データに基づいた経営判断や業務改善の重要性が高まる中、「AIを使って自社のデータをもっと活用したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、AIデータ分析の基本的な仕組みから、ビジネスシーンでよく用いられる代表的な分析手法、導入によって得られる具体的なメリット、そして事前に知っておくべき注意点までわかりやすく解説します。

さらに、さまざまな企業が実際にAIデータ分析をどのように活用し、成果を上げているのか、具体的な事例も紹介します。

本記事を参考にして、AIデータ分析の全体像をつかみ、自社への導入を検討するヒントにしてください。

なおSHIFT AIでは、AI分析技術の活用支援はもちろん、貴社の状況に合わせた効果的なAI人材育成の伴走支援も実施しています。「AI人材育成ロードマップ」も無料で提供していますので、ご関心のある方はぜひ下記のリンクからダウンロードしてください。

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目次

AIデータ分析とは?基本をわかりやすく解説

AIの力を借りたデータ分析により、これまで気づかなかったビジネスチャンスの発見や、より精度の高い未来予測が可能になりました。

ここでは、AIデータ分析の基本をわかりやすく解説していきます。

核となる技術である「機械学習」や「ディープラーニング」、従来のデータ分析との違い、そして分析を成功させるうえで欠かせない「データの種類と質」について見ていきましょう。

AIデータ分析の定義|機械学習とディープラーニング

AIデータ分析を、一言でいうと「AIの力を借りてデータから有益な情報を見つけ出すこと」です。

特に、コンピューターがデータから自動で学習する「機械学習」や、人間の脳神経回路を模した複雑な「ディープラーニング」といった技術が中心です。

【機械学習とは】コンピュータがデータから自動的に学ぶ技術。例えば、多くのメールを見て「迷惑メール」と「通常メール」の見分け方を自分で学習していきます。
【ディープラーニングとは】機械学習の一種で、人間の脳のような多層構造で学習する方法。顔認識や音声認識など、人間にしかできなかった複雑な判断ができます。

これらの技術は、人間では処理しきれない大量のデータの中から、隠れたパターンや法則性を発見し、未来の出来事を予測する能力に長けています。

AIデータ分析と従来のデータ分析との違い

AIデータ分析とこれまで一般的に行われてきた従来のデータ分析には、いくつかの違いがあります。

従来のデータ分析は、主に過去の実績や現在の状況を把握するために行われます。統計手法やBIツールを使い、人が設定した切り口でデータを集計・可視化。「何が起こったのか」を報告することが中心でした。多くの場合、分析者が事前に仮説を立てて検証する形をとります。

一方、AIデータ分析は過去・現在の把握に加えて「なぜそうなったのか」という要因分析や、「将来どうなるのか」という高精度な予測、さらには「次に何をすべきか」という最適解の提案までを目指します。

AIはデータの中から自律的にパターンを発見できるため、人が思いつかないような新たな知見(インサイト)を得られる可能性があるのです。

AIデータ分析に必要なデータの種類と質

AIデータ分析を成功させるうえで、最も重要と言っても過言ではないのが「データ」そのものです。AIはデータから学習をします。元となるデータの質が悪ければ、どれだけ高度なAI技術を用いても良い結果は期待できません。

AIが扱えるデータの種類はおもに次の2つです。

  • 構造化データ:数値などが整理されたデータ(例:売上データ)
  • 非構造化データ:形式が定まっていないデータ(例:テキスト、画像)

非構造化データを扱えるのがAIの強みですが、どちらのデータを使うにしても「質」は重要です。

さらに、AIがパターンを学習するためにはデータの「量」も必要です。質の高いデータを十分な量だけ集め、AIが扱えるように形式を整えていきましょう

代表的なAIデータ分析の5つの手法

ここでは、ビジネスの現場でもよく活用される代表的なAIデータ分析の手法を5つ紹介します。

  1. 回帰分析:売上予測や株価相場
  2. 分類分析:顧客のグルーピングやスパムメール判定
  3. クラスタリング:顧客セグメンテーションや異常検知
  4. 自然言語処理:テキストデータの分析
  5. 画像認識:不良品の検知や顔認証

AIデータ分析で何ができるのかを理解することで、より具体的にAI活用のイメージができるはずです。

回帰分析:売上や相場の予測

回帰分析は、「数値を予測する」目的で広く使われる手法です。

過去のデータから、ある数値とそれに影響を与える他の要因との間にどのような関係性があるのかを数式モデルとして見つけ出し、それを使って未来の数値を予測します。

例えば、「広告費を増やすと売上はどれくらい伸びるか?」を知りたい場合、過去の広告費と売上のデータをAIに学習させます。するとAIは、両者の関係性をモデル化し「〇〇の広告費なら、△△の売上が期待できる」という予測を立てるのです。

他にも、現状の気象情報と過去の気温データから明日の最高気温を予測したり、物件の広さや立地から相場を予測したりと、さまざまな場面で活用されています。

分類分析:顧客のグルーピングやスパムメール判定

分類分析は、データがどのグループ(カテゴリ)に属するのかをAIが判断する手法です。

「このデータはAグループなのか、Bグループなのか」といった仕分け作業をAIが自動で実施します。この手法では、あらかじめ正解のグループが分かっているデータ(教師データ)を使ってAIを学習させることが一般的です。

例えば、迷惑メール(スパムメール)フィルターが良い例です。過去のデータから「スパムメールに含まれやすい単語」や「正常なメールの特徴」をAIが学習し、新しく届いたメールがどちらのグループに分類されるべきかを判定します。

ビジネスでは、顧客データから「商品を購入する可能性が高い顧客」と「低い顧客」を分類したり、画像データから「正常な製品」と「不良品」を分類したりするのに活用されます。

クラスタリング:顧客セグメンテーションや異常検知

クラスタリングは、たくさんのデータの中から「似たもの同士」を自動的にグループ分け(クラスター化)していく手法です。

分類分析と異なり、最初から「正解」のグループが決まっているわけではなく、データの特徴に基づいてAIが自然なまとまりを見つけ出します。これは「教師なし学習」と呼ばれるアプローチのひとつです。

例えば、顧客の購買履歴データをクラスタリングにかけると、AIがデータ間の類似性(どんな商品を、いつ、どれくらいの頻度で買うかなど)を分析していきます。「高額商品を頻繁に購入するグループ」「セール品中心のグループ」といった、これまで気づかなかったような顧客セグメントの発見につながるのです。

また、クラスタリングは「異常検知」にも活用されています。大多数のデータが属するグループから大きく外れたデータ、つまり「仲間外れ」のデータを見つけ出します。データ全体像の中から隠れた構造を発見するための強力な手法といえるでしょう。

自然言語処理:テキストデータの分析

自然言語処理は、私たちが日常的に使っている言葉をAIが理解し、処理するための技術です。特に、アンケートの自由記述、SNSの投稿、顧客からの問い合わせメールといった「テキストデータ」の分析に大きな力を発揮します。

例えば、大量の顧客レビューから「肯定的か、否定的か」どちらの意見が多いかを自動で集計・分析したり、重要なキーワードを抽出して話題のトレンドを把握したりすることが可能です。

ChatGPTやGemini、Claudeのような文章生成AIや、機械翻訳、チャットボットなどもこの自然言語処理技術の応用例です。この技術を活用して、テキストデータに眠る価値ある情報を引き出しましょう。

画像認識:不良品の検知や顔認証など

画像認識は、その名の通り画像や動画データの中に「何が写っているのか」をAIが理解・識別する技術です。特にディープラーニングの登場と発展により、その精度は飛躍的に向上しました。

具体例としては、製造業の外観検査が挙げられます。工場の生産ラインを流れる製品の画像をAIがリアルタイムで分析。人の手作業では見逃してしまうような微細な傷や欠陥のある不良品を自動で検出します。

他にも、店舗での顧客の属性分析(カメラ映像から年齢や性別を推定)や、医療画像の診断支援(レントゲン写真から病変の可能性を指摘)など、画像認識技術は多岐にわたる分野で活用されています。

AIデータ分析を導入する5つのメリット

AIデータ分析は、単なる技術トレンドではなく、ビジネスを成長させるための強力な武器となり得ます。ここでは、AIデータ分析のおもなメリットを5つ解説します。

  1. データに基づいた迅速な意思決定
  2. 高精度な未来予測
  3. 業務の効率化による人手不足の解消
  4. 新たなビジネスチャンスの発見
  5. 顧客体験のパーソナライズ

ひとつずつ見ていきましょう。

【メリット1】データに基づいた迅速な意思決定

従来のデータ分析は担当者の経験や勘に頼る場面も少なくありませんでした。しかし、AIデータ分析なら、より客観的な根拠に基づいた迅速かつ的確な意思決定が可能です。

AIは、人が見落としがちな膨大なデータの中から、重要なパターンや相関関係を素早く見つけ出し、分析結果を分かりやすく提示します。

例えば、「どのマーケティング施策が実際に売上に貢献したのか」といった問いに対して、具体的なデータで答えを示してくれるのです。これにより、「なんとなく」ではなく「データがこう示しているから」という論理的な判断ができます。

AIによる迅速なデータ分析は、意思決定のスピードアップにも貢献し、ビジネスチャンスを逃さない体制づくりを支援します。

【メリット2】高精度な未来予測

過去の膨大なパターンを学習するAIデータ分析では、従来のデータ分析よりも高い精度で未来の数値を予測します。

「来月の売上はどれくらいだろう?」「この新商品はどれくらい売れるだろう?」といった未来に関する問いは、ビジネスを行ううえで欠かせません。

AIは、季節変動、経済指標、プロモーション効果、競合の動きなど、結果に影響を与えるさまざまな要因を学習します。人間が考慮できる要因には限りがあります。しかし、AIは多くの変数を扱えるため、より現実に近い予測モデルを構築できるのです。

例えば、小売業のケースで見てみましょう。AIが過去の販売実績やイベント情報から将来の需要を予測。在庫を最適化することで、品切れによる機会損失や過剰在庫によるコスト増加を防ぎます。

精度の高い未来予測は、効果的な資源配分やリスク管理を実現するための基盤となり得るのです。

【メリット3】業務の効率化による人手不足の解消

AIデータ分析は、これまで私たちが多くの時間を費やしてきた定型的な作業や、繰り返し行われる分析業務を自動化します。

例えば、請求書やアンケートの情報をAI-OCRで自動的にデータ化したり、毎月作成している売上レポートの集計・グラフ化をAIに任せたりすることが可能です。AIはヒューマンエラーも起こりにくいため、作業品質の安定化にも繋がります。

こうした自動化・効率化によって、従業員は単純作業から解放され、より創造性や専門性が求められる付加価値の高い業務に集中できるようになります。限られた人員でより多くの成果を出すことを可能にするため、人手不足への有効な対策にもなるでしょう。

【メリット4】新たなビジネスチャンスの発見

膨大なデータの中には、まだ誰も気づいていないビジネスチャンスや、業務改善のヒントが眠っていることがあります。AIデータ分析は、そんなデータに隠された未知のパターンや意外な関係性(インサイト)を発見する手助けをしてくれるのです。

例えば、顧客の購買データとWebサイトの行動履歴を組み合わせて分析した結果、特定の顧客層が予想外の商品を一緒に購入していた、などの新しい発見ができるかもしれません。これは、新しいセット販売の提案や、ターゲットを絞ったキャンペーンの企画につながる可能性があります。

また、SNS上の消費者の声や、アンケートの自由記述といったテキストデータをAIで分析することで、自社製品に対する新たなニーズや不満を早期に捉えることも可能です。

【メリット5】顧客体験のパーソナライズ

現代ビジネスでは、一人ひとりに合わせたサービス提供(パーソナライズ)が不可欠です。AIデータ分析を活用することで、顧客の属性や行動、好みを深く理解し、最適な商品やサービスの提案が可能となります。

例えばオンラインストアでは、AIが購入者の購買・閲覧履歴から精度の高い「おすすめ商品」を表示したり、興味に合わせたメールやクーポンを送ったりできます。これにより顧客は「自分のことを理解されている」と感じ、企業への信頼が高まるのです。

優れた顧客体験はリピート購入や単価向上だけでなく、良い口コミを生み、企業の長期成長につながります。

AIデータ分析を導入する際の注意点とその対策

AIデータ分析は多くのメリットをもたらしますが、導入・活用時には注意が必要です。

ここでは、AIデータ分析を進めるうえで特に注意したい4つのポイントとその対策を解説します。

  1. 質の高い大量のデータが必要になる
  2. データプライバシーとセキュリティのリスクがある
  3. 分析経路がブラックボックス化する
  4. AI分析の専門人材が不足する

自社のプロジェクトを成功に導くためにも、これらの課題を事前に理解しておきましょう。

【注意点1】質の高い大量のデータが必要になる

AIデータ分析の成否を分ける大きな要因のひとつは「データの質と量」です。AIはデータから学習するため、その元となるデータの「質」と「量」が十分でなければ期待した成果は得られません。

データの質と量には次のような内容が求められます。

  • データが正確であること
  • 必要な情報が欠けていないこと
  • 表記ゆれがなく一貫していること

不正確なデータや偏ったデータで学習したAIは、誤った分析結果や予測を生み出してしまいます。また、複雑な分析や高い精度を求める場合は、AIがパターンを十分に学習するためにある程度の量のデータが必要です。

学習用のデータ準備には相応の時間と労力がかかることを認識し、初期段階からデータ収集・整備計画を立てていきましょう。

【注意点2】データプライバシーとセキュリティのリスクがある

AIデータ分析では、売上などの数値データだけでなく、顧客情報や企業の機密情報を取り扱う機会も増えます。そのため、データプライバシーの保護とセキュリティ対策は、決して軽視できない注意点です。

個人情報保護法をはじめとする関連法規を遵守することは当然として、サイバー攻撃による情報漏洩や内部関係者による不正なデータ利用といったリスクにも備えなければなりません。

ここでは対策の一例を紹介します。

個人を特定できないようにデータを加工する(匿名化、仮名化など)データへのアクセス権限を設定・管理するデータを保管・処理するシステムのセキュリティ強化(暗号化、不正アクセス対策など)社内ルールの整備

また、自社の従業員に対してセキュリティ意識を高める教育を実施することも有効です。

【注意点3】分析経路がブラックボックス化する

AI、特にディープラーニングのように内部構造が複雑なモデルは、なぜ特定の分析結果や予測を出したのか、その判断プロセスや根拠が人間には理解できない「ブラックボックス」状態になることがあります。

結果に至る理由が不透明だと、そのAIの判断を信頼して重要な意思決定を行うことにためらいが生じるかもしれません。また、もしAIが予期せぬ誤った判断をした場合に、原因を特定してモデルを修正することが難しくなります

現時点での対策としては、AIの判断を鵜呑みにせず最終的には人が確認・判断をするプロセスを残すことが重要です。また、この問題に対しては「説明可能なAI(XAI)」と呼ばれる、AIの判断根拠を人間にも分かりやすく提示しようとする技術の研究開発が進められています。

【注意点4】AI分析の専門人材が不足する

AIデータ分析を効果的に進めるためには、専門的な知識とスキルを持った人材の存在が不可欠です。しかし現在多くの企業では、こうした人材の確保が大きな課題となっています。

【専門人材の一例】
データサイエンティスト:統計学やAIに関する知識を持ち、ビジネス課題を理解したうえで適切な分析設計を行う人材AIエンジニア:AIモデルを開発・実装し、システムに組み込む人材

しかし、これらの高度なスキルを持つ人材は世界的に需要が高まっており、獲得競争が激化しています。特に中小企業にとっては、採用が困難であったり、高い人件費が負担になったりするケースも少なくありません。

この人材不足への対策として考えられるのが、外部の専門企業との連携や、比較的容易に利用できるAIツール・サービスの活用です。社内人材の育成も重要ですが、専門知識の習得には時間とコストもかかります。

なお、効率的に社内のAIリテラシー向上や人材育成を進めたいのであれば「SHIFT AI」の生成AI導入支援がおすすめです。初心者向けのeラーニングから実践的なワークショップまで、企業のAI活用を伴走支援します。AI人材育成や社内活用推進にお悩みの方は、ぜひ下記より詳細をご覧ください。

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【手法別】AIデータ分析の活用事例5選

AIデータ分析が実際にどのようにビジネスの現場で活用され、成果を上げているのでしょうか。

ここでは、AIデータ分析の手法別の活用事例を5つ紹介します。

  1. 【回帰分析】AIによる商品発注で在庫を最適化(イトーヨーカ堂)
  2. 【分類分析】AIによる突風探知で列車運行の安全性向上(JR東日本)
  3. 【クラスタリング】顧客理解AIで高度なマーケティングセグメントを提供(NTTドコモ)
  4. 【自然言語処理】ChatGPT連携で飲食店の検索・予約をより直感的に(カカクコム)
  5. 【画像認識】AIによる原料検査で品質向上と負担軽減(キユーピー)

具体的な事例を知ることで、自社での活用イメージがより鮮明になるはずです。

事例1【回帰分析】AIによる商品発注で在庫を最適化(イトーヨーカ堂)

小売業にとって、適切な商品発注は売上確保とコスト削減の両面で非常に重要です。イトーヨーカ堂では、カップ麺や菓子、冷凍食品など約8,000品目を対象にAIを活用した商品発注システムを全国の店舗で導入しました。

このシステムでは、商品の価格、陳列状況、気温や降水確率といった天候情報、曜日、客数などのさまざまなデータをAIが分析します。これらの情報と過去の販売実績データとの関係性を学習することで、AIは「この条件下では、この商品がどれくらい売れるか」という販売予測数を算出。店舗の発注担当者は、AIが提案するこの予測数を参考にして、最終的な発注数を決定します。

これは、複数の要因から将来の数値を予測する「回帰分析」の適用例です。イトーヨーカ堂では、このAI発注システム導入により、店舗担当者の発注作業時間を平均約3割短縮することに成功しました。さらに、品切れ(欠品)の発生を減らし、適正な在庫量を維持することにも繋がり、業務効率化と在庫最適化を実現しています。

出典:株式会社イトーヨーカ堂「NEWS RELEASE」

事例2【分類分析】AIによる突風探知で列車運行の安全性向上(JR東日本)

鉄道の安全運行において、突風は大きなリスク要因のひとつです。JR東日本では、過去の列車事故を教訓に、突風の原因となる上空の「渦」を探知し、列車の運転規制を行う取り組みを進めてきました。しかし、従来のドップラーレーダーを用いた手法では、渦の捕捉精度や誤探知に課題があったのです。

そこで同社は、AIを活用した新たな突風探知手法を導入しました。具体的には、ドップラーレーダーで観測された大量の気象データの中から、「渦」を含む画像データと「渦ではない」画像データをAIに学習させました。これにより、観測データが「渦」であるか否かを高精度に識別するAIモデルを構築したのです。

この取り組みは、与えられたデータがどのカテゴリ(この場合は「渦」か「渦でない」か)に属するかを判断する「分類分析」の典型的な活用事例といえます。

出典:JR東日本「JR東日本ニュース」

事例3【クラスタリング】顧客理解AIで高度なマーケティングセグメントを提供(NTTドコモ)

企業が保有する顧客データは膨大かつ多様化しており、そこからマーケティングに有効な知見を引き出すことは容易ではありません。NTTドコモは、1億規模の会員基盤データを活用し、より効果的なターゲティングを可能にするための取り組みを実施しました。

同社は、独自の顧客理解AIエンジン「docomo Sense」を用い、会員の属性情報、位置情報、サービス利用履歴など、オンライン・オフラインの豊富なデータを分析。これらのデータから類似した特徴を持つ顧客グループを自動的に見つけ出しました。そして、「価値観」「興味関心」「行動傾向」など7分類・約2,000(将来的には4,000)もの顧客セグメントを作成・提供しています。

これはデータの中から自然なまとまりを発見するクラスタリングの考え方を応用した事例といえます。

出典:PR TIMES「ドコモが保有する1億規模の会員データなどをセグメント化したプロファイリングデータを提供開始」

事例4【自然言語処理】ChatGPT連携で飲食店の検索・予約をより直感的に(カカクコム)

レストラン検索・予約サイト「食べログ」を運営するカカクコムは、ユーザーがより簡単に飲食店を探せるように、OpenAI社の対話型AI「ChatGPT」との連携機能を導入しました。これは「ChatGPTプラグイン」と呼ばれる拡張機能を利用したものです。

このプラグインを有効にすると、ChatGPTとの対話を通じてお店を探すことが可能です。例えば、ユーザーが「明日の19時に4人で入れる渋谷の焼肉屋さんを教えてください」といった自然な文章でChatGPTに質問すると、AIがその言葉の意味を理解します。

これが自然言語処理の力です。AIはユーザーの入力したテキスト(自然言語)を解析し、希望条件を抽出。そして、食べログが持つ店舗の空席情報と照合し、条件に合うネット予約可能なお店を最大5件まで提示します。より直感的で会話のようなインターフェースでの店舗検索・予約体験が実現したのです。

出典:カカクコム「プレスリリース」

事例5【画像認識】AIによる原料検査で品質向上と負担軽減(キユーピー)

食品の安全・安心に対する要求は年々高まっています。マヨネーズで知られるキユーピーでは、ベビーフードに使用するダイスポテト(角切りジャガイモ)の原料検査において、従来、熟練の従業員が目視で細かな斑点などの不良品を選り分ける作業を行っていました。これは非常に神経を使い、負担の大きい作業です。

そこで同社は、この課題を解決するためにAIを活用した原料検査装置を開発し導入。この装置では、AIの画像認識技術を用いて流れてくるダイスポテトの画像を解析します。特徴的なのは、「不良品」のパターンではなく「良品」のパターンをAIに学習させる「良品学習型」というアプローチを採用した点です。これにより、さまざまな種類の不良品に対応しつつ、検査精度を飛躍的に向上させることに成功しました。

このAI検査装置の導入は、ベビーフードの品質向上に貢献するだけでなく、従業員の作業負担軽減にも繋がりました。現在では他の工場や、ニンジンなど他の原料の検査にも活用が広がっており、食品製造業におけるAI画像認識の有効性を示す好事例となっています。

出典:キユーピー「キユーピーグループ総合報告書2020」

AIデータ分析を活用し、新たなビジネスチャンスをつかもう

この記事では、AIデータ分析とは何か、その基本から具体的な手法、導入によるメリットや注意点、そして実際の企業での活用事例まで幅広くご紹介しました。

AIデータ分析は、もはや一部の先進企業だけのものではありません。データに基づいた客観的な意思決定、高精度な未来予測、業務の効率化などを通じて、企業の規模に関わらずビジネスを大きく成長させる可能性を秘めています。

もちろん、質の高いデータの準備や専門人材の確保といった課題もありますが、まずは身近な課題からスモールスタートで取り組んでみてはいかがでしょうか。AIの力を借りてデータに眠る価値を引き出し、新たなビジネスチャンスをつかみましょう。

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