。

教育と研修でリテラシーを底上げする

ルールだけでなく、定期的な研修やeラーニングを通じて、従業員の理解と行動を整えることが不可欠です。

  • 情報漏洩の事例や失敗例を共有
  • 入力NG事例を元にプロンプトの書き換え演習
  • 設定方法(履歴オフなど)の実践講座

また、ChatGPTの安全な使い方を実演形式で紹介する研修プログラムも効果的です。

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社内での“入力ルール”を整備するには

情報漏洩リスクを抑えながらChatGPTを活用するには、「従業員が迷わず判断できるルール」を設け、運用可能な形で整備することがポイントです。ここでは、社内ルール設計の進め方を3ステップで解説します。

ステップ1|リスク分類をもとに情報を整理する

まずは、社内で扱う情報を「入力可/要注意/NG」に分類しましょう。

  • 入力可:社外公開済の情報、製品の一般仕様など
  • 要注意:匿名化や抽象化すれば利用可能な営業情報など
  • NG:顧客名、契約内容、財務情報などの機密情報

分類には、前述の「情報区分マトリクス」やチェックリストが役立ちます。
これにより、従業員が「これは入力しても大丈夫か?」と迷わず判断できます。

ステップ2|ツール・設定・利用手順を明確化する

単にルールを設けるだけでなく、「どうやって安全に使うか」までガイドラインで示すことが大切です。

たとえば、

  • 使用ツールの指定:ChatGPTEnterpriseのみ/履歴オフが必須など
  • プロンプトの作り方:具体的なNG例と改善例をセットで提示
  • ログの取り扱い:入力履歴の保存有無や管理責任の明記

このように「使い方そのものを明文化」することで、現場でも再現可能な運用ルールになります。

ステップ3|テンプレートや資料で現場の運用を支援

ルールを配るだけでなく、「現場で使える形」に落とし込むことがポイントです。

  • 入力判断用のチェックリスト
  • 安全なプロンプト例一覧
  • 各部署向けの利用レベル表
  • 定期的なeラーニング教材

こうした運用支援ツールを整備することで、従業員の不安を減らし、ルール違反を未然に防ぐ体制が実現します。

まとめ|「どこまで入力してよいか」はルールと教育で判断できる

ChatGPTは非常に強力な業務支援ツールですが、「機密情報をどこまで入力していいか?」という疑問を解消しないまま使うのは、企業にとって大きなリスクです。

本記事でお伝えした通り、情報漏洩のリスクには「誤入力」「設定ミス」「連携ツールの不備」など、いくつものパターンが存在します。
そのため、ルールの明文化と従業員教育をセットで整備することが、ChatGPTを安全に活用する前提条件となります。

特に現場でよくあるのは、「このプロンプトはOKなのかNGなのか?」という判断の迷い。
このようなケースに対応するためには、「情報区分のレベル分け」や「部署ごとの利用レベルの明示」など、すぐに活用できる実践的なガイドが必要です。

SHIFTAIでは、「生成AI研修パッケージ」の中で、以下のようなリソースを提供しています。

  • ChatGPTの利用ルールづくりを支援するテンプレート資料
  • 社内向けに使える安全なプロンプト例集
  • 現場のリテラシー向上に役立つオンライン研修教材

「ルールを整備したいけれど、何から始めればいいかわからない」という方は、
ぜひ以下より、詳細資料をダウンロードしてご活用ください。

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Q
ChatGPTに社内資料をそのまま入力しても大丈夫ですか?
A

基本的には推奨されません。たとえ業務資料であっても、社外秘や個人情報が含まれる場合は情報漏洩リスクがあります。必要に応じて要約や匿名化を行いましょう。

Q
ChatGPTは入力した内容を学習してしまうのですか?
A

.無料版や一部の有料プランでは、履歴が学習に利用される可能性があります。ただし「履歴オフ」設定を有効にすれば学習対象から除外されます。企業利用では必須の設定です。

Q
どの情報が「機密情報」にあたるか判断がつきません。
A

一般的に「顧客名」「社員の個人情報」「契約書」「財務数値」などは機密情報に該当します。ルールとして分類基準や入力可否のチェックリストを定めておくと、判断がしやすくなります。

Q
ChatGPTの安全な使い方を社内でどう教育すればいいですか?
A

事例を交えた研修や、操作デモ、NGプロンプトの例などを含めると効果的です。SHIFTAIではこうした教育を支援するテンプレート資料を提供しています。

Q
そもそも生成AIを社内で使うべきか悩んでいます。
A

生成AIは業務効率を大きく高める一方、正しい導入とガバナンスがなければリスクにもなります。段階的な活用ルールの整備と社員の理解促進を進めることで、安全かつ効果的な活用が可能です。

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